表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
フェンリルさん頑張る  作者: けんしょ~
帝都その2
91/145

帝都裏話

今回の裏話にはメインメンバーの1人称がありません!


焔「ええ!?」

雷「あなた、許されないわよ」

花子「折角凍君が卒業したのにどうしてですか!?」


いや、いつも通りのことになりそうだったので

今回はいつか言ったようにスバルとギンガのお話です

帝都編その2のプロローグとエピローグでもあります


では裏話をどうぞ~

―――プロローグ―――

ギンガは本当に私を困らせる。良い意味で。偶に見せる心配そうな顔なんて見ただけで鼻血が出るかと思った。というか出た。

ギンガに萌殺しにされる日も近い。


これじゃ私が変態みたいだから真面目な話もしないと。

手遅れ?

黙って聞きなさい。


私はギンガの本当の母親じゃない。ギンガの母親はギンガを産んだ後に死んだ。その人は私の叔母だった。

綺麗な人だった。身も心も綺麗過ぎた。

だから鬼に凌辱された事実に耐えられなくて、鬼が子供ができたことに喜んでいる隙を突いて自ら死を選んだんだと思う。


私が叔母を見つけたのは、鬼が赤ん坊を嬉しそうに天に掲げている横でナイフを使って自分の首を搔き切る時だった。

無理に止めようとは思わなかったし、私は叔母が死んでもいいと思ってしまった。

尊敬と嫉妬、それが叔母に対する私の感情だった。

叔母は貴族でありながら民を守るために槍を振るう珍しい女性だった。貴族の男が侍になることは珍しくないが、女性となれば話は別だ。


そして、叔母は美しかった。

その魂の在り方も、訓練や実戦で傷ついた美貌も。

顔に傷があるのに叔母に求婚する男は絶えなかった。35で独身の女貴族とは思えない美貌だった。


私は幼い時から叔母と似ていると言われてきた。そして比べられてきた。

似ているものに同じだけの価値を求めるのが人間なんだと3歳で理解させられた。両親は私が結婚するとは微塵も考えなかったみたいで私に槍ばかり教えてきた。


私だって、綺麗なドレスが着たかった。格好良い男の子と、お喋りしたかった。女の子と、お洒落の話をしたかった。

でも、それらは叔母に似ているからと必要だとは思ってもらえなかった。


だから家を出た。

13歳になって侍養成学校に入れられる前に冒険者になって家の者に捕まらないように我武者羅に力を得た。

逆に両親は武に生きるんだなと思ったらしいが、私は自由を手に入れた。女友達とのお洒落話も、冒険者仲間との馬鹿騒ぎも、好きな服を着ることも、全部自由だった。


結局は才能があったみたいで、14歳の時にAランクになった。

Aランクに昇格するための大会で私を見た両親は心底首を傾げたらしい。私がそれなりにお洒落に気を遣った服装をしていたから。

失礼な人たちだ。人の生き様を勝手に決めてそれを押し付けてきたのだから。

控室を訪ねてきた両親にそう言って放心した2人を無視して会場を抜けて仲間との馬鹿騒ぎに興じた。


元商人で政治家のムラウ叔父さんも来たが『似合っている』とだけ言ってくれた。油ギッシュなデブが身内での唯一の理解者かと思うと泣きそうになったが叔父は見た目はともかく内面は尊敬できる人だ。

ブサイクな相手でも好きになってくれるお嫁さんを探してほしい。望みは薄いと思うけど。


そうしてAランク冒険者として1年が過ぎた時、リストカット帝国が私に侍の捜索を依頼してきた。

生死問わず、行方不明になった侍を探してほしいのだという。

リストを見た時、私は息が止まった。

叔母の名前がリストに載っていたのだ。

詳しく依頼書を見て、私は確信した。

侍は鬼の一団に襲撃されて壊滅、叔母は生きていたら繁殖用の奴隷になっているだろうと。


鬼やゴブリンの特性で、メスは繁殖機能が著しく低いのだ。その代りオスの精子は確実に他種族を孕ませる。その後に種族の血を飲ま続ければ鬼やゴブリンになる。

略奪者として進化してきたのが鬼やゴブリンだ。ゴブリンの上位種だとされるオーガも同じだったはず。


私は他にも依頼を受けた数名の冒険者と侍たちが消えた森を捜索した。

何人かは顔見知りで気が楽だった。少人数で魔獣と戦うことがないように完全に捜索メインで動いて、見つけた。

10匹ほどのサイズの合わない侍の武具を装備した赤や青や緑の肌を持つ鬼の集団が居て、所々に侍の装備が見て取れる女性たちを凌辱していた。猿ぐつわを噛まされた女性たちの目に光は無くて、きっと猿ぐつわが無くても意味のある言葉は出てこないだろう思った。


リストを確認すると、やはり行方不明の侍の女性たちだった。

でも叔母は居ない。既に自害したか、戦闘で死んだかのどちらかど私は判断して鬼を殺すために冒険者たちを静かに集めた。

冒険者たちが集まるまでに、1匹の他よりも焦げ茶色の肌の大鬼が合流した。他の鬼が体長2メートルで1本角なのに対して、大鬼は体長2メートル半で2本角だった。

鬼は全部で6匹、冒険者は15人。微妙な戦力差だ。通常なら倍以上の人数で連携を取れば勝てるけど、相手の大鬼が気になる。


これ以上は女性侍が保たないという結論に至り、私たちは鬼を包囲して殲滅戦を開始した。

2人で1匹の鬼を足止めして、足止めに参加しない3人の冒険者が致命傷を与えるという作戦だ。

普通の鬼はその作戦で問題無く殺せた。2人が足止めしているところに3人目が死角から槍で脚や腹を突き刺し、動きが鈍った瞬間に足止めの2人が腕や頭を斬り行動できなくなったところで止めを刺した。


しかし、大鬼はそうはいかなかった。

体躯が大きいので刀では足止めのための間合いも取れず、槍は拳で折られた。鉄の刃では硬度が足りないみたいで武器が壊されてしまう。それでも他の鬼を全滅させて15人で襲い掛かればダメージを与えられた。斧やハンマーを使う冒険者がこれほど頼もしいと思ったことはなかった。

大鬼は生命力も高いらしく、私たちの攻撃から強引に抜け出すと走り去った。


途中で見失った私たちはまだ見つかっていない侍たちを捜索していたのだが、その最中に私は叔母と大鬼を見つけた。

大鬼は私たちから逃げ出したばかりだというのに産まれたての2本角の生えた人間に見える赤ん坊を天に掲げて喜んでいる。叔母はその横で、ナイフを自分の喉に当てていた。足元には鎖と猿ぐつわが見えることから、自死もできなかったらしい。それが可能になった今、叔母は死ぬことを躊躇わないのだろう。


私は凌辱されたことはないから叔母の気持ちは分からない。無責任に励ますなんてできない。叔母を止めようと思うほど、叔母が好きになれない。

私の生き方は半分以上が叔母のせいで決まったと私は思っている。言い掛かりの八つ当たりだとは分かっているが、私が感情的に納得できなければ誰がどんな言葉で説得しても私は叔母を助けようとは思えないだろう。

そして、私を止める者は周りには居なかった。私が少しの時間だけ単独行動をしている時に大鬼と叔母を見つけたのだから当然だ。


そうして叔母は死に、私は大鬼の背後から首を搔き切った。

赤ん坊に夢中になっている大鬼の首を刈るのは簡単だった。警戒心の無い獣は格好の的だ。それは自然界に生きるもの全ての常識だし、大鬼も理解しているだろう。だから死の間際に赤ん坊を私から庇って抱き締めたのも、生き物として当たり前の反応だと私は思った。


私は獣人も魔獣も相手によっては仲良くできることを知っていた。実家には獣人のメイドが居たし、冒険者として生きている間にも何度か言葉を交わした。人間社会に入り込んだ獣人は本当に少ないが、居ないわけじゃないから交友関係を広く持てば会えないことはない。魔獣だって犬や馬の魔獣は人間と共存している。


だから、私はこの赤ん坊を育てようと思った。

鬼は人間に似ている。魔獣とは言われているが、私は魔人や魔族と呼ぶべきじゃないかと考えている。

そして大鬼も叔母も美しかった。大鬼はとても大柄ではあったが、顔は人間の基準で見ればとても美しかった。もし人間だったら女性に刺される未来が簡単に想像できる。

きっとこの赤ん坊は美しく育つだろう。私は叔母と大鬼の子供の将来が見てみたかった。ただの好奇心でハーフの子供を育てることにした。


だけど鬼と人間のハーフは鬼人と呼ばれ忌み嫌われていた。

赤ん坊を人間の街には置いておけなかった。私が赤ん坊を育てるには人間の街には居られない。だけど私は仮にもAランクの冒険者だ。森で生きていくことだってできる程度には強い。それにこの赤ん坊は鬼の力を持っているはずだ。

鬼は体が出来上がるのが速く、脳を吸収すればさらに強くなる。なら、数か月でこの子は強くなれるはずだ。


泣いてイヤイヤをする赤ん坊に無理矢理大鬼の脳を吸収させた。口に少しだけ強引に入れたら墨水のように変化させて飲み込んだ。ちょっとビックリした。


そして、私は1つ失念していた。

大鬼も叔母も本当に美しかったのだから、赤ん坊が美しくなるのは充分に有り得たことだったのに考えてなかった。私が惚れるということを考えていなかった。

短期間で成長したギンガに、私は直ぐに心奪われた。

あ、惚れたのは見た目だけじゃない。中身も勿論最高。私が居ないと泣きそうなのに私を守るために一生懸命な姿は鼻血無しでは見れゲフンゲフン! 涙無しでは見れない。


ギンガのためなら人間の街なんて惜しくない。別に森でも充分に生きていけるし、私はいつかギンガの子供を産みたいと思ってるくらいだ。

ギンガが居れば他は全て居ても居なくても同じで、ギンガが居ないなら他は全て敵だ。そう断言できるくらい私はギンガだけで良いと思ってしまった。


でも、ギンガに友達は必要だと思った。

森で暮らしているうちに魔獣にも人語を話せる種族が居て、ギンガは森の魔獣の半分くらいとなら話せることが分かったけど、それでもギンガと一緒に遊べる誰かが必要なんじゃないかと思った。


どうすれば、ギンガに友達ができるんだろう?

そんな時に来た霊帝からの依頼書は渡りに船だった。駄目ならばギンガと森で暮らせば良い。だから私はギンガと共に帝都に行くことにした。



―――エピローグ―――


俺は母さんの子供じゃない。でも母さんは母さんだ。母さんは今まで俺を自分の子供だって嘘をついて育ててきた。俺だって帝都に来て母さんと自分が普通の親子じゃありえないくらいスキンシップが激しいって理解している。親子としては何か間違ってるって知っている。でもそんなことよりも、母さんに嘘を吐かれたことが怖かった。


嘘はいけないこと? 母さんは俺を騙した悪者?

分からない。俺は悪者がどんなものか知らない。だったら知っている人に聞くしかないのかな? 誰だったら知っているだろう?


……居た。1人、というか1匹? 多分、凍なら俺の疑問に答えてくれそうな気がする。何では分からないけど凍は森の魔獣や焔や雷や花子より俺に近い気がした。霊帝は人間の考え方に染まり過ぎてるから俺とは違い過ぎると思った。

生粋の氷狼が鬼と人間のハーフの俺に近いって、どういうことだろう?


怖い看護師が来た翌々日に凍たちは帝都を出るらしい。そうなったらもう答えは聞けない。無理矢理にでも追い付いて聞かないとって思ったらスイ様が協力してくれた。霊帝の様子見と凍に鬼畜野郎って言ってやるためだって言ってたけど、何で照れてたのかな?


「ギンガがもうちょっと成長したら分かるわよ」


そう言って母さんは俺の鼻を突いた。くすぐったい。


帝宅に着いてみると看護婦さんの小さいバージョンが霊帝に抱き着いていた。何でかスイ様が微妙に怒っている。どうしたんだろう?

凍は『これは脈有か。ロリコンめ』って何だか嫌な笑みを浮かべてスイ様を見ていた。本当にどうしたんだろう?


あ、早く凍に聞いてみないと。


「凍」

「ん? どうした?」


……あ、何て聞かばいいんだろう?


「落ち着け。時間はあるんだから言いたいことを頭の中で纏めてみろ」

「そうする」


ちょっと考え中。

俺が聞きたいのはこれからどうすれば良いのか? 違うと思う。だって母さんと一緒に居るっていうのは変わらない。俺はこれからも母さんと一緒に居たい。

母さんをどう呼べばいいか? これも違うと思う。それは母さんと相談した方が良い気がする。

……何で母さんは嘘を吐いていたのか? それを知っても、俺は何か決められるのかな? 特に意味の無い質問な気がする。

嘘は、いけないこと? これなのかな、俺が知りたいことは。母さんが俺に嘘を吐いていた、その真意とか俺にとっての意味とかは、この質問なら答えてもらえるのかな?


「……母さんの嘘は、悪いことなのかな?」


結局俺の口から出た言葉はそれだった。隣で母さんが痛ましそうに俯いたのが分かる。何でこんな質問しちゃったんだろう。別に知らなくても一緒に居られるのに、一緒に居たいのに。


「別に悪いことじゃないだろ」


凍の言葉を聞いた瞬間、母さんが勢い良く顔を上げた。食い入るように凍を見ている。何か面白くない。


「というか、善悪はお前にとって必要なのか?」


……そう言えば、必要無いかも。


「善悪が必要なのは集団生活を基盤にしている奴らだけだ。そういう意味では人間も鬼も集団生活が基本の生き物だから必要かもしれないけど、お前とスバルは必要ないだろ?」


確かに。


「それとな、俺はスバルの判断は正しいと思うぞ。集団生活をする動物は子供時代は依存できる親って存在が居ると居ないとでは大きく違う。心の安定がな。だからスバルがお前の親として振る舞っていたのは正しいと思うぞ。正直、親子のスキンシップには見えなかったけどな。

で、善悪が有ろうと無かろうと、結論は?」


「母さんと一緒なら親だとか違うとか何でも良いや」

「ギンガが一緒なら別に関係は何でも良いのよ」


あはは、凍に相談して良かった。


長かった、今回の文字数は約5300文字

そしてプロローグで思いました

暗い話を書くのは苦手です


それにしても、普段の2倍だよ

遊園地編でも裏話が長くて困ったのに今回も同じことしちゃったよ


凍「読み手からしたら長くても気にならないだろ」

雷「私だったら普段から5000文字でも構わないわ」


それは更新が遅れるから却下です


焔「プライドかな?」

花子「日数を空けたくないんじゃないですか?」


そう、僕はサボろうと思ったらどこまでもサボっちゃうから各章内では5日以上は間隔を空けないようにしているのです!


凍「普通にサボり癖を直せよ」


次章は8月の終わりか9月の頭になると思います

早く先を書かなければ!


では次章でお会いしましょ~

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ