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現代→古代  作者: 一理
ローマのようで
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古代ローマのようで


 古代ローマ帝国。

 都市に入ってカオルがまず抱いた印象は『新しい』……だった。

(テレビでよく遺跡見たけど、真新しくて綺麗)

 この時代にコンクリートがあり使用しているのはローマぐらいだろう。火山灰の塵とセメントを混ぜた古代のコンクリートはローマン・コンクリートと呼ばれ、現代のカルシウム系バインダーを用いたポルトランドセメントよりも強度が強く、今でも強度は保たれている。

 が、そんなこと知らないカオルはただその芸術的な美しい建物を鑑賞し、うっとりしていた。

 馬、デカイ。

「ぶわ」

 道端誰のか分からないが馬に顔をなめられカオルは首を横に振った。この時代の馬人懐っこいのはいいけれど、そのたびにヨダレでべたべたになる、それにうんざりしながらカオルは遠くなった主人の背を急いで追う。

 日本人は昔の中国から『倭人』と呼ばれていたが、いろいろ意味はあるけれど、当てられた漢字のこの『倭』というのは『背丈の小さい人種』という意味で、つまり足が短いということ。

 何が言いたいかというと、日本人の私がヨーロッパ人の長い脚について行くのは苦労するって話だ。

 ちなみにこの言葉は蔑称なので、現代で使うやついたらぶっ飛していいと思うよ。

「みんなでか過ぎる……」

 そして皆同じに見える。えぇ、主人見失いましたとも。

「うき」

 腰に重量感を感じたと思い目を下げると、そこにはキィがいた。

「救いの神がいた」

 サルが指差す方向を歩いていく、サルって本当に賢いんだなぁ。

 感心しながら歩いていくと人ごみから別れ、建物の続く道に入った。そこにレントゥティスさんが仁王立ちで立っていた。

「逃げたのかと思ったぞ」

「私は迷子になりそうでした」

「子どもでも迷わないぞ」

 カオルはムッとしてにらむ。

「私ここに来るのは初めてなんです」

「そうだろうな。幼稚すぎて言葉が聞き取りづらい」

 かっちーん、蹴っ飛ばしてやるとカオルが距離を取っていると、怒号が聞こえた。

「すみません! すみません!! 許してくださいご主人様!!」

「この糞ボケがぁあ!!」

 屈強な肉体をした大男が細身の男を両手で持ち上げ家から出てきた、泣き叫びながら許しを請う細身の男を容赦なく壁に力いっぱい叩きつけた。

 その際耳を思わずふさぎたくなるような悲惨な音が響き、叩きつけられた細身の男の周りにはゆっくりと赤黒い血溜りができる。ショックで絶命してしまったらしくピクリとも動かない。

「!!」

 目を真ん丸にして驚いていると、あまりの声の大きさに出てきていたお隣さんや他の通行人が手を叩いて喜んでいた。それ以外は何も言わずただ通り過ぎる、レントゥティスは笑いながら投げ飛ばした男の肩を叩いて声をかけた。

「よう、隣人さん。何そう怒ってるんだ」

「彼女に振られて苛々しているなか目の前うろちょろしやがってうっとおしかったんだ」

「ははは、小ユリアにまた無視されたのか。まぁ、嫌なことは酒でも飲んで忘れようぜ」

「そうだな。今からどうだ?」

 私のラテン語の聞き取りが間違っていなければ、彼に非はなかったように聞こえたが? なぜ彼は殺された? なぜ通行人は彼を諌めず、我が主人は嗤うの?

 怒りがふつふつとわき上がる。

「このっふが」

「やめなさい」

 口を押さえつけられ、持ち上げていた手を掴まれた。ふり返ると優しそうな顔をした見知らぬ老人が首を横に降っていた。

「貴女は奴隷になるのは初めてなんだね」

「……何故止めるんですか? 確かに私には怒る権利はありませんが、彼は罪を問われるに値するはずですよ!」

「やめておきなさい。奴隷が主人に逆らうのは死を意味する。拷問だって時間経てば治るような生易しいものではない。まだ若いんだ、自分の躰は大事にしておきなさい」

「納得できない」

 口を尖らせていると、誰か見知らぬ青年と目があった。青年はカオルと目が合うと急いで姿を消した。

「?」

「やあティロ」

 上から猿をカオルから取り上げながらレントゥティスはティロと呼んだ老人に笑顔を見せた。

「新しく入った奴隷。キィというらしい。サルと一緒だ面白いだろう?」

(正しくは紀伊なんだけどな)

「へえ、何を任せましょうか」

「動物の世話だ」

 キィがカオルの顔に飛びついた。何故懐かれた私

「分かりました。おいで」

 手を掴まれ移動する。家の裏に行き、他の奴隷たちと顔合わせする。

 興味がなさそうにカオルを見るとみんなは片手だけ挙げて自分の仕事に戻って行った。

「皆家族のようなものだ、すぐ慣れる」

「受け入れモードには見えなかったけど、そうですね」

 そう思ったほうが楽なのかもしれない。

 考えることを放棄し、納得できない苛々を身に宿しながら歩いていく。

「……ティロさん」

「この小屋の動物全部頼む」

 我が主はかなりの金持ちということが分かった。動物専用の家があり、いろんな種類の動物も多種多様だ。

 だけとこれだけは突っ込ませていただきたい。

「ワニとライオンと、鶏とヤギを一緒に暮らさせるのには無理があると思うんですけど」

「肉食動物の腹を満たせていれば、食われることはない。飼育員の腕の見せ所ですね」

 ライオンから解放されたと思ったらまたライオンさんと縁ができるなんてね。笑うこともできないわ。

 目が死んでるカオルの肩をティロは叩いた。

「死ぬ気でやればなんだってできるさ」

「……本気すぎて、何も言えません」

 古代ローマ鬼畜文化?

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