マモルは諦める
「おはようアイラ」
「おはようございます!」
「ワフ」「わふ!」
翌日の朝、目を覚ましたマモルたちは居間に行くとアイラが料理を並べていた。パイウスはまだ寝ていて寝室にいる。
「み、皆おはよう!」
朝食を作っている時からベラことを考えていたため少しぎこちなく返事をするアイラ。
「大丈夫ですか?」
ベラは心配して声を掛ける。
「う、うん大丈夫。ほら、冷めないうちに食べよう?」
「はーい」
それぞれの席に座りマモルたちは食べ始める。
「今日は何かクエスト受けるの?」
アイラが食べながら話しかける。
「昼にギルドに行くけど、クエストはまた今度かな?」
「そうなんだ」
一緒にギルドに行こうと思っていたアイラは内心で残念がる。
その後他愛もない会話を挟み食事は終わる。
「じゃ先に行くね」
「うん、気を付けて」
アイラを見送った後、部屋に戻りベットの上でごろごろしていたらドアがノックされマモルは体を起こす。
「パイウスさん、どうかしました?」
「悪いなマモル。ちょっくらおつかいを頼みたいんだがいいか?」
「おつかいですか?」
「ああ、屋台で使う魔石が足りなくなってな。魔石屋で買ってきてほしんだ」
特にすることもなくちょうどいいかなとマモルは二つ返事する。
「助かるぜ。お金だ。俺の名前を出せばすぐ準備してくれるぜ。頼んだぞ」
「はい」
ククリとクロを連れて魔石屋に向かうマモル。ベラはいつもの通りにマモルのフードの中に。
しばらく歩くと石のマークの看板を掲げているお店に着く。あるのは知っていたが立ち寄る機会がなかったマモル。ククリとクロを外で待たせ店内に入ってみると薄暗く光は蝋燭の火のみ。僅かな光を頼りに奥まで行くと黒いローブを纏った店員らしき人が立っていた。
マモルは恐る恐る聞いた。
「あの、パイウスさんから、魔石を――」
最後までマモルが言いきる前に店員らしき人はぬるっと動き奥の部屋に消える。
「マモルさん今のは人だったんでしょう」
フードの中にいたベラが尋ねる。
「んーどうだろう、わかんない。人のようで人じゃないような……」
「魔法じゃよ」
マモルとベラが声のする方向くと杖で支えてる老婆が佇んでいる。
「さっきのは魔法の人形じゃ。店番を任せていたのじゃ。それで、お主は確か……パイウスの所に居候している街の英雄じゃったかな?」
「うっ……そ、そうなんですが、英雄って呼ばないでほしいです……」
「ほっほっほ」
老婆はからからと笑いながら長椅子に乗りテーブルに満杯になった袋を置く。
「ほれ、いつもの魔石じゃ」
「え、あはい、ありがとうございます。あ、これお金です」
「……丁度じゃな」
老婆は懐にお金を仕舞うとマモルの顔をじーっと見る。
「な、なにか顔についてます?」
「お主、受難の相が出ておるのう。獣たちと乗り越えるのじゃぞ?」
「え、それってどういう――」
「さ、用件も済んだろう、帰った帰った!」
老婆が杖を一回床をトンっと突くと店内が歪みマモルとベラは気が付くとお店の外に出ていた。
「「え!?」」
マモルとベラはお互いの顔をみて驚く。
二人が外に出たことに気づきククリとクロは足元に近づき、撫でて欲しそうな目で見てくる。マモルはそんな二匹を撫でながら尋ねる。
「ベラ、今のも魔法なの?」
「はい、魔法の一種、転移魔法です」
「転移魔法? そんな魔法まであるんだ」
「かなり強力な魔法なんですが使える人がそんなにいないんです」
「難しい魔法なの?」
少し考えた後ベラは答える。
「かなり難しい魔法です。距離によって魔力の消費量も増えますので連発も難しく、ましてや自分じゃなく他人を転移させる方が難易度は高いのにしれっとやってました。あのおばあさんはきっと有名な魔法使いなんですよ! きっと!」
興奮しながら熱く語っているベラに引き気味でマモルは言う。
「そ、そうなんだ。それよりも魔石も買えたし一旦帰ってから――」
「おーいマモル!」
名前を呼ばれ声のする方に振り向くと笑顔で手を振っているエレンがいた。
「魔石屋で買い物か?」
「はい、パイウスさんに頼まれて」
「そうか。お、そう言えばAランクになったんだよな。おめでとう」
「いっ、あ、ありがとうございます」
背中を叩かれ痛がるがどうにかお礼を言うマモル。
「ギルドカードは貰ったのか?」
「これから貰いに行こうかと」
「おおそうか。なら早速受け取り行こう!」
エレンはマモルの強引に手を掴み冒険者ギルドがある道に歩き出す。
「エ、エレンさんま、待って下さい!」
「ん? どうした?」
「パイウスさんに魔石届けてからでもいいですか?」
「あ、そうだったな。すまん。まずはパイウスさん家だな、行くぞ!」
何故かエレンも一緒に行くことになる。
そして家に帰ったマモルはパイウスに魔石を渡しエレンと共に冒険者ギルドに向かった。
冒険者ギルドに着くとカウンターに座っているエレミレを見かけマモルは向かう。
「エレミレさん、こんにちは」
「こんにちはマモルさん。お待ちしておりました。今お持ちしますね」
そう言いエレミレ席を立ち奥の引き出しから何かを取り出し戻ってくる。
「こちらがギルドカードになります」
「ありがとうございます」
カウンターに置かれた金色のギルドカードをマモルは受け取りポケットにしまう。
その時マモルは急に肩を掴まれ振り向くとギルド長のヴァーナルが口角を上げ笑っていた。
「よう。Aランク昇格おめでとう」
ヴァーナルが大声で喋ったためギルド内がざわめく。
「あ、ありがとうございます」
ヴァーナルはマモルの肩から手を離し周りを見渡した後皆に聞こえる喋べる。
「ここにいる冒険者たちに伝えることがある。新しく見つかったダンジョンのボス部屋がようやく発見された! それでだ、ボス部屋攻略のために人員を募集をする。鑑定魔法で確認したところイビルトレントのようだ。トレントは木魔法しか使わないがイビルトレントは木魔法に加え闇魔法も使う非常に強力な魔物だ。参加条件はBランク以上。参加する奴は副ギルド長のエレミレに申請しろ」
皆の視線がエレミレに向くとエレミレ一礼をする。
「期限は今日から三日以内だ! 俺からの話は以上だ! 詳細など聞きたかったらエレミレに聞いてくれ!」
ヴァーナルは言うだけ言って階段を上がっていく。
「お、そうだ言い忘れていたことがあった。マモル! お前は参加だからな!」
「えっ!?」
参加する気なく他人事のように聞いていたマモルがヴァーナルの台詞に驚く。
「しっかり準備をしておけよ!」
「ちょ、まって!」
マモルの制止の声も気にせずヴァーナルは二階の奥に消えていく。
「な、なんで俺が……」
「悪いうちの親父が勝手に話し進めちゃって……」
「そうだ……具合悪いって言って当日休めば!」
「止めておいた方がいいぞ? 回復魔法使える奴連れてパイウスさん家まで押し掛けるぞきっと」
「うぅ……」
流石にパイウスやアイラに迷惑をかけるのはよくないと思い何かないか考える。
「マモルさん、絶好のダンジョンデビューですよ! この機会に挑んでみましょう!」
なんでベラはダンジョン行かせたがるのかマモルは疑問に思う。
「妖精さんも言っているし行こうぜマモル!」
「エレンさんも行くんですか?」
「ああ、警備隊も何人か同行する予定だからな俺もついて行くぞ」
「行きましょうマモルさん!」
「行こうマモル!」
「はぁ……わかりました。行きますよ……」
もう断れないと思ったマモルは諦めて承諾するマモル。
「ただ、俺ダンジョンこと全然知らないけど……」
「なら私に任せてください。沢山ダンジョンの事教えるんで安心してください!」
何がここまでベラをやる気にさせているのかマモルはため息を吐きながら思うのだった。




