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時空間魔法で異世界旅行記  作者: 紙紙紙
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街へ帰還

 蝉がけたたましく鳴くある夏の日。

 楽しく友人たちと遊んでいたマモルは辺りが暗くなるのをきっかけにして、友人たちと別れの挨拶を交わし、家に向かうのだった。

 だんだんと空も茜色から、藍色と薄紫色が混ざる夜空に変わり、街灯が次々と灯っていく。

 そんな空を見上げたマモルは早歩きから小走りに変わっていき急いで家に向かうのだが、道中で見かけた植木鉢が目に留まる。

 足を止め覗き込むと、土は干上がって今にも枯れてしまいそうな小さな黄色い花が一輪だけ咲いていた。

 マモルはリュックサックに入れていたペットボトルを取り出し、飲みかけの水を掛ける。そのおかげか乾いていた土は元の色を取り戻す。


「これで大丈夫かな」


 そんなをこと呟いて立ち去ろうとした時、誰かに呼ばれた気がして振り向くが誰もいない。気のせいだと思い立ち上がろうとした瞬間、また誰かに呼ばれた。辺りを見渡してもマモル一人だけだ。


「だ、誰かいるの?」


 怖くなったマモルは身体を震わせ尋ねるが返事がない。寧ろ自分の名前が呼ばれるのがだんだんとはっきりしてくる。知らない可愛いらしい声に最初は困惑していたが、呼ばれるたびに懐かしさを感じ始めた。

 そして足元にある小さな名の知らない黄色い花をみてマモルは口に出す


「ベラ?」


 その途端視界が暗転していき、誰かが必死に呼び掛けているのを感じマモルは瞼を開ける。そこには涙目になるベラがいた。


「マモルさん! よかった……! やっと目が覚めてよかった……」


「……そっか、俺やられて……」


「はい、重傷でしたがティシュさんと協力してどうにか傷は塞がりました」


 ベラに言われ突き刺されたところも見ると傷が完全に塞がていた。


「マモルさんよかった……気が付いて……」


「ティシュさん!」


 魔力を使い果たしたのかティシュは倒れ込み、マモルは急いで支える。


「ありがとうティシュさん……」


 気絶しているティシュを地面に寝かせ周りを見渡す。

 遠くでガイルとククリが近接を持ち込み、サポートにアナンマとクロ。エレンはマモルたちをフォートレスを使い守っている状況。その時エレンと目が合う。


「傷治ったんだな。行けるか?」


「行きます!」


 マモルは立ち上がり加勢に向かおうとした時ベラが言う。


「あんな敵倒して皆で戻りましょう! マモルさん!」


「おう!」


 もう油断はしない、全力でやるとマモルは決意をし向かう。




「さっきまでの威勢はどうしたんですか? ふふふ」


 疲労困憊の二人と二匹をみてあざ笑うラース。


「おや、回復されたのですね。回復阻害用の魔法を掛けてあったはずですが……一体――」


「ディメンションロック」


 ラースの話を最後まで聞かずマモルは指定した範囲を固定させ動けなくさせる魔法を使う。


「この私が動けないだと……! 何をしたんですか!」


「お前に言う必要はない。ディメンションロスト」


 マモルが唱えた魔法ディメンションロスト。指定した範囲を空間ごと消滅させる魔法。ラースは一言も喋れず一緒んで消滅する。

 一瞬で強敵が消えたことにベラ以外は驚きを隠せず口を開けている。


 ティシュの傍にいたベラが飛んでくる。


「マモルさん! 流石です!」


「もうあいつの反応とかないよね?」


「ちょっと待ってください……はい、反応は消えました!」


 ワールドマップを確認したベラが伝える。


「な、なんなのよ今の魔法は!?」


 気を取り戻したアナンマが言い寄る。


「空間ごと消滅する魔法だけけど……」


「なにそれ聞いたことないんですけど! チートよ、チート!!」


「あ、ははは……」


 マモル自身も自覚している為苦笑いをする。


「Aランク以上はみな、あのような化け物ぞろいなのか?」


 呆れながらガイルはエレンに尋ねる。


「なわけないだろう! マモルはSよりのAランクだ! 比べるな!」


「う、うぬ」


 強敵が去って空気が軽くなってほのぼの会話しだすマモルたち。

 長居はよくないとエレンが言い、気絶しているティシュをエレンが背負い移動する。


「ベラ? 行くよ?」


 移動せずその場で飛んでいるベラにマモルが尋ねると、ベラは悲しそうに微笑む。


「ごめんなさいマモルさん。私はここでお別れです」


「……え?」


 ベラが何言っているのか理解できないでいるマモル。

 その時ベラの体が少しずつ薄くなっていく。


「ベラの身体が! なんで……!」


 ベラは薄くなっていく体を見渡しても動揺することなく微笑んでいた。


「死を一回だけ無かったことにする魔法を使いました。代償として私の存在と引き換えになっちゃうんですけど……マモルさんを助けれたことに後悔はしてません」


 困惑しているマモルにベラは顔に優しく抱き着く。


「マモルさんは覚えていないと思いますが……マモルさんは私の命の恩人なんです」


 さらにベラの体が透ける程薄くなっていく。


「マモルさんそろそろお別れのようです……」


 ベラはゆっくり守るから離れて行く。


「嫌だよ……! まだベラから全部教わっていないし、まだこの世界全然旅してないんだよ? なんで消えるんだよ……!」


 大粒の涙を流しマモルはベラに願望をぶつける。


「マモルさん……私だって……一緒に旅したかったです。もっとお話ししたかったです!」

 

 ベラも堪えきれず本音を言う。


「だから、信じてます――」


 その言葉を最後にベラの体は消え小さな光になりマモルの中に溶け込む。


 ショックのあまりマモルはその場から動かないでいた。エレンは見かねてマモルを無理矢理立たせダンジョンを後にした。




 街に帰還するも放心状態のマモルを心配して報告は他のメンバーに頼み一緒にエレンはアイラの自宅に向かう。


「おかえりなさい! ……なにかあったんですか?」


 出迎えたアイラだったがマモルの状態をみてエレンに尋ねる。


「説明は後でします。まずはこいつを休ませないと」


「はい……どうぞ」


 エレンを通し、そのままマモルに部屋に向かった。

 マモルを送り届けたエレンは部屋を出ていった後アイラに事の顛末を伝える。


 マモルはベットに横なると背中に固いものを感じ、起き上がりフードの中を漁ると小さな黒い物が入っていた。


「なんだこれ?」


 見えるように部屋の明かりをつける。


「これって、種? なんでフードの中に――」


 マモルはベラの最後の言葉を思い出し、急いで部屋を出ていく。一緒に部屋にいたククリとクロも後から追う。


「マモル! どこ行くの!」


「ちょっと教会行ってくる!」


 玄関のドアを開け外に出たマモル。後ろからアイラに呼び止められるがマモルは足を止めず大声で行き先を告げた。




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