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中世騎士と宇宙世紀科学者 ~ファンタジーとSFの異文化ラブコメ! ゾンビ世界でグルメ開拓スローライフ!?~  作者: 神奈いです
新しい関係

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41 デートの約束

 

 難民の受け入れにより湖畔の集落の人口は急に三倍近くに増えた。

 老若男女騎士科学者魔女狩人その他合わせて五十数人である。


 新入りの難民たちが湖の周りでわさわさと騒いでいる。


 「何だこの四角いのは……魔道船だって……?」

 「すげぇ、初めて見た……」

 「すると一番偉い貴族様はあの青髪の錬金術師様か?」

 「黒髪の土魔女様も偉そうだぞ」

 「いやいや、よく聞くとあの騎士様が一番偉いそうだ」

 「一騎で死者ゾンビ数百に相当する武勇で、集落ができたのも、家を作ったのも全部騎士様の働きだそうだ」

 「すげぇ」

 「ありがたいことだ」


 アメノはそんな人々を眺めていた。衣服や文化、言葉は燻製屋たちとはあまり変化はないようだ。なので文化サンプルとしては特に必要ない。集落の全体最適から言ってもこんな人数は維持が大変である。


 しかし、ウィルが人を助けたいと言っているから、それでいい。


 難民たちが全体最適も理解せずに何が欲しいあれが欲しい協力したくないと騒いだら処分するところだったが、今のところお行儀はいいようだ。

 

 アメノは難民の手当てを手早く済ませ、全員の口に完全栄養食で免疫増幅効果のある給食ペーストを無理やりつっこんだ。


 「あ、あれ?身体がだるくないぞ!?」

 「おかしい、こんなに身体が軽くなるなんて」

 「痛くない、もう痛みがなくなったよ治った!」

 「ああ、錬金術師様。働けます!」

 

 全く治ってない。回復するのはこれからである。


 各人の症状にあわせた本格治療を行いつつ。

 神経系を少し騙して痛みや不快感を抑え。

 免疫系を活性化させて自然回復力を引上げ。

 不足していた栄養分をむりやり補充しただけである。


 「治ってないし体力も戻ってないから安静に」


 アメノは口々に騒ぐ難民たちに無表情に告げるとウィルのもとへ向かった。


 ― ― ―



 木製の新しい家が立ち並ぶ一角で、ウィルは黒髪の土魔女ジョセルと立ち話をしていた。難民の受け入れについて相談しているようだ。


 「家も食料も全然足りやがりませんね」

 

 ジョセルがつぶやく。おお急ぎで円錐型の掘立テントを立てたが、難民の人数に対してはどう見ても足りていない。

 

 「まず、薪用に確保していた丸太を全部家づくりに回そう。それでも足りないから新しく伐らないと」


 そう決めるとウィルは周りの大人たちに指示を出しはじめた。難民たちが家づくりに動き出す。


 色々考え、相談し、そして指示を出す。とても忙しそう。でも、ウィルはまたも人間を救うことができて嬉しそうだ。これでいい。ウィルが喜ぶかどうかが私たちの関係上も重要だ。


 「ウィル、話がしたい」


 ウィルに声をかけると、栗毛の騎士は私を見てほっとしたように返事をした。私もほっとする。やっと、話がしたいことが伝わった。


 「俺も話がある……アメノ、伐採の仕事があるから夜にでも」

 「分かった、サポートAIも伐採の支援に回す」


 それを聞いて、ウィルはにこりと笑うと斧をつかんで森へ向かって行った。その後ろを作業用ドローンに入ったサポートAIがエプロンドレス姿でついていく。



 ウィルたちを見送ると、ジョセルが後ろについてきて不満げに愚痴った。


 「デートの相談でいやがりますか、お熱いことですねぇ?」


 新しい単語が出てきた。文化用語だろうか。古語辞典を確認する。「時間や日程を決めて社交的な目的で会う約束」とあった。


 「えっと、ウィルと時間を決めて会う約束をしたのでデートでよいのか?」  

 「そのあと二人っきりで歩いたり喋ったり顔を見たりその色々するならデートなんじゃないですかねぇ?」


 その他いろいろとは何だ。もっと正確に定義してほしい。


 そこで一つのことに気が付く。いまジョセルと二人っきりで会って歩いて顔を見ながら話をしている。


 「我々もデート?」

 「……じゃあ私たちもデートですよ! 付き合いやがりなさい!」

 

 あっというまにジョセルに手を引っ張られ、引きずられるように連れていかれてしまった。


 ― ― ―


 

 植物生命体を培養するための地上施設、つまり畑の前でジョセルが魔法を唱えている。作物育成支援の土魔法だ。


 手元の端末を撮影モードにしてずっと観察しているが、観測できるエネルギーの動きはない。しかし、唐突に物理的影響が発生する。これは一体なんなのだろうか。


 「デートとは魔法のことだったのか」

 「人数が増えやがりましたからねぇ、早めに備蓄しないとこのままだと冬に皆飢え死にですよ」


 なんでも冬になると森での食べられる植物集めもできなくなり、動物も冬眠するなどしてほとんどいなくなるそうだ。それはまずい。


 見ると燻製屋夫婦が難民たちに教えながら、荒く破壊された土壌から石、根っこのゴミを根気よく取り除いていた。もちろんこのあたりの地表を掘り返したのはウィルとサポートAIだ。

 

 魔法の謎を解明すべくジョセルを観察していたが、特に成果のないままに肥料づくりを要請された。


 しかたがないので土壌の成分を調査して、ここに植える植物の名前を聞いた。


 「作物に合わせて投入量を決める」

 「そんな細かいことをするんですかい?!」

 

 ゴルジとフィリノが驚いているが、むしろ土壌や作物に合わせて調整しないなら何を目印に土壌成分を調整しようというのか全く分からない。


 「肥料なんてこう長年のカンで撒くんですぜ?」

 

 何といういい加減な……



 

 というわけでしばらくジョセルとデートをすることになった。農地の土壌成分の調整剤、つまり肥料を撒きながら、ジョセルが作物に魔法をかけていく。


 「ああ、わざわざお貴族様に祝福していただけるだなんてなんてありがたい」

 「こんなにたっぷりの肥料なんてつかったことねぇだ」


 作業をしている難民たちが何か騒いでいるが特に問題はないようだ。


 ジョセルが声をかけてきた。


 「で、その錬金術はどこで学んだんです?」

 

 前に説明した気がするが、科学者養成課程の教室をこたえる。


 「やっぱり知りませんねぇ……出身地も聞いたことないですし。世界はやっぱり広いんですね」


 ジョセルが何かに気づきかけたがすぐに自分で納得した。

 それはそうと、私も頼みがある。


 「魔法について教えてほしい」

 「……そういえば魔法使ってるところ見たことないですね」

 「私は技術しか知らない」

 「そんな錬金学校があるわけ……」


 そういうとジョセルは軽く悩んで発言した。


 「はぁ……デートしてくれたらいいですよ」

 「今のこれがデートなのでは?」


 さっきから言うことがコロコロ変わる魔女である。こまったものだ。


 「これは農業ですねぇ夜にでもお願いしますよ」

 「ウィルの後なら」


 魔法とやらの正体がわかるならば何でも歓迎だ。ジョセルはにやりと笑ってデートの約束を受けた。



 ◆ ◇ ◆



 一方そのころ、ウィルとエーアイは森の片隅で一定以上の太さの木をひたすら伐採していた。


 建材になるだけでなく、冬の燃料にするためにも大目に乾かしておかないといけない。生木しかなくては凍え死んでしまうだろう。


 

 コーン!!


 ウィルは斧を木にたたきつけると、エーアイに話しかけた。


 「ところでさ、エーアイさん。アメノについて教えてほしいんだが、生まれとか家族とか好みとか……」

 「ええ、私の身体って柔らかいんですよ。特別なポリマーで出来てまして。ぷるぷるしてますからね。触りますー?」


 エーアイがエプロンドレスに包まれた女性らしい膨らみを揺らしながらこちらをチラチラ見てきた。


 いや、そんなことは聞いてない。


 「えっと、話聞いてる?」

 「聞いてるから全力で邪魔してんですよねぇーー」


 うすうす分かっていたが、この子はどうも話が通じない。あと、アメノに忠実過ぎて俺を警戒しているようだ。


 アメノのことを聞き出すのは諦めて、ふと思い出した。


 「それはそうと、エルフたちに何かされたの? 大丈夫だった?」

 「……な、なにを想像してるんですかキモいですね」


 そういうとエーアイはちょっと驚いたように俯く。


 「私なんて心配しなくていいんですよ、マスターを心配しなさい」

 「いや、服がなかったのはエーアイさんだから、エーアイさんが心配なんだけど……」


 エーアイはそっぽを向きながら言い捨てた。


 「ちょっと若い森人さんが粗相して服が汚れたから洗濯してもらってただけですよ」


 粗相ってなんだ。酒でもかけたか。


 「まぁそんな感じです、何で聞くんです?」

 「いや、エーアイさんは可愛いし、森人エルフたちにも人気みたいだったから、ちょっと気になって」

 


 「みゃ?!」

 

 そういうとエーアイはなんかそっぽを向いたまま少し距離を取ってしまった。まぁ、何もないならいいか。

 

 

 そのまま木を伐り倒していると、銀髪の狩人少年キラが木に向かって弓を射ていた。


 ヒュッ……ストッ。


 木の幹には炭のかけらでヘタな絵で耳長の絵がかいてあり、そこの急所に矢が見事に吸い込まれていく。


 エーアイが何かをごまかすようにキラに声をかけた。


 「キラさんは何やってんですか?」

 「訓練! 次は負けない!」


 いつもの眠そうな目のまま、やけにはっきりとした口調で断言するキラ。

 

 すると、あれの耳長はカシウか。何か勝負して負けたんだろうが……向上心が出ることはいいことだ。


 ウィルたちはキラを激励すると木の伐採を再開した。

 

 ◆ ◇ ◆



 日が暮れて、燻製肉中心に食事をとる。今日はソースにハチミツも入って非常に好評だった。


 「美味い、美味いよ……」

 「さっきの灰色の粥からすればこんなごちそうが食えるなんて」

 「ああ、あの灰色の粥は本当にひどかった」

 「なんか希望が湧いてきたぜ」

 


 小声でしゃべってるつもりだが、端末が録音モードなので全部聞こえているのである。どうも難民に不穏分子がいるようだ。きちんと監視しなければいけない。

 

 それはそうと私も食べて幸せになりつつ、このあとのウィルとの話を考えていた。


 えっと、まず謝って、そしたらキスして……


 いろいろと作戦を立てていると、サポートAIが近寄ってきた。


 「マスター何か接近してきています。すみません、上空の監視はする必要はないと判断していたため……発見が遅れました」

 「え」



 月が巨大な暗い影に隠れ、難民たちが騒ぎ始める。


 「な、なんだあれば?!」

 「そ、空から大きな……魔物か?!」

 

 「あ、あれって……魔道戦艦じゃないですかぁ!」


 暗い夜空に巨大なフネが浮かんでいた。


 ちょっとまって。キスはどうなる。

金曜日分の更新です。

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現行連載作  迷宮伯嫡子はカネがない

大借金で領地取りつぶしの危機である。頼れる親や重臣たちは外出中、財布は空で留守番役。 状況を切り抜ける特別なご加護や卓越した武勇や超魔力なんかもない。 そんな状況だけどボクは前向きに取り組んでいく。 まずは軍資金ゼロで軍隊を動員?できなきゃ領地は大変だ?
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