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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。

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最前線! ダンジョン警察24時〜ダンジョンの悪いやつら全員集合!

掲載日:2025/11/18


──ウォーーン! ウォーーン! ウォーー!


『二階階段付近、暴漢が泥酔し暴れている模様! 直ちに急行せよ!』


車型のダンジョンアイテムである「オートモービル」を警察仕様に改造したダンジョンパトカーで現場に俺──大石太一は急行する。


「初仕事!! 緊張すんな〜!!」


──


10年前、ダンジョンが出現し、空前のダンジョンブームが始まった。

政府はなんの前触れもなく現れたダンジョンの対応に後手に回った結果、老若男女人種問わずにダンジョンになだれ込み様々な事件が発生。

封鎖したり、逆に調査のために人を送ったりした後、自己責任で大開放したりと色々と試し、今日この日、無法地帯のダンジョンにも新しく立法されたダンジョン法が適用されるに至る。

つまり、今日が司法の手がダンジョンに伸びる記念すべき最初の日だ。

そして俺が所属するダンジョン警察が正式に稼働する日でもある。


「中はパトカーよりも広くて豪勢だなこれは」


俺たちのような元冒険者ではなく生え抜きの警察官である上司──宮内さんこと宮内警部補が横で車内を見まわしながらぼやく。

趣味でダンジョンに潜っていてプロの冒険者並の実力は持ってはいるのだが、流石に中部限定のダンジョンアイテムは初見のようだ。

俺も初めて使った時は中の空間が拡張されるのを見て驚いたからな。

懐かしい気分になると運転席から笑い声が聞こえてきた。


「ハハハ、珍しいですよねこれ。関東のダンジョンでは見ないですから。普段車の運転なんてしないのに思わず飛び乗っちゃいましたよ」


「ガハハハ! 田所くんも若いな! さすが冒険者だっただけに冒険心がある!!」


「申し訳ないです、田所さん。運転してもらっちゃって」


「いいよ。いいよ。好きでやってるだけだから」


開始早々緊急出動だったが和気藹々としており空気は悪くない。

これで暴れている暴漢が比較的穏やかな人物だったらいいいのだが。


「飛ばすわよ〜!! ブン! ブン!」


「ゴブー!!?」「ピギィー!!!」「ボーン!!!」


いちいち相手にする時間もないので田所さんがマニュアル通り対処は後にしてモンスター轢いていくとついに二メートル近くありそうなパンチパーマの鎧男が暴れていた。

まるでヤクザが鎧を着込んだような出で立ちだ。


「魔石よこせやああ!! おめえは魔石じゃねえだろ!! 紛らわしくピカピカしてんじゃねえよ!」


「うわあああああああ!!」


近くにいた坊主の冒険者の頭を掴むと振り回している。

めちゃくちゃだ。

だいぶ酔いが回っているように見える。

あれじゃあ穏当に解決というわけにはいかないな。

逆上したら冒険者がどうなるかわかったものじゃないし。


「危ない! 人命第一です! このまま車で体当たりします!」


目前で田所さんが空恐ろしいことを言うとそのまま暴漢を轢いた。


「ぎゃあああああああ!!」「ほげええええ!!」


背後でけたたましい悲鳴が上がり、墜落した音が聞こえる。

そういえば、この人元冒険者(社会不適合者)だったな。

ハンドル握らせたらダメな人だった。


「ナイスアタックだ! 田所君!」


「やりましたよ! 宮内さん!」


「!?」


アウト寄りのアウトだと思っていると宮内さんからお褒めの言葉が飛んできた。

まさかの肯定。

もしかしてダメじゃないのかこの組織と思いかけるが踏みとどまる。

一般人目線に立てば道交法に反することな上、人としてアウトだが、今の俺たちは法を司る側に立っているのだ。

法を司ると言うことは俺たちが法と言っても過言ではないのだ。

ということはダンジョン警察として正しいことするならば何をやっても合法と言っても過言ではない。

ダンジョン利用者を守るためならば車で人を轢いてもいいのだ。

俺だけ自分の中の立場のアップデートに失敗していたようだ。

俺は冒険者から一般人(ダンジョン警察官)になったわけではなく、ダンジョン警察官(法)になっていたのだ。

法の逸脱を正すためならば何をやっても許されるのだ。

そう思わなければこの状況でやっていけない。


「何晒してんだゴラア! 上等じゃねえかゴラア!」


「ひ、ヒィぃぃぃぃ!!」


轢き殺したかと思ったがそれなりにダンジョンで鍛えられていたようで二人の無事を伝える怒声と悲鳴が聞こえた。

とりあえず事態を収束させねばならないので、車から出る。


「助けてください!」


出るとすぐに坊主の冒険者が走ってきて保護を求めてきた。


「こちらへどうぞ! 宮内さん、暴漢の方をお願いします!」


「任せなさい! 落ち着きなさい、君!」


「ゴハァ!」


坊主頭の冒険者を介抱で手が離せないので、宮内さんに暴漢を任せると問答無用で鉄拳で制裁する姿が見えた。

あの調子なら終わったようなものだろう。

負傷した冒険者をゆるりとパトカーに乗せる。


「ここならば安全ですので安心してください」


「あ、ありがとうございます。お巡りさん」


「さてと……」


保護も完了し、暴漢の回収に行こうと思うと「グ」と言う宮内さんの呻きが聞こえた。

何事かと思うと目を手で覆い膝を突く宮内さんの姿と異様なスピードで逃げていくボコボコの暴漢の姿が見えた。

暴漢の手にダンジョンアイテムであるドラゴン用の催涙スプレーが持たれており、何をしたかはピンときた。


「大丈夫ですか! 宮内さん!」


「催涙スプレーをやられた。咄嗟に庇ったので目は無事だが掛けられた周辺が痛くてたまらん。私は保護者とともに治療に向かう。すまんが田所君と一緒に暴漢の追跡を任せられるか?」


この人、ドラゴンが悶絶して泡を吹く劇物を食らっても車運転できるのは凄まじいな。

初仕事ということで無理を押しても成功させたいという気持ちがそうさせているかもしれないが。


「任せてください!」


俺も損害だけで未解決のまま後味が悪いので快諾すると田所さんを呼びにいくことにする。


「田所さん……」


「置いてっちゃいますよ」


田所さんを呼ぼうと思うともうすでに暴漢を追いかけて先に駆けていた。

動くのが早い。

何においても猪突猛進だな。


「早!? 瞬間移動してくるじゃん、君。もしかしてあたしよりレベル上?」


「探るのはやめて下さいよ。レベハラですよ」


「あーメンゴ、メンゴ」


レベハラことレベルハラスメント。

冒険者間で高レベルのベテランがルーキーにマウントをとたり狩ったりする事態が横行したため、冒険者間でいつの間にかできていた必要もないのに無闇に相手のレベルを探ってはいけないという慣習だ。

俺の場合はレベル999でおそらく国内最高。

なのでいらぬマウントで生じるトラブルを予見して今回は盾にさせてもらった。


「それにしてもあの暴漢異様に早くない?」


「逃亡用のダンジョンアイテムを使ってるみたいですね。一定時間追いかけてくる相手から必ず逃げられるアイテムが多いので距離が縮むまでひたすら追いかけるしかないんじゃないですかね」


「そんなアイテムあるんだ。知らなかった。効果が切れるまで持久走かあ。あ、あの建物──」


冒険者時代はソロだったので長いこと使う機会のなかったダンジョンアイテム知識を開陳すると、暴漢が向かう先にある建物を指して声を上げた。

確かにダンジョン内の建築物は珍しいがそこまで驚くことか。


「──ダンジョンヤクザ事務所だ!」


「ダンジョン、ヤクザ事務所……」


思わぬ言葉に絶句する。

暴対法で地上から消滅したと思われていたヤクザ事務所がダンジョン内で生きながらえていたとでも言うのか。


「ポリ公のカチコミじゃあ!!」


ビンゴというばかりに窓からいかにもカタギじゃなさそうなパンチパーマの男たちが顔を覗かせ始めた。

気づくのが早いので暴漢が伝えたのだろう。


「すごいよ! リアルヤクザだ!」


「ポリ公どもが! ここはダンジョンじゃい! 暴対法がなんぼのもんじゃい!」


滅多に見られない本物のヤクザに田所さんが歓声を上げると気色ばんだヤクザたちが魔法と銃を撃ち始めた。


「すごい!! 抗争勃発だよ!! Vシネマだよ!!」


そんな能天気なことを言いながら田所さんが飛んでくる魔法や銃弾を避けつつ、ヤクザ事務所の入り口に向かう。

興奮しつつも攻撃の手が届かない場所に即座に移動するのは流石だ。


「抗争の相手が俺たちじゃなきゃ面白かったんですけどね。とりあえず事務所ごと公務執行妨害で逮捕しなきゃ。……開けろ! ダンジョン警察だ!」


ともに移動すると暴漢ともども現行犯逮捕するために扉を叩く。

素直に開ければ罪も軽くなるが暴対法から逃れるためにダンジョンに移るような連中だ。

期待は薄いだろう。


「ダンジョン警察がなんぼのもんじゃい! ダンジョンではわしらダンジョンヤクザがルールなんじゃい!」


「指示に従う意思なし。突入!」


やはりというか、真っ向から反発してきたので扉をタックルで破壊すると中に突入していく。


「ふ!」


「ぎゃあああああああ!」


「割とパワフルだね大石くん。バリバリの戦士タイプでしょ。頑丈そうだし、これしてもいいよね」


入り口の近くにいるヤクザをグーパンで伸すと田所さんがそう言って魔法を発動させ始めた。

一人でに天井が崩落して、ヤクザと銃やら家具やら天井の破片が落ちてくる。

危険なことこの上ないが瓦礫で負傷するほど柔ではないので効率的ではある。


「まとめていくよ」


「なんじゃこりゃ天変地異か!? ぐえええええええ!」


田所さんが魔法で周囲の瓦礫を操ってヤクザたちにぶつけてどんどん片付けていく。

ヤクザたちは素人に毛が生えた程度のようで何が起きているかもわからずに戦闘不能になっていく。


「こんなの痛くも痒くもねえぜ!! 俺は無敵だ!!」


これで片付いたかと思うと赤い巨漢が落ちてきた。

声からして先ほどの暴漢だ。

事務所の人間を盾にしている間にダンジョンアイテムを使ってドーピングしたようだ。


「死に晒せ!! ポリ公!!」


完全にハイになっているようで拳を振りかぶってそのまま落ちてくる。

どさくさに紛れて遠くに逃げられる方が厄介だったので向こうからきてくれるのなら願ったり叶ったりだ。

避けると田所さんに当たりそうなので真っ向から拳をぶつけて相殺することにする。


「ぎゃああああああ!!」


暴漢の拳を殴ると拮抗することもなく、暴漢は地面を錐揉み回転すると昏倒した。

ドーピングしていたが実力差は埋まってなかったようであっさり片付いてしまった。

拍子抜けだがこれで一件落着だしいいか。


「暴漢確保完了」


トラブルはあったがなんとか初仕事での出動は乗り越えられた。


「交番に戻りましょうか。二人じゃ全員運べないし」


こうして交番に戻り、応援を読んだ後、後片付けでヤクザたちを連行すると俺のダンジョン警察として初出勤した長い一日は終えられた。












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