公式イベント終了
塾長とその仲間達が入手してくれた、大量のプロリフィックオストリッチの卵。
その一つを寸胴鍋で茹で卵にした。
殻を壊す際、ちょっとぶつけた程度では壊れなさそうだから鍛冶職のプレイヤーから金槌を借りてこようとしたら、イクトが右手を鎌に変えて殻ごと横一閃で切ったなんて一幕はあったけど茹で卵は完成。
無論、何も言わずに鎌を振ったイクトにはしっかり注意をしておいた。
その間に茹で卵は切断面を上にして並べられ、その切断面には崩れも無く綺麗に切れてる。
「下手な包丁より切れ味がいいな、あの鎌」
誰かの呟きに心の中で同意しつつ、白身と固ゆで状態の黄身をじっと観察。
表示された情報に火に強いとあったけど、中にはちゃんと熱が通っている。
つまり殻が火に強くて焦げにくいというだけで、熱そのものは中へ伝わるってことか。
それから皆で協力して殻を剥がしたら切って皿に取り分け、軽く塩を振って試食する。
『美味っ!?』
この場にいる全員が思わず声を揃えてしまうほど美味い。
これまで食べてきた卵とは比較にならない味わいで、白身と黄身を別々に食べるのは勿論、白身と黄身を一緒に食べても美味い。
しかも卵特有のまろやかさがあるから、これだけの旨味でも他の食材と合わせられそうだ。
個人的には固ゆでより半熟の方が好みだけど、こんなに美味いなら茹で方なんて気にならない。
イクトなんて目と口を強く閉じて笑みを浮かべ、両手で頬を挟みこんで押さえながらバタバタ地団駄を踏んで、額の触覚がギュインギュイン動いてる。
「ますたぁ! ほっぺ、ほっぺおちちゃう!」
目と口を開けたイクトはそう主張しながら、両手で頬を挟むようにしてギューッと押さえつけてる。
あのな、それは表現方法の一種であって物理的に頬が落ちるわけじゃないんだぞ。
だからそんな、顔が潰れそうなほどギューッてするな。
「まさか最後の最後で、こんな食材が手に入るなんて思わなかったわ」
「イベント中に入手した物は、金や一部を除いて終了時に破棄されるんだろ? 持って帰れないのが惜しいぜ」
激しく同意する。
とはいえ、こんなに美味い食材を入手してくれた塾長達には感謝だな。
「料理長、これで何を作ります?」
こんなに美味い卵だから、作りたい料理が次々に浮かぶ。
それらを全て伝え、皆が作りたい料理も聞いて話し合った結果、肉とホウレンソウと卵の炒め物、かきたま汁、卵麺の焼きそば、そしてデザート一品に決定した。
さあ、これだけの品を作るんだから今すぐ皆で調理に当たろう。
それと手伝いがしたいって目で訴えてくるイクトには、卵を割るのに協力してもらうからな。
ただし、生卵を割るからさっきみたいに真っ二つに切らずに、鎌の先端でコンコンってやって穴を開けるくらいで頼む。
*****
鉄板の上で狼のバラ肉の薄切りと刻んだホウレンソウを炒め、そこへ溶いたプロリフィックオストリッチの卵を加えて炒める。
徐々に卵が固まってきたら塩を振って、狼肉とホウレンソウと卵の炒め物が完成した。
狼肉とホウレンソウと卵の炒め物 調理者:多数〈選択で全員表示〉
レア度:3 品質:5 完成度:78
効果:満腹度回復21%
俊敏+3【1時間】
味の主役は狼のバラ肉でなく、プロリフィックオストリッチの卵
強いながらもまろやかな卵の旨味が全体を底上げしてる
狼肉とホウレンソウの味も一緒に食べればより美味
味見もクリア。
これを鉄板から皿へ盛ったら、まだ残ってる炒め物の材料で調理を続ける。
その隣のかまどではジャガイモとやカブやナスといった野菜の他、出汁であり具材にもなる食用のキノコ類やニンジンやトマトといった野菜を乾燥させた物が寸胴鍋で煮込まれ、最後に溶き卵が加えられてる。
あとは卵がある程度固まって塩で味付けすれば、かきたま汁の完成だな。
「ますたぁ、そろそろきじのばしてだって」
「分かった。バーベキュー、炒め物は頼んだぞ」
「合点承知!」
伝言係のイクトに呼ばれたから炒め物の指揮をバーベキューに任せ、作業台で野菜と蛇肉を切ってる焼きそば班に合流。
これまでは小麦粉と水と塩で作ってきた生地だけど、今回はそれにプロリフィックオストリッチの卵を加えた。
しばらく寝かせておいたその生地を棒で伸ばし、折り畳んだら細切りにして卵麺とする。
「鉄板が空いたら、焼きそばにかかるぞ」
『はい!』
「トーマさん、スープができました。味見をして問題ありませんでしたが、念のため味見お願いします」
伸ばした生地を折り畳んでると、お椀を手にしたまーふぃんから声が掛かった。
「分かった。これは頼む」
「分かりました!」
折り畳んだ生地の切り分けを頼み、まーふぃんからスープをよそったお椀とスプーンを受け取る。
野菜たっぷりかきたま汁 調理者:多数〈選択で全員表示〉
レア度:3 品質:5 完成度:71
効果:満腹度回復3% 給水度回復16%
乾燥キノコと乾燥野菜が出汁であり具材にもなってるスープ
そこへ加えられた溶き卵がスープにまろやかさを与える
たっぷりの野菜と卵で栄養満点、元気十倍!
ん、塩加減も味も問題無し。
具材のトマトとニンジンとタマネギとジャガイモとカブとナスと食用のキノコ類、そして卵もしっかり火が通って味も染みてバッチリだ。
「ますたぁ、いくとにもちょーだい」
「ん、いいぞ」
残った分をイクトにやったら、それはもう美味そうに食べてる。
「おいしい!」
「聞いての通りだ。良い出来だから、この調子で頼む」
「分かりました。でも、バフ効果が付かなかったのは残念です」
「あまりそこに拘るな。大事なのはバフ効果の有無じゃなくて、美味いことだぞ」
料理にとって何よりも大事な芯はそこだからな。
それを外すくらいなら、バフ効果なんて無くていい。
「そうでした。そうですよね、美味しくなくちゃ話になりませんよね」
「分かったら続きにかかれ。まだまだ作らなくちゃならないんだぞ」
「はい!」
調理へ戻るまーふぃんを見送り、次の生地を伸ばす。
そうして鉄板が空いたら焼きそばを作るため、油を敷いた鉄板で蛇肉を炒める。
「じゅ、じゅわー、じゅじゅー♪」
また変な歌を歌い出したイクトに苦笑しつつ、細切りにしたニンジンとタマネギ、スープに使ったカブの葉の部分、そして卵麺を火が通りにくい順に加える。
これらをしっかり炒めて塩で味付けしたら卵麺の焼きそばが完成だ。
卵入り麺の焼きそば 調理者:多数〈選択で全員表示〉
レア度:3 品質:6 完成度:76
効果:満腹度回復20%
器用+3【1時間】
プロリフィックオストリッチの卵を加えた麺で作った焼きそば
卵の味が強く、普通の麺とは違った味と食感と風味が楽しめる
かといって全体の味を損ねてないので、肉と野菜の味わいも楽しめる
うん、味も食感も良し。
説明の通り、使った卵の味が強いから味と食感と風味が知ってる卵麺とひと味違う。
かといって肉と野菜が単なる添え物になってないから、焼きそばという料理そのものが美味い。
さて、後ろから覗き込みながら表情で食べたいって訴えてるイクトにも、味見をさせてやろう。
「ほい、イクトも味見してみろ」
「ありがと!」
味見用に皿へ取った焼きそばとフォークを渡し、後ろから麺をすする音と嬉しそうな声を聞きながら焼きそばを皿へ盛っていく。
「ますたぁ、おいしい!」
「そうか、良かったな」
後ろを向いてイクトに返事しつつ、焼きそばを次の皿へ盛る。
晩飯の時間が迫ってるし、この調子でガンガン作っていこう。
特に今回は最後の食事ってことでデザートも作るから、手早くやっていかないと。
ただし味は落とさず、作る度に味がバラつかないよう注意してな。
そうして料理プレイヤー総動員で作った最後の食事を振る舞う時間がやってきた。
「焼きそばに炒め物にかきたま汁って!」
「これもう中華屋のセットメニューだろ」
「塾長が手に入れてきたっていう卵、メッチャ美味いな!?」
「はわわっ、イクト君にどーぞされちゃった」
「ぬははははっ! どれも実に美味いのである!」
配膳された料理のラインナップや味に驚いてるようだけど、まだまだだぞ。
「料理長、そろそろ」
ダルク達とイクトと一緒に飯を食べてたら、料理プレイヤーの一人が呼びにきてくれた。
だな、そろそろデザートのお披露目だな。
「分かった。イクト、食べ終わったのならちょっと手伝ってくれ」
「おてつだい? する!」
隣で皿とお椀を空にして、満足そうに腹をポンポンと叩いてるイクトが大きく手を挙げる。
なんだろうと首を傾げるダルク達を残し、イクトと手を繋いで調理場へ。
料理プレイヤー全員が集まったら、デザート作りの開始だ。
「イクト、卵に穴を開けていってくれ。さっきまでのようにな」
「わかった。すらっしゅも~ど!」
右手を鎌に変えたイクトがプロリフィックオストリッチの卵を鎌の先端で軽く叩き、穴を開ける。
その穴を二人がかりで大きくしたら、中身をボウルに出して黄身を皿ですくって別のボウルへ移す。
通常は割った殻を使って黄身と白身を分けたり、スプーンで黄身を取ったりするんだけど、この卵だとそのどちらも難しいからスプーンじゃなくて皿で黄身を取っていく。
複数のボウルへ黄身と白身を別々に集めたら、卵黄の方には砂糖を加えて泡立てる。
泡だて器が無いからお玉で混ぜ、泡立ったら卵黄の方へ少量の水を加えて全体が黄色くなるまで混ぜ、黄色くなってきたら小麦粉と白身を泡立てたメレンゲを加え、最後にざっくり混ぜて生地が完成。
「鉄板は?」
「準備万端です」
「一番から六番まで、全て弱火で調整済みだぜ」
「ありがとな。よし、焼くぞ」
鉄板に油を薄く敷いてフライ返しで広げたら、ここへ生地を流して焼く。
生地が焼けてくると甘い香りが漂い出し、イクトの表情が蕩けていく。
「ますたぁ、あまくていいにおい」
イクトは虫だから、甘い匂いには弱いのかな。
表情の蕩け具合が相当なものだから、たぶんそうなんだろう。
「なんだ、この香り」
「甘い香りがするわ」
「調理場からだぞ」
漂う甘い香りにプレイヤー達が様子を窺いにきた。
そんな彼らの前で、焼けて固まってきた生地をフライ返し二刀流でひっくり返す。
「なんか作ってる!?」
「この甘い香り、まさかホットケーキ!?」
「いや、パンケーキじゃないか?」
「どっちでもいいわよ! とにかく甘い物が作られてることが大事よ!」
そういえばホットケーキとパンケーキの、明確な区別の付け方はどこでするんだろう。
なにぶん専門外だから、あまりよく知らないんだよな。
確か天海が甘い物作りが好きだから、機会があれば聞いてみよう。
「トーマ君! それは、それはなんなの!?」
おおう、さすが甘い物好きなカグラ。
鉄板越しに身を乗り出して、目を見開いて迫ってきた。
デカくて揺れてる胸が鉄板に触れそうだから、注意してくれ。
「パンケーキ、かな? クリームとかハチミツとか甘いソースどころか、バターも無いけど」
「甘ければそれでいいわ!」
カグラの発言に、甘い物好きと思われる多くの男女がうんうんと頷く。
おっと、そろそろひっくり返さないと。
ひっくり返すと反対側も見事に焼けている。
そうして焼いていったら中の状態を確認するため、一つをフライ返しで押さえて包丁で切る。
本当なら串を刺して確認するんだけど、串が無いし味見の必要はあるから切らせてもらう。
……よし、中まで火が通ってる。
そして切り分けた半分を味見として食べる。
『あぁ~』
甘い物好き達から悲鳴に似た声がするけど、味見もせずに出すことはできない。
肝心の味見は文句無し。
少し甘さは控えめだけど、卵の旨味がしっかりしてるパンケーキの完成だ。
パンケーキ 調理者:多数〈選択で全員表示〉
レア度:1 品質:5 完成度:77
効果:満腹度回復10%
運+1【1時間】
プロリフィックオストリッチの卵を使ったパンケーキ
シンプルかつ素朴な甘さと卵の旨味が見事な共演
ホットケーキとどこが違うか? 実は厳密な定義や区別はありません
えっ、そうなんだ。
ホットケーキとパンケーキに厳密な定義や区別は無いんだ。
「トーマ君! できたのなら早くちょうだい!」
おっと、そうだな。
情報より先に皆へ配らないと。
「よし、順番に並んでくれ。皆も焼けたら配ってくれ」
『はい!』
パンケーキ作りに当たってる料理プレイヤー達にも呼びかけ、列を成すプレイヤー達へ皿に乗せたパンケーキを手渡す。
足早に席へ戻る人もいれば、我慢できずに列から離れたら素手で食べる人もいる。
「あまくておいしぃ~」
味見用に切ったやつの残り半分をあげたイクトが、心底幸せそうに食べてる。
そしてそれはパンケーキを受け取ったプレイヤー達、主に甘い物好きな面々も同じ。
至福の時を過ごしてるかのような表情を浮かべてパンケーキを食べてる。
「遂に、遂にこのゲームの中で甘味が食べられたわ」
「できればもっと甘い方がいいけど、作ってもらったんだから贅沢は言えないわね」
「いやいや、卵の旨味があるからこれはこれでありだろ」
「トーマ君! おかわり!」
もう食ったのかよ、カグラ。
「おかわりは無いぞ。卵の量の関係でな」
「そんなっ!」
表情だけでなく全身で絶望感を表現したカグラが崩れ落ちる。
「ますたぁ、おねえちゃんどうしたの? おなかいたいの?」
「気にしないでいいんだぞ。ほらイクト、お前の分だ」
「わーい」
さっきの試食の余りとは別にイクトの分を乗せた皿を渡すと、満面の笑みで美味そうに食べだす。
カグラ、そんなに羨ましそうな顔しても駄目だし、こっちを見てお願いって無言の圧力を掛けても駄目だぞ。
仲間だからって贔屓せず、皆へ平等に分けるんだ。
「トーマ君! 今なら現実で一回デートしてあげるから、もう一枚お願い!」
「駄目」
祖父ちゃんや父さんが常連だからって特別扱いしないのと同じで、知り合いだからって特別扱いはしない。
そういうのは一度やり出したらキリがないからっていう、祖父ちゃんと父さんからのありがたい教えだ。
「うぅ~。もっとゆっくり食べればよかった」
いまさら落ち込んでも後悔先に立たず。
恨むなら数分前の自分を恨むんだな。
その後、ゆっくり食べてるダルク達へ強請るカグラに苦笑したり後片付けをしたりしていると、残り一時間でイベントが終了しますというメッセージが運営から届いた。
すると何人かのプレイヤー達が、貢献度を稼ぐ最後の追い込みだと夜の狩りに駆けていく。
これに負けじと追い込みへ向かう多くのプレイヤー達を見送りつつ、ダルク達と膝の上に座るイクトとイベントの余韻に浸りながら雑談をする。
途中からポッコロやゆーららんやルフフン達も加わって雑談をしてると、塾長がやって来た。
なんでも午後の活動中に倒したモンスター、ブッチギレッサーパンダっていう怒り狂った巨大なレッサーパンダを倒して入手したっていう装備品を、自分達には色々な意味でキツイからイクトにくれるらしい。
「いいんですか?」
「わしらには不要ゆえ、構わないのである。せっかくの珍しい品を、捨てたり売ったりするのも勿体ないであるからな」
色々とキツイってどういうことかと情報を確認する。
コスプレッサーパンダカチューシャ
レア度:6 品質:5 耐久値:230
ブッチギレッサーパンダを倒すとそれなりの確率でドロップする装備品
レッサーパンダの耳が付いたカチューシャ
見た目が可愛くなる以外、何の効果も無い記念品のような物
確かにこれは塾長達には不要だな。
何の効果も無いんじゃ戦闘に役立たないし、成人男性しかいない塾長達がこれを付けた姿はあまり想像したくない。
試しにイクトに装備させるため、ダルク達にやり方を教わって頭の所に装備する。
「わー!」
レッサーパンダの耳が付いたカチューシャを装備したイクトは大喜びで、触覚がギュンギュン動く。
しかも装備した人の感情に連動してるのか、中身は生地のはずなのに耳がパタパタ動いてる。
「おぉ、可愛いじゃん」
「うふふ。そうね、イクト君可愛いわね」
「これ、絶対にファンができるやつ」
「もうできてるわよ」
メェナの言う通り、レッサーパンダの耳を付けたイクトを見てメロメロになってる男女が大勢いるから、既にファンができてるだろう。
当の本人はそんなことに気づかず、上機嫌に引っ付いてきて似合うかと尋ねてきてる。
「ああ、似合うぞ」
「にへへ~」
嬉しさで額の触覚がグイングイン動き、頭上の耳がピコピコ動きながら両手を頬に添えてクネクネする。
その姿に早速できたファン達が雄叫びを上げてる。
塾長は腕を組んで大笑いしてるけど、あなたはとんでもないものを生み出したかもしれませんよ?
それからイクトとダルク達と少し話し合い、部分変態では頭に変化が無いことを理由にカチューシャはありがたく貰うことにした。
正直インセクトヒューマンにレッサーパンダの耳はどうかと思ったものの、本人が気に入ってるから気にしないことにする。
仲間の下へ戻る塾長へお礼を言って見送り、また膝の上に座ったイクトを支えながら雑談を再開。
やがて残り十分になると、フルクスがブライアンを伴ってやってきた。
「皆さん、この三日間ありがとうございました。お陰様で少しですが開拓や周辺の調査、野営地の整備が進みました。特に土地神様の件では大変にお世話になったことを、改めてお礼申し上げます」
このタイミングでお礼を言われるってことは、終了が近づいたから感謝を述べてるようなものかな。
お礼の言葉は五分ほど続き、最後にフルクスだけでなく彼の部下からも頭を下げられてのお礼を言われた。
それから五分、公式イベントが終了してフルクス達に見送られて視界が暗転する。
次に視界が開けると、そこはボクシングかプロレスをするリングが中央にあるすり鉢状の会場だった。
俺達プレイヤーはすり鉢状の観客席にいて、リング上には誰もいない。
ダルク達は……隣の席にいるか。
「なにこれ。もうイベントは終わったんだよね?」
「あらら。どうなってるのかしら」
状況が分かってないのはダルクとカグラも同じか。
セイリュウとメェナも辺りを見渡してるから、状況は不明のままだ。
「ますたぁ、ここどこ?」
不安そうにしがみつくイクトがキョロキョロしてる。
大丈夫だぞ、少なくともゲームのシステム的な何かだから。
頭を撫でてやってると明かりが消え、また点いたかと思ったらリング上に現れた誰かが照らされた。
「皆様、イベントへのご参加お疲れさまでした!」
リング上に現れたのはバニーガールでもラウンドガールでもなく、露出の少ないカウガール。
全年齢向けだから、露出の少ない服装で配慮したんだろう。
で、これから何が始まるんだ?
「ただいまより、このサーバーにおける貢献度上位三名の発表を行わせていただきます!」
あっ、これってそういう場だったんだ。
楽しめたから順位なんて別に何位でもいいけど、誰が上位に入ったのやら。
「では皆様、こちらのスクリーンにご注目ください!」
カウガールの頭上に巨大なスクリーンが現れた。
皆がそっちへ注目して、表示されるのを心待ちにする。
「このサーバーの貢献度上位三名は、こちらの方々です!」
1位:江乃島平太郎
2位:トーマ
3位:フドー
巨大なスクリーンに表示された内容に驚く。
えっ、2位?
同名の別プレイヤー、じゃないよな?
「凄いよトーマ! 2位だよ、2位!」
「やっぱり土地神の試練をクリアしたのが大きかったのかもね」
「すごくすごいね、ますたぁ」
うん、やっぱり土地神の試練をクリアしたことが大きく影響したか。
「でも塾長がその上にいる」
「一体、何が決め手だったのかしら」
確かにそれは気になる。
「では表彰と入賞の理由をご説明しますので、該当のお三方をこちらへお呼びします!」
カウガールがそう言った直後に視界が暗転して、数秒して見えるようになると塾長とその仲間のフドーとカウガールと一緒にリング上にいた。
やっぱり2位のトーマは俺だったのか。
「おめでと、ますたぁ」
なんでいるのイクト。
あっ、そういえばテイムモンスターは一定の距離以上離れられないんだっけ。
だから俺と一緒にここに呼ばれたのかな。




