森からの帰還
元通りになった森の中を颯爽と抜けあっという間に街についたマモルたちはいつも使っている門に行くが閉まっていた。
「すいませーん、誰かいますか?」
固く閉ざされた門を叩きながら呼び掛けるが返事がない。すると、フードからひょこっと顔を出しべらが言う。
「マモルさん、多分なんですが皆さん教会の方にまだ避難しているんじゃないんですか?」
「かなぁー。まぁいいか、その前にディメンションホーム」
マモルは魔法を唱え門の近くに木製の扉を出現する。
扉を開けマモルは中にいるシャドーウルフのたちを大声で呼ぶと次々とシャドーウルフたちが扉から出てくる。全てのシャドーウルフが出ていくと扉は消える。
『おお、同胞たちよ』
「ガウガウ!」
シャドーウルフたちはダークネスウルフの周りに集まっている微笑まし光景をマモルとベラは見守る。二人の視線に気づいたダビルが言う。
『マモル、我らは森に戻るぞ』
「はい、ダビルさんここまで送ってくれてありがとうございました」
マモルがお礼を言い頭を下げた後ダビルを見ると何とも言えない顔をしていた。
「えっと、どうかしました、か?」
『……なんでもない、そうだこれをお主にやろう』
ダビルは影から一本の牙を取り出しマモルに渡す。
「これは?」
『我の牙だ、常に持ち歩いておけ。いいな!』
「は、はい!」
有無を言わさない迫力にマモルは素直に言うとおりにしようと思った。
『では、さらばだ』
その一言をいいダークネスウルフとシャドーウルフたちは森に帰っていく。マモルとベラは姿が見えなくなるまで後姿を眺めていた。
「さて、教会の近くにディメンションホームを繋げますかね。ディメンションホ――」
「ワフワフ!」
「わふわふ!」
マモルが右手を掲げ魔法を唱えようとしたとき、閉ざされた門の中からククリとクロの鳴き声が重なって聞こえる。
「どうしたんだお前たち急に走り出して、お前たちになにかあればマモルは――」
ククリとクロの鳴き声の後から警備隊長のエレンの声が聞こえマモルは門を叩く。
「エレンさん! 俺です」
「ん? マモルなのか? 待ってろ急いで開ける!」
少し待っていると門のすぐ横にある扉が開く。
「早く入れ! 直ぐ、そこま、で、泥が……」
森を呑み込み街の近くまで迫っていた泥は消え、森が元の状態に戻っている光景をみてエレンは言葉を失う。
「どう、なんてんだ……これは」
あり得ない光景に受け止めれてないエレンを他所にククリとクロがマモルはに駆け寄る。
「ただいまククリ、クロ」
「ただいまです!」
「ワフ!」
「わふ!」
二匹はおかえりと言っているように鳴く。マモルは二匹を撫でながらエレンに言う。
「原因だったアビスエンドウルフは俺とダ……ダークネスウルフ一緒に討伐をしました」
「ほ、本当なのか?」
「はい、倒した時にアビスエンドウルフの体は砂になってしまって証拠はないんですが……」
マモルは申し訳なさそうにする。
「そんなことはない!」
エレンが急に大声を出すもんだからマモルはびくっとしてしまう。
「何を言っているんだマモル! お前が無事に戻ったことがなによりの証拠だ!」
そう言いながらマモルの背中をバンっと叩くエレン。
「いっ! ……痛いですよエレンさん」
「おっと、すまんすまん。それじゃお前が無事に戻ったことを知らせに教会行くぞ」
エレンに言われマモルは教会に避難しているパイウスとアイラ、それと無理矢理振り切ったエレミレのことが頭を過る。
「はい」
エレンが先を行き、後ろからマモルたちはついて行く。しばらく歩くと前方からアイラと衛兵がやってきた。
「マモルっ!!」
マモルの姿を見たアイラは駆け出し、マモルの懐に飛び込んだ。
「無事で、よかった……」
「……心配かけてごめん」
しばらくマモルとアイラは抱き合った。
「あの、お二人さん続きは家でやってくれないか?」
甘々の空気に耐えきれなかったエレンが文句を言う。
エレンに言われ二人してはっとなりお互いに頬を赤くさせ離れる。
「はぁー先行っているぞ、報告を」
「はっ!」
アイラの付き添いで来た部下を聞きながらエレンは先に行く。
「アイラさん、大胆になってきましたね」
マモルのフードから飛び出しアイラを揶揄うベラ。
「ベ、ベラちゃん!」
アイラは再び顔を赤くする。
「ベラちゃんたら、もう……。ふふ、ベラちゃんおかえりなさい」
「ただいまです、アイラさん!」
ベラはアイラの顔に抱き着く。
挨拶を交わし終えたマモルたちはようやく歩き出した。
教会に辿り着くとエレミレとエレンが教会の前にいた。後ろの方には避難した住民や冒険者、衛兵たちがいた。
マモルはエレミレの前に歩く。
「マモルさん、話はエレン隊長から聞いています。アビスエンドウルフの討伐の件ギルドの代表代理として、感謝しています。この街を救ってくれてありがとうございますマモルさん」
「「「うおおおおお!!!」」」
エレミレが言い終ると後ろの人々たちが歓声をあげる。
「う、うわ!」
住民や冒険者たちによってマモルは人生初の胴上げを受けた。
しばらく続き、終わったころにはマモルはぐったりしていた。
「マモルさん大丈夫ですか?」
避難していたベラが話しかける。
「う、うん……どうにか……」
作り笑いをするマモル。そんなマモルにエレミレが話しかける。
「マモルさん、大事な話があるのですがよろしいです?」
「あ、はい。大丈夫です」
「ありがとうございます。エレン隊長後の事を任せました」
「分かりました」
エレンに指示を出しエレミレは冒険者ギルドがある方に向けて歩き出す。
「アイラ先に帰ってて」
「わかった、討伐祝いに豪華な料理作るから早く帰ってきてね!」
「うん」
アイラは満面の笑顔で手を振り自宅に帰っていく。
アイラの後ろ姿を見送ったあとマモルは先に行くエレミレの後を追うのだった。




