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10話 久々の戦闘は旅立ち

結局俺は王子の依頼を受けることにした。

ちなみに報酬はオッチャンのとこの整備とかを無料で受けれるようにしてもらった。正直俺たちの旅の荷物で1番重いのが金なのだ。これ以上増えても困る。

3年分の生活費は重い。


「さてと。じゃ模擬戦でもしてもらうとすっかね」


オッチャンの1言で凄く嫌な予感がした。何をさせる気だ?


「安心しろ。仲間同士で戦えなんて言わん」


考えてなかったけど安心はした。焔も雷も危険過ぎる。


「相手は用意してっから戦闘員用の訓練広場借りんぞ」


もう用意してんのかよっ! いつだ? いつ用意したっ?


「凍、速く行こっ」

「まともな戦闘は暫くしてなかったわね。丁度良いわ」


乗り気だな~。




で、中庭に来た。オッチャンは3本の魔石と青い液体の入った試験官を持っている。


「んじゃ、始めるぞ」


そう言って試験官を3方向に投げた。地面で割る。魔石が輝いて液体の量が増え、形を固定していく。


「これぞ黒い魔獣(黒スライム)を見て思いついた使役ゴーレムでいっ!」


試験官の中身だった液体は今や4メートルの水のゴーレムと化している。腕はそれだけで俺の胴体くらいの太さだし頭の部分に魔石が浮いている。

この世界に魔法は無いんじゃなかったのかよっ!


「1人1体倒せ」


王子、指示が短いよ。どうせならサービスでお前も倒してやるぞ?


「ゴーレム、坊主たちと戦え!」


オッチャンの指示でゴーレムたちが俺たちと向き合う。本当に1対1になるように対峙している。


「凍、殺して良いよね? ね?」

「あら、こんなオモチャの相手をしなくちゃいけないの? すり潰してあげなくちゃ」


物騒なメスたちですね本当に!

水ゴーレムが振り上げた腕を俺目がけて打ち下ろしてくる。バックステップで躱し、腰から抜いた銃を撃ちまくる。最近は練習で単発にしてある。

魔石の力の塊である弾丸は水ゴーレムの体表に当たって、無くなった。

そりゃ水なんだから衝撃吸収はお手の物か? 同じオッチャンが作ったんでも水ゴーレムの方が後だからあっちのが完成度は高いだろうな。


「ちょっとハードだな」


折り畳み式展開刃を出し、脚力全開。一瞬で水ゴーレムとすれ違い、足をつけ根から切り離してみた。

切り離した足は普通の水に戻り、ゴーレムはバランスを崩して倒れはしたが地面に広がった水を手の平で触ると足が再生された。

そんなのアリか?

つまりあの魔石以外は壊せないと? 魔石砕いたら流石に動かないよな?

頭部を狙って撃ちまくってみたらボクシング選手みたいにガードされた。器用な奴だ。話ができないから魔獣の類ではないんだろうけどなんなんだ?

とりあえず作戦を考えてみた。


「ものは試しだ」


頭部を狙って発砲しながら近付く。腰を落としてガードしているので膝が良い感じに踏み台になる。膝を踏み台に飛び上がり、ガードしている腕に展開刃を突き立て背面に宙返りする。

何と言うことでしょう。見事、水ゴーレムの頭上に到着です。足場が無いから攻撃されたら終わりだけど。

案の定、魔石に展開刃を振るう前に振り回した腕に当たり吹っ飛ばされた。もうちょっと短く飛ぼう。


「ほう、あんな方法でゴーレムの弱点に迫るか」

「相変わらずとんでもねえ坊主だな。何で俺のゴーレムの直撃受けてピンピンしてられんだ?」


空中で体制を立て直して地面を滑って着地をキメたらオッチャンに不満そうにされた。

五月蝿い結構頑張ってんだから文句言うな。

しかし強いと言うよりは、攻めづらい、だな。弱点はハッキリしているが高い位置にあるし水が硬いしで上手く攻撃できん。アレ以外に目立った弱点もなさそうだ。

もう1度頭部に発砲しながら距離を詰める。今度は片腕だけをガードに使いもう片方の腕で迎撃する気のようだ。

水ゴーレムが地面に腕を振り下ろすとちょっと立ってられないくらいに揺れた。


「そんなこともできるのか」


敢えて軽目に倒れ、ブレイクダンスのように起き上がる。そのままダッシュで近付く。

発砲していないため今度は両手で迎撃しようとしてきたが頭部に銃口を向けることで動きを封じた。

一気に速度を上げ、すれ違いざまに左足を切り落とす。先程と同じようにバランスを崩したところで背中を伝い頭部に銃口を突き付けた。そのまま水の中に押し込み魔石に銃口を突き付け、引き金を引いた。

パリィンという子気味良い音と共に魔石が砕け散り水ゴーレムもただの水になった。


「むう、たいして焦りもせずに勝ちやがって、改良しねえとな」


まさか不機嫌そうになるとは思わなかった。

しかし、この銃切断は良いから貫通系の攻撃できないか? いくら零距離射撃でも元の威力が低くちゃあんま変わらん。


「む、ホムラも攻勢に出たな」


少し距離をおいた所で戦っている焔は……何か、水ゴーレムの右腕に法剣巻き付けてる?

あ、引っ張られる反動で一気に距離詰めて普通の剣状態で攻防してる。水ゴーレムの腕よりも法剣の方が強いようで打ちあった腕がバターのようにアッサリ切れて水に戻る。動きを止めずにまとめて両足を切り離し、最後には左腕まで切り落として水ゴーレムの達磨の完成です。

ちょっと酷いなと思っている間に頭部の魔石に法剣を突き立て、ただの水に戻した。


「コオル、ホムラの戦い方が前より酷くなってる気がするんだが?」

「知らん」


あ、雷も終わりにする気だな。

基本片手で斧槍を振り回す雷は柄中央のナックルガードに右手を入れて扱う。どう見ても片手で扱える武器ではないのだがそこはご愛嬌。

降り下ろされる水ゴーレムの腕を斧槍で切り飛ばし、踏み込んでゴーレムの膝関節に拳を放つ。水ゴーレムの左足が引きちぎられるように弾け飛び、片足を失って倒れる水ゴーレムの胴体を斜めに叩き切る。

下半身の方は前のめりに倒れるが上半身は後ろに倒れそうだった。ナックルガードに仕込んであるトリガーを引き、斧を小さくして槍を長くした槍斧に変えた雷は綺麗に魔石を貫いて水ゴーレムを倒した。


「どんな腕力だ? 戦い方事態は普通だが」

「雷は言葉の通じない相手には普通の戦いしかしないからな」

「……気を付けよう」

「そうしてくれ」


さて、模擬戦は終わったが……王子とオッチャンがオワタになりそうで怖いな。




結論、俺が生贄になることで王子とオッチャンは助かりました。いつかシメル。

何があったかって? 聞くな。ギリギリ貞操は守りきったけど。


「凍、昨日は楽しかったねっ」

「ふふっ、妙なゴーレムと戦った甲斐もあったわ」


ええ、大丈夫です。放送禁止事項なことにはなっていません。放送禁止用語に引っかかることにもなっていない、と思います。

そんなことは忘れて今日の話だ。模擬戦の翌日たる今日は王子の依頼を受けて船で隣国リストカット帝国に向かう。国名は気になるが気にしてる余裕が無い。さっさと出発しよう。


次話で都編は終わりです

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