終章:忌じき欲望の末-18
ペルソナ3リロードをクリアした影響か、なんかいつまでも心がざわついていて、居ても立っても居られなずに書き上げてしまった……。
まあ、あの結末と今回の内容は全く関係ありませんがね。
「……ここは」
「霊樹拝礼の間──その最奥だな」
私とロリーナは今、再び霊樹拝礼の間へと足を踏み入れていた。
辺りは激戦の影響で見る影もないが、まあ、トールキン自身が修復するだろう。
そしてそんな霊樹拝礼の間には、祭壇を迂回する形でもう一つ、空間が存在している。
普段は枝が複雑に絡み合い一切踏み入る事は出来ず、歴代の皇帝のみがその道を開け入る事が可能となっていた。
以前の私では入る事は叶わない場所であったが、今の私には《森精族の主》と《森王覇気》、《霊樹の寵愛》の三種のスキルを有している。
今の霊樹トールキンからすれば、私は最早「有資格者」と認識される。現に私が魔力を枝に流し込むとすんなり開いたからな。
そしてその開いた先にある緩やかな坂を迂回するように通り、辿り着いたのが霊樹拝礼の間最奥──「霊樹天宮」である。
「位置としては本当の意味でのトールキンの天辺にあたるな。魔力も霊力も濃く満ち満ちていて、何とも言えん感覚だ」
霊樹トールキンの葉の強烈な黄金色とは違い、この空間を包むのは淡く神々しい白黄金。丁度ロリーナの髪や目の色に近いような、神秘的で優しい光だ。
そしてこの空気感は、例えるならば酸素カプセルで充分に酸素を摂取している状態というか……。普段不足しがちなものを万全に取り入れられている状態というか。
もしかしたら私達人族や他の異種族達にとってはこれくらいの濃度の魔力が最適なのかもしれん。まあ、霊力はどうだか知らんがな。
「……それでクラウンさん。アレが……」
「ああ。目的のもの──〝精霊のコロニー〟だ」
私が帰らずにこの霊樹天宮にそのまま直接訪れた理由は二つある。
一つはまあ、時間がどれだけ掛かるか判然とせん故にまた後で済ませるとして、もう一つの目的がこのトールキンの天辺に築かれた精霊のコロニーに立ち寄る為である。
──ユーリの人格・記憶の改変の最中にシセラに護衛を任せていた際、何やら彼女がコチラの様子を窺いながら切り出そうかどうか悩む様子に私が痺れを切らしたのがきっかけだ。
『……さっきから何だシセラ。そう露骨に話がありそうな雰囲気で見られては気になってしまう』
『あっ!! す、すみません……。ですがこれは……』
『いいから話しなさい。聴くだけならいくらでも出来る』
『は、はいっ! 実は以前から感じていた事がございまして……』
『感じていた?』
『その……。霊樹トールキンの遥か上空から感じるのです。私達の同胞──精霊の気配を』
『……何?』
詳しく聴いてみれば、私が初めてトールキンを訪れていた時からほんの僅かに同族の気配を感じ取っていたらしく、ずっと気掛かりだったそうだ。
ただ気配は本当に僅かで、今や魔獣として覚醒し精霊ではなくなった事も相まってか感覚が鈍くなり、それが本当に精霊なのか自信がなかったという。
加えて感じるのもトールキンの恐らく頂上に位置するという事で、ただでさえ忙殺を極めていた私にそんな侵入困難な場所へこの程度の情報で行かせて良いものか、と内心悩んでいたらしい。
故にユーリを打倒し、しかも件の頂上にも近い今のタイミングであるならば立ち寄れるのではないか? と考えていたようだ。
『……で? 感じていた精霊の気配というのは確かなのか? この距離ならばより強く感じられるだろう?』
『はいっ! 今は確かに感じます。我が同胞達の──精霊のコロニーがこの上にありますっ!』
『ふむ。そうか……』
『ど、どうでしょうか?』
『む? ああ、無論立ち寄ろう。お前との約束だからな』
『──ッ!! ありがとうございますッ!!』
世界各地の精霊のコロニーに立ち寄るのは、私とシセラで交わした人生目標の一つだ。
シセラの元居たコロニーの新たな主精霊誕生の為に、微精霊に各地のコロニーの霊力を注いで周る……。中々に大変な目標であるが、世界をいつか巡ってみたいというちょっとした野望もあるからな。私としては割と乗り気だ。
オマケに霊樹トールキンの頂上ともなればそうそう立ち寄る機会など訪れない。
ユーリが目覚め正常にティリーザラとアールヴの和平が結ばれたならば、然しもの私でも再度立ち入るのはかなり困難になるだろう。
なにせ霊樹拝礼の間とその最奥である霊樹天宮は皇族しか入れんからな。今を逃せば次入れるのはいつになるやら……。
それに霊樹天宮には他に立ち入りたい理由もある。行かない理由がない。
『ユーリへの処置が済み受け渡し次第、すぐにでも向かおう。ふふふ。また使い魔が増えたりしてな』
『ふふふ。それはありませんよ。あの時は必要でしたからムスカを迎え入れましたが、今はそんな事はありませんし。わざわざ作る必要もないでしょう?』
『それもそうだな。ふふふ』
──というやり取りがあり、このタイミングで立ち寄ったわけである。
まあやる事としてはそう難しくはない。帝国国境沿いにあった森のコロニー同様、このコロニーの主精霊に事情を説明し微精霊に霊力を注ぐだけだからな。
……そう、思っていたのだが──
『よくぞッ!! よくぞ解放して下さいましたァァッ!! ありがとうございますッッ!!』
シセラが事情を説明しようとコロニーの主精霊に挨拶した直後、主精霊が虹色に輝きながらそう叫んだのである。
「ああぁ……。すまない。こちらとしてはそんな感激混じりに礼を言われる理由が思い当たらないんだが……。解放、とはどういう意味だ?」
『は、はいッ!! ……実はこのコロニー、彼の女皇帝ユーリによって〝実験場〟として利用されていたのです』
「実験場? コロニーをか?」
私がユーリから《完全継承》で記憶を読み取った際はそんなものは一切無かった……。それは間違いない。
これはつまり、奴は自らの手で《嫉妬》を自身に使い、コロニーでの実験に関する記憶を削除していたという事だろう。
一体なんの目的でそんな真似をした? 何故わざわざこの実験の記憶を消したのだ?
……。
『それで──』
「待て。私はユーリから記憶をある程度引き継いでいるがそんな記憶はない。理由は分かるか? 知っているならばまずはそれから聴かせてくれ」
ユーリがわざわざ記憶まで消したのには必ず理由がある。知らぬままにはしておけん。
『記憶を……。成る程、やはりですか』
「やはり?」
『はい。ご存知かは分かりませんが、この精霊のコロニーは他のコロニーとは少し異なり、特殊な役割を担っているのです』
「特殊な……。霊樹トールキンの役割と関係しているのか?」
霊樹トールキンは魂と魔力を結び付けて昇華する事で霊力へと変換し、それを地脈を利用して世界中の精霊のコロニーへと送り込んでいる……。
そしてその霊力を利用する事で各地のコロニーの主精霊達が世界の魔力を制御し、世界の秩序が保たれているのだ。
そんな霊樹トールキンの頂上に存在するコロニーが特殊でも不思議ではない。
『ご明察ですっ! ……このコロニーは他とは違い、魔力の制御ではなく〝霊力の調整〟を行っているのです』
「霊力の調整……」
『左様っ! 魂と魔力が結び付く事で生まれる霊力ですが、霊力とはつまり〝純粋な力〟。世界の〝理〟を維持する為の力です』
「な……」
理、ときたか……。それはつまり世界のルールそのものに関する力という事か……。
『ですが昇華に至ったばかりの霊力は不安定で未熟……。そのまま世界に巡回させては寧ろその力故に秩序を乱してしまう恐れがある』
「それでお前達霊樹のコロニーの精霊が霊力を調整している、と。では各地のコロニーが霊力で魔力を制御しているのも?」
『はいっ! 各地の主精霊は霊力を用いて乱れた魔力を正常化──つまり〝理に準じた状態〟にする事を役割としているワケですねっ!』
「成る程……」
霊力とはつまり秩序の力……。世界が世界として維持する為の、所謂〝血液〟のようなものになるわけか。
……で──
「それがどうユーリが記憶を消す話に繋がる?」
『ああはい。……彼女は実験の最中、昇華されたばかりの霊力を……《嫉妬》によって改変しようとしたのです』
「──ッ!? 霊力を、改変……。それはつまり……」
『はい。霊力の改変は世界の秩序に干渉する行為と言っても過言ではありません。霊力を直接利用したり、独立したものを改変するならば影響は少なく済むでしょうが、彼女がしようとしたのは地脈へ流れる霊力の改変……。世界にどんな影響が出るか分かったものではありません』
奴めそんな暴挙を……。幾ら霊樹トールキンの全権を握るエルフの皇帝とはいえ、そんな馬鹿な真似をしようとしてからに。
一体何の目的があってそんな事を? 確かにユーリは世界の破滅などお構い無しに《禁断の果実》を使っていたが、アレは私が追い詰めた末の暴走だ。
然しもの彼女とて、それ以前から世界の秩序を乱すような行為を進んで行う程に壊れてはいない筈。ならばしっかりとした目的と理由があってそんな真似を敢行したに違いない。
ユーリ自身に理由が無いのであれば他者……。まさかドワーフか獣人の支援・協力に対する何かしらの交換条件? それともカリナン──サンジェルマンに関する事か?
……駄目だ。幾ら考えたところで推測止まり。ユーリめ。最後の最後に面倒な宿題を残しおってからに……。
だが──
「しかし、私の視点からになるが世界の秩序が乱れた、など大層な事にはなっていないように見える。奴は失敗したのか?」
『左様です。このコロニーは他とは違い、その荒削りな霊力によって満ちています。濃く深く、強い力です』
「……成る程。ユーリは御し切れなかったワケか。この膨大な霊力の情報を」
《嫉妬》の権能には対象の情報を予め覗く必要がある。
だがこの精霊の力で調整しなければ世界に影響を及ぼすとまで言われる未調整の霊力の内部情報は、それはそれは莫大で甚大で膨大なものになっているだろう。
そんなものを皇帝の有資格者とはいえ処理出来るものか? いや、絶対に不可能だ。
その時点で森聖種に進化していれば僅かに可能性はあったかもしれんが、残念ながらそうではない。
ユーリの力では、この霊力を改変出来なかったのだろう。
『寧ろ霊力の内部情報を覗いた事で、その情報の処理に彼女の脳と魂は信じられない程の負荷を受けたと思われます。何せ直後に頭を抱えて絶叫しておりましたから、彼女……』
「だろうな。正直なところ、今の私でも勘弁したい。御し切れる気がせん」
規格外な進化を果たした私でも、恐らくとんでもない負荷が襲うだろう。
まあユーリよりは上手くやれるかもしれんが、必要も無いのに試そうとは思わん。余程の事態でもない限り実行する事はないだろうな。
『故に、ユーリは記憶を自ら消したのだと思います。苦痛から逃れたかったのでしょう。ここでの実験の記憶を丸ごと消し去る程ですから、余裕もなかったかと……』
「ふむ。理解した」
ユーリのここでの記憶が無い理由は分かった。まあ、完全な自業自得の結果だったという話だな。
「で、先程の解放というのは?」
『あ、はい。──コレの事です』
そう言って主精霊は私達の前から横にずれ、丁度コロニーの中央を注視するように促してくる。
するとそこには──
「……なんだ、これは?」
一目では正直、何か分からない。
まるでゴム製のバレーボールのような質感と大きさ。形はやや縦長で、色はこの神々しい光が満ちる場には相応しくないような毒々しい滅紫色だ。
それが……周囲の霊力を吸収している?
「クラウンさんコレは……」
「……卵か。しかも蛇の?」
《解析鑑定》の結果判明したのは、目の前のこの球体が卵──それも蛇型魔物のものであるという事実だ。
「何故こんな場所に魔物の卵が──って、そういう事、ですか?」
「ああそうだろうな。ユーリの奴、本当に色々やってるな……」
恐らく、ユーリのやっていた実験というのはこの卵によるものだったようだ。
何の意味と目的があったのかは例の如く記憶が無く判然とせんが、人造魔物の研究も熱心にしていたからな。それ関連だろう。というか──
「この卵、エルウェの使い魔だったニーズヘッグと呼ばれていた蛇型魔物の卵じゃないか」
魔生物研究部門長であったエルウェも七匹の蛇の魔物を連れていた。
その中でも最も巨大であり、体内に植物魔物のマンドラゴラを宿し幻影を操っていた……エルウェ自身を背中に乗せていたあの大蛇の卵らしい。
奴には夢の出来の悪い幻影を見せられて若干心象が悪いんだがな……。その蛇の卵か。
「つまり、これが?」
『はい。この場でこうして霊力を少しずつ吸収しているせいで、私達の調整に支障をきたしているんです』
「何? それで問題はないのか?」
『それは、何とか……。ただこれ以上は正直もう厳しいです。なのでっ!!』
「私に取り除いて欲しいと? それで解放された云々と騒いでいたのか。もう決定事項のように言ってからに」
『それは、申し訳ない……。でもただでさえ出入りが壊滅的に無いこの場に部外者ながらも貴方方が来て下さったのは一種の奇跡ですっ!! どうかこの卵を回収して下さいませんか?』
「ふむ……」
霊力を少しずつだが暫くの間吸収し続けた、エルウェが丹精込めて造った魔物の卵か……。
希少価値という点で見れば、これ以上にない最上級の物だろう。手に入れたい時に手に入るものではないし、自作するにしても途方も無い手間が掛かるのは間違いない。
二度と手に入るものではない、と括っても良い。
……ただ、私がこれを有効活用出来るかどうかというと……正直微妙だ。魔物の卵の使い道など、今は思い付かないし予定も当然無い。
やるとしても関係者の可能のあるエルウェに預けて経過を見るくらいだろう。そして卵の今後を──む?
使い道に悩みながらも卵を持ち上げた時、卵の反応に変化が起きた。
霊力の吸収を止めたと思った途端、今度は私の魔力を吸収し始めたのだ。
「コイツ……」
基本的に魔力を操る種族や魔物は、その身体から微量ながら魔力が漏れ出ている。意識さえすれば止める事も出来るが、それが必要でない状況ならば一般的にはそのまま垂れ流しだ。
先程までもそんな状態でいたのだが……。
「私から魔力を盗み取るとは……良い度胸だ」
「あの……私からも盗られているみたいなんですが……」
「ほぉう……」
ロリーナからも盗むとは、本当に良い度胸をしている。
「この産まれてすらいない卵風情が。そんな生意気な奴にはお前を使って実験を──」
「く、クラウンさん……」
「む? なんだ?」
「卵……動いてません?」
「……確かに。動いている、な」
ボコリと一つ、卵の殻越しに手に感触が伝わってくる。中で蠢いているのだろう。
種類にもよるが、爬虫類の卵の中には軟質なものがあり、蛇なんかはそれに当てはまり、例に漏れずこの卵も下手な触り方をすれば破れてしまいそうに柔い質感を持っていた。
そんな柔らかい卵が中の蛇が動き回って暴れる事で様々に歪み、今にも破れようとしている。
というか、産まれようとしてるのか? 今、このタイミングで?
「おい待て。私は未だお前の処遇を──」
私の言葉も虚しく、殻にはとうとう亀裂が入ってしまい、隙間からぬらりとした液体に塗れた蛇の顔が覗く。
そして間も無くして隙間から頭を出すと、私の顔を真正面から真っ直ぐに見据える。
卵の色同様に滅紫色の体色に、桃色のまん丸な大きい瞳。鼻先は通常の蛇とは若干異なり、先端が少し上向きに吊り上がっている──所謂シシバナヘビと言われる種類に似ていた。
全体的な大きさは……既に平均的な成体の蛇とそう変わらんサイズだな。まあそもそもの卵のサイズがバレーボール大だったのだからそりゃあそうなんだが……。
「……な、なかなか可愛らしい顔をしているじゃないか……」
「はい。そうですね」
ロリーナも興味津々とばかりに産まれたばかりの蛇に顔を近付ける。
すると蛇は私から視線を彼女へと移し、なんともあざとく頭を捻る。
そして私の顔に向き直るともう一度頭を捻り、数秒して再びロリーナへと視線を変えるというのを数度繰り返した。
「……なんなんだ?」
「うふふ。可愛いですね」
「……君は蛇とか、割と平気なのだな」
「あ、はい。実家近くの森に野草を採りに入ると普通に出ますし、おばあちゃんが蛇毒を採るのに何種類か飼ってましたから」
「ああ、そういえばそうだったな」
蛇毒の中には、適度に希釈すれば薬効が期待出来る種族のものがある。ロリーナの育ての親で薬師のリリーも、それ目当てで飼っていたな。
久しく寄っていなかったから忘れていた。戦後処理に一段落ついたら、ロリーナと一緒に久し振りに行ってみるか。
──と、それより。
「どうするか、コイツ……」
「いっそ飼ってみては?」
「飼うって……」
一応いつかは爬虫類館のようなものを建て、テラリウムで世界各国の蛇やらトカゲやらを飼い揃えたいと考えたりしているが……。
「一応コイツ、魔物だぞ? それに産まれたてでこのサイズ……。親であるニーズヘッグの事を考えると、成体なら十数メートル以上は優に超える筈だ」
「ああ、それじゃあ……」
「成長速度にもよるが、しっかりとした設備が揃わんと最悪コイツに窮屈な思いをさせてしまう事になる。そう軽率に決めてしまうのは──」
『──パ、パ? マ、マ?』
「……む?」
「……え?」
頭に突然、やけに幼い声音が響く。
言葉も辿々しく、宛ら赤ん坊が産まれて初めて両親の事を呼んだ時のような……。
『パパっ! ママっ!』
再び声が聞こえたかと思えば、目の前の蛇が私の腕を巻き付くようにしながら這い、二の腕まで到達。
そして身体を二の腕に巻き付けたまま今度はロリーナの方に向かい、私と同じように彼女の二の腕に巻き付いて私達の間に伝う形で陣取った。
というか──
「コイツ、スキル《精神感応》で話し掛けて来たのか? それに私達を……」
「パパ、ママって……」
「……」
「……」
「……ああいや、うん。これは、アレか? 刷り込み、というやつか?」
「い、いえでも、魔物とはいえ爬虫類ですよ? 爬虫類って刷り込みするんですか?」
「しない……とは思うが、稚拙とはいえ明らかに私達を意識して──」
『パパっ! ママっ! パパっ! ママっ!』
「ああぁもうっ! 分かった分かったっ! 分かったから連呼しないでくれ情緒が乱れるっ!!」
『あいっ!』
蛇は反応してくれたのが嬉しかったのか、爬虫類らしからぬリアクションで嬉しそうに口を開け、更に自身の身体を私達に巻き付けていく。
「はぁ……。別に捨てるつもりは無かったが、これはもう側に置いておかなければならんようになったか?」
「その、ようですね……」
「まったく……。後でエルウェに色々聞かなくてはな。差し当たり──」
──おい。
……。
── 何時までやれり? 疾く此方に……。
……本当、次から次へと忙しない……。




