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宴飯


 試練をクリアできた上に食材と調味料が戻ってきた。

 なら、今回の晩飯は試練をクリアしたお祝いで豪快にいこう。

 それでいて皆でワイワイ盛り上がって食べるとなると、やっぱりあれがいいかな。


「料理長! 晩飯はどうするんだ?」

「せっかく試練をクリアしたお祝いだ、豪快にいこう」

「豪快にって、どんな感じで?」


 とても安直だけど、やっぱり大量の肉だろう。

 できれば分厚くてデカいステーキを焼きたいけど、食器にナイフが無い。

 男ならフォークで刺して豪快にかぶりつけばいいけど、女性が人前でそういう食べ方をするはずがない。

 まあダルクは平気でやりそうだけど、ああいうのは例外ってことで。

 だから今回はサイコロステーキをもう少し大きくした感じの、コロコロステーキって感じにする。

 そうすればフォークだけで食べられるし、厚みがあれば噛み応えがあって食べ甲斐があるはず。

 付け合わせはジャガイモとニンジンとホウレンソウを使う。

 しかもそれを、明日の食事に影響が出ない範囲で食べ放題にするという大盤振る舞い。

 せっかくのクリア祝いだ、これくらい豪快にやっても文句はあるまい。

 料理プレイヤー達に相談したら了承を得られたから、早速調理開始だ。

 おっと、でもその前に。


「?」


 バンダナと一緒に表示させた前掛けを握り、無邪気な笑みでこっちを見上げるイクトがなあにと言いたげに首を傾げる。

 皆に食材と火と鍋の準備を頼んでイクトと手を繋ぎ、空いてるほうの手で空の木箱を持って調理場の隅へ行って木箱を上下逆にして置く。


「今から飯を作るから、イクトはここに座って大人しくしてるんだぞ」

「めし? ごはん?」

「そう、ご飯」

「わかった! まってる!」


 笑顔で右手を上げたイクトはヒラリと木箱の上に座り、足をプラプラと振りながら楽しそうに鼻歌を歌いだす。

 よしよし、そのまま大人しくしててくれよ。


「さあ、始めるぞ」

『はい!』


 全員で手分けして調理を開始。

 水を張った寸胴鍋をかまどで火に掛けたら、担当を決めて食材を切り分ける。

 肉は種類や部位を問わず、フォークで食べられる範囲の大きさで可能な限り厚めに切る。

 ジャガイモは皮を剥いてくし切り、ニンジンは皮を剥いたら付け合わせにあるみたいな棒状に切り、それらをお湯が沸いた別々の鍋へ投入。

 さらに別の鍋ではホウレンソウを塩茹でにする。


「ニンジンは塩茹でじゃなくて、砂糖で甘く煮るのか?」

「ステーキやハンバーグの付け合わせにあるニンジンって、大体そんな感じだろ?」

「確かに」


 グラッセだっけ。

 記憶が正しければ本当はバターも使うはずだったけど、今回は砂糖だけで勘弁してもらおう。


「ジャガイモは塩茹でっと」

「やっぱジャガイモは塩だよな」


 そうそう、ジャガイモはやっぱり塩味の方が良い。

 付け合わせの調理は順調に進んでるから、こっちも肉をガンガン切っていこう。

 試練をクリアした勢いでお祭り騒ぎになるだろうし、限度はあるとはいえ食べ放題だからたっぷり仕込んでおかないと。

 幸い外で活動してたプレイヤー達が肉をたくさん持ってきてくれた上に、保安官が駄目になった肉を新たに持ってきたくれたから肉は有り余ってる。

 満腹度は設定されてても無限に食えるようなものだし、大量に用意しておいてやろう。

 無論、明日の飯に影響が出ない範囲で。


「あらっ? 料理長さん、イクト君が大佐になってますよ」

「はっ?」


 なんだよ大佐って。

 肉を切る手を止め、ほらあれと女性プレイヤーが指差す先を見ると、木箱をかぶってコソコソとこっちへ近づくイクトがいた。

 しかも俺達に見つかってるのに、まるで見つかってないかのように少し木箱を持ち上げながら前屈みの体勢でコソコソ進み、こっちへ少し近づくと木箱をかぶってその中へ隠れる。

 いや、何がしたいんだ? 退屈で遊んでるのか?


「本当だ、大佐だ」

「蛇じゃなくて虫だけど大佐だ」

「随分と可愛い大佐だな」


 あれのどこが大佐なのかよく分からないけど、言いつけを破った以上は注意しなくちゃ。

 包丁を拭いてアイテムボックスへ入れ、まだ木箱の中に隠れてるイクトへ近づいて木箱を取り上げると四つん這いの体勢のイクトが現れた。


「あっ、みつかっちゃった」


 立ち上がってテヘヘと笑う姿は弟可愛いけど、だからといって言いつけを破ったのは見逃さない。


「何やってるんだ、イクト。待ってろって言っただろ」

「だってますたぁ、すごくすごいんだもん!」


 すごくすごい?


「おにく、スパパパパンってじょうずにきってるの! ちかくでみたい!」


 ふむふむ、それで気づかれないようにこっそり近づいてきたのか。

 しかも木箱を全然有効じゃなかったけど有効活用して。

 でもそれはそれ、これはこれだ。


「俺、あそこで大人しくしろって言ったよな? イクトは、分かったって言ったよな?」


 最初に座らせておいた位置を指差して尋ねると、イクトは大きく頷いた。


「うん。いくと、そういった」

「だったら、なんでここにいるんだ」

「? ……あう。ごめんなさい」


 分からない様子で首を傾げた後、少し考えたら気づいたのか俯いて謝った。

 悪いと分かって謝ったのなら良し。


「どうしても見たかったのか?」

「うん」

「だったらコソコソ近づかないで言ってくれ。邪魔しないなら、近くで見て構わないから」

「いいの!?」


 寂しそうに俯いてた表情が一転、喜色満面になって顔を上げた。


「もう一度言うけど、邪魔せずに大人しく見てるならいいぞ」

「わかった!」


 ビシッと手を挙げて返事した。

 よろしい、ただし二度目は無い。

 今度破ったら説教するからなと強く言いつけ、俺の隣で木箱の上に立たせて調理の様子を見せる。


「わー!」


 肉をひたすら捌く作業にキラキラした目を向けながら興奮する様子は、初めて会った時にかぶりつきで見学してたポッコロとゆーららんみたいだ。

 つい微笑んでると、厨房に置いた台の上に乗って祖父ちゃんや父さんの調理の様子を見てた、幼い頃の記憶を思い出した。

 あの時の祖父ちゃんと父さんも、こんな気持ちで俺を見てたのかな。


「ますたぁ、じょうずじょうず!」

「ありがとな」


 木箱の上でピョンピョン跳ねるイクトの誉め言葉に、ついテンションが上がって切る速度が上がる。

 だけど肉はどれもほぼ同じ大きさと厚みを維持してる。

 店を手伝ってるのは伊達じゃない。これくらいで大きさが乱れたら、手伝いなんて許されない。

 というか祖父ちゃんが許してくれない。


「なんかあれ、親子みたいだな」

「というか料理長、もっと早く切れるのか」

「くっ、これ以上速くしたら大きさが乱れそうだからできねぇ」


 大きさはできるだけ同じにしてくれ。

 でないと大きいのを狙っての奪い合いに発展しかねないから。


「料理長、野菜が茹で上がりました。味見もしてバッチリです」

「よし、水気を切ってボウルに移したら寸胴鍋をどかして鉄板の準備だ」

『はい!』


 肉もだいぶ用意できたし、鉄板の用意が出来たら肉を焼いて皆を呼ぼう。

 パーティーと呼べるかはおいといて、皆に楽しく食ってもらおう。



 *****



 戦いが始まってそれなりの時間が経った。

 下準備からそのまま開戦したこともあって、料理プレイヤー達は悲鳴を上げてる。


「うおぉぉぉっ! 切っても切っても追いつかねえぇぇぇっ!」


 作業台で肉を切ってる男性プレイヤーが叫んでる。


「焼きあがったそばから無くなってくんだから、早く次のお肉持ってきて!」


 鉄板で肉を焼く女性プレイヤーが残り少なくなってきた肉をトングで皿へ盛り、鉄板に油を敷いたらボウルから新しい肉を鉄板へ広げてフライ返しで焼きつつ、作業台で肉を切る面々へ次の肉を要求してる。


「追加の野菜持ってきたぞ!」

「おう、サンキュー!」


 石焼鍋の要領で野菜を茹でてた男性プレイヤーが、二本のフォークで野菜を挟んで皿へ乗せてる男性プレイヤーに茹でた野菜を渡してる。

 そう、調理場は今まさに戦場と化している。

 大盤振る舞いの肉を食べるためにやってきた、プレイヤー達やNPC達の列を相手の戦いだ。

 提供してる料理は一品。

 差し出した皿に付け合わせの茹で野菜三種を盛ってもらったプレイヤーは、六つのかまど全てに設置した鉄板で肉を焼いてる俺達の前にある列のどれかに並び、順番が回って来たら俺達が焼いてる塩味の肉が皿へたっぷりと盛られる。

 こうした給食の配膳みたいに振る舞ってるのが、今回の料理のコロコロステーキだ。




 色々肉のコロコロステーキ 調理者:多数〈選択で全員表示〉

 レア度:2 品質:6 完成度:79

 効果:満腹度回復32%

    体力+2【1時間】

 種類も部位も関係無く、厚めの一口大に切った肉のステーキ

 厚みのお陰で食べ応えがあり、ステーキと呼ぶに値する

 塩茹でのジャガイモとホウレンソウ、甘く煮たニンジンの付け合わせもピッタリ




 このコロコロステーキを受け取ったプレイヤー達は、試練をクリアした勢いそのままに騒ぎながら肉を貪り食べてる。

 しかも食べ放題形式だから、食べ終わったらまた列の最後尾に並ぶ。

 お陰で作っても作ってもキリがなく、店の手伝いでこうした修羅場を何度も経験してる俺はまだ余裕だけど、他の料理プレイヤー達には一切の余裕が無くてバタバタ慌ただしく動いてる。

 これなら食べ放題形式にしないで、いつも通り決まった量を出せばよかったかな。

 大変な思いをさせてごめんな、料理プレイヤーの皆。


「はーい、イクト君。あーんして」

「あーん。ん~!」


 構ってやれないからダルク達に世話を頼んだイクトは、俺の傍でカグラに肉を食べさせてもらうと両頬に手を添え、震えるように体を横に振りながら美味そうに食べてる。


「ますたぁ、おいしい!」

「そうか、良かったな」

「あのねあのね、かむとおにくからおいしいしるがジュワッてでてね、おやさいもあまいのとかホクホクなのとかね」


 鉄板で焼いてる肉に塩を振り、フライ返し二刀流で皿へ盛る俺の傍でイクトが少ない語彙力で説明してる。

 その様子にダルク達や列に並んでるプレイヤー達、それとバタバタ忙しく動き回ってた料理プレイヤー達の表情が緩んでほっこりした空気になってる。

 これで癒されたのか料理プレイヤー達は少し余裕を取り戻し、幾分か落ち着いて動くようになった。

 そんな場を和ませてくれたイクトはダルク達から交代で食事を食べさせてもらい、その度に美味くて嬉しそうな表情と仕草をしてる。


「うぅ、あの子欲しい」

「あれ見てると、挑戦すらできずに試練が終わった悔しさが浄化されてくぜ」

「おまけに美味い肉をこんなに食わせてもらってるんだ、試練を受けられなかったことなんか些細なことだな」

「いやいや。アンタ塾長達が負けたのを見てビビッて、立候補すらしようとしなかったじゃない」

「う、うるさいわ! 相手が思ったより強くて驚いただけだ!」


 そういえば試練はクリアしたら終わりだったから、挑戦したくとも出来ずに終わった人もいるのか。

 クリアはできずとも、挑戦した場合と挑戦しなかった場合とじゃ受け取る報酬に差があるから気にする人は気にするよな。

 だけど下手すれば塾長達がいきなり屈服の試練をクリアして、塾長達以外は誰も挑戦できずに終わる可能性もあった。

 それに比べれば、幾分かマシな結末じゃないかな。

 まあクリアした俺がそんなことを言っても嫌味にしかならなそうだから、何も言わないけど。

 そう思いつつ焼けた肉をトングで皿へ盛っていき、焼きかけの肉が無くなる前に鉄板に油を敷いてボウルから次の肉を鉄板へ並べる。


「ところでさ、イクトはどうやって戦うの?」


 次はメェナから肉を食べさせてもらって幸せそうな顔をするイクトへ、ダルクがさり気なく尋ねた。

 実は俺もそれが気になってた。

 斬撃とか切断なんてスキルがあるのに、武器が装備不可なんだから。

 一体、武器も装備せずにどうやって戦うんだろうか。


「んとね、こうやるの。すらっしゅも~ど」


 次の皿へ肉を盛り、焼きかけの肉を焼きながらわき目でイクトを見ると、気の抜けそうな喋り方をしながら右腕を上げた。

 するとなんということでしょう。

 柔らかくて小さな右手が、鋭くて切れ味の良さそうなカマキリの鎌に変わったではありませんか。


『おぉっ!?』


 これには皆も驚き、イクトに注目が集まる。


「これでね、スパパンってきるの」


 無邪気な笑顔でブンブンと鎌を振ってみせる。

 周りに当たってないからいいけど、そんな物を振り回すんじゃない。


「こらイクト、危ないから振るのはやめろ」

「はーい。てい!」


 今の一声で右手は鎌から普通の手に戻った。


「へ、へぇ、そんなことができるんだ。すごいね」


 まさかあんなことができるとは思ってなかったのか、微妙にダルクの表情が引きつってる。


「でしょ。もっとできるよ」

『えっ?』


 ダルクに褒められたイクトは、自慢気にそう言うとできることを全て披露してくれた。


「しざーも~ど」


 左手がサソリの鋏になった。


「てい、がーども~ど」


 胴体の表面がカブトムシのような外殻に覆われる。


「てい、ふらいも~ど」


 背中に蛾の羽が生えて飛行した。


「てい、にーどるも~ど」


 尻にハチの尾と毒針が生えた。


「てい、むーびんぐも~ど」


 脚が蜘蛛の脚になった。


「てい」


 そしてそれら全てが、「てい」の一言で元に戻ってる。

 しかも衣服とサンダルは一切損傷してない。

 土地神の眷属達の想いが詰まってるみたいだから、それによる効果なんだろうか。


「ますたぁ、すごい? すごい?」

「ああ、凄いな」


 褒めてやったら嬉しそうに照れてクネクネしだした。

 ひょっとすると、今見せてくれた体の変化が職業スキルの部分変態なのかな。

 見せてくれた変化は屈服の試練で相手になった眷属達の特徴だったし、卵の時の情報には土地神によって眷族達の力が込められた卵ってあったから、土地神に眷属達の力が使えるようにしてもらったってことだろう。


「マジかあれ」

「魔法は使えなさそうだから前衛型だな」

「状況や相手に応じて、刺す切る挟む守るを使い分けるのかな」

「蜘蛛の脚なら結構動けそうだから、攪乱もできそうね」

「羽で飛ぶだけでも、十分攪乱できるわよ」


 部分変態を目の当たりにしたプレイヤー達が、飯を食うのも忘れてイクトについて話し合ってる。

 どうでもいいけど、肉が焦げるから次の奴は早く皿を出せ。


「セイリュウ、あの状態は大丈夫?」

「完全な虫じゃないから平気」


 ようやく出された次の皿へ肉を盛りつつ、サムズアップするセイリュウに安堵する。

 自分から我慢するって言ってたけど、イクトの加入のせいでセイリュウが戦力外になったら元も子もないもんな。

 しかしセイリュウ、完全な虫じゃなければ蟻の触覚や蜘蛛の脚やカマキリの鎌があっても大丈夫なのか。

 ということは土地神がもっと人間寄りの外見だったら、怖がることはなかったのかな。


「ふはははっ! なかなか面白そうな奴なのである!」


 おっと、次は塾長か。

 だからといって特別大盛にせず、他の人と同じ量を差し出された皿へ盛る。


「少年よ、あいつを一人前の男に鍛えたければいつでも声を掛けるといい。連絡はあの女子おなご達が取れるのである」


 いや、俺達はUPOを楽しむのが最優先だからそういうのはお断りです。

 さらに言えば、あんな弟可愛いイクトを戦闘集団に預けたくない。

 今だって、ポッコロとゆーららんと一緒に飯を食いながら楽しそうにはしゃいでるんだぞ。

 そんなわけで、野郎塾への誘いは丁重にお断りした。


「そうであるか。残念だが仕方あるまい。だがお主個人のことは気に入ったゆえ、攻略で困ったことがあればいつでも声を掛けるのである。はっはっはっはっはっ!」


 断られたことを気にする様子を全く見せない塾長は、豪快に笑いながら去っていく。

 前に入塾を強制することは無いと言ってただけあって、断られたら身を引く潔さはさすがだ。


「料理長、そろそろ準備した肉も野菜も無くなります」

「ん、分かった。皆へ伝えてくれ」

「分かりました。すみませーん、そろそろ準備した分が無くなりまーす!」

『えーっ!?』


 えーっ、じゃないって。いくらでも食えるからって、結構食っただろうが。

 塾長なんて、さっきので七回目のおかわりだったんだぞ。

 そう思った直後に始まった、残った分の争奪戦。

 これが最後の修羅場とばかりに俺達料理プレイヤーも奮闘し、無事に乗り切って後片付けをしたら解散。


 最終日に備えてテントで寝ることになったんだけど……。


「だから、間で寝ないって言ってるだろ!」

「えー」


 昨夜同様に自分達の間で寝ることを提案したダルクに抗議する。


「えー、じゃないわよ。悪巧みを企んでるのが丸わかりよ」


 そうだメェナ、もっと言ってやってくれ。


「ぶーぶー、悪巧みとか企んでるとか言いがかりだよ。ちょっと密着してトーマをからかいたいだけだよ」

「そういうのを悪巧みって言うのよ!」

「イクトもいるんだから、自重しろ! 教育に良くないだろ!」


 変なこと覚えたらどうしてくれるんだ。


「じちょー?」

「うふふ。我慢ってことよ」

「じちょー、がまん。おぼえた!」

「おふぅ。かわいい」


 胡坐を掻く俺の膝の上に座って首を傾げるイクトにカグラが教え、両手を上げて理解を示すイクトの姿にセイリュウが悶える。

 その間にメェナがダルクを説教し、これまた昨夜同様にメェナを隣に配置して端の方で寝ることになった。

 違う点があるとすれば、メェナとは逆隣で横になったイクトが腰の辺りに抱きついてることだ。


「ますたぁ、おやすみなさい」


 今にも寝落ちしそうな顔でそう言われたら、離れろなんて言えるはずがない。


「ああ、おやすみ」


 頭を撫でてやりながら返事をすると、幸せそうに頬ずりして眠りだした。

 さて、明日はいよいよイベント最終日。

 皆が貢献度を稼ぐため最後の追い上げに燃えるだろうから、こっちも美味い飯を振る舞って応援しよう。

 あれ? そういえば俺、土地神の試練をクリアしたから結構な貢献度を稼いだことになるのか?

 ……まあそれ以外は飯を作ってただけだし、さほど貢献度は高くないだろう。

 うん、きっとそうだ。そうに決まってる。

 だからさっさと寝て、明日も飯を作ろう。


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― 新着の感想 ―
良かった
[気になる点] ホウレン草を切ってから茹でるという発想が出てくること自体が、ホウレン草のお浸しすら作ったことのない人だと言ってるようなものです。料理長以外の料理人がエアプすぎません? 
[一言] 更新有難う御座います。 潜入捜査には段ボール箱……世界の常識!?
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