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第12話 少し動いた世界とある男は物思う

「嘘だろ……ギルドマスターが……。」

「こんなにあっさり……。」

「ありえねぇ……。」


 狼の集いの人達が呆然としながら呟く。 俺はその人達を見ながらスカッとしつつも。 アリアの父親アイウスさんだったかな?に話しかける。


「約束は守ってくださいね?」

「ああ、約束は守ろう。 アリア、聞いてくれ。」

「はい?」

「外は広いし危険だ。 それは分かっているな?」

「はい。」

「世界には様々な危険がある。 モンスターだけではない。 人さらいのような悪い人も居る。 それでもお前は見たいのか?」

「ええ、もちろん。」

「ならば見に行くが良い。 世界は広い。 その世界をよく見てこの村に帰ってこい。」

「お父さん……はい!」


 アリアの父さんが名言っぽいことを言う。 妻にさんざん言われる俺の父親とは段違いだぜ。


「意外といいお父さんだね。」

「レイさん……はい、意外といいお父さんでした!」

「意外とって……。」


 あ、アリアのお父さんはガックリと項垂れているのをアリアのお母さんや村人が励ましている。 中々面白い光景だ。


「じゃあ、もう出発しましょうか。」

「ん? もう行くの?」

「はい、ずっと居たらついついずっと居そうですから。」

『そんなものなの?』

「私には分からないわ~。」

「……意外と淡泊なんですね。 二人とも。」

「まあ、色々あったからね~。」


 いきなり異世界に来てここまで冷静なんだから意外と淡泊なのかもしれないな。 よく思ったら元居た世界はどうなっているのだろうか? 「衝撃!オンラインゲームで死んだ!?」って感じにニュースになってたらやだなぁ……。


「レイさん?」

「あ、う~んじゃあ行こうか。」

『おー。』

「アリアちゃんと帰ってくるんだぞ。」

「はい!お父さん行ってきます!」

「ああ、行ってらっしゃい。」


 親と子の感動の場面であるが、くぅーっと言う小さな音が俺の腹から聞こえてきた。


「あ、昼食を食べてから行こう。」

「何かと台無しですね……。」


 食事は大事だよ!


視点変更 レイ→レオーナ


 ハイナ教国で出来た魔法で瞬間移動の魔法が最近オルアナ王国に普及してきて比較的短時間で移動が可能になった。 その分魔力を大量に消費してしまうため首都からルーブの町までに魔法使い6人分の魔力が必要という弱点もあるが便利な魔法だ。

 町に戻ってからは騎士達によるモンスターの捜索が続いている。 もう三日はたっているが何処にもいない。 今ここ国境で待機している騎士達は皆疲れが出始めている。


「団長……やっぱり王を説得して捜索を打ち切った方が……。」

「だが王は一度言い始めたら止まらないからな。」

「ああ、かなり困るな……。」


 正直王の命令なので断ることが出来ないし、あの王は他人の意見を全然聞かない。 それでも部下からは愚痴の内容は大体こんな感じだ。 私も打ち切った方が良いとは思う。 町や村がペガサスに襲われたという報告は受けていないし、伝説のモンスターに騎士だけで勝てるとわ全然思わない。 つまり様子見がいいという感じだ。


「とりあえず王が招集するまでずっとこれだろうな。」

「そんな~団長~。」

「仕方が無いだろう……。 あの王は種族に対しては平等だが地位に関しては差別をする人だ騎士団長だって自分の駒としか考えていない。」

「やっぱ前代の王のほうがマシだな~。」

「……そこは同意しよう。」


 前代……つまり三代目の王様は種族の差別が少なからずあったオルアナ王国を一代だけで差別を大きく減らした王だった。 ドワーフが宿屋に泊まろうとしたところヒューマンであった宿屋の主が泊まるのを断ったという事件を王様が耳にしたとき王様自らが宿屋に行き宿屋の主を捕らえ牢屋に送りにしたというのは有名な話だ。 それ以外にもオルアナ王国の為に活躍した人は種族が何であれ褒め称え、報酬を渡し、人によってはエルフだろうとドワーフだろうと貴族の地位を渡したというのもある。

 三代目の王は自分の事よりもオルアナ王国の国民の為に政治をした偉大な王だったと言われ四代目の王とはよく比べられる。


「だ、団長!?」

「何だ!?」


 通信兵の騎士が急いで私に話しかけてきた。 その様子からなにやら大変な事が起きたことは明白だが何だろうか。


「ヴェ、ヴェルズ帝国が宣戦布告をしてきました!」

「何!?」


 宣戦布告……つまりオルアナ王国とヴェルズ帝国が戦争をするということ。 


「団長は急いで首都に戻って作戦会議をし、他の部隊はモンスターの捜索に当たれとのこと。」

「モンスターとのことまだ諦めてないのかよ……。」


 部下の一人が呟く。


「まあそういうな。 私は転送魔法を使って首都に行く。 ここのことは頼む。」

「了解しました。」


 俺は急ぎ足で転送魔法専用の部屋に向かった。


視点変更 レオーナ→彰


 アイツが行方不明になって五日がたった。 五日前、午前九時頃アイツの母親が中々起きてこないので見に行ったらいつのまにか居なかったらしい。 アイツの妹曰く午前一時頃お手洗いに行ったときは部屋から明かりが見えたらしい。 俺も「マジック・テイル」でアイツと午前二時頃まで一緒にクエストを受けていたので知っている。 

 

 アイツとは中学二年の頃からの友人だった。 中学二年の頃にアイツを誘ってβテストを受けたMMORPG。 それが「マジック・テイル」だった。 アイツはMMORPGをやったのは初めてだったらしいがアイツはドップリハマった。 アイツはあの頃クラスメイトの男子からのイジメに悩んでいたので「気持ちを切り替えるのにやったら?」と俺は誘ったのだ。 

 

 まあ、なんだかんだと言ったがハッキリ言うとアイツは何処に行っだろうか不思議に思う。 こうやって冷静に思ってはいるが、いつもはもっと馬鹿やっている男だ。 高校のクラスメイトからはアイツがいなくなったからと分かっていて気を遣ってくれている。 本当に何処にいってしまったのだろうか。 ちまたの噂では「マジック・テイル」の異世界に行ったなどとも言われている。 色々と考えつつも教室の窓から空を眺めて思う。




 アイツ……白崎 陸は何処に行ったのだろうか?


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[一言] レオーナさん····
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