終章:忌じき欲望の末-20
想像を絶する……なんて、生易しいものではない。
勝つとか負けるとか。
敵う敵わないとか。
そんな前提が成立するものではない。
まるで惑星がそのまま生物の形をしているような……。存在そのものが世界を体現しているかのような、そういう存在が目の前に現れたのだ。
──かつて。龍という存在を知った時、私はいつしかそんな龍の力すら自分のものにしてみたいと夢想した。
世界の理を統べる超越者。その力を奪う。
私の胸の内に収めていた、密かで小さな目標の一つだった。
…………だが、しかしだ。
いざそれと対面し、目の当たりにし、実感する。
〝これは、人智や人の手の及ぶものではない〟
こんなのを相手にするなど、最早か素手で風を掴み取ろうとするようなものだ。挑むだけ、馬鹿馬鹿しくて呆れ返る。
私の信条は我が名と同じ花の花言葉である〝折れぬ心〟ではあるが、ここまで常識外だと折れぬ折れたの話ではないな。諦念だ。
「……おや? 汝。よくよく見ばその魂、我が主なる転生神様の力が及びてなありそ。いかなる事なり? ことわれ」
私の特別製の魂について説明しろと?
……転生神、か……。
──この世界に転生する際に言葉を交わした〝転生神〟。
取り違えたお詫びだと言ってこの世界に馴染むように魂の波長を調整されていたのだが、どうやら龍──エデンにはそれが分かるらしい。
まあ、当然と言えば当然なのだろうが……。
……もしや世界の正しく神とする彼と直接会話をした経験が、私の超越者に対する感覚を麻痺させていたのかもしれない。
なんならこの龍でさえ、下手をすればあの時軽口を叩いた転生神の力の一端でしかないのだろう。
だとすればあの時の私はなんと傲岸不遜な事だろうか。今更ながら肝が冷える。
「何を最前より一人呟けり。疾くことわれ」
……仕方が無い。一つ一つ丁寧に、説明するとしよう。まずは──
「──ほう。そはまた数奇なる」
私としては、この世界に転生して来れた事を幸運だったと思っている。
まあ前世では仮想空間でもなければ味わえないような経験を、こうして生身で実感出来ているのだからな。今の私は偽りなく幸せだ。
……その代わりこっちはこっちでやらねばならん事が山積みなわけだが……。言い出せばキリがない。
「……されど。妙なる物語なり。我が主──転生神様が分神とはいへ、さる僻事を犯すとは。有り得ぬ事なり」
いや、そうは言うが現に当人からそう聞かされて私がここに居る。否定されても困るのだがな。
「神に僻事は無し。あらば──」
あるならば?
「……別の神が──いやそれも無し。かの方々限りてさる事は……」
……どうやら転生神による魂の取り違えを、他の神による何かしらの工作だと疑っているらしい。
だが他の神であろうとエデンにとっては直近の最上位存在。下手な疑問は憚られる可能性はある。
──しかし、龍にとって神が間違いを冒すものとは微塵も思っていないようだな。
確かに億では済まない世界を私という例外を除いて一度たりとも間違って来なかったとなると、龍の思うように寧ろ私の取り違えに……?
…………私の転生が、仕組まれていた?
……
…………
「……なになり。汝まで強き顔をしをりて」
……いや。なんでもない。嫌な予感がしただけだ。
私の第二の人生が誰かの思惑の一部など……。
「……さる事はあだなり。話しが逸るれど本題なり。汝の手にせるワールドスキル《禁断の果実》の処遇……汝はいかなるつもりなり?」
ん? なんだ。問答無用で私から奪い返すと思っていたんだが、わざわざ問い掛けてくれるとはな。
もしや転生神が言っていたように、龍も下手にコチラに干渉する事が出来ないのか?
「……汝が常の人族……さしあはばな」
私が只人でなければなんだ?
「汝の魂は転生神様が手ずから手を加へし稀有なるもの。加へ大罪スキルを三つ宿し、さるは進化だにせり。最早そこらの木端なる命ならず」
……それで?
「汝を我が殺さば、其は天下に対する過干渉に当たらむ。事なき命ならば兎も角、汝の命は既に然程までの名残を有せり。我に其れを殺す権限はあらず」
ほほう。成る程。成る程、成る程……。
つまりアンタは私を説得なり忠告なりするのが限界で、それ以上の過激な手段には権限がないから出来ない、と?
「然り。げに歯痒し」
ふむ。ふむふむ。
これは進化を果たした恩恵の一つ、とでも言えるか?
世界的に見て私が下手に手を出せない存在へとなった……。実に耳心地の良い事だ。
そして、この超越者に対し必要以上に遜る必要もないわけだな?
ならば──
「改めて言はむ。ワールドスキル《禁断の果実》を手放すつもりやなき? そのスキルは天下に深く根差す力……。元来の持ち主より外の者が軽々に持てべきものならず」
……私にメリットは?
「なに?」
ワールドスキルとは本来、森聖種へと至ったエルフ族の皇帝が有するスキル……。世界唯一にして、最高位の権能だ。
「然り。なればこそ──」
そう、なればこそだ。なればこそ、努力や研鑽を重ねて手に入るものではないそんなスキルを、私が簡単に手放すと思うか? 仮に手放すのならば相応のメリット──対価を要求するのは当然だろう?
「汝……。天下の龍の一柱なる我に対しその気色は何なり? 我を愚弄する気か?」
申し訳ないが、私に神やそれに準ずる存在に対する信仰心など皆無に等しいものでな。
目の前でその威容を目撃し多少の敬いも湧かないわけではないが、敬虔ではない私にその「奉ずる喜び」を求められても困る。
「う、うむ……」
そちらに私に強制出来る権限がないならば、これは対等な取り引きとなるわけだ。
ワールドスキル《禁断の果実》と釣り合い、私が納得するような条件……。世界の龍様は、それを用意出来ているのか?
「汝……」
一応言っておくが、私が納得するような条件は厳しいぞ? 何せ対抗馬はワールドスキルなのだからなぁ?
「最前も言へど、我は汝に過剰なる干渉しすべからず。一方的に奪ふ事も、また与ふる事も認められたらず」
はぁ……。話にならんな。
「いや、然れど……」
なんだ? 私のような反抗的で信心浅い奴と会話するのは初めてか? 神に準ずる存在も存外に見識が狭かったようだなぁ?
「む、うぅ……」
……《禁断の果実》は私が預かる。譲るつもりはない。
「──ッ!? な、何を言ふやっ! 《禁断の果実》は霊樹トールキンと同等の力をも行使能ふ権能を有するスキルっ!! 汝の如き輩が宿したらばいつ悪用し天下が窮地に──」
ならば約束してやろうっ!
……《禁断の果実》を決して使わないと。
「……なに?」
要はだ。私が《禁断の果実》を悪用するのが心配なのだろう? 使い方次第では世界の均衡を乱しかねない権能を、乱りに使われたくないのだろう?
「……然り」
ならば折衷案といこう。私とて恩義ある転生神の龍であるそちらを無下にはしたくないし、心配する考えが理解出来んわけでもない。
「さて契り、か?」
そうだ。正直なところ私としても《禁断の果実》をわざわざ使わねばならん事態、そうそう訪れないだろうと思っている。というかそんな事態が起きるなど私だって御免被るという話だ。
「ふむ」
それに《禁断の果実》という破格の権能は、適度な使い方をしたとしても一度頼ってしまうと今後、頼り切りになってしまうかもしれんからな。そんな癖は個人的に付けたくはない。
「ふむ……」
故に、互いの同意の上で限定的に使用を解除する形にするのはどうだろうか?
これならば私が《禁断の果実》を所有しつつ、そちらが懸念している権能の乱用を防ぐ事が出来るだろう?
「……」
……なんだ? どんな形にせよ私が持つ事が不満か?
「……」
言っておくが、本来の持ち主であるユーリが持つ事に私は納得せんぞ? あくまでも私が所有している事が前提条件だ。
それを飲めんというのなら話にならん。《禁断の果実》は無条件のまま私が──
「よかろむ」
……ほう。
「下賤な汝の言ふ事を聞くは至極気に入らず、未だ元来の持ち主より外の者持ち続くるは本意無し極まるが──」
「……」
「我が力の干渉すべき限りならば、認めむ。汝の中の《禁断の果実》を我が用ゐらるる権限使ひ封印し、我が同意なくして権能を使ふ事を禁ぜむ」
ああ、それでいい。
ここで龍と敵対など私とて望んではいないからな。
案に頷いて頂いて感謝する。
「ふん。さる上面ばかりの謝罪など不要。敬ひ崇め奉らるる事に胡座をかける我が驕りなり」
ふふ。そうだな。
確かに思わず崇めてしまいたくなる存在感ではあるが、私は私を変えんし揺るがん。
それが私だ。欲しい物は、決して譲らん。
「……実に。汝に欲神様の欠片が居心地良ささうにせるばかりある。その欲望、精々呑まるまじくな?」
欲望に呑まれる? 笑わせるな。
私こそが〝強欲〟だ。
「生意気なる……。──では、汝の《禁断の果実》に封印を施す。心せよ」
ちょっと待て、一つ質問がある。
「……なになり」
龍であるならば知っているだろうとな。
……この世界に転生し──いや、転生神によって生まれ変わる少し前に初めて目にした時から頭の隅にあった疑問がある。
転生神の時にはそれどころではなかったからな。良い機会だから教えてくれ。
「……」
…………スキルとは、一体なんだ? 何故こんな都合の良いものがある?
「……スキルの正体、か」
……。
「……スキルとは〝遺志〟。旧天下のあらゆる事象、知識、歴史、概念、空想、技術……。構ふる全てより抽出され次世に結実せる、滅亡と創世の産みし先人の宝なり」
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「……いつまでやってんのよ、あの二人」
「さー? でも大事な事なんでしょ? 気長に待とーよ気長にー……」
クラウンにより休息を命じられたヘリアーテ達部下は、霊樹トールキンの膝下にて各々休息を満喫していた。
上司の粋な計らいにより遠隔でポケットディメンションから取り出されたアウトドア用品一式に身体を預け、そこら辺の料理屋より数段美味な軽食をつまみ、なんなら暇を潰せるような本やボードゲームまで用意されている。
とても敵地の本丸ど真ん中に築くべき寛ぎ空間ではないのだが……。そんな中でも彼等クラウンの部下達は命令通り身体を休ませていた。
「なぁにが気長にーよ。休んではいても一応まだ〝仕事〟残ってんでしょ。ここで気ぃ抜きまくってやらかしたらヤバイじゃないの」
「仕事、って言ってもねー。ここから確認して? 僕等の部下に伝達して? 後は彼等から経過報告を定期的にもらうだけー……。気だって抜けちゃうよこんなんさー」
そう。こうして休んでいる彼等ではあるが、一応はまだ仕事が残っている。
とは言ってもグラッドの言う通り内容としては至極簡単で、とある瞬間を目撃し、それを自分の部下達──ギデオンやキャサリンを始めとした十二名に伝え彼等の仕事を経過報告と共に指示を出すというもの。
注意しなければならないのは最初のとある瞬間の目撃くらいであり、その後はひたすらに報連相の対応に注力すれば済む内容である。
「だーかーらーっ! その瞬間を見逃したらシャレんなんないって言ってんのっ!! 油断すんじゃないわよ油断っ!!」
ヘリアーテは背もたれに全力で身体を預けダラけ切るグラッドを摘んだフライドポテトで指差しながら語気を強めて言う。
「わーかってるって。……って言ってもさー? あそこ見てりゃ良いわけじゃん? それにこれだけ居るんだから別にそんな頑張んなくても──」
そう言いながらグラッドが他の仲間達の方を見遣り、その様相に思わず言葉を詰まらせる。
ディズレーとマルガレンはユーリの猛攻を必死の思いで防いだ反動でまともに身体を起こせずダウンし。
ロセッティは聖芸の指先による再びの自分描きで満身創痍のティールの看病で付きっきりでおり。
ユウナは積み上げられた本に夢中になり周囲の情報が一切合切入っていない。
つまるところこの場で、例の仕事にまともに準ずる事の出来る者は、有り余る膂力でまだまだ体力があるヘリアーテと。
器用に力加減を調整する事で多少の余裕は確保していたグラッドの二名だけであったのだ。
「えー……。一応この仕事って僕達全員のでしょー? なーにこの為体ー……」
「アンタがそれ言う?」
「いやだって……。やるって予め分かってたワケじゃん? フツーはそれ見越して体力温存しない?」
「それは私みたいに体力あるヤツか、アンタやロセッティみたいにボスから《魂誓約》で恩恵受けてるヤツぐらいでしょ?」
「う、うんまー、そうなんだけどー……」
グラッドは困り顔をしながらも自身の胸の辺りを確かめるように摩る。
クラウンと魂的な繋がりを結ぶ《魂誓約》。
これを結んだ二人──グラッドとロセッティには、少しずつではあるが〝変化〟が訪れていた。
黄金の雌果を利用し進化を果たしたクラウンの魂……。その変容ぶりは凄まじいものがあり、容量という面だけを見ても六倍近くも拡張されていた。
この影響は《魂誓約》で深い結び付きを持つグラッドとロセッティにも与え、最初こそ僅かばかりの違和感を覚える程度ではあったが時間が経った今、その感覚は明確なものへと自覚出来ている。
「……実際どんななの? 体調悪いとか? 寧ろ良いとか?」
「うーーん……。こう……、感覚が広がった? みたいな?」
「は? 何よそれ……」
「例えばね? 別に実際にそうってワケじゃないんだけど、例えば味」
「味?」
「うん。土とか木とか、果てには空気とかにさ。そんな食べ物じゃないものに甘いとかしょっぱいとか苦いとかとは違う今まで感じた事がない新しい種類の味覚を感じれる……みたいな?」
「う、うーん……。わかるような、わかんないような……」
「僕にもよく分かんないんだよねー。今言ったのだって厳密には違うしさ。新しい常識の追加? みたいな方が近いかも」
「ますます分かんないわよ」
「だよね──って、そんな事より、ホラ」
「ん? あ。来た」
他愛無い雑談に花が咲いた頃。
トールキンの根本辺りの影……そこから幾つかの人影が周りを矯めつ眇めつ見回しながら顔を出し、次々と出て来る。
人影達はそのまま真っ直ぐ深い木々の中へ身を沈めていくと、東──ティリーザラ方面へと進んで行った。
「……バレてないわよね」
「うん。《認識阻害》のスキルアイテムで僕達の姿は見えてないはずだよ。じゃなきゃコッチ見て警戒するでしょ」
「そうよね。んじゃ、連絡しますか」
「うん。後はキャサリン達が行きの時みたいに良い感じに王国まで誘導してくれるでしょっ」
「適当ねぇ、アンタ。折角の大好きなボスからの仕事なのに」
「緩急を大事にしてるだけだよ。……それにしても、彼等も哀れだよねー」
グラッドは森の闇の中に消えゆく人影を目で最後まで追いながら、後任の部下達に連絡中のヘリアーテに語り掛ける。
「魔物崇拝教「魔天の瞳」……。僕達に利用されてトールキンまで誘導されてさ。魔物発生装置を僕達が防衛するフリしてわざと奴等に起動させて……」
「……」
「奴等は作戦通り自分達の悲願を自分達で達成したって本気で思ってる。後はコッチが頼まなくても向こうが勝手に発生装置を起動したのが自分達だって名乗りあげて……。僕達が起動させてあげたって知らずにさ」
「……」
「いやーさっすがボスだよねっ!! ずっと前からこれを企ててたんだから脱帽だよっ!! それにこの為に僕自ら「魔天の瞳」にまで変装して潜入した甲斐があったってもんだよねっ!! あははは──」
「アンタさっきからウッサイのよッ!! 連絡してんだから静かにしてなさいッ!!」
「あ。はい……」
「なんだ? 叱られているのかグラッド」
「あボスっ! おかえ──」
『だれっ!? ねぇパパママ、この人たちだれっ!?』
「…………何? その蛇……」
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「へー。そんな事がねー」
部下達の元へ帰還し、上での出来事を一通り皆に説明した。
本当は順序立てて説明する気でいたのだが……。
『きゃきゃっ!! くすぐったいっ!!』
「えぇ〜。どぉ〜しよぉ〜。蛇なのにすっごい可愛いぃ〜」
「かぁ〜わいぃ〜ねぇ〜」
『きゃっきゃっ! もっとっ! もっとっ!!』
私とロリーナに絡み付くドーサを見て、部下達の気が治らなかった。ので、取り敢えずはそこを説明し、そこから広げる形で先程、終えた所である。
最初こそ滅紫色の産まれたてで既に成体サイズはあるドーサに瞠目し、近付くのもおっかなびっくりな皆だったが。
ドーサの《精神感応》による天真爛漫で実に子供らしい感情表現にすぐさま心を許し、今では可愛がる列が出来ている始末である。
ドーサもドーサで部下達を前にした直後は少し怯え私達に身を隠すような態度を取っていたが、一度敵意が無いと分かると一瞬で警戒心を解き、こっちは撫でられ待ちまでしている。
……まあ、敬遠されるよりは遥かにマシだろう。少々気を緩め過ぎている気配は否めないが。
「ねーボス。このドーサは使い魔にするの?」
「なに? コイツをか?」
私が思わずドーサを見遣ると、私の視線に気が付いたドーサがコチラを向き『パパなでてっ!』と言って全身を擦り付けてくる。
正直なところ、全く考えなかったわけではない。
ドーサの潜在能力は未知数ではあるが、逆に言えばそれだけ将来性があるという事。使い魔として魂の契約を結べば、そこに更なる可能性も生まれるだろう。
だが、ドーサはまだ産まれたばかりの赤子も同然の子蛇だ。いくら潜在能力があろうと、こんな親に甘え盛りの小さな子を、私の過酷な道に同道させるのは忍びない。
故に──
「今は、考えていないな」
「あ。やっぱり?」
「成長したら分からんがな。少なくとも、もっと理路整然とした自我が芽生えてくれなくては危なっかしくてとてもとても……」
『パパっ!』
「ん? どうした?」
『かみかみしたいっ! かみかみっ!』
「そうかそうか。ほら」
私がドーサの眼前に指を差し出すと、ドーサは嬉しそうに私の指を咥え、甘噛みするように口を動かしながら吸い出した。
「あはは。ホントに赤ちゃんだねー。これじゃあ危険な場所には連れてけないね」
「蛇の──特にこの子は特殊中の特殊だから成長速度は分からんが、まあ暫くは様子見だな」
「それにこの子自身の意思もあります。ただ穏やかに過ごしたいと望むなら、私達はそれを尊重するつもりです」
ロリーナが穏やかな口調でそう言い、指を吸うドーサの頭を優しく撫でる。
「あっはっは……。もう夫婦の会話だよー、まったく」
「パパ、ママって呼ばれるからな。父性や母性も刺激されるんじゃねぇの? ガキの俺等にゃわかんねぇけどよ」
「んな事言ったらクラウンはともかくロリーナは早熟過ぎねぇ? 恋愛だってコイツが初めてだろうしよう」
「いやいやアンタねぇ? 私達一応はもう結婚適齢期ではあるんだよ? ハーフエルフの私はまた違うかもだけど、学院生の中には婚約者とか当たり前に居たりするんだから別に早くはないわよ」
「坊ちゃんとロリーナさんが……。その時は是非ボクに仲人をっ!!」
はぁ……。何を勝手な事を……。
「……」
「……」
「……」
「……その内、な?」
「は、はい……」
次回、もしかしたらちょっと胸糞かもしれません。
お覚悟を




