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捜査会議

 被害者である川辺都が所属していたタレント事務所で、所長から話を聞き、彼らが主張するアリバイの裏を取った後、聡介達は再び事務所へ戻った。

 願ってもないことに所長は出かけており、マユちゃんだけが残っていた。

 彼女は刑事達がまさか戻って来るとは思っていなかったようで驚いていた。

 

 さっきは所長がいて、思ったように話せなかったのではないか、そうカマをかけてみたところ読みは当たっていた。

 マユちゃん、正式には崎本麻友さきもとまゆというのだそうだが、彼女はいろいろな情報をもたらしてくれた。

『実はミヤちゃんとは、学生時代からの知り合いなんです。彼女、昔っからそうなんですけど、彼女がいる男の子を好きになったり、奥さんのいる男性を好きになるなんていうのを繰り返してるんですよね。体質なんでしょうか? セカンドでも愛人でもいい、傍に置いて欲しいなんて告白して……でも、結局いいように利用されるだけされて、傷つくのは自分だってわかってて、どうしてでしょうね?』

『一番最近で、そういったことはありましたか?』

『ありますよ、それはもちろん。実を言うと彼女が冠番組になってる、ケーブルテレビのグルメ番組のディレクター……もちろん既婚者……と付き合ってました』

『過去形ということは、既に関係は終わっていたということですか?』

『さぁ? 最近は彼の話を聞かなくなったから、別れたんだって思ってました』

 それから崎本麻友は声を潜めて教えてくれた。


『実は昔一度、大変なことがあったんですよ。そのディレクターの、つまりミヤちゃんの彼氏の奥さんが、この事務所に怒鳴り込んできて……ミヤちゃんは不在だったんですけどね、もう、警察沙汰になるんじゃないかってほどの騒ぎでした。あの人を殺して私も死ぬとかなんとか。所長がなんとか宥めて、その場は収まりましたけどね』

『そのディレクターの名前を教えてもらますか?』


「なるほど、ガイシャの不倫相手の妻か……」

 報告を聞いた管理官はホワイトボードを見つめた。

 被害者と不倫関係にあったテレビディレクターと、その妻の名前が書き込まれる。

「可能性としてはかなり高いな。動機も強い」

 管理官の小西警視は頷きながら言った。


 その時、和泉が手を挙げて発言を求めた。

「強い動機を持つ人間なら他にもいます」

「ほう? どういうことだ」

「コールセンターの同僚で、ガイシャにしつこく言い寄っていた男の存在があります。名前は小野寺敦おのでらあつし、年齢は30歳。待ち伏せをしたり、高価な品物を渡しているという場面を同僚達が目撃してします」

「ストーカーか?」

「おそらく、ですが」

「ガイシャがストーカー被害の相談を提出していないか、調べてくれ」


 和泉達がつかんできた職場の同僚でストーカーのような男の存在は、聡介も駿河から聞いていて知っていた。

 彼はその話をしながら、和泉の聞き込みの仕方は素晴らしいと絶賛していた。

 抑揚のない口調と無表情のため伝わりづらいが、どうやら本気でそう思っているようだ。

 

 今までそれほど近くでじっくり話したことがなかったから理解しづらかったが、懐に入り込んで面と向かって話していると、駿河の微かな表情の変化や、本当に滲み出ていると言う程度はあっても、感情の一端が読み取れる。

 和泉とはまた違った意味で誤解されやすそうだが、彼はとても優秀で頭の切れる人間だということを聡介は知った。

 何かとクセのある捜査1課の面々の中で、たぶん一番まともな刑事は駿河だろう。

 大切にしなければ。

 

 小西警視は捜査員達に、明日以降ケーブルテレビのディレクター夫婦、それからコールセンターの同僚である小野寺に話を聞くよう命じ、叱咤激励で会議を締め括った。


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