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現代→古代  作者: 一理
アッシリアのようで
26/142

船に乗っていくようで

「あぁ、疲れた」

 腕を空に向かって伸ばし、背をただす。

 シリアのダマスカスにある、商人たちのカールムについた。ここでバビロニア商隊とはお別れとなる。

 荷物をおろし、商売にかかろうとしているアフマドさんのところへ小走りで走り、頭を深々と下げた。

「ここまでどうもありがとうございました」

「ふん、アクバル殿とカリフ殿の頼みだ。断れん。縁を下さったアシュルの神に感謝するんだな」

「はい」

 歩き出すと、一緒に旅をした商人たちはにこやかに手を振って見送ってくれた。

「ありがとうございましたー!」

 しばらく市場を歩くと、ふと気配を感じ振り返った。

「!」

 驚いた表情をしたいのはこちらだ。

「何してるのアリー」

「よくついてきてるのわかったね」

「私体育系だからか、人の気配と視線には敏感なの」

 次の動きをよみ、先に行動する、それでそこそこの順位を残してきた。

 それはさておき、カオルはアリーに対し腕を組んで、胡散臭いものを見るような目でにらむ。

「まさか、船に乗るのに『たまたま』私と同じところにお世話になるつもりじゃないよね?」

「いやいや、まさか!」

 両手をわざとらしくアリーは広げると、今まで見たことのないぐらいいい笑顔で言った。

「もちろん『御願い』するつもりさ、カオルちゃんつながりで!」

 ばき、っと良い音がした。

「いってぇええー!! 拳で殴らなくてもいいじゃないか! カッシード人だって殴らなかったのに」

「泣かせてあげようか?」

「わわ、マジで待って! 待って、ね? ちょっと暴力的すぎるんだよ、だから嫁の貰い手がないんだよ」

 ぴき、青筋がたったのが分かった。

「あぁん?」

「ヒぃ!?」

 カオルは肩をぽんぽん、とされ正気に戻った。

「アナタがカオルさん? ナサ家の使用人の」

「そうです!」

 なぜかカオルでなくアリーが答える。

「一人と聞いてたけど、君は誰です?」

「彼女に雇われた傭兵です」

 カオルが何か言う前にペラペラしゃべるアリー。いつ私は傭兵を雇った。

 彼を信じたのか、客なら何でもいいのかシリアの船人はにっこり笑うとコイコイと手を振った。

「じゃあさっそく行こう。羽振りのいい客だったから、サービスするよ」

「やったね、あんたいいとこに働いてたんだな!」

「……そうね」

 船こっちだよ、と歩いて行ったシリアの人の目を盗み、カオルはアリーの肩をつついた。

「?」

 振り返ったアリーの首根っこをつかみ、一気に体重をかけ、一本背負いをかけた。

 あんぐり口を開けたままアリーは技を直撃し、回避することもできず撃沈する。

「どしたの?」

「あぁ、傭兵さんが気が緩んでねむちゃったみたいです」

「はは、旅路は危ないからねー」

 アリーの頬を叩く。

「ほら、起きなさい。頼りない傭兵ね」

「こんなに強い女性は初めてだよ……うぅ痛い」

「御相子だわ、こんなに口の達者な男は知らないよ」

 シリアの船人は首をかしげた。

「夫婦?」

「違います」

 シリアの旦那が何か言う前に歩き出した。

 くさってもこんなやつは嫌である。

「なんでこんな冷たいのに、助けてくれたんだ?」

「お世話になった商人の息子に、似てたから」

「恋人?」

「違うから、ロスタムはそんな感じじゃないもの」

「俺に似てイケメン?」

「別に?」

 荷物を肩にかけ、周りを見渡す。当たり前だがいくつもの船が行き来している。

 船に乗り、ふと遠くの船を見ると、女性と男性が身を寄り添って挙動不審に周りを注意深く見まわしていた。その様子はとても旅を楽しむカップルには見えない。

「とても怪しいわね、亡命?」

「戦争中じゃあるまいし、普通に考えて恋の逃避行か、権力から逃れるためとか、思わないの?」

 アリーに呆れられ、シリアの旦那に笑われた。

「悪かったね、そういう経験ないモノで」

「俺と一緒に駆け落ちする?」

「……」

 ざっぱーん。

 馬鹿にされているようで悔しかったから、落としてやった。

 ざまぁ

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