アビスエンドウルフの件
教会を後にしエレミレの後を追うマモルたちはしばらく歩くと冒険者ギルドに到着する。
先に戻ったことで今冒険者ギルドは誰一人もいなくいつも騒がしい冒険者ギルドは静かだ。マモルはそんなことを思いながら案内された一室でエレミレが戻ってくるのを待っていた。
「お待たせしました」
飲み物をのせたお盆を持ってエレミレは戻ってくる。そのままマモルの前に置いたあとククリとクロの分も床に置く。
「ベラさんはお水で大丈夫ですか?」
妖精が何を飲みのか分からなかったエレミレは水を用意する。
「はい、大丈夫です! ありがとうございます!」
ベラはにこっと微笑み答える。
「それでエレミレさん、話ってなんでしょうか?」
エレミレは向かい側の席に座る。
「はい、お話しというのはまずはアビスエンドウルフの討伐報酬の件です」
「報酬、ですか?」
「アビスエンドウルフは前にも言いましたがAランク以上のパーティー数チームであたる討伐クエストです。それをマモルさんはおひとりで討伐されました。王国に報告後マモルさんは特例で昇級と報酬金が払われると思います」
「はぁ……」
あまり関心がないように返答するマモル。
「その際、王国都市から事実確認に何人か派遣されると思うのでマモルさん協力をお願いします」
「協力というと……話とかですか?」
「それもありますが、多分ですが……実力も確かめるために戦闘をするかと」
「え……」
極力戦いたくないマモルは困惑する。
「あの、その、できれば戦闘はしたくないんですが……」
「戦闘っていいましてもマモルさんの実力を確かめるだけですから普段通りの実力を見せればいいんですよ」
エレミレはにっこりと微笑む。
「そいうわけじゃ……」
マモルの時空間魔法はチート級だ。このことが知られれば確実に面倒くさいことに巻き込まれとマモルは思っての発言だったがエレミレには伝わらなかった。
「はぁ……分かりました……」
避けれないと思ったマモルは諦めた。
「では、話は以上になります。マモルさん改めてお礼を言わせてください。この街を救っていただきありがとうございました」
エレミレは再度ニコッと笑顔でお礼を伝えた。
話しも終わりマモルは部屋を出るといつも通りの騒がしい冒険者ギルドになっていた。そんな雰囲気にどことなく嬉しさを感じながら冒険者ギルドをそっと出る。
日は沈み街灯が照らす歩道を歩きながらアイラの家に向かっている時ふと視界に教会が映る。マモルは思わず足を止めていた。
「どうかしましたか?
急に立ち止まったことにベラが聞く。
ククリとクロもマモルの顔を見上げる。
「いや、なんでも――」
「アテペウス様に報告した方がいいかな……って思ってました?」
マモルは目を丸くする。
「なんで、わかったんだ?」
「視線の先と、あとは感です」
ベラはふふと笑みをこぼし続ける。
「神界は暇だと思うんで行ってみてはどうですか?」
「暇って……そうだないくよ。みんな先に帰ってて」
飛んでいたベラがマモルの肩に座る。
「何言っているんですか私も行きますよ!」
「ワフ!」
「わふ!」
ククリとクロも一緒に行くと言っているように鳴く。
「わかったよ」
マモルたちは進路を教会に変更する。教会についたマモルはシスターに無理を言って通してもらう。
「では、私はこれで」
「ありがとうございます」
シスターは扉を閉め出ていく。
マモルは初めて来た時を思い出しながら祈りを捧げる。
「よう来たのうマモル、ほっほっほ!」
「お久しぶりですアテペウス様」
振り返ったマモルはアテペウスに挨拶する。
「立ち話もなんじゃ、こちらに来い」
アテペウスは指を鳴らすと畳が現れ中央にコタツが出てくる。
久しぶりのコタツにマモルは足を入れまったりし始める。
「くつろいでいるよだな、ほっほっほ」
アテペウスに言われハッとするマモル。
「……すみません」
少し恥ずかしくなるマモル。
「よいよい、それで今回はなんのようじゃ?」
佇まいを正しマモルは今回来た目的を話す。
「今日街の近くでアビスエンドウルフが現れたことは知っていますか?」
「うむ、知っておるぞ。お主が倒したこともな。礼を言うぞマモルありがとう」
「あ、いえ……あの街には大切な人達がいるので守りたかっただけです。それで聞きたいことがあります。アビスエンドウルフに進化する条件を聞いてもいいですか?」
神様なら知っているだろうと思ったマモルはアテペウスに尋ねる。
「うむ……本当は禁止なんだが特別じゃぞ?」
「はい」
「進化条件は憎悪や復讐、破壊衝動など負の感情が心を満たし、邪神の力を取り込めば進化をするのじゃ」
「邪神、ですか?」
邪神と言われあまりピンと来てないマモルは頭を傾ける。
「その様子だとベラから教わっていないようじゃな」
「邪神とはどういった存在なんですか?
アテペウスは遠い昔の事を思い出すように語り始める。
「邪神とは全ての魔物を生んだ神の一柱じゃ。我らと同じく原初の時からいる神なのだが、奴は魔物に力を与えすぎて、気づいた時にはほとんどの種族が絶滅寸前までになってしまったのじゃ。基本我らは干渉してはいけないのだが、奴が干渉してるというわけで我らも生き残った種族に力を与え勝利をした。その後、邪神を世界各地に封印したのだが、誰かが封印を解いたか、封印が弱っているのか分からんがその原因でアビスエンドウルフが生まれたかもしれんのう」
語り終わりお茶を啜るアテペウス。
「そうですか。教えていただきありがとうございますアテペウス様」
「これくらいのことなら構わんぞ。ほっほっほ。ちょうど時間のようじゃな」
マモルの体が光りだす。
「みたいですね。アテペウス様また来ます」
「ほっほっほ、何時でも来るがよいぞ。暇つぶしになるしどんどん来るのじゃぞ?」
「暇なんですね……」
マモルは思わず苦笑いをする。
「ではアテペウス様それじゃ――」
「マモル」
マモルが別れを言うとした時アテペウスが真剣な目で呼び掛ける。
「決して危険なことはするのではないぞ?」
「……はい」
その返事を聞けてアテペウスの表情は優しくなる。
「ではさらばだ」
マモルの魂は神界から地上の本体に戻るだった。
意識を戻したマモルは周りを見渡すとベラとククリとクロは祈りをしている。
マモルはゆっくり立ち上がる。
「マモルさんもういいんですか?」
それに気づいたベルが尋ねる。
「うん、アイラも待っているし早く帰ろ!」
「はい!」「ワフ!」「わふ!」
ベラとククリとクロの返事が重なる。
マモルたちはシスターに挨拶してからアイラが豪華な料理をして待っている家に駆け足で帰るのだった。




