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第73話 エロ同人みたいに

やっとこさ賢者バッソーと出会えたグリムナ。しかしバッソーは予想以上のド変態だった。一発抜いてすっきりしないと賢者としての力が使えないという、EDじじいなのだ。

そんな折、牢に騎士団長イェヴァンが尋ねてきた。

「お、俺に乱暴する気だな! エロ同人みたいに!!」


 このグリムナの言葉を聞いて一瞬イェヴァンはぽかんとした表情になった。

 まずかっただろうか……一瞬グリムナの表情に悪寒が走る。勢いでギャグみたいなことを言ってしまったが、「まずいか、怒らせてしまっていないだろうか」と、グリムナはそう考えたのだが、イェヴァンはニヤリ、と笑みを見せたのだ。


「分かってんじゃないの」


 笑いながらそう言い、イェヴァンは牢のカギを開けた。まさかのビンゴであった。非常にまずい事態である。R-18まっしぐらの事態になりかねない。そんな思いとは無関係に、イェヴァンは牢の中に入ってきながら話しかけてくる。


「アタシも噂には聞いてんだよ……あんたと交わればすごい力が手に入るってね……あんたも最後にいい思いしたいだろう? なあに、ケガ人に腰振れなんて言わないさ。あんたはじっとしてれば、あとはアタシのテクで天国に連れてってやるよ。だから、それまで天国に行くのはちょっと待っててくれよ」


 そう言ってイェヴァンはにひひ、と下品に笑う。どうも随分と性に対して奔放な女のようである。こんな野獣の集団をまとめ上げているならそれも仕方ないのだろうか。しかしグリムナは慌てて身をよじりながら、怪我をしている演技をしながらもイェヴァンから逃げようとする。彼からすればこんなところで、マッチョおばさん相手に童貞喪失などとんでもない。


「ま、待ってくれ! 聞きたいことがある……」


 咄嗟にグリムナはそう言ったものの、聞きたいことなど何もない。いや、正確に言うと『答えてくれそうな事』で『聞きたい事』は何もないのだ。今までの彼女の言動からして、依頼主の事を聞いたとしても「冥途の土産に教えてやる」なんて枕詞をつけてベラベラ喋るようなぬるい奴らではないことは明白だ。むしろそんなことを唐突に聞けばこの期に及んで情報を収集しようとすることを怪しんで、実は怪我が治っていることにすら気づくかもしれない。


「な、なぜ……騎士団を名乗っているんだ……」


 グリムナの口から絞り出されたのは実にしょうもない内容の質問であった。しかし、今は少しでも時間が稼げれば考える時間が確保できる。正直言って彼は唐突な事態の進展に戸惑ってパニック状態になっていたのだ。


 ちなみに、バッソーはというと牢のすみで正座して事の顛末をじっと見守っている。一瞬イェヴァンがちらりと彼の方を見たが、「あ、私は黒子ですので、お気にせずどうぞ」と言ったきり身動きもしないし、音も立てない。どうやら間近でじっくりと観察しようという魂胆のようだ。なぜグリムナの近くに寄ってくる人間は揃いも揃ってクズばかりなのか。


 しかしイェヴァンは少し身を引いてにやりと笑ってグリムナの問いかけに答えた。


「いいだろう、冥途の土産に教えてやるよ」


(あ、冥途の土産出た)


「巷じゃ色々言われてるだろうがね、アタシらは正義を成すために身を寄せ合ってる集団なのさ」


 この言葉に思わずグリムナの表情が歪む。正義と言ったか。確かに先ほども言ってはいたが、あれほど好き勝手に人の命を奪っておいて、罪もない村を襲い、略奪、殺し、人さらいをしておいて、この狂犬集団は自らの事を正義と称するのか。


「ま、そんな表情になる気持ちもわかるよ。世間じゃアタシらは野盗集団ってことになってるからね。でもね、それはアタシらの作ろうとしている世界を疎んでいる奴らが流している悪い噂のせい。奴ら、権力者共の陰謀なのさ」


 陰謀という言葉まで出てきた。この女、統合失調症なのだろうか。イェヴァンは一旦間をとって、キッと真っ直ぐグリムナの目を見てさらに続けた。


「アタシらの目指すもの、それは『自由』『平等』『平和』だ!!」



 アカンやつや……



 グリムナは顔面が蒼白になった。これは、話が通じないタイプのキチガイである。一番関わってはいけないタイプの自分の事を正義と信じて疑わない極悪人、そして、グリムナにとって天敵となる人間でもある。自分の行動に対して一切の罪悪感も、後悔もない。グリムナの『術』は相手の心を極限まで落ち着け、賢者モードにすることで闘争に対するむなしさと、己の良心に語り掛けさせるものである。もし、対象者に一切の罪悪感がなければどうなるのか、それは正直言ってやってみなければ分からない。


 翻って見るに、確かに国境なき騎士団は『自由』に行動をしている。他人の命と財産を『自由』に奪っている。そして、組織の有り様はまだよくわからないが、どうせこの狂犬集団の事だ。力あるものならば誰でも上に行けるシステムなのだろう。そういう意味ではきっと『平等』だ。「力なき者は去れ」になるが。『平和』、これだけは良く分からないがきっと彼らにだけわかるロジックで平和な世界を手に入れるために活動しているに違いない。


 ここで重要なのは、とにかく話の通じる相手ではないということなのだ。何しろ自分が腹を貫いて致命傷を負わせた相手をこれからレイプしようとして、さらにその目の前で『自由』『平等』『平和』を真顔で声高に謳っているのだから。


「アタシらはいずれ自分の『国』を手に入れる。さっき言った三つのスローガンが叶えられる国をね」


 スローガンで国が成り立つならソ連は崩壊していないだろう。


「と、言うわけであんたには国の人柱になってもらいましょーねぇっと。大丈夫大丈夫、アタシはテクには自信あんだよ。あんたは自分の人柱にだけ神経集中してりゃいいから」


 笑顔でそう言いながらイェヴァンはグリムナの首筋にキスをしつつ彼の股間をまさぐってきた。グリムナは戸惑うばかりである。しかし、嫌よ嫌よと言いながらも、体は正直なものだ、グェッヘッヘ。生まれて初めて他人に恥部を触られるという異様な感覚に身をよじって悶えてしまう。


(ああ、こんなところで、マッチョおばさん相手に俺は童貞を喪失するのか……でも、まあ悪くないかも。言ってる通りすごい気持ちいいし、初めては年上がいいっていうしな……)


 一瞬流されそうになってしまうグリムナ。しかしそんな彼の脳裏にある人物の言葉が流れてきた。


『ちゃんと考えてますか? おちん〇んで考えてませんか?』


(いかん!!)


 ハッと、グリムナは正気に返る。


(おちん〇んで考えていた!!)


 ヒッテの言葉を思い出してかろうじて正気を取り戻したのだ。状況を冷静に分析する必要がある。当初の予定とは大分違う。時間はまだ昼を過ぎたあたりで、打ち合わせていた陽動作戦の時間には大分早い。しかしその作戦は既に敵に読まれているのだ。

 さらに状況を考えるのならば、逆に今はチャンスである。敵の首領が肌を触れ合うほどの近距離にいて、しかも顔を彼の近くに寄せているのだ。これほどの一発逆転のチャンスがあろうか。


 首にキスをしていたイェヴァンが何かに気づいたようで、顔を下に向けた。


「ん? 腹の傷が……」


 その言葉を終える前にグリムナは彼女の頭部を抱きかかえて口づけをし、舌をねじ込んだ。


「んちゅ……レロ……んふぅ……」


 久しぶりの激アツ濃厚接触である。イェヴァンの瞳が段々ととろんとしてきて、顔色も上気してきた。勇ましいいつもの姿と違ってなかなかにセクシーな表情である。事情を知らないバッソーは「いよいよはじまるのか」と齧り付きで見ている。


 ちゅぽんっ、という音とともに口から糸を引きつつグリムナはイェヴァンから唇を離した。イェヴァンはかろうじて意識を保ってはいるものの、腰が抜けてしまったようで、上半身をなんとかひじで支えているだけで、起き上がることができない。


「な……何を……した……」


「俺との接触が望みだったんだろう……お望みの物をぶちかましてやっただけさ」


 付着した唾液をふき取りながらグリムナがそういう。忘れがちだが、グリムナの初めての女性とのキスである。彼は一抹の寂しさとともに唾液をふき取ったのだ。しかしじゃあ誰とが良かったの? と聞かれると彼も言葉に詰まるところではあるのだが。


「なんなん……だ……この感覚は……」


 これまでと同じであれば、今彼女の胸の内には同じ人間同士、相争うことへの虚無感と、自らが犯した罪への後悔の念が渦巻いているはずである。とはいうもののあまりにも倫理観のぶっ飛んだ連中である。『罪の意識』というものが存在するのかどうか、そこがまず怪しい。さらに言うなら、実は女性に対しこの『術』を使うのは初めてなのだ。女性と男性では本能的な考え方、脳の構造が違うところもあるだろう、そこも不確定要素となっている。


 グリムナは先ほどイキったような発言をしてはいたものの、内心は不安と恐怖で押しつぶされそうだ。技もかけてしまったし、怪我も治っていることを知られている。こちらの『奥の手』は全て出し尽くしてしまったのだ。


「え? これで終わりなの……続きは?」


 このクソじじい。グリムナは口にこそ出さないものの思いっきり自身の悪態を表情に出してしまっていた。一人だけこれが『戦い』だと分からずに、ただの前戯と勘違いしたままなのである。グリムナはバッソーを無視して再びイェヴァンに注視する。

 イェヴァンは苦しそうに息を荒げて眉間に皺を寄せている。


「なんなんだ……何を……したの!?」


 唾液を垂らして苦しそうに呟くイェヴァンは存外にセクシーであった。十分な効果を発揮しているのかどうかは謎であるが、どうやら少なくとも一定の影響下にはあるようだ。

 その時である、洞窟の入り口の方から複数の足音が聞こえてきたことに気づいて、グリムナは慌ててそちらの方を見る。


「おいおい話が違うじゃねーか。てっきり団長のまな板ショーがみられると思ってたのによ!」


 髭面のいかつい男がそう言いながら先ほどイェヴァンが洞窟の入り口付近の地面に突き刺した魔剣サガリスを手に取った。


「へへ、ようやく手に入れたぜ、こいつがサガリスか……」

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