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犬猿アイドル百合営業中  作者: 三色ライト
2章 1周年記念ライブ編

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87話 花園トーク

 いそいそとお花摘みを終わらせ、洗面台で前髪を整えるフリをしてりんごちゃんが出てくるのを待った。まぁ……豊田スタジアム内部のトイレだから、滅多に人なんて来ないと思うけど。


 少し待っていたら狙い通りりんごちゃんが出てきてくれた。よし、私を警戒していたってことは無さそうだな。


「や、やぁ」

「……? どうも」


 相変わらず私にはわりとハキハキと話してくれるみたいだ。ちょっとだけそれが嬉しかったりもする。


「あのさ、りんごちゃん……今日のライブ、どうするつもり?」

「どうもこうも、いつも通りやるだけです」


 思ったよりも即答で返してきた。もっと悩んだりしているものだと思っていたけれど……もうりんごちゃんの中では固まっているんだな。

 それを尊重するべきだというのは分かっている。でも、それでも! 私はりんごちゃんに全力を出してもらいたい。見たのはあの1曲だけだけど、それでもトップアイドルの力を見た! それを無駄にするのは、頂を目指す者としては納得できない。


「りんごちゃん、全力を見せてくれないかな。そうしたらきっと薫も納得してくれると思うし、何よりフルーツパフェのメンバーもきっと喜んで……」

「そんなわけないです!!!」


 突然の大声にビクッと体が震えた。


「大きな力を前にすると、人は喜びではなく恐怖を覚えるんです! もう嫌……私の居場所がなくなるのは、もう嫌……」


 突然りんごちゃんは泣き出して、あろうことかトイレの床に膝をついてしまった。

 頭の悪い私でも、だいたい今の言葉で過去、りんごちゃんに何があったのかを推測できた。そしてなぜ全力を尽くさないのかも。

 要するに、怖いんだよな。自分の全力を知られてフルーツパフェのみんなに離れられるのが。


 それを聞いて私は……安心した。


「……教えてあげるよりんごちゃん。大きな力には恐怖を覚えるかもしれないけど、それ以上に……ワクワクするってことをね」

「ッ! そんなわけありません! 現に私は……」


 何かを言い続けようとしたりんごちゃんの口を塞ぐ。今必要なのはりんごちゃんの過去を聞くことじゃない。これからのライブ、そして、これからのりんごちゃんを考えることだ。


 ……悪いな薫。少しだけ迷惑かけるかもしれないけど許してくれよな。

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