たくさん作っとく
宿の部屋で迎えたゲーム内二日目の朝。
ゲーム内とはいえ別々の部屋に泊まったダルク達と食堂で合流したら、宿で出される飯は食わず、昨夜急遽作った中国揚げパン四種と水で食事をする。
時間が無かったとはいえ、こんな急場凌ぎの単純な料理で悪いなと思っていたんだけど……。
「朝から揚げ物、サイコー!」
揚げ物大好きダルクが、両手に持ったプレーンの中国揚げパンを貪るように食べている。
「ゲーム内だから、甘い揚げ物でも罪悪感が無いわね」
自分の分の砂糖味をちゃっかり確保したカグラは、満面の笑みでじっくり味わう。
「ハーブソルト味、結構美味しいね」
まるでハムスターのように、ハーブソルト味を口に詰め込んだセイリュウが微笑む。
「胡椒のピリッとした味付けもいいわね」
冷静な表情のメェナだけど、胡椒味を中心に次から次へと夢中で食べていく。
あれー? こんな急場凌ぎの料理で悪いと思っていたのに、予想に反して好評だな。
いや、美味いって言ってくれるなら嬉しいんだけど、想定外の好評だからちょっと戸惑う。
「さすがはトーマ、急場凌ぎでも美味しいの作ってくれるね!」
親指を立ててサムズアップするダルクの様子を見て、美味いと言ってくれるのなら、それでいいかと思うことにした。
それから数十分後。朝飯を終えて宿を出たら、昨夜渡し忘れていたという昨日稼いだ金を食費と料理の報酬として受け取り、町の外で手に入れたい物があるというダルク達と別れた。
「さて、料理ギルド行くか」
といっても今回は依頼は受けず、前夜のようなことを繰り返さないように作り置きを用意するのと、料理の試作のために作業館で調理三昧の予定だ。
幸い称号を得た際に貰った報酬もあるから、予算はそれなりにある。
というわけで料理ギルドでレシピを提供し、必要な食材と食器を買い足し、他に必要な物は商店で購入したら作業館へ向かう。
*****
早くもお馴染と化している作業館で、これまで通りに作業台を借り、非表示にしていたバンダナとエプロンを表示させる。
「さて、やるか」
調理三昧、いってみよう。まずは作り置きからだ。
キャベツを複数個取り出し、洗って千切りにしたらボウルに入れて塩を加えてよく混ぜる。
混ぜていると塩気によってキャベツから水分が出るけど商店で購入した瓶へキャベツを水分ごと詰める。
本当ならここで重しを乗せて蓋をするんだけど、ちょうどいい重しが無いからギリギリまでキャベツを詰め込み、蓋をグッと押し込んで固定して重し代わりにしよう。
同じ要領で塩もみキャベツの瓶詰を作れるだけ作ったら、こういった時のために習得しておいた発酵スキルを使う。
「発酵」
全ての瓶を対象に発酵スキルを使うと、キャベツから染み出た水分が全体を浸して、上の方に白濁した細かい泡が出てきた。
これでザワークラウトの完成だ。
ザワークラウト 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:1 品質:8 完成度:84
効果:満腹度回復7%
俊敏+1【2時間】
キャベツと塩だけで作ったお手軽発酵食品
酸味が効いてるから口の中がサッパリします
漬け込み期間によって、酸味の強さが変わります
蓋を開けて上の方をフォークで取り、掌に乗せて試食。
うん、ちゃんと発酵したから酸味が効いて美味い。
中華ばっかりじゃなんだから、こういうのがあってもいいよな。
母さんに作り方を教わっておいてよかった。
「今度は漬物――」
「あれなら――」
「でも――」
はいはい、周りはスルーして調理の続き続き。
ザワークラウトは瓶ごとアイテムボックスへ入れてまな板とボウルを洗ったら、次はハーブを乾燥スキルで乾燥ハーブにしてバットの上でパラパラにしておき、ここへ小麦粉と塩と胡椒を加えて混ぜておく。
鍋に油を溜めてコンロで熱している間に、昨夜ルーレットで入手した物に料理ギルドで買い足したタックルラビットの胸肉、それとダルク達から貰った豚のロース肉を一口大に切り、熱した油に小麦粉を撒いて温度を確認。
ちょうどいい温度になったら、小麦粉と塩と胡椒と砕いた乾燥ハーブを混ぜた物をいくつかの肉に纏わせて油へ投入。
しっかり揚がったら油切り網をセットしたバットに乗せて油を切る。
タックルラビットの唐揚げ 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:2 品質:7 完成度:92
効果:満腹度回復9%
俊敏+2【2時間】 器用+2【2時間】
カラッと揚がってサックリ美味しい熱々の唐揚げ
衣に混ぜられた塩と胡椒と砕いた乾燥ハーブが良い味付け
胸肉なので歯応えがあるアッサリ味
豚ロース肉の唐揚げ 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:2 品質:8 完成度:93
効果:満腹度回復9%
体力+2【2時間】 腕力+2【2時間】
カラッと揚がってサックリ美味しい熱々の唐揚げ
衣に混ぜられた塩と胡椒と砕いた乾燥ハーブが良い味付け
ロースなので噛んだら口の中は美味しい脂の海と化す
味の方は……うん、どっちも悪くない。
できれば調味液を作って肉を浸け込みたかったけど、材料不足で浸け込めるのは塩水ぐらいだし、今日は調理三昧の予定だから衣に味付けをさせてもらった。
「よし、この調子で揚げるか」
味見をしたら次の肉へ衣を付けて揚げる。
予め全部の肉に衣を纏わせておけば楽だけど、それは絶対にしない。
予め衣をつけておくと、最初の方はともかく最後の方は揚げる時に衣が肉の水分を吸ってしまって、味と食感が落ちてしまう。
だから手間が掛かろうとも、次の肉へ衣を纏わせるのは先の肉が揚がってからだ。
ゲーム内だからそういうことが起きない可能性もあるけど、切った感触や灰汁が浮く点を考慮すると起きる可能性を否定できないから、ちゃんと実家の店でやっているようにやろう。
一度にたくさん揚げられるフライヤーがあれば話は別だけど、そんな物は無いし、さほど大きくない鍋で五人分を揚げるならこれがベストだ。
そうして揚がった唐揚げはトングで皿へ盛って、乗せられなくなったらアイテムボックスへ。
これを用意した肉が無くなるまで続け、数皿にも及んだ唐揚げを全てアイテムボックスへ収めた。
「次」
唐揚げ作りで使った道具を洗い、次の料理に使う道具と材料を準備して調理再開。
鍋に水を張って火に掛けてお湯を沸かし、ボウルに入れた小麦粉へ塩とお湯を加えてこね、塊にまとめて寝かせている間に以前作った野菜スープを仕込む。
商店で買っておいた鍋を取り出し、これに水を張ってもう一方のコンロで火に掛けたら、残りが少ないシイタケとエノキとエリンギを全部、それとニンジンとトマトを切って乾燥スキルで乾かして鍋へ入れて煮込む。
スープの仕込みが済んだら、まな板に小麦粉を打って寝かしていた生地をローラーで薄く伸ばし、包丁で小さな正方形に切り分けて空のバットへ移したら皮の準備は完了。
ここでスープの確認をして灰汁を取って火加減を調整したら、豚肉の肩ロースをアイテムボックスから出して薄切りにし、今度はそれを縦と横に細かく切る。そして装備品の包丁を右手に、備え付けの包丁を左手に装備して小さく切った肉を叩いてミンチ状にする。
フードプロセッサーもミートミンサーも無いから、ひき肉を用意するならこうするしかない。
『おぉー!』
周りが驚きの声を上げている。
そういった声は気にならないけど、目の前の至近距離から注がれてる視線は気になる。
「わー」
「おー」
小麦粉をこねている時からずっと、作業台に密着するほどのかぶりつきで正面から見てる幼い少年少女の二人組。
周りの声は店の手伝いで気にならなくなったけど、これはさすがに経験が無くて落ち着かない。
それでもなんとかひき肉を作り終えたら備え付けの包丁を洗って片付け、生地を寝かせているのとは別のボウルの上でまな板を傾け、装備品の包丁でひき肉をボウルへ移す。
肉を移したら包丁とまな板を洗って、スープから灰汁を取ったら次はキャベツとタマネギを刻む……前に、包丁を置いてかぶりつきで見ている二人へ目を向ける。
「「?」」
目が合うとわくわくしていた様子が一転、不思議そうに首を傾げられた。
うん、これは邪魔とかどっか行けとか乱暴なことは言えない。
「この後で油と火を使うから、そんなに近くで見てると危ないぞ」
これなら注意を促してるから問題無いだろう。
「あっ、ごめんなさい」
「噂のお兄さんの料理を見たくてつい」
ハッとした様子で作業台から離れた二人組は、どちらも小学校中学年ぐらいに見える。
一方はリスの尻尾と耳を生やし、肩に届くくらいの長さがある茶髪に半袖シャツとハーフパンツにサスペンダーを付けた少年。もう一方はウェーブの掛かった薄い水色の髪が腰まで伸びた、膝丈のスカートとロングシャツを着て、首元には細くて赤いリボンを巻いた白い肌の少女。
なんだか私立の小学校に通う、良い家の坊ちゃんお嬢ちゃんみたいだな。
まあいい、かぶりつきから離れてくれたし調理を続けよう。
キャベツとタマネギを微塵切りにして、キャベツは塩もみして軽く絞って水分を出したらタマネギと一緒にひき肉入りのボウルへ入れ、しっかり混ぜ込む。
途中で味付けとして塩と胡椒と油を加え、さらに混ぜ込んで全体に味を行き渡らせたら餡のできあがり。
一旦手を洗い、スープを確認。灰汁はもう無し、お玉で小皿に移して味見……よし。塩と胡椒を加えて味を調整したら、前にも作った乾燥野菜出汁の塩スープが完成。
こいつは鍋ごとアイテムボックスへ入れておく。前は備品の鍋だったからできなかったけど、この鍋は商店で買った自前の物だからアイテムボックスへ入れられる。
さあ、もう一つの調理へ戻ろう。
空のバットを出して、小さな正方形の皮にスプーンで餡を乗せて三角形になるよう折り畳み、辺の部分を数回折ってひだを作っていく。
「餃子かな?」
「でも皮が丸くないよ?」
そう、一番近くで見ているあの子達の言う通り、作っているのは餃子だ。
生地を丸く作らなかったのは、同じ大きさと薄さの皮を丸形に何枚も作り続ける技術が、今の俺にはできないからだ。
だから代替案として、薄く伸ばした生地を正方形に切ったものを皮にする。
これなら今の俺でも均一の大きさと薄さの皮を作れて、火の通りにムラが出ることは無い。
絶対に皮が丸じゃなきゃいけないわけじゃないし、四角でも包めないことはない。大事なのは皮を丸にすることじゃなくて、餡を皮でしっかり包むことなんだから。
五人分だから時間は掛かるけど、店ではもっと大人数の分をやっていたから一人でやるのは問題無い。
「早――」
「やっぱ本職――」
「でも――」
「わー」
「やっぱりすごいね」
よし、包みは完了。
これを熱して油を敷いたフライパンで焼き、皮に焼き色が付いてきたら生地作りに使ったお湯を加え、蓋をして蒸し焼きに。水でもいいけど、フライパンの温度が下がって余計に時間が掛かるからお湯の方がいい。
注いだお湯が無くなったら蓋を取り、少量の油をかけて皮がパリッと焼きあがったら餃子の完成。
味付き焼き餃子 調理者:プレイヤー・トーマ
レア度:2 品質:8 完成度:94
効果:満腹度回復14%
HP最大量+20【2時間】 体力+2【2時間】
パリッと焼けた皮を噛むと肉汁が溢れる味付き餃子
タマネギとキャベツの甘みと塩と胡椒で、アッサリな味付け
そのままでも美味しく食べられます
おおっ、完成度が今までで一番高い。
やっぱり店で毎日のように作っているからかな。
味見も……うん、よし。餡に塩と胡椒を利かせて味を付けたのも成功だ。
醤油も酢も無い以上、塩と胡椒には頑張ってもらわないとな。
「美味――」
「今夜は――」
「ビール――」
「「ごくっ」」
この調子で次々に餃子を焼いては皿に乗せ、冷めないうちにアイテムボックスへ入れていく。
料理ギルドで皿を追加で買っておいて良かったよ、本当に。
やがて焼き餃子を全て作り終えたら使った道具を洗い、水を飲んで一息入れてから次へ取り掛かる。
次にやるのは完全に試作。やってみないと分からない。
「ほっ」
商店で買った寸胴鍋をアイテムボックスから出す。
寸胴鍋といっても、ラーメンのスープ作りに使うような大きさじゃなくて、やや小ぶりの家庭でも使えそうなやつだ。
こいつへ水をたっぷり入れて火を点け、昨日ルーレットで入手したスケルトンボアの骨を全て取り出す。
流しでこいつに水をかけて洗ったら、ネギとニンジンと皮を剥いたタマネギと一緒に寸胴鍋へ入れて煮込む。
「えっ――」
「骨なんて――」
「まさか――」
周りがさっきより煩いな。
「あっ、あの、お兄さん」
「その骨、なんの骨なんですか?」
かぶりつきで見ていた二人組が、骨について尋ねてきた。
子供相手に無下にするのも悪いし、教えてもいいか。
「スケルトンボアとかいうのの骨だ」
答えたら周りがどよめき、よりいっそうざわめきだした。
なんだ? 何か問題あるのか?
「そそそ、それって、夜に出るアンデッドモンスターのドロップですよね!?」
「料理に使って、大丈夫なんですかっ!?」
「さあ」
「「さあっ!?」」
「分からないから試すんだよ」
ダルク達を見送るまでは売ろうと思っていたけど、見送った後で骨だから出汁が取れるかもしれないと思って、試しに煮込んでみている。
どんな味になるかは分からない。でも失敗しても現実じゃないから材料は無駄にならないし、美味ければそれはそれでよし。
なお、このことはダルク達には一切伝えていない。
あくまで実験的な試作だからな。変に期待は持たせない方がいいだろう。
「やっぱりアンデッドの――」
「味は――」
「変なイベント――」
スープをかき混ぜつつ、浮いてきた灰汁を取る。
漂ってきた香りも変化してきたスープの色も悪くない。
まだまだ煮込む必要はあるけど、期待できそうだ。
猪の骨だから臭みがどうとか、それ対策に生姜やニンニクが無くて大丈夫かとは思ったものの、案外大丈夫そうかな?
いや、油断は禁物だ。まだスープは完成していないんだから。
「あああ、あの、お兄さん!?」
「そんな、死んだモンスターの骨なんか使って、大丈夫なんですかっ!?」
おいおい、子供とはいえ何を言ってるんだ。
「豚骨や鳥ガラも、死んだ豚や鶏の骨じゃないか」
「「いや、そうですけども!?」」
分かってるなら、どうしてそんなに騒ぐんだ。
「気にならないんですか!?」
「ゲームだから衛生面は平気だろう。一応、ちゃんと洗ったし」
「そこじゃなくてっ!?」
じゃあ、なんだっていうんだ。
どこを気にしてるのか分からないけど、見た感じと香りは悪くないじゃないか。
さて、このスープが上手くいったらどう使おうかな。
まずは刻みネギだけ浮かせてスープ単体を味わってもらって、好評なら麺を打ってラーメンっぽいのを作るかな。
味は醤油や味噌が無いから塩一択。タレを作る材料が足りないから、塩を入れるだけで勘弁してもらおう。
具材は塩焼きにした肉、薬味は刻んだネギ、後は好みで胡椒を振ってもらえばそれっぽくはなるか。
あっ、薬味にハーブを使うのはどうかな。だったら味付けも単なる塩じゃなくて、ハーブソルトを作ってみるのも有りかも。
「おい! テメェが噂のサラマンダーの料理人か!」
うん? なんだ?
浮いていた灰汁を取り終え、商店で買っておいた木べらで鍋の中身をかき混ぜていたら大声がした。
顔を上げたら人込みを掻き分けた三人組が正面に陣取り、ニヤニヤ笑いながらこっちを見ている。
特に先頭の奴なんか、腕を組んでこっちを見下ろすような目を向けてるし。
こういう奴らは無視だ無視。料理人にとって大事なのは、こういう厄介そうな奴らの相手じゃなくて目の前の料理だ。
「おいこら、無視すんな!」
「テメェ、ちょっと噂になってるからって調子に乗ってんじゃねぇぞ!」
煩い程度ならスルーできる。
店での喧噪に比べれば、たった三人の喚きぐらいなんてことない。
「たかが生産職が、攻略組を目指す俺達戦闘職を舐めてんのか!」
攻略組? なんだそれ。
「「「なんとか言えよ、おい!」」」
あっ、また灰汁が浮いてきた。本当にこのゲーム、こういうところが凝ってるよな。
お玉で取ってお椀へ移し、流しへ捨てるっと。
「この野郎……。オイコラお前! 黙って俺達に、お前が作った飯を全部寄こしやがれ!」
灰汁は全部とれたか。かき混ぜを再開。
「無視すんなっ! くそっ! PVPで痛い目みせてやる……って、拒否ってんじゃねぇ!」
かき混ぜるための木べらを買っておいて正解だったな。
お玉でも混ぜられないことはないけど、なんかやり辛そうだ。
「「「いい加減反応しろよコラァッ!」」」
あー、煩い。ちょっとは他人への迷惑を考えられないもんかね。
周りの反応を見ろよ。お前達を見ながらコソコソ陰口言ってるぞ。
しかもかぶりつきで見てた子達なんて、抱き合って震えてるじゃないか。
「仕込みの邪魔だし周りの迷惑だ。帰ってくれ」
あまりに見苦しいから、スープを混ぜ続けながら返事をする。
「聞こえてんなら反応しろよ、テメェ!」
「お前達のようなタカリの相手をするより、料理の方が大事に決まってるだろ」
料理人にとって何より大事なのは目の前で作ってる料理。他に何がある。
「タ、タカリだとっ!?」
「金を払うでもなく、材料を提供するでもなく、何の交渉もせずに脅し取ろうとするのがタカリでなくて、なんだっていうんだ」
周りの迷惑も考えず大声を上げ続けながら、黙って飯を寄こせだの、痛い目みせてやるだの、これがタカリでなくてなんだっていうんだ。
前に豆のことを聞きに来た春一番は、欲しい情報こそ手に入れられなかったとはいえ、ちゃんと対価は出すって言ってたし情報を広めないと提案していた。
それに対してこいつらは、何も出さないどころか善意にすがるでもなく、ただ脅し取ろうとしているだけ。
これがタカリでないのなら、恐喝か、それともカツアゲか。
「う、うるせぇ! テメェのような生産職はな、俺達のような攻略組に黙って従えばいいんだよ!」
それ、いつの時代の考え方だよ。
ていうかそもそも、攻略組ってそんなに偉いのか?
「つうか攻略組って何。初心者の俺にそんな訳の分かんない用語でイキられても、迷惑なだけだ」
「「「なっ」」」
『プッ!』
今、何人か笑ったな。初心者相手にイキってるんだ、笑われても仕方ない。
「まだ二日目で――」
「しかも――」
「ていうか――」
周りからの嘲笑に三人組の顔が真っ赤になっていく。
凄いなこのゲーム、そういう所までちゃんと表現されるのか。
技術っていうのは、いつの間にこれだけ進歩したんだ。
「お前、俺達を虚仮にしやがって!」
「ぜってー許さねぇ!」
「なんとしても痛い目に」
「はいそこまで。お兄さん達、ここで身を引いた方がいいわよ」
なんかウサギの耳が生えている、パンツタイプのスーツ姿に眼鏡を掛けたオレンジ寄りの茶髪の女性が割って入ってきた。
誰か分からないけど、仲裁に入ってくれるのかな?
おっと、また灰汁が浮いてきたから取らないと。
本当にこのゲーム、料理し甲斐があるよ。




