33話
更新するのが大変遅くなってしまい申し訳ございません。
言い訳にしかなりませんが、忙しくて、執筆する暇がありませんでした。
駆竜を見ながらじりじりと距離を取るマイたちだが、俺は駆竜に注意しながら周囲を目に氣を込めながら見渡す。
俺の予測が当たっていれば近くにいるはずなのだが…
「お、お兄ちゃん。逃げるよ」
「逃げなくても大丈夫だと思うぞ?」
「何でそう言い切れるの?」
訝しそうな表情をしながら聞いてくるマイ。
「俺の予想が正しかったら、知り合いの配下?の筈だから」
「え、そうなの?でも違ったらどうするの?」
操っていると言っていたから似たようなものだろう。
そう思っていると、一瞬驚いた表情を浮かべるマイだったがすぐに、不安そうに聞いてくる。
まぁ、その時はその時だ。俺が責任を持って囮になって時間稼ぎをするよ。逃げなくても大丈夫だろうと言ったのは俺だし。
そうマイに伝えると、ますます不安そうな表情になった。
うん、無理もないか。だって、俺はまだ初心者装備だし。ついでに言うとお金もないしな。…それは今は、関係ないか。
まぁ装備は心もとないが、マイたちが実際に戦っているところはまだ見たことないが、自惚れでなければこのパーティの中で一番戦闘技術があって、逃げ切れる可能性があるのは俺だろう。
それに一度、操られているとはいえこの駆竜と戦っているからな。
「なんとかするさ、だからいつでも逃げれる様にしてそこに居ればいい」
そう言って駆竜の前まで歩く。
駆竜は近付いてくる俺に警戒をしているようだったが、攻撃を仕掛けてはこない。
駆竜の爪攻撃が届きそうなほどまで近付いた俺に、駆竜は咆哮をする。
「ひっ!」
後ろでミイが悲鳴を上げたのが聞こえてきた。
チラッと後ろを見ると、マイたちは耳を押さえて竦み上がっていた。
俺は氣を耳栓がわりに込めているからなんとも無いため、駆竜に氣を込めながら威圧をする。
すると、駆竜はビクッと少し体を震わせてからスッと目を逸らした。
…やっぱりお前、ナーシャが操っているだろ。早く出てきなさい。
「近くにいるなら出てきなさい」
そう言って、少ししてから近くの木の裏にナーシャの気配を感じ、そちらに顔を向けると、ナーシャが木から少し顔を覗かせてこちらを見ていた。
何やってるんだお前は。
「お、怒ってない?」
「別に怒ってないが、どうしてだ?」
「その…ユウお兄ちゃんの後ろにいる人たちに向かって威嚇したから」
「攻撃をしたのなら怒るが、なんともないから怒ってないぞ」
そう言うと、ナーシャはホッとしたような顔をしてから隠れるのをやめて、こっちに歩いてきた。
ナーシャが近くまで来ると、俺は帽子の上から乱暴に頭を撫でた。
「ちょっ、ユウお兄ちゃん?」
「怒ってはないが、俺の妹の仲間を怖がらせたお仕置きだ」
ズレた帽子を直しながら不思議そうな顔をして聞いてくるナーシャにそう言う。
ナーシャは、しゅんとちょっと落ち込んだ表情を浮かべた後、ナーシャが出てきた辺りから興味津々と目を輝かせながら近くまで来ていたマイたちに向かって「ごめんなさい」と言って頭を下げた。
「私たちは気にしてないから謝らなくていいよ。それとお兄ちゃん、この可愛らしい子は誰かな?」
「ナーシャ、自己紹介をしてやってくれ」
マイからの質問に、ナーシャに丸投げをした。
「あ、うん。私はナーシャ、バンビーナ族…です」
俺の後ろに隠れながらそう言った。
…そう言えば、ナーシャは人見知りだったな。
「ナーシャちゃんね、私の名前はマイと言ってそこにいるユリウスの妹だよ。それで、私の隣にいるのがアイとミイとシイだよ。よろしくね」
「それで、ユウお兄ちゃんは何しているの?」
「あぁ、マイたちと一緒にパーティーを組んで素材集めとかしているんだ。ナーシャは駆竜を操って見回りか?」
「うん。そうだよ」
それから少しナーシャと談笑をしてから「見回り頑張れよ」と言ってナーシャと別れた。
それと、駆竜のままだと目立つから他の奴にした方が言いとも言っておいた。それに、他のプレイヤーが見たらビックリするだろうしな。
ナーシャと別れた俺たちは、マイにいつの間にナーシャと仲良くなっていたのか聞かれ、とあるクエストを受けてそれから知り合って仲良くなった事を教えた。
その後、シイにどんなクエスト内容だったのか聞かれた為、「レイアという少女を守りながらさっきの駆竜と3人の元騎士から町まで逃げ切る」と少し大雑把に教えると、あんまりな内容にマイたちは頬を引き吊らせてドン引きをしていた。
その後は、調合に使えそうな素材をある程度集めてからマイたちのレベル上げをして、ユウフスベルに戻ってマイたちと別れた。
マイたちはこの後も用事があるらしくログアウトをしていき、それを見送った後、俺はロドリゲスたちの所に行った。
というのも、この辺りに俺の作ったアイテムか素材が売れる場所がないか聞くためだ。
このままだと本当に一文無しになってしまうからな。
チャーリーのアトリエまで来て、中に入るとまだレイウスさんがロドリゲスと話し合っていた。
と、レイウスさんが俺に気付いて声をかけてきた。
「ちょうど良いところに来たな。ユリウス、これから5日後に開催することになったぞ」
「分かりました。5日後ですね」
「あぁそれで、ニーニャとナーシャに参加できるかどうか聞いて、参加出来そうならその事を伝えてくれないか?」
「はい、いいですよ」
了承をする俺だったが、レイウスさんは少し不満そうな顔をした後、
「ユリウス、別に無理して敬語を使わなくても構わないぞ。いや、使わなくていい」
「いえ、流石にそう言うわけには」
「構わん」
「はぁ、分かった」
俺が敬語をやめるとレイウスさんは満足そうに頷いていた。それから俺は、当初の目的であるどこか売れる場所がないかロドリゲスたちに聞いて、教えてもらった後少し談笑をしてから店から出て愚者の住まう森に向かった。
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「うん、行く!」
愚者の住まう森に来て、ナーシャを気配察知をしながら探していると俺の言った通り別のモンスターを操って見回りをしていたナーシャが先に俺に気が付いて、ナーシャから俺の所に来た。
それからナーシャにレイウスさんからの事を伝えると、ワクワクとしながら即答してきた。
さて、後はニーニャに伝えるだけか。
「それじゃあ、ナーシャ。この事をニーニャにも伝えてってその必要は無さそうだ」
不思議そうな顔をしているナーシャを後目に、後ろから気配を消して飛び掛かってきた影からの攻撃をかわした。
何故奇襲をしてきたのかは分からないが、ナーシャに伝えてもらう手間が省けて良かった。
「そういう事で、ニーニャも参加するのだろう?」
「……えぇ、ナーシャが参加するのなら私も参加するわ」
さて、ナーシャたちにも伝えたし俺もユウフスベルに戻ってログアウトをするかな。
と、その前に何で奇襲をしてきたのかニーニャに聞こうか。
「……何となくノリで。その、すみませんでした」
「お母さん」
お仕置きとして、コツンと優しくニーニャの額を叩いた後聞き出すと、額を押さえながら涙目になりながらもそう答えた。
ノリって、お前。ナーシャも呆れたような顔をしているじゃないか。まぁ、今度からはするなよ。
ニーニャたちと別れた後、俺はユウフスベルに戻ってログアウトする前にロドリゲスたちに教えてもらった店に寄り、作っていたポーション類を全部売ると、2000Lになった。
……ポージョンは売れなかったけどな。
その後は、調合はまた今度にしてそのままログアウトをした。
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あれから5日たち、今日はユウフスベルの運動会当日となった。
ログインをすると、いつもと違い噴水広場には色んな屋台があっていつも以上に賑わいをみせていた。
屋台の客寄せの声を聞きながら俺は真っ直ぐとチャーリーのアトリエに向かった。
日程がよく分かっていないから知り合いに聞かないとな。
チャーリーのアトリエまで来た俺は中に入ると、ロドリゲスとチャロットがそわそわとしていた。
「おう、ユリウス来たか」
「おはようございます、ユリウスさん」
「あぁ、おはよう。それと、何でそんなにそわそわしているんだ?」
そう聞くと、チャロットが後一時間くらいで開会式が開かれるからと教えてくれた。
…一時間後か。ナーシャとニーニャを迎えに行かないといけないのだう?
そう思いながら聞くと、ナーシャとニーニャは昨日の内にユウフスベルに来ていて、ここで寝泊まりをしたらしい。
それならいいけど、そのナーシャたちは何をしているんだ。
「ナーシャちゃんとニーニャちゃんならまだ寝ているよ。今日が楽しみでなかなか寝れなかったみたい」
そう言いながら微笑むチャロット。
ナーシャはともかくニーニャもか。それでもそろそろ開会式があるのなら起こしてきた方がいいんじゃないのか?
「ふふ、そうするわ」
チャロットは微笑みながら店の奥へと行った。
それから少しして、眠そうにしながらナーシャとニーニャが店の奥から出てきた。
「二人して眠そうだな、顔でも洗ってきたらどうだ?」
「あーうん、そうするー」
口を大きく開けながらアクビをしながらチャロットに連れられて顔を洗いに行くナーシャ。
ニーニャはその場に立ったまま、寝てしまっていた。マイを連想させるようなニーニャに呆れながらも声をかけてニーニャを起こし、顔を洗いに行かせる。
顔を洗ったことにより、完全に目が覚めたナーシャとニーニャを連れてロドリゲスたちと一緒に開会式が行われる噴水広場の前まで来た。
噴水広場まで来ると、ナーシャがわたあめをしている屋台を見付けて駆け出しそうになっていたため、引き止める。
「行きたいのは分かるけど、後で奢ってやるから今は我慢をしてくれ」
「うぅー、分かったよ。ユウお兄ちゃん」
そんなやり取りをしながら待っていると、知り合いを見付けた。
それと同時にその知り合い、フリーデとルナそしてアルトたちと、そしてマイたちも俺に気が付いた。
「あ、ユリウスさん」
「お兄ちゃん」
「…全員集合か」
そう呟いていると、マイたちが皆俺の所に集まってきた。
「何かスゲー賑わっているけど何かあるのか?」
全員の気持ちを代弁してか、アルトが俺に聞いてくる。何で俺に聞いてくるのかは分からないが、アルトの質問にこたえる。
「あぁ、ユウフスベルの毎年恒例の運動会をするんだ」
「運動会?」
聞き返すアルトに俺は頷く。
そろそろ開会式が始まるらしいし、お前たちも参加するのか?アルトたちに聞くと、
「当たり前だ!参加できるのならするさ」
「そうか。ロドリゲス、出来るか?」
後ろにいるロドリゲスに問いかけると、「あぁ、たぶん出来ると思うぞ。まぁ、ユリウス以外は全員同じチームになるだろうが」そう言った。
俺は違うチームなのか?そう思い、ロドリゲスに聞く前に街全体に響くような放送が流れた。
『えー、これより第……シロちゃん、何回だっけ?え、40?……40回運動会を開催しまーす』
気の抜けたような、女性の声が聞こえてきた。
『それではまず、国王より挨拶があります。国王様お願いします』
『住民たちよ待たせたな、運動会を開催する!そして、レイアも参加するからよろしく……こんな感じでいいと思うか?』
知らないよ、レイウスさん。いいんじゃないですか。
そう思っていると、やけに周りがシーンとしているなと思っていた次の瞬間、一気に歓声が上がった。
いきなりの事に少しビックリしてしまったが、何となく予想は出来た。
「ようやくこの時がきたのか!」
予想は出来たが、神に祈るような姿勢で泣きながら喜んでいるよは予想外だった。
レイア、この街の人たちから愛されているな。
「まぁ、レイア様は人見知りだけどあの容姿だから結構人気なんだ。それに運動会の時は自分が参加出来ない分、精一杯色んなチームを応援したりしていたからな」
ビックリして、固まってしまっている俺たちに向かってロドリゲスが説明をするように言う。
なるほどな。それならこの歓声も納得出来るな。
『さて、感動するのは後回しにして次に移りましょう。それでは準備運動の前にチームを発表します!』
チームの発表か……ロドリゲスは俺はアルトたちと違うチームになると言っていたが、果たしてどうなるのだろうか?
次の更新はできたら今週の日曜日の予定ですが、無理だったら8月の11日から15日まで連休ですのでそのうち最低でも3話は更新するつもりですので、これからもよろしくお願いします。




