第26話 鳩に豆鉄砲よりひどいこと
貴族達にしっかり自分の立場を示し、ようやくフレア公爵邸に平和が訪れた………のだが、大量に解雇したので雇わねばならない。まあ、仕事なんてろくにしてなかったのでいなくても回るが、対外的によろしくない。なので募集をかけたり面接をしたりとそこそこ忙しくしていた。
「ご主人様!ご注文のお品です!」
「ん、確かに」
なかなかいい仕上がりだ。イフリートのはピンブローチで、他はブローチにした。
「いっちゃん」
猫姿のイフリートが足にすり寄ってきた。すっかりねこらしく
「にゃ〜〜〜んだ?我にか?我にだな?」
「1番の味方だから、最初にあげるわ」
イフリートに届いたばかりのピンバッチをつけてあげた。
「そうか!流石は我のご主人様だな!どうだ似合うか?似合うだろう!ふっふっふ……可愛い我がさらに可愛くなってしまったな!」
今のイフリートはにゃんこにしか見えない。最近は猫らしい演技にはまっており、にゃんこそのもの。
うんうん、可愛い。間違いない。
「アリス」
「へい」
「売るんじゃないわよ」
「なんすかコレ」
アリスにも私がつけてやる。
「私の部下だって証?」
「へー。あざま〜す」
「不敬!!」
「羨ましい!お嬢様から部下と認めていただいたというのにその態度はなんですか?!」
ルルとレレの鉄拳制裁によりアリスが頭をおさえた。
「いってぇ……」
「アリスはこれぐらいでいいのよ。さて、次は貴女達の番ね。ララ達も呼んできて」
私は逆にアリスの適当さが好ましい。あまり丁寧に接されるのになれてないからだ。
「はっ!ただいま!!」
とりあえずこれで全員かな。皆して泣いて喜んでくれた。よかったよかった。あとは、これをしてる人は私の部下だと周知しておかないとだけどそこは商会がやってくれるそうな。
「今回のМVPがまだいると思うんですよね〜………チラッ」
「それはそうね」
先程からウロウロしているポッポちゃん。うざい。
「何か約束があったようなきがするんですよね〜……チラッ」
「あったわね。ところで豆と言っても色々あるけど、ポッポちゃんの好きな豆って何?」
「豆でございましたら大きかろうと小さかろうと何でも好きです生でも調理済みでも!なんならコーヒー豆でもいけます!!お豆大好き!!」
「なるほど?」
生でもいいのであれば、さっきついでに発注しておいたお豆セットでよかろう。
「はい、お豆」
購入したのは豆セット。とりあえず調達できるありとあらゆる食用豆を集めた結果、かなりの量になった。10キロぐらいはありそう。
「…………………ポ?」
あんなに豆くれアピールしてたのに、何故鳩が豆鉄砲くらった顔で固まっているのか。あ、袋に包まれてて中身が見えないからか。
「これ全部豆よ。商会に頼んでありとあらゆる食用豆を取り寄せてもらったの。忘れてたわけではなくて、それで時間がかかったのよ。この中で好きな豆があればまた取り寄せるから教えてちょうだい」
袋を開いて豆を見せた。
「……………フゥッ…………」
ポッポちゃんがとてもイイ笑顔で綺麗に倒れた。
「ポッポちゃん?!」
「アッ、いえ、大丈夫大丈夫大丈夫私は大丈ブイッ☆」
「大丈夫な要素が微塵もないけど?!ごめん、薄々多すぎたかなとは思ったのよ!」
「いえ………ぶっちゃけ鳩ですけど馬車馬のごとくバシャバシャウマウマ働くこと数百年……久しぶりに触れる素朴な人の優しさに昇天しかけました」
神の使いの扱いについて疑問しかない。実はブラック企業説が浮上した。
「いえ、別に不満なんて……そこそこありますけど、ルビー様みたいに優しい勇者様が極稀にいるからお仕事辞められないんですよ………お豆、本当にもらっていいんですか?」
「いいわよ。そんなに働きづめだって言うならしばらく休んでなさい」
「ポッポッポッポッポッポッポッポッポ……くるっぽー!!」
え、壊れた鳩時計??ドン引きしていたら、そっと宝物でも扱うかのように豆をひと粒味わって食べていた。
そうか、そんなに好きか………。でもキモいから家帰ってからやってくれないか……?
「………面白半分で私から豆を奪おうとする邪神がいるのです………」
「そ、そっか……」
それなら仕方ない、のか?でも部屋の隅で奇声上げられるのはちょっとなぁ………。
「おかまいなく。限りなく静かに豆を味わうことへ神経を集中させますゆえ」
「あれ?何食ってるんすか?大量の豆じゃないっすか〜。ちゃっともーらい」
「ピギャギャギャギャギャ〜〜〜〜〜〜〜あんたなんばすっとや!!人の心がなかとか〜〜〜〜?!鳩を豆鉄砲で撃つより非道ですよ!!豆鉄砲で撃たれたらむしろご褒美ですよ拾って食べるから!!」
アリスがポッポちゃんの豆をひとつかみ強奪したら正体かでてる………。アリスはアリスで驚きすぎて鼠耳と尻尾が出て毛が逆立っている。いや、それより落ちた豆は食べるな…いや、鳩だからアリなの??
何このカオス。
「何事ですか?!すごい叫び声が…………不審者?!」
「あ、ロロ……不審者では」
「者ども、であえであえ!!お嬢様に不審者が」
「待って待って!不審者じゃないから!いや見た目は不審者過ぎるけど!!」
このままではポッポちゃんがローストチキンになると思って慌ててロロを止めに部屋から走り出た。
なんとかポッポちゃんローストチキンは回避して戻ってきたのだが、アリスが変態白タイツ鳩マスクからガチ説教されていた。よく正座させられてるメイドだなぁ。
「人の大事な豆を食べるとは悪逆非道にもほどがあります!いくら温厚な私と言えど、許せません!!」
「アッ、ハイ、サセン………」
「反省の色が見えません!!そこは申し訳ありませんでしょう!!」
アリスと一瞬目が合い、助けを求められた気がしたがそっと扉を閉めた。
「ロロ」
「はい」
「…………なんでもいいから、豆を使ったお菓子持ってきて。早急に!」
アリスは私の機転により救われたが、ヒトのものを勝手に食べてはいけないという教訓を刻まされていた。
今回はどう考えてもアリスが悪い。
「お嬢様、あの人って鳩の獣人だったんです?」
「えっ…………どうなんだろ………」
彼が獣人なのかはよくわからん。あれマスクじゃないのかどうか含めてわかんない………。聞いていいことなのかもよくわからんし………。
まあアレはああいう生き物なんだと思っておくことにした。思考を放棄したともいう。
どうでもいいあとがき。
その後ポッポちゃんは空き部屋でゆっくり豆を食べるようになりました。大事にひと粒を味わって食べているのでなくなる気配がないそうです。
久しぶりにスムーズに書けました(笑)




