84話 厳しいレッスン
合同レッスン。揉める種となりそうなものだが、頭痛より先にワクワクがやってきた。
なぜなら……今日は第一レッスン室で、しかもトレーナー付きでレッスンができるからだ!
「ビシバシいくわよ! 早く着替える!」
「「「「「は、はい!」」」」」
黒髪短髪にピンクゴールドのピアス。いかにも怖そうな女性トレーナーが私たちを待ち構えていた。
急いで着替えると仁王立ちのトレーナーの前に横一列で並ばせられた。
「アンタらはアップるより下。だから期待なんかしてないけどとりあえず踊ってみなさい」
そう言って曲名すら教えてくれずに音楽を再生した。幸い知っている曲だったからいいけど、知らない曲だったら大惨事だ。
私と薫はいつも通り、冷静にダンスをこなしていく。問題は……横目に映るフルーツパフェだ。
「そこのオレンジ! 走りすぎだ! そこのデカ乳はキレがない! ピンクはやる気あるのか! 赤は踊る気くらい見せろ!」
そんなフルーツパフェに対してトレーナーから熱い檄が飛んだ。いや、絶え間なく飛び続けている。
りんごちゃん、やっぱり本気で踊る気は無いんだな。その気になればアップるすら凌げる力を持っているのに。
アイドルオタクの私としても、トップアイドルを目指す私としても、もったいないと感じる。
「おい黄色いの! 集中が切れているぞ」
「は、はい!」
りんごちゃんのことを気にするほどの余裕はなかった!
私だって新曲の振り付けを覚えなきゃいけないし、まだまだ伸ばすべき基礎はある。
トップアイドルどころか、中堅の中でも細分化すればまだ中の中くらいだ。
だから……私も自分のことに集中する!
「ほう……」
トレーナーが初めて他人を認めるような声を漏らした。それが私に向けられたものなのかはわからない。でも……私に向けられ続けるようになることが、トップになることなんだ!
〜2時間後〜
「今日はここまでだ。基礎は叩き込んだが、復習はするように。特にフルーツパフェ共。明日からは連携の練習をする。今日はまだ楽だったと思えるようなものにしてやるから覚悟しておくんだな」
トレーナーが残した言葉に反応できるほどの体力が残っている者は誰としていなかった。みんなレッスン室の床で真夏の猫のように伸びきっている。
「うへぇ……疲れた___:(´ཀ`」 ∠)」
いちごが涙半分に声を漏らす。みんなそれに対して無言の同意をした。
この瞬間、初めてフルーツパフェとfelizが分かり合えた。そんな気がした。




