87話 探偵、魔王とナルリスの攻略法を語る 8
<前回のあらすじ>
下記の1~4までは安全かつ確実に実行できることを、ジュニッツは推理で証明した。
1.ナルリスに強制チェスリルを使う
↓
2.ナルリスはジュニッツ達を魔王の玉の部屋まで案内せざるをえない
↓
3.魔王の玉の部屋に着く
↓
4.チェスリルの勝負をする
だが、問題は4の後だ。
4のチェスリルが終わると、強制チェスリルの効果も切れ、『暴力を振るったら死罪』というルールも消える。
アマミより強いナルリスが、怒り狂ってジュニッツ達に襲いかかってくる可能性が高い。
これに対するジュニッツの対策とは?
■ジュニッツの対策
「俺の対策、それはいたってシンプルだ」
「というと?」
「ナルリスをぶん殴って返り討ちにするんだよ」
俺の言葉に、アマミとルチルは絶句した。
10秒ほどしてようやく口を開いたアマミは、こう言った。
「い、いやいや、待ってくださいよ! ぶん殴って倒すって、そんな無茶な」
「どのへんが無茶なんだ?」
「単純にナルリスが強いからです。わたしたちの誰も勝てませんよ!」
「つまり、ナルリスが弱ければいいわけだ」
アマミは「え?」と言う。
「ナルリスが弱ければいい……?」
「そうだ。言い換えれば、やつを弱くしてしまえばいい。弱けりゃ、襲いかかられたって怖くねえだろ?」
「それはまあ、そうですが……でも、どうやって弱くするんです?」
「簡単さ。強制チェスリルがどんな能力か、思い出してみろ」
強制チェスリルとは、こういう能力である。
――指名した相手と、金・アイテム・スキルを賭けて、ボードゲーム『チェスリル』で決闘ができる。
「そう、スキルを賭けることができるんだよ。
金を賭ければ、賭けた金は勝者に奪われる。同様に、スキルを賭ければ、賭けたスキルは勝者に奪われる。
するとどうなる?」
「ああっ、なるほど! 答えが分かりました!」
アマミがぽんと手を叩くと、紙にさらさらとこんなことを書いた。
強制チェスリルをかける
↓
ジュニッツさんがナルリスに「俺が勝ったらお前のスキルを全部よこせ」と要求
↓
ジュニッツさんがチェスリルで勝つ
↓
ナルリスはスキルを全部奪われ、無力化する
↓
ナルリスをぶん殴る
「これが答えでしょう? レベルが高い人がどうして強いかというと、レベルアップでスキルが取れるからです。たくさんスキルがあるから強い。逆に言えば、スキルがなかったら、レベル100でもレベル1の人と強さは変わりません。スキルがなければナルリスは無力です。襲われたって、ぶん殴って返り討ちにできます。これが正解ですよね?」
俺は首を横に振った。
「残念だが違う」
「え、なぜです?」
「俺はチェスリルが弱い」
「あっ!」
そう、俺はチェスリルが絶望的なまでに弱いのだ。
昨日言ったように、生涯で一度も勝利したことがないほどである。
――具体的に言うと、俺は人生で一度もチェスリルで勝ったためしがない。
「ナルリスのチェスリルの腕前は知らねえが、普通に考えりゃ、俺が負ける確率の方がはるかに高いだろうな」
「じゃ、じゃあどうするんです?」
「簡単だ。勝てないなら、やることは1つ。負けりゃあいいんだよ」
「え? ……い、いやいや、ダメでしょう! ジュニッツさんが負けたら、ナルリスのスキルを奪えませんよ!」
アマミの言葉に、俺はこう答えた。
「奪わなくていいんだよ」
「え?」
「逆だ。俺のスキルを、やつにあげちまえばいいんだ」
チェスリルの模擬戦をした時、アマミはこう言っていた。
――「『賭けるもの』は、『わたしが勝ったら金をくれ』というように自分が欲しいものをお互いに宣言することもできますが、『わたしが負けたら聖剣を差し出そう』というように自分が支払うものをお互いに宣言することもできます。
どっちにするかは挑戦者が決められます」
挑戦者とは俺である。
「つまり、『俺が負けたら、俺の全スキルを差し出そう』と俺が言えば、ナルリスはそれを拒否できねえってことさ」
「で、でも、それでジュニッツさんが負けたら、ジュニッツさんのスキルがナルリスに奪われちゃいますよ?」
「いいんだよ。奪われて。それでナルリスは無力化されるんだから」
「え? ど、どういうことです?」
「俺のスキルが何かを思い出せ」
俺の持つスキルは『月替わりスキル』だけである。
――俺は『月替わりスキル』というスキルを持っている。俺が所持する唯一のスキルである。
そして、このスキルを持つと、他の所持スキルがすべて無効化されてしまうのだ。
――月替わりスキルとはスキルの1つで、これを取得すると月替わりでいくつかの能力が使えるようになる。一方で、自分の持っている他のスキルは全て無効化される。過去に手に入れたスキルも、今後取得するスキルも、とにかく全部持っていないのと同じ扱いになる。
実際、書庫で読んだ本では、ある騎士の男が月替わりスキルを取得したことで、持っている他のスキルが全部使えなくなったと書かれていた。
――もっとも、治療後、男が月替わりスキルを取得したことで他の全スキルを失ってしまったことが発覚したため、男は騎士団を辞める羽目になり、スラム街で細々と暮らしていくことになる。
「要するに、こういうことだ」
強制チェスリルをかける
↓
俺がナルリスに「俺が負けたら、俺の全スキルを差し出す」と宣言する
↓
俺がチェスリルで負ける
↓
勝者のナルリスは、俺の『月替わりスキル』を取得することで、他の全スキルが使えなくなり、無力化する。
↓
ナルリスをぶん殴る
「な、なるほど! た、たしかに、この方法なら簡単にナルリスを無力化できます! すごい、すごいですよ、ジュニッツさん!」
「だろ?」
<まとめ>
スキルを賭けて負ければ、ナルリスは無力化
◇
■アマミの疑問1:ナルリスが怪しむのでは?
「あっ、で、でも……」
「ん?」
「その……ナルリスは怪しみませんか? 『なんでこいつは自分のスキルを全部差し出すんだ?』って。何かの罠だと思って、チェスリルでもわざと負けようとしてくるかもしれませんよ?」
アマミの言葉は、その通りである。
今回のチェスリル勝負では、俺は何が何でも負けないといけないのだ。
もし、ナルリスも負けようとしたらどうなるか?
決闘では、反則、降参、試合放棄、時間切れは、いずれも死罪である。
――5.勝負の場所に着いたらすぐにチェスリルの勝負を開始する。1手は1分以内。反則、降参、試合放棄、時間切れによる負けは死んで償うこと。
生きて負けるためには、普通に勝負して敗北しないといけない。
だが、もし俺もナルリスも負けようとしたら、いつまで経っても決着が付かない可能性がある。
そうなれば決闘は無効になってしまう。
強制チェスリルの効果の説明文にも、こう書いてある。
――効果の終了は、決闘が終わるか、時間切れ(決闘開始から8時間経っても決着がつかない)になった時です。
――時間切れの場合、決闘は無効になります。
無効になれば、ナルリスに『月替わりスキル』を押しつけられない。
困る。
是が非でも、ナルリスには勝ちに来てもらう必要があるのだ。
「だから、茶番をやる」
「茶番?」
「そうだ。具体的には、賭けるものを決める時、俺はいきなり『自分のスキルを賭ける』などと言ったりはしない。まずはレベルボードを見せる。そして、それを指差しながら『俺はこれを賭ける』と言うんだ」
レベルボードとは、誰でも空中に出すことができる板で、自分の名前やレベルが書かれている。
「えっと……つまり、ジュニッツさんは自分のレベルを賭けるってことですか? で、でも、レベルなんて賭けられませんよ?」
たしかに、強制チェスリルでは、金、アイテム、スキルしか賭けられない。
レベルを賭けることはできない。
だが、それでいいのだ。
「賭けられないからいいのさ。大事なのはな、ナルリスに見せるレベルボードは偽物だということだ」
俺たちは世界で唯一レベルボードを偽造できる。
しかも、この事実は誰にも知られていない。
――俺とアマミは、このレベルボードを偽造する術を、数ヶ月前に発見している。
――レベルボードが偽造できるなど、世間では知られていない。言い換えれば、レベルボードさえ問題なければ、世間は怪しまない。
「ナルリスも当然、俺の偽のレベルボードを本物と思うだろう」
「でしょうね」
「無論、偽のレベルボードだ。内容も偽物だ。偽名なのはもちろんだが、何よりレベルが違う。ナルリスより高レベルであろう140とか150くらいのレベルにする。するとどうなると思う?」
「……うーん、わからないです。どうなるのです?」
「ナルリスが勝ちに来てくれるんだよ」
ナルリスの立場になって考えればいい。
いきなり正体の不明のスキル(強制チェスリル)をかけられたかと思ったら、謎の男と女がやってくる。
そして、男のほうが「チェスリルの決闘だ。俺はこれを賭ける」と言って、レベルボード(実は偽物)を見せてくるのだ。
レベルボードに書かれたレベルは、驚異の140。ナルリスよりも高い。普通に戦えば負ける相手だ。
つまり、この時点で、ナルリス視点では『自分より強い謎の男に正体不明のスキルを使われた状況』なのである。恐怖を感じるはずだ。
すると男は、今度は「間違えた。これは賭けられない。スキルを賭ける。俺が負けたら、俺のスキルを全部差し出そう」と言ってくる。
ナルリスは少し安心するだろう。(こいつ、バカですね)と思うに違いない。(自分が負けた時に差し出すものを自分で決められるのなら、なるべくどうでもいいものを差し出すに決まっているじゃないですか)と。
無論、罠の可能性も考えはするだろうが、レベル140の人間が全スキルを差し出すことでどんな罠が成立するかなんて、考えても答えが出るはずがない。
男が月替わりスキルを持っているなんて、考えもしないだろう。月替わりスキルを持ったまま140までレベルアップできるはずがないし、レベル140になってから月替わりスキルを取るなんてことも普通はするはずがないのだから。
ナルリスは「私が負けたら、銅貨1枚を差し出しましょう」とでも言うだろう。
男は「しまった!」という顔をする(無論、演技である)。
ナルリスは、ほくそ笑む。
この後、チェスリルの勝負をすることになるが、ナルリスとしては負けても失うのは銅貨1枚だけだ。痛くもない。
だが、まだ安心できない。
目の前の男は、ナルリス視点では自分より強い存在なのだ。
しかも、何を考えているのかわからない不気味な存在だ。
チェスリルの勝負が終わった後、いきなり攻撃してくるかもしれない。そうなったら勝てない。
なら、どうすればいいか?
男を無力化してしまえばいいのだ。
幸い、男は愚か者のようで、チェスリルで負けたらスキルを全部差し出すと言っている。
スキルがなければ、いくらレベルが高かろうと無力である。
そのためには、チェスリルで勝つ必要がある。
勝たないと、自分より強いこの男に何をされるか分かったものではない。
絶対に勝たないといけないのだ。
「とまあ、こんな風に、ナルリスは勝ちに来てくれるってわけさ」
「な、なるほど! たしかに、これならナルリスも勝ちに来ますね! あ、でも……」
「ん?」
「『レベルを賭ける』と言った後、あとで『やっぱりスキルを賭ける』なんて言い直して大丈夫なんですか? 決闘の作法に引っかかって、死罪になりません?」
「大丈夫さ」
書庫で読んだ『チェスリル決闘こぼれ話集』では、決闘中こんなシーンがあった。
――賭けるものを決める時も、Cは焦った口調で「お、おれが勝ったら、きゅいんか1万枚をもらう!」と叫んだ。
――当然、Dは「きゅいんか、ってなんだ? そんなもの私は持っていないぞ?」と聞き返す。
――決闘では余計な私語は禁止されているが、こういう確認は認められている。
――Cは「ま、間違えた。金貨1万枚だ」と言い直す。
Cは最初、きゅいんかを賭ける、と言い、その後で金貨1万枚と言い直している。
きゅいんか、なんてものは賭けられないから訂正したのだ。
そして、別にそれで死罪になることもなく、チェスリルの対戦をしている。
「分かるな? 賭けられないものを賭けた場合、言い直すことは認められているのさ」
「な、なるほど……確かにそうです!」
ついでに言うと、最初に偽のレベルボードをナルリスに見せた時、「レベルを賭ける」とは言わず、「こいつを賭ける」と言うのも重要なポイントだ。
何しろレベルボードは偽物なのだ。「レベルを賭ける」なんて言ったら、実は決闘とは何の関係もない偽のレベルボードを見せていることになってしまう。決闘作法の『余計なコミュニケーション禁止』に引っかかってしまう恐れがある。
だから、あくまでレベルボードを指さしながら「こいつを賭ける」と言うのだ。
<まとめ>
偽のレベルボードで俺を強いと誤解させれば、ナルリスは俺を無力化するために勝ちに来る
◇
■アマミの疑問2:ジュニッツのスキルがなくなるのでは?
「あっ、でも……まずくないですか?」
「うん?」
「それって、結局ジュニッツさんが月替わりスキルを失ってしまうということですよね?」
「まあそうなるな」
「それ……困るのでは? だって、ジュニッツさんは今まで月替わりスキルを駆使して魔王を倒してきたわけでしょう? そのスキルを失ったら、もう魔王を倒せなくなってしまうんじゃ……」
「安心しろ。問題ねえ。こいつを使えばいい」
そう言って、俺は月替わりスキルの能力の1つを見せた。
----------
『スキル復元』
スキルの状態を24時間前のものに戻せる
----------
「あっ、これって」
「そう、昨日見た能力だ」
昨日、俺たち3人は、月替わりスキルの能力をいくつか見た。
スキル復元もその1つである。
「見ての通り、こいつはスキルの状態を元に戻せる」
スキルの状態には、スキルの有無も含まれる。
――質問1.
――『スキルの状態を24時間前のものに戻せる』ってあるけど、スキルの状態って何?
――質問1の回答.
――・スキル点
――・スキルの有無
――・スキルの各能力の残り使用可能回数
――の3つです。
「だから、これを使えば、月替わりスキルも復活するってわけさ」
「で、でも、このスキル復元って能力自体が、月替わりスキルの一部なんでしょう? 月替わりスキルがなくなっちゃったら、この能力も使えないんじゃ?」
「安心しろ。この能力は予約ができる」
スキルの説明文には、こう書いてある。
――スキルの状態を戻す日時を予約できます。
――たとえば、明日の午後3時0分0秒に予約すれば、その日時にスキルが『予約日時の24時間前の状態』に戻ります。予約した人が死なない限り、何があっても絶対に戻ります。
予約さえしておけば、何があっても絶対に(仮に月替わりスキルが失われた後であっても)、スキルは復元するのだ。
「要するに、チェスリルで決闘する前に、スキル復元を予約すりゃあいい。予約時刻は、この時刻なら決闘は終わっているだろう、という時刻にする。そうすりゃ、決闘後に、俺の月替わりスキルは復活するってわけさ」
「た、たしかに! なるほど、考えましたね」
「だろ?」
ナルリスを無力化する方法をまとめると、こうなる。
スキル復元を予約する
↓
ナルリスに強制チェスリルをかける
↓
偽のレベルボードを見せる(ナルリスは俺を強いと誤解し、俺を無力化するため、チェスリルで勝ちに来る)
↓
ナルリスに「俺が負けたら、俺の全スキルを差し出す」と宣言する
↓
俺がチェスリルで負ける
↓
勝者のナルリスは、俺の『月替わりスキル』を取得することで、他の全スキルが使えなくなり、無力化する。
↓
ナルリスをぶん殴る
↓
予約したスキル復元が発動し、俺のスキルが復活する
◇
■宝石人解放
「そして、ルチル」
「む?」
「これで宝石人達は解放されるんだ」
「な、なんじゃと!?」
別に難しい話ではない。
まず、タスマンは、ナルリスが全宝石人を引き連れて地下迷宮に入ると言っていた。
――「で、この入り口から宝石人達を全員引き連れて入るみたいッスよ……」
ナルリスに地下迷宮で強制チェスリルをかければ、その時点で、ルチルの仲間の宝石人達も全員そこにいるということだ。
そして、ナルリスは俺たちを魔王の玉まで案内することになるが、この時点でナルリスから宝石人達にかけられている命令は、先ほど推理したように『1列になって、私の後をついてきなさい』である。
宝石人達はナルリスの後ろをぞろぞろと着いてくることになる。チェスリルの決闘が終わるまで私語は禁止だから、ナルリスは新たな命令を発することはできない。魔王の玉の部屋まで、宝石人達はついてくる。
部屋についたら、チェスリルの勝負をする。
そして、ナルリスは勝ち、全てのスキルを使えなくなる。
「当然、宝石人達を操っていたナルリスのスキル『アイテム発動』も使えなくなる。だから、ひょっとしたら、このタイミングで宝石人達の操りが解けるかもしれねえ」
「な、なんと!」
「無論、あくまで可能性の話だ。まだ操りが解けない可能性もある」
だが、アイテム発動の説明文にはこう書いてある。
――このスキルを使うには、まずアイテムを覚える必要がある。
――覚えたいアイテムから30センチ以内の距離に近付き、手をかざすことで、覚えることができる。
――覚えたアイテムは1ヶ月間、亜人相手に発動できる。
――1ヶ月経つと、アイテムを忘れる。
――アイテムの効果が持続型の場合、忘れたタイミングで効果も切れる。
――忘れたアイテムは、また覚え直すことができる。
だから、もしナルリスが宝石人達を操るのに使っていたアイテム『魔王のスミ』が持続型なら、ナルリスはこういう行動を繰り返していたことになる。
1.魔王のところに行き、魔王のスミを覚える
2.宝石人達を操る
3.覚えてから1ヶ月経過。操り効果が切れ、再度操ることもできなくなる。
4.1に戻る
そして、実際、ナルリスは上記のように繰り返し魔王のもとへと足を運んでいる。
ということは、『魔王のスミ』は持続型であると考えてよい。操り効果は1か月で切れるのだ。
「要するに1か月待てば、宝石人達は操りが解けて自由の身ってことさ。その1ヶ月の間は、妖精の森にかくまっておけばいいだろうさ」
妖精の森から、どうやって宝石人達を故郷に帰してやるかは、また後で話すが、ともあれ、これで彼らは無事ナルリスから解放されるというわけだ。
「お、お、おお……」
ルチルは感嘆の声を上げた。
「おおおおっ!」
さらに感嘆の声を上げた。
「おおおおおおおっ!」
さらにさらに感嘆の声を上げた。
そうして、両手で俺の手を力強く握ると、ぶんぶんと上下に振った。
正確に言うなら、ぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんぶんと上下に振った。
あまりに激しく振るので、俺の肩が揺れ、首が揺れ、頭が揺れる。
そんなぐらぐら揺れる俺に、ルチルは感謝と感激の言葉を発した。
「ジュ、ジュ、ジュニッツ殿! ありがとうなのじゃ! ありがとうなのじゃ! 見事な……見事なまでの推理なのじゃ! 完璧なのじゃ! たしかに、その方法ならわらわの仲間達は救い出せるのじゃ! まるで1万カラットのダイヤモンドのごときすばらしき推理! わらわは、わらわは……もう大感謝なのじゃ!」
4章の謎である下記1~3のうち、1と2まで明らかになりました。
次話から、最後の3を解明していきます。
1.魔王のところにどうやって行くか?
2.宝石人達をどうやって救出するか?
3.魔王をどうやって倒すか?




