16話 あ、そうなんだ
凍「出してくれ! 俺は何も悪いことはしてねえ!!」
花子「検察側、被告人の罪状を」
雷「はい。被告人、佐藤凍は驚きと羞恥で気絶した幼馴染を強姦した疑いが持たれており」
凍「普段はお前らの方が性犯罪者だろうがあああああ!!」
今回から帝都編その2の纏めです
では本編どうぞ~
ふ~、こんなに晴れやかな朝、久しぶりだな。
「鬼だわ。気絶しているメスを食い物にする鬼畜が出たわ」
焔を挟んで隣で横たわっている雷が俺のことを非常に不本意な目で見ている。何だ馬鹿野郎。
「焔も花子も気絶しちゃってるじゃない。というか、酷い匂いよ」
「それはつまり、2匹を風呂でもう1度苛めてこいと?」
「死になさいってことよ」
良い笑顔で斧槍を首筋に当てられてしまった。冗談ですよ冗談。
しかし布団に横になったまま斧槍を扱うとは器用だな。
「立てないのよ。焔や花子みたいに気絶してないだけマシね」
雷を相手にする時はもう疲れてたからな。まあ、まだいけたけど今日はこれくらいだろ?
「焔、旅に出て花子や私と合流できて良かったわね。あんな鬼畜を1匹でとか、絶対に受け止めきれないわ」
何か酷い評価を受けてるな。スゲー不本意だ。
「帝都での依頼も終わったな」
「そうね。あとは花子に王都を見せてあげればあなたの当面の目的は果たせるのかしら?」
「まあな」
正直その後は考えてない。と言うか、きっと王都に着くころには誰かが子供を身ごもっている気がするんだよな。きっとこれからは少なくても週に3回はやるだろうし。
狼の妊娠期は60日前後で4頭か6頭くらい産むんだよな。その後の成長も速くて体が大人と同じくらいに育つのも1年くらいだ。でもこっちの世界だと妊娠期は同じくらいでその後はちょっと長い。寿命や成長スピードは人間より少し早いくらいだと思う。
つまり、誰かが孕んだらそこから4年か5年は動くのが難しいと思うんだよな。しかし、焔と雷は身ごもったら魔獣の姿で居て欲しいけど花子の子供はどうしたら良いんだ? ……案ずるより産むが易し、と考えるしかないのか?
う~む、どこか身ごもったメスたちが安全に過ごせる場所を確保しないといけないか? どこかの群れを壊滅させて場所を奪うか? 別に住処を壊すんじゃなくて奪うんなら常日頃からお互いにやってるから特に罪悪感も優越感も無い。習慣って怖いな。王都に戻るんだし危険かもしれないが氷狼の村を本気で探してみるか? 悪くない案かもしれない。でも花子は不確定だよな……どんな案にも良い面と悪い面があるってことだな。
む、バタバタと足音が家の外から近付いてくるな。この音量は子供……霊帝か?
「皆! 臭っ!?」
勢い良く寝室と庭を繋ぐ障子を開いて姿を見せたのは予想通り霊帝だった。しかし部屋の中に充満するイカ臭さに顔を歪めている。ついでに裸で気絶している焔と花子を見た後に俺に蔑むような視線をくれた。見んなよ恥ずかしい。
「ああもうっ、コメントは控えて本題を言わせてもらうよ! 看護師が逃げ出してギンガを探している!」
……あのショタコン、牢屋から逃げ出せたのか? 病院の上層部一斉摘発で薬物の違法実験には変態紳士も関与していたために牢屋行だったんだが、ギンガへの想いは本当に無駄に大きいな。
「しっかし、あの変態紳士はギンガとスバルの住処を知らねえだろ?」
「それが、霊士たちが拷問されて知っている者が喋ってしまった。流石は医療に携わる者だけあって、人の体を痛めつける術を知っていたようだよ」
中々にグロイことをして情報を得たようだ。やるな医療CQCの達人。
とにかく水龍の森に行ってみよう。もし変態紳士がギンガにしつこ過ぎるようだったら手足を切り落として森に捨ててこよう。きっと腹を空かせた魔獣の餌になってくれるはずだ。
「しかし……凍以外は動けそうにないね」
……あ。
「大方昨日の件を治めるために頑張り過ぎたのかな? この変態鬼畜ハーレム製造機」
ぐあっ! 蝶王にも似ようなこと言われているのに子供の霊帝にまで言われただと!?
「とにかく、誰でも良いからスバルたちの所に一緒に行ってくれ! ボクだけであの変態を相手にするのは精神衛生上よくないと思うんだ!」
はいはい。
「雷、俺はギンガたちの様子を見てくるから焔と花子が起きたら入れ違いにならないように待っていてくれ」
「分かったわ。どうせだから焔と花子の気持ちも聞いて今後の身の振りを決めておくわね」
「お前は俺たちと一緒に来るんだ。もう俺のメスなんだからな」
「……勝手なオスね」
ニヤケ面で言われても説得力無いぞ。
さて、霊帝を抱えて氷狼のスピードを活かして最短時間で水龍の住んでいる湖に来たんだが、既にギンガとスバルの親子が変態紳士と交戦していた。コンビネーションもあって親子の方がかなり押しているが、変態に近付きたくないのか腰が引けている。あれじゃ決定打は与えられないな。
「スバル! 加勢に来たよ!」
「レイちゃんっ? それに凍まで!?」
俺の登場に驚いたスバルだったが直ぐにギンガに合図して俺を盾にするように変態紳士と距離を取った。あんな奴の正面に立たせんな!
「また君ですか。私はギンガ君とお話がしたいのですよ、邪魔しないでもらえますか」
「お話って、どんなだよ?」
「具体的には2人で食事に行って手を繋いで歩いて公園を散歩してクレープを食べさせ合いっこして劇場に行って思わず手に触れてディナーを堪能して最後は宿に一泊して」
「もういい、口開くな」
ちょっとBL臭がキツイです。胸焼けも良いところだ。ギンガなんて完全に怯えてる。
「無理無理無理! 母さんと一緒が良い! 母さんだけが良い!!」
「……ギンガ」
ギンガに抱き着かれてウットリしないの。今はそんな状況じゃないから。
「何を言っているのです?」
ん? どうしたんだ?
「この間知ったのですが、ギンガ君のお母さんがスバルさんだと言うのは誤りです」
げっ、何でコイツが知ってやがる!?
「私はギンガの母親よ!」
「何言ってるの?」
「ギンガ、聞いちゃ駄目!」
「あなた方の髪を採取し鑑定しましたが、ギンガ君とスバルさんには血縁関係はありません」
「っ!?」
ギンガがかなり動揺しているな。まあこの変態紳士は死ぬから問題無いか。
「つまり、スバルさんはギンガ君のお母さんではないのですよ」
「黙りなさい!!」
「……母さんじゃ、ないの?」
「ギンガ!?」
うわぁ~、面倒なことになってきたな。
「じゃあ、母さんは誰なの? 俺の本当の母さんは、どこに居るの? 俺は、本当は誰の子供なの?」
とりあえず、これ以上面倒になる前に変態紳士をサクッと殺してギンガとスバルをどうにかしよう。
さ~て、お祈りは済ませたか?
「ギンガ君、そんな嘘吐きの傍に居ないで」
「分かったからお前は黙ってろって」
散弾モードにした銃を口の中に突っ込んで顎の方向に向けて発射する。威力が低いから顎を貫通したらもう弾速はゼロに近くて首とか鎖骨とかに当たってもダメージは無さそう。でも下顎は全部吹き飛ばした御陰で五月蠅い悲鳴は聞こえない。精々が痛みで歪んだ絶叫にならない息遣いが聞こえるだけだ。展開刃を出して両手足を切断して纏めて森の奥の方に投げ飛ばした。ついでに周囲の魔獣たちに好きに喰い散らかせと大声で教えてやった。
「母さん、本当のこと、教えてよ」
「っ!」
さて、こっちはこっちでどうするかな。
凍「髪を採取して鑑定って、かなりヤバくねえか?」
完全にストーカーですね
それも警察が介入して逮捕できるだけの
霊帝「まあ、悪は滅びたし平気だろうけどね」
これがフラグになるとはこの時誰も気付かなかったのだった
霊帝「ええっ!?」
では次回~




