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強欲のスキルコレクター  作者: 現猫
第四部:強欲若人は幸せを語る
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序章:浸透する支配-10

遅れてしまいすみません。


体調不良に重ね、内容の構成を大きく変更したために遅くなりました。


もしかしたらちょっと内容が無理矢理になってしまっているかもしれませんが、ご了承下さい。

 


 ──これはあくまで、モーガンが半ば趣味で収集していた素材に向いていそうな魔物の情報集めをしていた最中に聞いたという話であるらしい。


 基本、アンデッドの(たぐい)の素材というのは、体内で生成される魔石しか使い道は無い。


 名のある戦士や賢者のスケルトンやリビングデッドであれば、骨や毛髪等が稀に素材として活用される事もあるが、これにしたって呪具などに用いる場合が常。武器防具に使うのは、倫理的にも趣向的にも嫌厭されている。


 ……だが、全く無いわけでもないという。


『その昔……。邪教に傾倒していたドワーフの鍛治職人が、同胞達に強力なアンデッドの素材を使った武器や防具を提供していた……という話がありましてね? なんでも強い怨念が魔力で魂と結び付くと、それはそれは凄まじい素材になったとか』


『ほぉう、それは興味深い』


『はい。──そんな強烈な呪怨の素材を使った武器というのは、強い反面、身に降りかかる穢れも相当のもののようでして。使用者は軒並み、ロクな最期を遂げなかったそうです』


『ふむ』


『ですがそんな使用者の魂すら、怨念宿る武器は自らの糧にするように取り込み、力を増し、その魔性の魅力に魅入られた新たな使用者の手を転々と渡り歩いているんだとか……』


『……それで?』


『実はこの呪怨の武器なんですが、何年か前にウチの国が大々的に調査をしたらしく、その殆どが回収されたようなんですよ。ドワーフ族の面子に関わるって話で。……ただ』


『回収し切れてはいなかった、と?』


『なんでも一本だけ、どういう経緯かアールヴまで流れてしまっていたらしいんですよ。当時のあの国って殆ど鎖国状態でしたからどうしても手も出せず、回収作戦はそのまま凍結してしまったようです』


『……つまりお前はその呪怨の武器がエルフの手に渡り、何の因果かそれを保持したままアンデッド化……。ティリーザラの人間がそいつを確保したんじゃないか、と?』


『そういう噂を、小耳に挟みまして……』











「──と、いう話を彼女から聞いてな。是が非でも近日中に下街の裏組織を掌握するつもりだ」


「成る程……」


 昨日のノーマン達に鍛治依頼の内容を、歩きながらマルガレンと共有する。


 本当はこの後にも色々と製作計画を募らせていたのだが、ここから先は片手間での共有では少々説明を難儀するだろう。故に、一先(ひとま)ずはこれくらいで一段落着ける事にした。


 特に〝銃〟の話などこんな往来の場で語るものではないだろう。専門的な部分が多いからな。


「しかしその話、眉唾ではないのですか?」


「……私とて、全面的に信用はしていないさ」


 モーガンとてプロの風聞屋というわけではない。


 後半部分の信憑性が薄い事には眉を(ひそ)めてしまうが、経緯はどうあれエルフ族のアンデッドという希少な魔物と、推察でしかないが呪怨の武器がセットになっているというのは、中々どうして美味しい話だというのは間違いない。


 ならば真偽は兎も角、直接探して確かめてみればいい。


「どうせやる事に大差はない。(くだん)のアンデッドが居たならば運が良かった……程度に考えていればな」


「まあ、坊ちゃんがそうおっしゃるならば……」


「ああ。──さて、そろそろこの話は切り上げだ。さっきからロリーナが私の袖を千切らんばかりに握り締めているからな」


 昨日もモーガンからの話の最中に私の腕に全力でしがみついて一言も発さなくなったからな、この子。以前にアンデッドとは戦った筈なんだが、どうやら未だにこの(たぐい)の話は無理らしい。


「あ。はいっ、終わりにしましょうっ!!」


「そうしてくれ。──と、ああそこだ、そこ」


 今日、私とロリーナ、マルガレンの三人はとある家を訪れる為、昼時に出歩いていた。


 その家がある区画は不動産ギルドが運営・管理している借り家が密集している貧民や奴隷を一時的に住まわす為に存在しており、私達の目的の家も、そんな借り家の一つである。


「〜〜♪ ──ん? あ、あらっ!!」


 借り家の前まで来た私達を、庭先で聞き惚れるような鼻歌を歌いながら洗濯物を干す背中から優雅な羽毛を揺らめかせる翼を持つ女性が見付ける。


 すると彼女は一瞬だけ固まった後に一気に顔を驚愕に染め、洗濯物をほったらかしてコチラを出迎えに来た。


「えぇっ!? きゅ、急にどうしたんですかっ!? わざわざ私達のとこになんて……」


 慌てて駆け寄って来た彼女は、どうやら私が訪れるとは思ってもみなかったらしい。


 まあ、確かにここには忙殺にかまけて滅多に立ち寄りはしなかったが、そもそも──


「この借り家は私が契約しているんだ。お前達を住まわせている私が訪ねるのは、そんな不思議な事か? ポーシャ」


 そう。この借り家には以前、私達が様々な名目の上で潰した盗賊団のアジトにて軟禁されていた天族の女性ポーシャとその子供達。それから世話役として彼女が要望した若い人族の元盗賊団構成員のエダインを住まわせている。


 まあ、他にも何人か一緒に住まわせているのだが、どうせ中で話をするんだ。その際に改めて様子を伺うとしよう。


「そ、それはそうですけど……。内心、もう私達には関心がないのかと……」


「そんな無責任な事はせんよ。戦争でコチラに立ち寄る暇すら無かったというだけだ」


「そうみたいですね。貴方の名前は、戦争の後から頻繁に耳にしますから。もう国の英傑さんですものね」


 会話をしている間、ポーシャは妙に艶かしい仕草を一々交えてリアクションしている。


 別にそれに何一つ心が揺れたりはしないが、私の裾を掴むロリーナの力が次第に強くなっていく。まったく可愛いったらありゃしない。


「ああそれで、今日は何かご用でも? なにぶん急だったから、おもてなしの準備どころか家の中散らかったりしてますけど……」


「構わん。今日はコチラに顔を出せなかった詫びも兼ねた昼食のご馳走と、それからここで今日だけ預かって欲しいものがあって来たんだ」


「まあ昼食っ!! 丁度どうしよっかって悩んでいたから助かりますぅ!! それと、預かりもの……ですか?」


「ああ。詳しくは中で昼食後だ。そこで、彼女達も紹介しよう」


「分かりました。ウフフっ。きっと皆、喜びますよっ!」


 そう言ってポーシャは先に小走りで借り家へと戻っていく。恐らく子供達に私の訪問を報せに行ったのだろうな。


「……クラウンさんは、ああいった方が──」


「そちら方面に興味はないよ。私の愛は君だけのものだ、ロリーナ」


「……はい」


 漸く、袖の力が緩む。ああもう、ホントにこの子はまったくもう。


「で、では僕達も行きましょうか……」


 マルガレンが呆れ気味に私達を促す。


 そういえば私達がここまで親密になった事を改めて説明した際には、似たような表情だったな。まあ、じきに慣れるだろうさ。













 ──借り家の玄関を開けると、複数の大きな足音がコチラに迫り、二階から子供達が顔を出した。


「キャッツ様っ!!」


「わぁーっ!! キャッツ様ようこそっ!!」


「キャッツ様っ!! キャッツ様っ!!」


「お久しぶりですっ!!」


「ぶりですっ!!」


 出迎えてくれたのは五人の少年少女。


 この中では最年長のエルフ族の男の子であるダッシュ。


 世話好きで器用なドワーフ族の女の子であるカドリール。


 獣人族であり輝くような真っ白な毛並みの猫獣人(アイルランスロープ)の女の子であるスノー。


 そして年少で生粋の末っ子気質な魔族の兄妹であるダイナとキティ。


 みな以前、人身売買を生業としていた盗賊団にそこのボスのコレクションとして、(さなが)ら動物園の動物のように展示、飾られていた子供達だ。


 私が手ずから助け出し、その故あってこうして諸手を挙げて歓迎する程に慕ってくれている。


「五人とも久しぶりだな。元気そうで何よりだ」


 何も言わずに整列していた子供達の頭を順番に撫でる。


 全員が一様に嬉しそうに笑うが、最後に撫でた兄妹魔族の二人だけは、笑顔の後に少しだけ不貞腐れたような不満顔になる。


「ん? どうした?」


「……なんでもっと」


「会いに来てくれないんですか?」


 ほう……。ふふふ。お可愛い事で。


 その場でしゃがみ、二人の目線に合わせてから顔を見る。


 宝石のような青と黄色のオッドアイには、寂しさからくる不満がありありと滲んでいた。


「すまないな。まさかそこまで待ち望まれているとは思っていなかった。もう少し来ても良かったな」


「そうですよっ!」


「寂しかったんですからっ!」


 ポーシャとエダインが一緒の筈なんだがな……。窮地だったとはいえ助け出しただけでここまで懐かれるものかね。


 まあ、それだけ二人にとってあの時、あの空間が苦痛だったのだろう。


 ──私が救い出したこの五人は、人身売買盗賊団の首領がまったくの個人的な〝コレクション〟と称していた様に、それぞれが押し並べて違う希少な特徴を有している。


 エルフ男児のダッシュはグイヴィエーネン大森林の奥地に住うとされる古のエルフとダークエルフのハーフであり。


 ドワーフの子であるカドリールは、ドワーフ族に極稀に産まれるという「宝石体」であり、毛髪が全てダイヤモンドで構成されていて。


 獣人族で猫獣人(アイルランスロープ)のスノーは、数多の毛色が存在している中でも〝純白単色〟という純血の特徴を持ち。


 魔族の兄妹であるダイナとキティは、外見や特徴がバラバラな氏族が十数世代を経て掛け合わさり、角や羽、尻尾やオッドアイといったそれぞれの特性をその一身に体現した「多種混成魔族」の兄妹……。


 皆が皆、同族ですら出会う事が稀な程の──少々無粋な言い方をすれば所謂(いわゆる)〝希少種〟と呼ばれる特徴を持った子達だ。


 ……正直な話、コレクターという観点で言えばこの子達の人選は頷ける。商品としてでなく個人で所有し展示したいという欲求を、私は理解は出来る。


 だが私に言わせればそんな奴のやり方など、(おもむき)や情緒も無ければ、美的センスも信念も気高さも感じさせない底辺も底辺の思想と趣向。


 コレクションを常に最高の状態にしておくなど基本中の基本だろうに、嘆かわしい……。


 まったく。とっくの昔に殺しはしたが、同じコレクターの風上にも置けんな。あの凡骨め……。


「安心しろ──とは違うが、これからは度々寄らせて貰うつもりだ」


「「ホントッ!?」」


「ああ。責任者であるのに今までポーシャとエダインに任せ切りだったからな。迷惑じゃなければだが……」


「メイワクじゃないっ!!」


「ねっ!? ねっ!?」


 ダイナとキティが、他の子達に同意を求めるように見上げる。


 三人もこの末っ子二人には弱いのか、はたまた全く同じ意見なのか、その視線を一切迷いなく否定するように頷いて見せた。


「そうですよっ! ボク等みんな、キャッツ様に感謝してるんですっ!」


「迷惑なんて、ぜんぜんありませんっ!!」


「お礼したいですっ! お礼っ!!」


 お礼、ときたか……。


 ()しもの私も、まだまだ幼いこの子達に過大な期待はそこまでしていない。強いて言うなら将来性くらいなものだ。


 だが、そうだな……折角だ。


「なら、後でお前達に一つお願いをしたい」


「お願い、ですか?」


「ああ。詳しくは昼食の後にしよう。そう難しいものではないからな」


「ちゅうしょく? あっ! お昼ごはんっ!」


「そう言えばお腹空いたねっ!」


「後でポーシャさんのお手伝いしなきゃね」


「ご飯何かな?」


「何かな?」


 皆の意識が一斉に昼食色に染まり、口々に「昨日はシチューだったから今日は……」「ボクの大好きなやつならうれしいな……」と、思い思いの事を口にしている。


 この様子ならどうやらポーシャ達はちゃんと、満足に毎日良質な食事を摂れているようだな。


 事前に相応の金額を二人に預けていたが、上手く使っているようで少し安心した。


 そして……ふふふ。今日は私がここを訪れているのだ。ただの昼食なんぞ、決して食わせんぞ?


「喜びなさい。今日は私と、この私の最愛の人であるロリーナの二人で、お前達の昼食を作ってやるつもりだ」


 瞬間、五人の目が一度私の隣に立ち静観していたロリーナに向き、直後に漸く私の言葉を咀嚼し終えたのか、一斉に表情を花開かせる。


「キャッツ様がごはんをっ!?」


「ホントですかっ!?」


「勿論。言っておくが、私達の料理は自分で言うのも何だが美味いぞ? それこそ、王都でも指折りだと自負している」


「ええっ!? スゴイスゴイっ!!」


「そ、そんなの、食べて良いの? アタシたち……」


「当然だろう? 何せお前達の為に作るんだからな。お前達が食べなきゃ誰が食べるんだ?」


「ボクらのため?」


「やったっ! やったっ!!」


 ふふふ。やはり子供というのは愛らしいな。


 常に他者に対して様々思案思考巡らせるのが最早癖になってしまっている私だが、こういう心からの純真さを感じさせてくれる子供相手ならその必要も殆ど無い。


 真っ直ぐな言葉と気持ちをそのまま受け止める事が出来る……。ロリーナやマルガレン、ティールに感じる心地良さを感じる事が出来るのだから、世話も焼きたくなるというものだ。


 ……まあ、極たまに、それに該当しないような例外も居たりするのだが、一々そんな事にまで気を張っていては流石に精神を病む。


 この子達には、そんな気など遣いたくはないからな。


 ややこしい希少性と出自のせいで気にする事は多くなるだろうが、それくらいなら喜んでやらせて貰おう。


 それこそが、私がこの子達を助け出した責任の一端であるのだからな。













 ──昼食は、(あらかじ)め作って来ていたソースで煮込んだ煮込みハンバーグ。デミグラス、ホワイトソース、トマトの三種を用意し、それぞれの好みに応じて振る舞った。


 サラダには王都でも評判と品質が最上位の商会から買い付けた物の他、私が手ずから地道に栽培していた野菜をふんだんに盛り、そこへパージンで購入したチーズで作ったドレッシングを掛けている。


 スープには濃厚なチーズを使ったグラタンオニオンスープ。このスープ素材も、自家製タマネギとパージンのチーズも使った。


 そしてデザートには、この世界では貴族くらいでしか口に出来ない氷菓──所謂(いわゆる)アイスクリーム。


 味はオレンジやイチゴ等のフルーツや、シンプルなミルク。そしてキャラメルなんかも用意し、トッピングにはベリー系やジャムを皆の要望に応じて(きょう)し。


 飲み物に関してはマルガレンが渾身の技術と拘りで入れた複数種の紅茶。香りの好みで淹れてやり、まだまだ子供舌な子にはジュースを与えた。


 反応としては──


「はぁ〜〜……。美味しかったぁぁ……」


「こんなご馳走食えるなんて……。ダンナには世話になりっぱなしですっ!!」


 ポーシャは無駄に艶やかな表情で惚け気味になり、料理の途中で仕事を早上がりしてきたエダインは「無作法で構わん」という私の言葉を受けて豪快に掻き込み、その合間を縫うように「ウメェっ!!」だの「スゲェっ!!」だの挟み込みながら堪能していた。


「もうお腹いっぱい……」


「美味しかったぁっ!!」


「こんなに美味しいご飯初めてっ!!」


「また食べたいね、キティ」


「うんまた食べたいねお兄ちゃんっ!!」


 五人の子供達など運び終えた料理を目の当たりにした時からその目を輝かせ、全員分の配膳が済み挨拶を終えた直後から一気にがっついていた。可愛らしい事だ。


「ご、ご馳走さま、でした……」


「美味しかった、です」


「です……」


 出迎えにも現れなかったポーシャの子供三人──ゴネリル、リーガン、コーデリアも、最初こそ遠慮気味であったが、ポーシャやエダインが食べ、弟、妹分ともいえる五人の子供達が手を付けた事により追従するように口にし、そこからは夢中になって用意した分をアッサリと平らげてみせた。


 評判は上々。後で自分用にと文字通り山程に作った筈の肉だねも、残るは二、三人前程度の量にまで減ったのだから驚きだ。点数を付けるならば満点に近いと言えるだろうな。


 私としても、大変に満足である。


「……あ、ああごめんなさいっ!! 余りに美味しかったもので、ついつい惚けてしまったわ」


 突如、何かを思い出したかのようにポーシャが姿勢を正す。


「構わん。──それより遅れ馳せながら、改めて全員に紹介したい」


 私は隣に座るロリーナの手を取り、皆の視線を彼女へと集めさせる。


「彼女はロリーナ・リーリウム。私の恋人で、将来を共にする最愛の女性だ」


 そう言った直後、ポーシャ達から小さな歓声が漏れる。


 ロリーナは少々緊張しながらも流麗にお辞儀し、手を取った私の手に手を重ねる。


「遅れてしまいましたが初めまして。クラウンさんのご紹介の通り、その……彼の恋人で、将来を約束しているロリーナ・リーリウムです。今後、私も何度か彼に共してここへ訪れるかと思いますので、よろしくお願いします」


 言い終わると、ポーシャ達が了承したとばかりに頭を下げた。中には微妙な顔をしている子が居たりもするのだが……まあ、今は気にしても詮無い事だ。


「それからコッチの彼はマルガレン。私の側付き──所謂(いわゆる)専属の従者だ。彼も今回のようにここを訪れる事が度々あると思うから、是非覚えておいてくれ」


 マルガレンは私の紹介で優雅に一礼し、ただ一言「よろしくお願いします」と畏まって挨拶を終える。


「わざわざありがとうございますキャッツ様。貴方に助け出されただけの私達にこんな待遇を……」


「なに、私にも色々と打算なり何なりあっての事だ。それにそれなりの時間を私達は重ねていくのだから、これくらいは常識だろう」


「そんなっ!! ダンナみてぇな親身に世話してくれるお貴族様、オレぁ初めてですよ……」


「私が変わっているだけだ。私が一応〝掃除〟はしたが、他の貴族に私並みの気遣いを求めたりはするなよ?」


「そ、それは当然でっ!! ダンナ以外の貴族なんざ、何一つ期待しちゃいないですよ」


 ……まあ、エダインの過去は取り敢えずどうでもいい。よくある貧民の悲劇だからな。最低限にケアだけしてやれば問題はない。


「それでキャッツ様? お話しにあった、私達への頼み事って、一体何なんですか?」


「オレも姐さんから聞きました。オレ達なんかで出来る事なら何でもおっしゃって下せぇっ!! 小さかろうが大きかろうが、やれるだけやらして貰いやすっ!!」


 何でもとは、まったく大口を叩く奴だ。


 だがそれだけ意気込んでくれならば、さぞ快く引き受けてくれる事だろう。そう、難しい頼み事ではないからな。


 しかしまずは──


「その前にまず一つ、固く約束してもらいたい」


「約束、ですか?」


「ああ。……絶対に驚いたり、騒ぐな。子供達もだ、良いな?」


「え。あ、なにを……」


「安心しなさい。絶対に危険はないからな。では……」


 私は皆が固唾を飲んで見守る中、自らの懐に手を入れる。


 そして目的のものを優しく掴むと、ゆっくりと取り出し、露わにした。


「──ッッ!?」


「え、ちょ……えっ!?」


「騒ぐなと言ったろう? 今は気持ち良く寝ているんだ。無理に起きてしまったらグズって泣き出すからな」


「スゥー……スゥー……」


 気持ち良さそうに寝息を立て、今は深く寝入っている。


 だがひょんなことから突然起きてしまい、眠気で泣いてしまうからな。まったく、ほんの一端でしかないが、子育てとは大変だ。


「この子の名はドーサ……。特別中の特別な蛇の子だ。お前達には一時、この子を預かって貰いたい」


「……な、なるほど?」

エルフ男児のダッシュはグイヴィエーネン大森林の奥地に住うとされる古のエルフとダークエルフのハーフであり。


ドワーフの子であるカドリールは、ドワーフ族に極稀に産まれるという「宝石体」であり、毛髪が全てダイヤモンドで構成されていて。


獣人族で猫獣人(アイルランスロープ)のスノーは、数多の毛色が存在している中でも〝純白単色〟という純血の特徴を持ち。


魔族の兄妹であるダイナとキティは、外見や特徴がバラバラな氏族が十数世代を経て掛け合わさり、角や羽、尻尾やオッドアイといったそれぞれの特性をその一身に体現した「多種混成魔族」の兄妹。


そしてポーシャの子供三人──ゴネリル、リーガン、コーデリアの合計八人に関しては、今は無理して覚えなくとも大丈夫です。


予定の変更が無い限りはこの子達が本編で重要な場面に絡む事になるのは大分先の話なので、この話を漠然とだけ覚えていてくれたら十分です。

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― 新着の感想 ―
質問なのですが、この話の「怨念と魂が魔力で結びつく」の「魂」は武器所有者の魂のことでしょうか?それとも殺した生物の魂を吸い上げる方でしょうか? 呪怨魔法の「意味に重きを置く」特性と鞭に呪怨属性をつけ…
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