74話 地元の後押し
「えっ……なんで」
突如ステージに上がってマイクパフォーマンスで観客に呼びかける味噌っ子のリーダーちゃん。その唐突さに呆気に取られてしまう。
灰色の少女はマイクの電源をオフにして、私にそっと微笑みかけてきた。
「勝手なことをしてしまい、申し訳ありません。でも私、どうしても明日香さんと薫さんの魅力を、地元名古屋の人たちにわかってもらいたかったんです!」
「い、いや大丈夫というか、むしろありがたいくらいなんだけど」
でもなんでここまでのことをしてくれたんだろう。私たちを憧れって言ってたよな。テレビとかにコンスタントに出られているわけじゃないのに、どうしてファンになってくれたんだろう……
「あの、もしかして気がついていません?」
「えっ?」
「ごめんね、明日香は鈍いんだ。明日香、この子の顔をよく見てごらん」
薫が何か引っかかることを言った気もするが、とりあえず今は薫に従って顔をよく見てみることにした。
凝視すると顔を少し赤らめる灰色ちゃん。……ん? この顔、どこかで……
「あーー!! 串カツ屋の!」
私の行きつけの串カツ屋さんの娘さんだ!
「はい。毎度ご来店ありがとうございます」
「でもなんで串カツ屋さんの子がここに?」
「地元は名古屋なんです。両親が串カツ屋を東京に開くからついて行ったのですが、こうしてライブがある日は戻ってきているんですよ」
なるほど……アイドルにも色々あるんだな。
そしてあの日串カツ屋で気になった視線はこの子のものだったのか。ファンなのかな〜? なんて思っていたけど、まさか同業者のファンだったとは。
味噌っ子ちゃん効果もあってか、広場に多くの観客がまた集い始めた。さっきまで私たちに懐疑的な目を向けていた人たちも、味噌っ子リーダーちゃんの一声であっさりと向ける視線が温かいものになった。身内に甘すぎるだろ!
「正直助かったよ。ありがとう……でも、ここからは私たちの仕事だ」
「そうだな。ここで観客を虜にできるかどうかは私たち次第だ!」
公平にジャッジしてくれる舞台は味噌っ子リーダーちゃんが整えてくれた。ここから先、本当のファンになってくれるかどうかは私次第だ!
「あ、あの。頑張ってください! 私、felizさんみたいになりたいですから、カッコいいところ、見せてください!」
「うん! そうだ、ライブ後残ってくれる? 少しお話ししたいし」
「は、はい!」
味噌っ子リーダーちゃんがステージから降り、私たちのライブは再開した。
さっきまでとは人が変わったように観客も盛り上がりを見せてくれる。敵意がなくなれば名古屋のアイドルファンは心強いもので、最高の後押しが生まれた。
紆余曲折を経て、結果的にミニライブは大成功に終わった。最後に豊田スタジアムでの1周年ライブの告知をすると何故か大盛り上がり。まだまだ名古屋の人の琴線はわからないな。




