魔獣たちの遊戯
ふと思いついた凍たちの遊び風景
2回に分ける予定です
そして、次回は閑話その2と本編を同時に上げる予定です
リストカット帝国帝都からキスタニア王国王都に向かって移動中の俺たちは船旅を終えて都にまで来ていた。今はキスタニアの王女が暫定的に民主的な方法で治めている街だ。前は協会って相互協力組織が治めていたんだがお偉いさんが黒スライムに乗っ取られ、解放されてからはそうなったらしい。俺たちがリストカット帝国の大陸に居る間にそうなったから細かい経緯は知らないんだよ。調べるほどの興味も無いしな。
で、花子は初めてのキスタニア側の大陸の人間の街に驚いている。服装とか建物とかがリストカット側とはかなり違うからな。それでも都は結構リストカットに近い街並みだ。地球で言う、中国とか沖縄とかそんな感じ。リストカットは日本的だったから結構な差かもしれないな。
そんな風に花子が興味を持ったものをフラフラと観光することにしていたんだが、都に到着してから2日目の朝に焔が荷物を漁って何かの折りたたんだ盤を持ち出した。
「えへへ、レイちゃんからこっちの大陸に着いたら皆で遊んでって渡されたんだっ」
そう言って焔が広げたのは100マス程の双六のように見えた。要所要所に少しだけ大きなマスがある。そんで端っこにルールが書かれていて6面のサイコロと駒が6個置かれているし、各マスの内容は魔石の仕込まれた専用の駒が置かれないと読めないように細工がなされていることと最大6人プレイだとルールブックに大きく書かれている。
魔石便利過ぎるだろ。魔石がマスに止まったら下の文字盤を吸着するように持ち上げる仕組みだな。文字盤のも駒のも仕込まれた魔石は小さいから隣の文字盤まで持ち上げることは無さそうだ。磁石みたいな使い方だな。
「折角のレイちゃんからのプレゼントですし、やってみましょうか?」
「そうね。面白そうだわ」
メスたちは乗り気だが、俺は1匹で不安を覚えていた。
霊帝はわざわざ向こうの大陸に着いたらと言っている。つまり、俺たちにはおいそれと帝都に戻って来れない所まで離れてからプレイしてもらいたいと思ったってことじゃないのか?
……流石に考えすぎだよな?
結構大きいのでベットの上に広げてプレイすることにした。
順番の決め方はサイコロを振って1番小さい目が出た者からスタートだと書かれていたので指示に従ってサイコロを振ってみた。結果は全員別の値で再度振るう必要は無かった。
焔(1)、花子(3)、雷(4)、俺(6)の順番だ。駒もウェーブ髪の赤い少女、黒いロングヘアーの少女、黄色い女王様、青い男の子とどっかで見たような駒があったのでそれぞれ選んだ。
まあ100マスもあるから順番はそんなに関係無いだろ。途中で絶対進んだり戻ったりするマスがあるはずだ。駒に他意を感じるが、必要以上に気にしないようにしよう。
では、ゲームスタート。
「じゃ、私からだねっ」
開催宣言をした焔の1回目。さて、数値は4だった。
焔と雷と花子は双六を始めて見たからルールブックに従って進める。俺も知らないフリだ。
「え~と、『好きな人を暴露』?」
……ん?
「え~と……凍だよっ!」
知ってるよ。
そしてこれ、本当に双六の命令か? 何か罰ゲーム大会みたいな命令じゃなかったか?
「次は私ですね」
花子は3だった。流石に焔のような変な命令ではないと思いたい。
「あ、浮かび上がりましたね。『失敗談を語るor1回休み』ですか?」
待て、何だこの双六。
「これは、霊帝から私たちへの挑戦ね!」
はい?
「きっとこの先も羞恥心を煽るような質問ばかりが続くのよ。そして霊帝は私たちが羞恥心で悶々とする様を思い浮かべてほくそ笑んでいるに違いないわ」
何かリアルに想像できるんだが。
「でも、この勝負受けて立つわ!」
ええっ!? 中断すりゃ良いだろ!?
「っ! そうだねっ、この勝負受けて立つよ!!」
「はい! 絶対に凍君の真意をゲフンゲフン! レイちゃんの挑戦に負けはしません!!」
何かを口走ろうとしたな花子。さっさと吐け。
「いえ、何も言ってませんよ? あ、私は1回休みを選びます」
「いや、絶対に何か言おうとしていた!」
「凍、五月蠅いわよ。そして、茶番は、終わりよ。ダイスロール!!」
雷がノリノリで叫んだ!?
値は、気合を示すかのように6だ。初手からやりおる!
「内容は……『次の番まで腕立て伏せを続ける』」
ヘボ!! そしてこれ本格的に変な罰ゲームトランプとかの内容じゃねえか! 作った奴性格悪すぎだろ!
「凍の番だよっ」
「早く振ってください。早く早く早く!」
「1回、2回、3回……」
焔と花子の期待の眼差し、雷の腕立てで震える双丘……これ、本当に最後までやるのか?
仕方ないのでサイコロを振る。
値は、2だ。ヘボいな。
え~と、
「『最初からヘボいあなたに救済の3進む』……やかましいわ!!」
はぁ、実質5だな。
何が来るんだ?
「私が読むね。『食べたいものは何ですか?』」
普通! ここまで変なことさせておいて普通!!
そしてゲームは始まった。
結論として、この双六の趣旨はなんとなく読めた。
「えっとね、『ご趣味は何ですか?』……えっと、あっと、その、凍だよっ!」
「今度は何でしょう? 『あとは若い者にお任せることにして、1回休み』です……またですか!?」
「次よ、次! 何だか大きなマスね。『ずっと待ち焦がれていたんだろ、こんな展開を! サイコロがやってくれるまでの場つなぎじゃなく、主人公が登場するまでの時間稼ぎじゃない! 他の誰でもなく、他の何物でもなく! お前がその手で、たった1つのゴールを掴んでみせるって誓ったんじゃないのかよ? ずっとずっと主人公に、』……長いから却下。要約すると、3マス進んで2マス戻るね」
「意味ねえ! 実質『1マス進む』だろ!!」
「質問は『気になるアイツの胃袋を握り潰す肉ジャガの作り方を答えられなかったら次の番まで腹筋』……また筋トレなのね」
「どうやったら握り潰せるのかな?」
「う~ん、普通の肉ジャガなら作れるんですけどねぇ」
何と言うか、お見合いと罰ゲームを兼ねたような内容のマスばかりなのだ。それも全部のマスに必ず指令が書かれていて、しかも同じマスに止まっても別の指令が浮かんでくる。要所要所の大きなマスだと妙に凝った文字盤が浮かんでくる。
何を目的にした双六だよこれは!?
そして俺への指令は大体こんな感じ。
「あ~、『夜中に食べたいものは何ですか?』……むむむっ?」
夜食か。あんまり夜更かししないから思いつかんな。
「ワクワクッ」
「ドキドキッ」
「うどん?」
「だよねっ」
「……今晩は夜まで騒ぎましょうか」
何故かメスたちにガッカリされる。どうした?
まあいい、さっさとこんなゲームは終わらせてしまおう。
凍、お前は微妙に鈍感だよ
凍「いや、普通食物のことだって思うだろっ?」
焔「これだから凍は凍なんだよっ」
花子「何が『鈍感主人公とは違う(キリッ)』ですか
いつか言ってたなそんなこと
次回は6000文字くらいになる予定
何故か?
3匹の話を1話でまとめたいからです




