常勝無敗10
遺跡の最奥に到達する。
手前の床に無数の召喚陣が展開され数十人の術者が妖魔達を生み出している。
金色の巨人が広間に入り妖魔を吹き飛ばし召喚陣を霧散させて行くと術師達は我先に逃げ出して行く。
だが、そんな些末なものより気になるものが
目に飛び込んでくる。
祭壇の上に鉄の磔台があり、そこに常人の倍ほどの巨体を持つ者が貼り付けになっており、掌と足の甲を極太の杭で大の字で磔台に固定されている。
局部のみ申し訳ない程度の布が付いているが、全身傷だらけで骨が見えている部分もあるほどの重傷。
額には二本の大きな角があるが一本は根元近くから無残にもへし折られている。
目は虚ろで薬物を使われているのか泡を吹きながらよだれを垂らしてブツブツと何かを呟いている。
極めつけは、その者が女の特徴を持っている存在だということだ。
体の奥底から煮え滾る血が次々と生まれ、全身を駆け巡り怒りを伝播させる。そして、頭に到達する。
眼前の所業を完全否定する。
太古より脈々と受け継がれた俺の血が叫ぶ!
「許さねぇ!」
自身の魔力回路を構築しつつ、リヒトリーゼの魔力回路を次々と繋いでいく。
「オートパイロットON! リヒトリーゼ、ここの奴らに罪の代償を支払わせてやれ」
俺の叫びに応え、リヒトリーゼの疑似人格が目を覚ます。
「YES、ボス。ヤツラニ、ジゴクヲ、ミセテヤリマス。ボス、Goodlack!」
リヒトリーゼの胸部ハッチが開く。
俺は展開していたダブルキャストで身体強化を重ね掛けし、コクピットから矢のように飛び出した。
この場のスルトタガン兵の中で一番階級の高い豚のような奴目掛けて飛びかかる。逃げ惑っていた豚の両肩を掴み優しく問いかける。
「詳しく聞かせてくれるか?」
豚は喚き散らす。
「うるさい、早くあのデカブツを止めろ。我らの怒りの鉄槌をヴァルグランの馬鹿どもに知らしめるのだ」
ぷっち〜ん、俺のどこかで音がする。
バギリッっと豚の肩を握り潰す。意味不明な悲鳴を上げる豚。俺は、魔術回路で肩の痛みを軽減してやりながらもう一度聞く。
「てめぇらの狙いを聞かせろ」
豚はベラベラと話し出す。
この遺跡には妖魔族の宝具が隠されており、周期的に妖魔王エルクニヒを喚び出す仕組みがあった。
それを見つけた冒険者を偶然捕らえたスルトタガンは、今回の人道に反した妖魔を自在に操る作戦を立案。
喚び出されたエルクニヒを奇襲で捕らえ、薬や拷問で言うことを聞かせて物として扱う。
そこまで聞いて、我慢の限界に達した俺は解放してくれと懇願した豚を出口に向けて限界まで向上した身体能力で投げつけた。
身体の中心部と頭だけ防御をかけて壁にぶち当てたので、それ以外の場所はグシャグシャだな。簡単には死なせない………生きて償わせる。
その間にリヒトリーゼは、対人用の雷撃弾や氷結弾等で術師や士官を捕らえている。
しかし、意識を失わないギリギリに出力を抑えているようで、阿鼻叫喚の叫びがこの空間に響く。リヒトリーゼも分かってるな。
俺は磔台から女を外す。痛々しい手足の杭は血が乾き杭がなかなか抜けないが、薬で意識も痛みもないようなので無理に抜き取る。
血が噴き出すが、まず下に降ろすのを優先し祭壇に座らせる。
そして、虎の子の小瓶を飲ませる。ある依頼で出会ったシェフから貰った俺の切り札。
どんな状態異常も身体も治す普通ではない液体だ。効果は抜群で傷がみるみるうちに治り、欠けた角も元通りになる。
目の焦点が戻り、覚醒した彼女は俺に問いかける。
「お前は敵か?」
懐疑と人間への憎しみ、戸惑いの混じり合った表情と声。俺は慎重に誤解を与えないよう腰の刀を外し自分の前に置き。
「俺は、敵じゃない」
キッパリと宣言し掌を上に向ける。多くの知能ある妖魔が降伏の意味として使うジェスチャーを取る。
彼女は、立ち上がりゆっくりとひざまずく。これは、妖魔の中で感謝を意味するジェスチャーの中でも最上級のものだ。
俺は、彼女を立たせてから頭を下げて謝罪を述べる。
「誇り高き王よ、同族が非道を働いた事を謝らせてほしい。そして、願わくば人族全てが望んだことではないと信じてほしい。」
彼女の返答を待つ。
「人族の偉大な戦士よ頭を上げてくれ。汝に受けた恩を考えれば、その程度の事造作もない」
彼女に向き合い謝辞を述べこう続ける。
「奴らには相応の報いを受けさせる、任せてくれ。所で今晩どうだい?」
俺は素直なんだ。
「面白い、気に入ったぞ。私はシュリストラだ、名を教えてくれ」
シュリストラ、いい名だ。
「俺はガイン。野獣ガインが通り名だ」
シュリストラは、俺を抱き上げ怨嗟の声の上がる広間を悠々と進む。そう、王が歩むが如く。
と、なんか俺………最近女に抱きかかえられてばかりだな…………まっいっか。胸デカくて最高じゃね〜か。




