66話 feliz、名古屋へ
「おはよう! さぁ、愛知へ出発よ!」
朝一番、マネージャーのやけに高いテンションに驚かされる。失礼だが、愛知に行くってそんなにワクワクするか?
流れるように新幹線に乗り、2時間経たないくらいで名古屋駅へと到着した。
初めてだな……名古屋駅を通過せずに目的地とするのは。
「う〜〜ん、懐かし〜! 帰ってきたって感じがするわね」
……ん? なんかマネージャーの言葉に引っ掛かりがあるぞ?
「マネージャー、もしかしてマネージャーの出身って……」
「言ってなかった? 名古屋よ」
「マジ!? ってことは今回のライブが愛知に決まったのもマネージャーの意向かよ!」
「い、いや! 別にそんなことはないわよ? 箱を探していたところにたまたま愛知でいいところが見つかったから応募しただけで……」
本当かな……すごく私情を感じるんだが。
薫とアイコンタクトをして、もうこれ以上の追求はやめておこうということになった。たぶん、何も生まないしな。
「それで? なぜ突然ここに来ることにしたんだい?」
ふぅ、と軽いため息を吐いてから薫はマネージャーに核心を尋ねた。そう、私たちはなんの説明もなしに愛知に連れてこられたんだ。理由くらい話して欲しいぞ、流石に。
「あー……ここじゃなんだからお昼、食べながらにしましょうか」
話し合いをするためのお昼ご飯だから、てっきり個室のお店に入るかと思ったら……
「なんでラーメン屋なんだよ! しかもフードコート!」
「な、名古屋といえばスガ○ヤラーメンでしょ!?」
いや知らんけど。
とりあえずやたらに黄色? 白? なスープのラーメンが登場した。味は……美味いんかい。
「で? そろそろ話してもらおうか?」
「せ、急かさないでよ。せっかく懐かしい味に浸ってたのに」
やっぱり私情じゃねぇか!
「まぁ正直に話すとね、ヤバいのよ」
「……何が?」
「この前、チケットの販売が始まったんだけど、売り上げがね。私の見積もりミスだわ。もっと愛知にもたくさんファンがいるのかと思っていたけど、そういえば名古屋は元から地下アイドルの聖地。felizみたいな中堅アイドルより、元から支えてきた地元のアイドルを応援し続けるのは当然だったわね」
おいおいマジかよ。44000の箱でも埋めることは可能だって話だったのに!
「なるほど、そこで愛知に足を運ばせたわけか」
薫はすぐに今回の真意を察知したようだけど、私にはまだ掴めていない。
「どういうことだ?」
「要するに、愛知県民のファンを増やそうということだろう? きっと、その手段は……」
「えぇ、もちろん……百合営業よ」




