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強欲のスキルコレクター  作者: 現猫
第二部:強欲少年は魔法を渇望する
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第二章:運命の出会い-1

 今私は授業を受けている。


 ここは貿易都市カーネリアに二つある魔法学校の内の一つであり、王都にある「魔法魔術学院」の分校にあたる魔法学校「王立ローゼン魔法学校」である。


 この学校での成績はそのまま本校である魔法魔術学院へ送られる。そして優秀な成績を修めた適齢期の学生は本校への編入試験を受ける事が出来、見事クリアすれば編入する事が出来る。といった仕組みだ。


 この場所はそんなローゼン魔法学校の敷地内にある大きな訓練場。ここで私はクラスメイトと共に魔法を撃ち出す練習をしているわけだが……。


「鋭利な石よ、目の前の敵を穿て! ストーンバレット!!」


 クラスメイトの一人がそう口にして突き出した手から小さな石飛礫(いしつぶて)を数メートル先に設置されている木製の的目掛けて勢いよく飛ばす。


 しかし石飛礫は的に当たることはなく、やや上へ軌道が逸れてしまい、壁へと当たり転がる。


「あー、惜しかったわねぇ。最後ちょっと集中力切れたかな?」


 そう言うのは私を含めたこのクラスの担任教師。教え方は丁寧で分かりやすく、その優しさとハツラツな性格から生徒達の人気の高い女教師だ。


 だが少し、私を含めた生徒達を子供扱いし過ぎる面が、私としてはキツかったりするのだが。


「じゃあ次、キャッツ君! お願いね!」


「……はい」


 今回のこの授業。主な内容は《地魔法》を使用した「〝詠唱〟を使った魔法の発動」である。


 学校の備品である《地魔法適性》の付与された腕輪をクラス全員に配られて行われている授業なのだが、


 私は一切この授業で学ぶ〝詠唱〟を使っては来なかった。そう、この世界の魔法にも一応、詠唱は存在するのだ。


 前世のゲームやアニメなんかじゃ魔術師やらが魔法を放つ直前にするなんとも厨二心をくすぐられる詠唱だが、この世界に於ける詠唱にはゲームやアニメの様な夢のあるモノでは無い。


 なんせこの世界の魔法詠唱は〝別に無くても良いモノ〟であるからだ。


 イメージ力が物を言うこの世界の魔法に於いて、詠唱は単なるイメージを口にする事によって再現を容易にする為の自転車でいう補助輪の様なモノ。


 私の様に《演算処理効率化》や《思考加速》、《魔力精密操作》や《魔道の導き》などのスキル群で固められた者にとって詠唱は()わば四輪車に補助輪を付けて走る様なモノなのだ。


 それを今更やれとは……。


 改めて魔法を学び直してみようと決意した意思が、少し揺らぎそうである。


「あら、キャッツ君どうしたの? やり方分からない?」


「え? ああ、はい、大丈夫です」


 私は深い溜息を吐きながら先程のクラスメイトと同じように右手を突き出して手の平に魔力を集中させる。


「お? いい感じいい感じ! ささっ! 次は自分の好きな詠唱を口にしてみましょう!」


 好きな詠唱って……。まあ、要するにイメージ出来りゃなんでもいいわけだが……。クラスメイトの大半は教科書なんかに載っている〝詠唱一覧〟なる項目から好きなものを選んでいる。私も適当にそれを倣おうかと思ったが……。それではつまらないな。


 折角だ、少し実験をしてみよう。


 私の様にスキルで魔法発動を補っている者でも、ひょっとしたら詠唱を唱える事により何らかの変化があるかもしれない。


 だがやるのであれば教科書に載っているような極一般な詠唱では駄目だ。更に強力で、一層大袈裟なものでなければ……。そうだな……。


「……嶄巌(ざんがん)からなる礫、荒荒しく鋭利に……頑強なる礫、疾く、深く深く怨敵を穿て……ストーンバレット!」


 そうして私の手から放たれたストーンバレットは、真っ直ぐブレる事なく的へ高速で飛んで行き、着弾した瞬間その木製の的を粉々に爆散させた。


「…………」


「…………」


「……じゃあキャッツ君、後で職員室!」


「……はい」


 放課後──


 そんなこんなで職員室。と言っても前世の日本の学校の様な大部屋に複数人分の机が置かれている様な物ではなく、教職員一人一人には個人部屋が設けられている。


 そして私は私を呼び出した女教師──ニーナの職員室に来ていた。


「さてさてキャッツ君。あれはどういうことかな?」


「あれ……ですか」


 あれなぁ……。私も予想していなかった。まさか私の様に様々なスキルの補助を受けている状態でも効果があるとは……。


「そうあれ。ウチの学校は魔法を学ぶ学校でしょ? でも魔法を学ぶと言ってもね、普通の学校と違って潜在能力や才能やスキルなんかで学力よりも顕著に色んな差が出てくるわけだ。わかる?」


「わかります」


「そう。で、そんな千差万別な力の差がある子達を見境なく同じ教室で学ばせるというのは効率も悪いし、最悪力を見誤って怪我人だって出るかもしれない。わかる?」


「……はい」


「そうそう。で、そんな事態を避ける為、この学校だけじゃなく、大半の魔法学校は生徒達の基礎能力やスキルなんかをあらかじめ調べて、それぞれの特性にあった生徒達が居心地の良い教室作りをしているのね。わかる?」


「……はい」


「そうそうそう。で、だ。そんな生徒達も成長するわけで、時にはビックリするくらい短期間に伸びる子がいるわけだ、スキルとかでね。でもそんな子をそのまま同じ教室にするとさっき言ったみたいな問題が出るかも知れないから、そんな生徒は再審査の申請をして貰って、教室を変えるようにしているわけね。わかる?」


「…………」


「で、だ! 前置きが長くなったけどね。君、いつから申請、してない?」


「……一度も無いですね」


「だ・よ・ね!? してないよね!? 一度もね!? 私聞いて無いものね! あんな威力の魔法が撃てるなんて話!!」


「はぁ……」


「はぁって……。まったくもぉ、最近漸く授業やる気になってくれたと思ったらコレだ……」


「申し訳ありません」


 まあ、私は色々授業をサボって一人黙々と《空間魔法》の練習に勤しんでいたわけだが……。そのせいで学校の成績は良いものの完全に出席日数が足を引っ張り、割と場違いなクラスに移されてしまったというわけだ。


「……もしかしてやる気無かったの、周りの──というかこの学校のレベルが低かったから?」


「まあ、間違ってはないですね」


「はぁ……」


「すみません」


「まあ、怪我人とか居なかったから取り敢えずは良しとする!! ……良しとするけど……う〜ん……」


 ん? なんだ、歯切れが悪いな。


「……どうなさったんですか?」


「いやね。今から申請を受理して新しい教室に割り振る、っていうのがこの場合普通なんだけど……。多分それよりも、君ならアッチで受かっちゃうんじゃないかなぁ……」


「……アッチ?」


「うん。来るのよ近々。魔法魔術学院候補生査定が、この街に」


「……ほう」

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