上位陣の料理
この状況に心躍らされていると、周囲の視線が集まって俺達のことでざわついているのに気づく。
「おい、マジかよあれ」
「大将に姐さんに料理長にお嬢と、料理プレイヤーのトップ層が勢揃いじゃないか」
「坊ちゃんは?」
「あれはもういいでしょう。腕は良くとも態度悪いし」
坊ちゃんことブレイザーに関しては同意する。
腕が良くても態度が悪いのはいただけない。
「ふっふっふっ。まさかこの四人が同じ場に揃うとは思いませんでしたわ。今こそ、真のトップを決めるべく料理勝負ですわ!」
「断る」
「んなもんに興味ねぇ」
「悪いが勝負は嫌いでの」
格好つけて勝負宣言したエリザべリーチェへ、俺とセツナと暮本さんが即座に断りを入れる。
「どうせこうなると分かっていましたわ!」
断られたエリザべリーチェが地団駄を踏む。
ならどうして申し込むんだよ。
「アンタはアンタで、どうしてそう料理勝負に拘るんだよ」
「現実でそんなものは起きないから、ゲームで望んでいるだけですわ!」
まあ料理勝負なんて、テレビの企画とかじゃないと現実には起きないよな。
「ほっほっほっ。エリザべリーチェさん、料理人にとっての勝負とはその道を志した瞬間から始まっているのだよ」
さすがは暮本さん、深い言葉です。
言われたエリザべリーチェも納得はしたのか、悔しそうな表情になっている。
「それで、暮本さん達はどうしてこの船に?」
「そんなの決まってるじゃん、米を探しに行くんだよ!」
暮本さんに聞いたのに、何故かコン丸がドヤ顔で答えた。
話を聞くと、暮本さんも俺と同じく地理的なものから米がアジア圏に当たる西にあるのではと考え、西へ向けて移動しているそうだ。
セツナとエリザべリーチェも同様で、米を求めてアジア圏を目指しているとのこと。
この船に乗り合わせたのは、完全な偶然らしい。
「そういえばトーマ、ギルドを作ったんだって?」
「ああ。色々あってな」
と言っても、さほど複雑な事情じゃないけどな。
「後ろの方々がメンバーですわね。……なるほど、口の悪い方々がトーマさんがハーレムを作ったと言っているのが分かりますわ」
「はぁっ?」
どうしてそういうことになる。
確かにイクトとミコトを含めた男女比で言ったら、女性の割合が多いのは否定しない。
だけどなんで、そんなことを言われなくちゃならないんだ。
ダルク達だってそんな風に扱われたら困って――。
「なに言ってるんだろうね。トーマがそんなもの作るはずないじゃん」
「良くも悪くも料理一筋だもの」
「トーマ君はそんなものより、料理を優先するからありえないわ」
「そうだよ! トーマ君が、そんな不誠実なことするはずないもん!」
「マスターはそんなものに興味が一切無いんだよ」
「うーん。お兄さんがそういうのを作るイメージって、全く無いんですよね」
なかったか。
ダルクは笑いながら、メェナは呆れながら、カグラは不敵な笑みを浮かべて、セイリュウは真剣な表情で全力で、ミコトはいつもの無表情でそれぞれ否定してくれた。
おまけにゆーららんまで、怪訝な表情一つ見せずにいてくれる。
変な言いがかりを気にしないでくれて、ありがとう。
「イクトやポッコロもいるのにどうしてそうなる」
「一部の女性プレイヤー達の間では、そのお二人もハーレムメンバーに含まれていますわよ」
いや、それこそ何を言っているんだ。
確かに世の中には異性だけでなく同性や両方ともいける人もいるし、俺もそういう人達について否定するつもりは無い。
だけど俺にはその気は一切無い。
イクトとポッコロだってそうだろう?
「ますたぁ、はあれむってなあに?」
そもそもイクトは分かっていなかったか。
でも悪い、それはちょっと説明し辛い。
「どうしてそうなっているんですか! 僕にとってお兄さんは、そういう人じゃありません」
いいぞポッコロ、もっと否定してやれ。
「俺もそういうつもりは一切無い」
「分かっていますわ。周りが勝手に嫉妬して僻んでいるのと、一部の女性達が勝手に妄想しているだけですから、気にしない方がいいですわ」
だよな、そういうのは気にしないのが一番だよな。
自分もいるぞとばかりに、モルモル鳴いているころころ丸よ、お前は完全にギルドのペットかマスコット扱いだと思うぞ。
「ところでトーマ君、これから食事を作るのではなかったか?」
おっとそうだった。
暮本さん、指摘してくれてありがとうございます。
「だったらアタシの料理も食うか? 作ってみたい料理があって、試食してもらいたいんだ」
「本当!? 食べる食べる、全力で食べるよ!」
セツナからの提案にダルクが秒で乗っかった。
ダルクのは単に食欲からだろうけど、気になるのは確かだから食べてみたい。
「でしたら私のもお願いします。試作したい料理があるので、感想を聞かせてくださる?」
へえ、エリザべリーチェもか。
どんな料理を試作するのか楽しみだ。
「なら、私とコン丸も加えてもらえんか? たまには大人数で食べようじゃないか」
「俺もトーマ兄ちゃん達ならいいぜ!」
マジか、ここで暮本さんの料理が食べられるのか。
なんか今回の食事はなんかすごいことになりそうだぞ。
「嘘、なんか夢みたい」
「トーマ君だけじゃなくて、他の有名な料理プレイヤー三人の料理が食べられるなんて」
「これは楽しみね」
感動しているセイリュウ、目を輝かせるカグラ、興味深そうな表情のメェナ。
この三人も異論はないようだ。
で、ポッコロとゆーららん、イクトとミコトは……うん、食べたいんだな。
二人と二体で嬉しそうにハイタッチを交わしている。
おまけにころころ丸まで、嬉しそうにモルモル鳴きながら小躍りしだした。
「すげぇ。あいつらが羨ましい」
「大将と姐さんと料理長とお嬢の料理を、一度に食べられるなんて」
「こんな機会、滅多にあることじゃないのに食べられないのが口惜しいわ」
俺達が揃って料理を作るとあってか、周りが凄いざわつきだした。
だからって物欲しそうな目を向けても、無関係のお前達には作ってやらないぞ。
「それじゃあ行こうか。コン丸、案内してくれ」
「あいよ。トーマ兄ちゃん達、こっちだぜ」
暮本さんに頼まれて先導を買ってでたコン丸により、船内にある生産室へ移動を開始。
すると見物するつもりなのか、他のプレイヤー達もぞろぞろ付いて来ている。
「おいおい、なんだよお前ら。付いて来ても食わせねぇぞ」
「私も、皆さんの分はありませんわよ」
付いてきたプレイヤー達へセツナとエリザべリーチェが一言告げると、見物したいだけだと一人が言い、他がそれに頷いて同意する。
だったら文句は言えないと諦め、生産室へ移動。
到着したそこは作業館の作業場を狭くして、鍛冶場を無くした感じで、出入り口には節度を守って順番に利用するよう看板が設置されている。
見たところ生産活動をしているプレイヤーはおらず、俺達四人が調理をしても大丈夫そうだ。
そうなると問題は、設備がどうなっているかだな。
「ふむ。作業台は作業館と同じようだね」
「下の棚にある調理道具も同じですね」
「持ち出せないようになっているが、魔力オーブンが設置されているぜ」
「無限水瓶もあるのですね。ゲームなので無いとは思いますが、遭難しても水には困らなさそうですわ」
作業台を確認している暮本さんへ道具について伝えた直後、セツナとエリザべリーチェから魔力オーブンと無限水瓶の報告が届いた。
作業する部屋が狭いだけで、他は変わらないようだ。
「どうトーマ、問題無い?」
「大丈夫だ。すぐに作るから、ちょっと待っていろよ」
確認を終えたら前掛けとバンダナを表示させ、必要な食材をアイテムボックスから取り出す。
暮本さん達もそれぞれ作業台で準備を始め、前掛けやエプロンなんかを装備して食材を用意している。
で、ダルク達はいつも通り、端の方にある椅子を持ってきて邪魔にならない位置で見学の準備万端。
無論、イクトとミコトとポッコロとゆーららんところころ丸は、指定席とばかりに俺の正面にいる。
おいおい、コン丸もこっちかよ。
「コン丸はこっちに来ていいのか?」
「久々にトーマ兄ちゃんが料理するところ見たい!」
そう言われて断るほど非情じゃないから、良しとして周囲を見回す。
付いてきたプレイヤー達は立ち見をするつもりのようで、壁沿いに詰めて並んでいく。
「おい、俺も入れてくれよ」
「もう満員よ。我慢しなさい」
「順番だ、順番」
喧嘩だけはするなよと思いつつ、調理開始。
まずは手持ちの大鍋に水を注ぎ、二口ある魔力コンロの一口を使ってお湯を沸かす。
次は竜田揚げ作りのため、レインボーサバに下味を付けるため調味液の準備だ。
ニンニクとジンジャーをすりおろしてボウルへ入れ、追加購入した魚醤を加えて混ぜる。
できれば酒かみりんを加えたいけど、無い以上はこれでいく。
極端なことを言えば竜田揚げは下味を付ければいいわけだから、調味液に酒やみりんを加えなくても問題は無い。
続いてレインボーサバを処理する。
しっかり鱗と内臓とエラを取り、頭を落としたら三枚におろす。
苦手な人は皮を取ってもいいけど、俺もダルク達も大丈夫だから、しっかり洗ってから皮付きのまま一口大に切り分けて調味液へ浸けておく。
念のため、冷却スキルでボウルと調味液を冷やすのも忘れずに。
そしてレインボーサバの頭と骨は出汁を取るのに使えるようにするため、塩を振ってしばし放置し、魔力コンロの空いている一口に水を注いだ鍋を置いてお湯の準備をする。
「トーマ兄ちゃん、魚捌くの上手くなったな」
「そうか。ありがとな」
コン丸からとはいえ、褒められるのは嬉しい。
さて、大鍋の方でお湯が沸いてきたから、アツペラワカメを切り分ける。
ワカメスープやみそ汁に使うぐらいの大きさに切り分け、鍋へ入れて煮込む。
初めて扱う食材だから一応鍋の前に立って様子を見ていると、みるみるうちに薄くなっていく。
加熱しないと旨味が出ない上に外へ流れ出やすい、出汁が出るとペラペラに薄くなるっていうのはこういうことか。
「いいにおい!」
「さっきのワカメっていう食材からなんだよ?」
早くも漂ってきた心地よい潮の香りにイクトは身を乗り出し、ミコトは冷静な口調ながら目は鍋をガン見している。
「誰の調理を見ればいいのか分からないわ」
「さすがは料理プレイヤーのトップ層。四人とも手際が良いな」
「はしゃいで見学しているイクトきゅんが可愛い」
見物しているプレイヤー達がざわついているけど、店の喧騒に慣れている俺からすれば大したことはない。
引き続き調理に集中して、アツペラワカメが紙のように薄くなった頃合いで出汁とワカメを小皿に取って味見。
「……ほう」
昔、暮本さんに味見させてもらったことのある、上手に取れた和風出汁のような味わいと、鼻に抜ける心地よい潮の香り。
なんというか、海産物で出汁を取る日本の味って感じして思わずホッとしてしまう。
駄目だ、これに別の出汁を加えるとしても、何を加えればいいのか分からない。
後で暮本さん達にも意見を聞こう。
でもってワカメの方は、微かにシャキッとした食感と適度に残った旨味がいい。
自分から味が出ているから、出汁との相性も良い。
「どうなんですか、お兄さん?」
「美味しいんですか? 美味しいんですよね!?」
ポッコロもゆーららんも落ち着け。
あっ、どうなんだって言いたげにモルモル鳴いているころころ丸もな。
「美味い。こんなに良い出汁が素早く取れるなんて、良い食材だよ」
出汁を取りたいけど、あまり時間が無い時なんかに役立ちそうなこの手軽感は良い。
もう少し買っておけばよかったな。
さて、問題はこれに油を加えるとどうなるか。
これから作るワカメスープは油を加えて作るタイプを想定しているから、この出汁に用意した油や薬味が合うかが重要だ。
再度小皿に出汁を取り、油をちょっとだけ加えて飲んでみる。
「うーん、これは合わないか」
本当にちょっとしか加えていないのに、せっかくの出汁の味わいが損なわれている。
香りも合わない感じだし、今回は油を浮かせるのは無しにしよう。
小皿に取った分は責任を取って飲み、今度は小皿へ取った出汁へ黒ゴマを少量浮かせて味見。
「おっ、こいつはいいな」
炒っていないから潮の香りを邪魔せず、ゴマに含まれる油分が油を浮かせたのとは違って出汁に合っている。
どうやらこの出汁には、油無しでゴマを浮かせるだけの方が良さそうだ。
そうと決まれば、塩で出汁の味を調えてワカメスープはほとんど完成。
冷めないようにアイテムボックスへ入れると、味見させていなかったイクトとミコトが、あぁって声を上げた。
悪い、初めて使う食材だったから調理に集中していて忘れていたよ。
恨みがましい目を向ける二人へ、手を合わせて謝る。
「ごめんな。次の竜田揚げは味見させてやるから、許してくれ」
「むぅ。約束」
「絶対なんだよ」
許してもらえたことに胸を撫で下ろして、調理を再開。
塩を振ったレインボーサバの頭と骨に水分が浮いているからこれを洗い流し、もう一方のコンロで沸かしたお湯に入れて軽く火を通す。
その間にボウルに水を張り、これに軽く火を通した頭や骨を入れて洗ったら下処理は完了。
「トーマ兄ちゃん、それはどうするんだ?」
「出汁を取るための下処理だ。今回は使わないけどな」
「へえ。祖父ちゃんは熱湯を掛け回しているけど、そういうやり方もあるのか」
暮本さんは熱湯を掛け回すやり方をしているのか。
まっ、どのやり方をするかはその人次第さ。
「これから食べる物を作りつつ、次の料理の準備もするのか」
「さすがは料理長だな」
「いえ、暮本さんもその辺は負けていないわよ」
「それなら姐さんやお嬢だって」
周りがざわつく中、調味液に漬けたレインボーサバの身を確認。
ボウルを覗き込むと、もう少し漬け込んだ方が良さそうな感じだ。
ならばと、再度ボウルを冷却スキルで冷やして片付ける物は片付けたら、生鮮なる包丁で竜田揚げに添えるキャベツを千切りにする。
それを終えたら他の作業台へ目を向け、他の人達の調理の様子を確認。
暮本さんは野菜を炒めつつ、隣で火に掛けている鍋から出汁かスープを加えて煮込みだした。
セツナは俺と同じく揚げ物の準備をしてるようで、タネらしきものは所々に緑が見える茶色い塊だ。
そしてエリザべリーチェは、カップぐらいの大きさの容器を蒸篭に並べて置き、湯気を出している鍋の上に重ねて蒸し物を作っている。
どれもこれも、何を作っているのか楽しみだ。
だったら負けないよう、こっちも調理を進めよう。
再度ボウルの中のレインボーサバを確認すると、良い感じの色合いになっているから、鍋に油を溜めて火に掛けて、バットを二つ用意。
一つには油を切りため網をセットして、もう一つには小麦粉を出しておく。
「あっ、いよいよ揚げるんだね!」
真正面にダルクが加わった。
揚げ物やるんだから、近づくんじゃない。
「油が跳ねるかもしれないから、離れておけ」
注意を促すと、真正面に陣取っていた面々がそっと鍋から距離を取った。
そうしたら油に小麦粉を入れ、良い温度になっているのを確認したら下味を付けたレインボーサバの身に小麦粉を纏わせる。
軽くはたいて余計な粉を落としたら、油へ投入。
「うーん、今日もいい音ね」
「どんな味なのか楽しみ」
「さっき作っていたスープもね」
カグラ達も楽しみになってきたようで、ワクワクした様子でこっちを見ている。
さて、良い色に上がったから菜箸で取って油を切って三つに切り、息を吹きかけて冷ましたら、約束通りイクトとミコトにも味見させるため差し出す。
「ほらよ。イクト、ミコト」
「あーん」
「あむ」
口を開けて待っている二人へ先に食べさせ、その隣で口を開けているダルクはスルーして、最後の一切れは俺が試食。
うん、いいじゃないか。
噛むとレインボーサバの旨味と脂、そしてしみ込んだ調味液の味わいが同時に口へ広がっていく。
ニンニクとジンジャーはそれほど強く感じないものの、これらのお陰で脂多めのサバを揚げたのにくどくないし、適度な風味が食欲を刺激する。
しかも魚が原料の魚醤ベースの味付けだから、違和感なんて一切無い。
濃さもちょうどよくて、塩を振る必要も無いくらいだ。
「おいひい!」
「サクッとした衣の中から、サバと漬けていた液が調和した美味しい味が広がるんだよ。ニンニクとショウガが目立たずもしっかり仕事をしているお陰で、くどくない上に食欲を刺激するから、いくつでも食べられる気がするんだよ」
触覚とレッサーパンダ耳を動かして満面の笑みで喜ぶだけのイクトに対し、今日もミコトは食レポが絶好調だな。
ただ、レッサーパンダグローブを付けていた頃の名残りなのか、手を開いては閉じてを数回繰り返している。
あとダルク、恨みがましい目で見てもお前に試食はさせん。
「見た!? 今、料理長さんがイクト君にあーんって」
「私達はとんでもないものを見てしまったわ。ごふっ」
「頑張って、気をしっかり持つのよ!」
離れた場所にいる女性プレイヤー達が少しうるさい。
距離があって何を言っているかは分からないけど、調理には影響しないから気にしないでおこう。
「これからガンガン揚げていくから、もう少し待て」
「早くね!」
恨みがましい目を向け続けるダルクにそう言われ、竜田揚げを作っていく。
小麦粉が水分を吸わないよう、予め小麦粉をまとわせることはせずに揚げて、揚がったものは網をセットした方のバットに一旦載せて残った油を切る。
次のが揚がったら、先に揚がって油を切っていた方を皿に盛り、冷めないうちにアイテムボックスへ。
これを繰り返して全員分が出来たら全ての皿を出し、刻みキャベツとアイテムボックスにある作り置きのマヨネーズを添え、ワカメスープをお椀に注いで黒ゴマを浮かせ、ストックのパンに切り込みを入れて小皿に載せる。
「はいよ、できたぞ」
レインボーサバの竜田揚げ 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:4 品質:8 完成度:93
効果:満腹度回復17%
俊敏40%上昇【3時間】 運40%上昇【3時間】
適度に味が染みたレインボーサバに衣をつけて揚げました
唐揚げやフライとは違う食感と、漬け込んだからこその味わいを堪能してください
添えられた刻みキャベツやマヨネーズと一緒に食べても美味
アツペラワカメスープ 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:4 品質:9 完成度:97
効果:満腹度回復2% 給水度回復19%
MP最大量+4【3時間】 知力+4【3時間】 器用+4【3時間】
出汁も具材もアツペラワカメが主役のスープ
塩以外の余計な調味料を加えていないため、アツペラワカメの出汁をじっくり味わえる
黒ゴマは炒っていませんが、だからこそ出汁の香りと味を邪魔せず引き立てています
『おーっ!』
目の前に並べてやると、ダルク達から歓声が上がった。
「トーマ兄ちゃん、これはパンじゃなくて米だろ」
「無いんだから仕方ないだろう。その代わり、パンに挟めば竜田バーガーになるぞ」
「その手があったかっ!」
本当は米の方が合うと思うのは俺も同意する。
だけど竜田バーガーがあるということは、パンとも合うということだ。
「ほうほう、トーマ君は竜田揚げにワカメスープかい。私はこれだよ」
暮本さんが自分とコン丸用に運んできたのは、汁ありの麺と野菜が盛られた丼。
これはタンメンいや、ちゃんぽんか。
野菜たっぷりちゃんぽん 調理者:プレイヤー・暮本流輔
レア度:3 品質:8 完成度:100
効果:満腹度回復29% 給水度回復6%
HP最大量30%上昇【3時間】 魔力30%上昇【3時間】
状態異常耐性【小・3時間】
【完成度100ボーナス】被ダメージ30%軽減【3時間】
出汁から具材まで全て同じ野菜で作った優しい味わいのちゃんぽん
様々な乾燥野菜を煮出して出汁を取り、その野菜を具材に利用したので一切の無駄は無し
しっかり仕上げられた卵入りの中太麺の風味も相まって、食べる手は止まらないでしょう
マジか、完成度100だって?
しかもそれに達すると、ボーナスでバフがさらに一つ追加されるのか!?
おまけに上昇がプラスじゃなくてパーセントってことは、暮本さんも俺の厨師みたいな職に転職したのか?
ダルク達もそれに気づいたようで、ちゃんぽんを見て目を見開いている。
「気になるだろうと思って、お椀程度の量だが君達の分も用意したよ。是非、食べてくれ」
さすがは暮本さん!
その気遣いに深く感謝します!
「こっちもできたぜ。しっかり食って、感想を聞かせてくれよ」
そう言ってセツナが置いたのは、大皿へ山のように盛られた揚げ物。
大きさ的にはコロッケ系かメンチカツか?
「うっひゃーっ! 揚げ物たくさん、最高!」
揚げ物狂いにとっては夢のような光景に、ダルクが騒ぎだした。
「これは何の揚げ物なんですか?」
「熟成オーク肉とバチバチキャベツを使った、ちょっとばかり贅沢なキャベツメンチだ。一度こういうの作ってみたかったんだよ」
あの熟成オーク肉をメンチカツにするなんて、確かに少し贅沢だ。
しかもバチバチキャベツを加えたキャベツメンチだって?
味の想像がつかないぞ。
熟成オーク肉のバチバチキャベツメンチカツ 調理者:プレイヤー・セツナ
レア度:6 品質:7 完成度:91
効果:満腹度回復15%
体力+6【2時間】 器用+6【2時間】
贅沢にも熟成したオーク肉を使い、バチバチキャベツと一緒に調理したメンチカツ
噛むと熟成オーク肉の肉汁と脂が溢れ、バチバチキャベツによって旨味が暴発する
さらにみじん切りにした、甘味が強い横縞のシマシマタマネギが陰の立役者
しかも横縞のシマシマタマネギまで加えてあるのか。
完成度も高いし、これは味が期待できるぞ。
「私もできました。デザートなので、食後にどうぞ」
エリザべリーチェも完成したのか。
それにしても蒸して作るデザートって……プリンだ。
前に俺が作ったのより黄色が濃くて少し赤っぽさもあるけど、置かれた容器に入っているのは間違いなくプリンだ。
「まあ、甘い物を作ってくれるなんて嬉しいです!」
これには甘い物が好きなカグラが反応した。
両手を合わせて満面の笑みを浮かべ、前のめりになってプリンを見ている。
「やけに黄色が濃いですけど、これは?」
「変異野菜のトロリンカボチャを使ったカボチャプリンですわ。加熱すると果肉の部分が濾す必要が無いほどトロトロになって、とても甘いんです」
へえ、そんなカボチャがあるのか。
「それ、僕達も育てています」
「伝手を頼って最近種を入手したばかりなので、まだ栽培中ですけどね」
ポッコロとゆーららんに続いて、その通りと言いたげにころころ丸がモルッと鳴いた。
ということは、いずれそのトロリンカボチャを使うことができるのか。
だったらしっかり味を確認して、どう使うかを考えよう。
さらに、これもどうぞと皮の部分を使ったチップスを盛った皿も出した。
こっちも香ばしい香りがして美味そうだけど、情報の方はどうだ?
トロリンカボチャプリン 調理者:プレイヤー・エリザべリーチェ
レア度:3 品質:8 完成度:92
効果:満腹度回復10%
MP自然回復速度上昇【小・3時間】 知力30%上昇【3時間】
加熱してトロトロになったトロリンカボチャの果肉をふんだんに使ったプリン
卵のお陰で固まっていますが、口に含むと噛む必要が無いほどトロトロに柔らかい
加熱したトロリンカボチャ自体が甘いので、砂糖はほとんど加えていません
トロリンカボチャの皮チップス 調理者:プレイヤー・エリザべリーチェ
レア度:3 品質:7 完成度:93
効果:満腹度回復7%
魔力30%上昇【2時間】 風耐性付与【小・2時間】
トロリンカボチャの皮をフライパンで炒めたチップス
果肉と違ってトロトロにならない皮ですが、サクサク食感で香ばしい香りがします
甘苦い大人の味を、うすしおが引き立てます
へえ、美味そうじゃないか。
上昇がパーセントってことは、エリザべリーチェも俺や暮本さんみたいな転職をしたんだな。
セツナの料理はそうなっていなかったけど、これは転職先が俺や暮本さんとは違うのか?
それとも俺が揚げ物や炒め物以外の料理を作った時は、上昇がプラスのままのように、パーセントが適用されない料理なだけか?
なんにしても、ここまでされた以上はこっちも暮本さん達へご馳走するのが筋ってものだ。
余っている竜田揚げとワカメスープを用意して、暮本さん達へご馳走してくれるお礼にどうぞと差し出す。
ダルク、まだ少し残っているからおかわりの分がって騒ぐな。
「これはすまない.。ありがたくいただくよ」
「久々にトーマ兄ちゃんの料理が食えるぜ」
「くくくっ。これだけのメンツの料理が食えるなんて、思ってもみなかったぜ」
「しっかり味わわせてもらいますわ」
全員が着席して箸なりフォークなりを持つ。
「それじゃあ、いただきます!」
「「「「「「いただきます!」」」」」」
「「い、いただきます」」
うちの定番をやったらちょっとびっくりした後、ポッコロとゆーららんもいただきますをして、ころころ丸もモルッと鳴いた。
さらにそれを見ていた暮本さん達までいただきますをして、図らずも豪華になった食事が始まった。




