動きだす敵
マモルとダークネスウルフが共闘を決めたその時、突如、上空に影ができマモルたちは上見ると視界を覆いつくす程の黒くてどろどろした液体みたいなのが広がったいた。
『奴め! 我共々呑み込むつまりか!』
ダークネスウルフたちは突然の強襲に焦るがマモルは落ち着いて静かに周りに聞こえるように言う。
「大丈夫、この中にいれば敵の攻撃は届かない」
マモルが言った通り黒くてどろどろした液体みたいなのは上空で止まる。範囲内に入らなかったのはどこまで入れば動かなくなるのかを探っているようにマモルたちを囲い始めた。
「マモルさん、このままでは何もできなくなってしまいます。一旦ディメンションホームに戻りましょう。いつものようなマモルさんの部屋じゃなくダークネスウルフさんたちが入れるでお願いします」
「わかった」
マモルは想像する。昔観た映画に出てきた常に霧に包まれ、苔を纏う歪な木々、大小様々な石や岩、濁りが一切ない透き通る川がある神秘的な森を。
「ディメンションホーム」
マモルは右手をかざし魔法を唱えるとダークネスウルフが入れるくらいの特大の木製の二枚扉が現れる。
扉はぎぃっと音を立て開き始める。
『なんだ、この扉は!』
突然現れた扉にダークネスウルフは驚く。
「説明は後でする。ククリ、クロ。皆を連れて先入って」
「ワフ!」
「わふ!」
ククリとクロは先導切って扉を通る。二匹は外に向かって早く来るように促すために鳴く。
「クゥン……」
シャドーウルフたちは入っていいのか悩んでいる。
「ガウガウ!」
ダークネスウルフが一鳴きするとシャドーウルフたちは次々入っていく。
『我も先に行くぞ』
「うん」
ダークネスウルフが入っていくのをマモルとベラは見守る。
周囲は黒くてどろどろした液体みたいなのが埋め尽くされ天高くまで囲まれていた。
「マモルさん行きますよ?」
「うん」
マモルたちも扉に向かて歩き出す。その時、視線を感じマモルは振り返ると隙間から二つの赤く光る目と合う。
「……」
マモルが入ると扉がゆっくり閉まり、バタンと閉まると扉は消えた。
「すっげぇ、映画の中に来たみたいだ……」
扉の先の風景にマモルは見惚れてしまう。
ククリとクロの鳴き声が聞こえマモルは周りを見渡すが霧で全然見えない。
「マモルさん、こっちです」
「う、うん」
フードから飛び出しベラが案内する。
「こんな霧の中でも場所分かるんだ。ワールドマップ便利だな」
先が見えない道とも言えない道を進む中マモルなんとなく尋ねる。
「うーん、実はワールドマップには何も表示されていないんです」
「えっ、そうなの?」
「はい……ディメンションホームの中では外の様子とかならわかるんですが、中は表示されないので分からないんです」
「じゃどうやって?」
マモルは立ち止まって尋ねる。ベラは振り返り答える。
「ワールドマップにククリとクロがいるところが赤く光っているんですよ。そこに向かって歩いているだけです」
「そうなんだ」
「はい」
特に会話することもなく少し歩いていると霧が晴れ開けた場所に出たマモルとベラ。ダークネスウルフの周りにシャドーウルフたちが集まり、近くにククリとクロが座っていた。
「ワフ!」
「わふ!」
マモルの姿を見たククリとクロは駆け寄る。
「お待たせしました」
『遅いぞお主、その前にこの世界の事を説明してくれ』
マモルはこの世界の事を説明する。説明する際に動きを止めた力も説明を要求されたのでマモルは軽く説明した。
『お主の力……なんていうか……強すぎないか?』
「あ、あはは……」
乾いた笑いをしてしまうマモル。
「マモルさん、進化したダークネスウルフの名前がわかりました」
マモルが説明している間にベラはワールドマップに載っていたことを見つけ伝える。
「名前はアビスエンドウルフです」
「アビスエンドウルフ……」
マモルはあの時を思い出しながら名前を反芻する。
「アビスエンドウルフは災害級の魔物、体から出る黒い液体を使い街一つを呑みこみ、その液体には洗脳効果があります。シャドーウルフたちはそのせいですね」
「そんな魔物があの森に……」
マモルは街にいるパイウス、アイラ、名前を聞いていない衛兵、副ギルドマスターのエレミレなどマモルが関わり持っている人たちを思い出す。
「街が、皆が危ない……ベラ、アビスエンドウルフの倒し方は分かる?」
「体の何処かにある魔石を壊せば倒せます。ただ、早く倒さないと周りを呑みこんでどんどん大きくなってしまい分からなくなってしまいます」
マモルは考える。
「時間との勝負か……わかった。あとは、この事をギルドに報告しないとな」
会話を聞いていたダークネスウルフが立ち上がり言う。
『なら、我も行こう。その方がいいのだろう?』
「助かります。じゃ行きましょう。ディメンションホーム」
マモルは急いで伝えようと街の中、冒険者ギルドの前を想像しながら唱えると扉が現れマモルたちとダークネスウルフが出ていく。シャドーウルフの群れは待機となった。
「えっ?」
太陽はまだ空にあるが徐々に落ち始めていた。
マモルたちは扉を通ると武器を構えていた冒険者たちに囲まれていた。
「マモルさん!?」
冒険者たちの後方にいたエレミレが扉から出てきたマモルに驚く。
冒険者たちは武器を降ろし始めたが、マモルの後から出てきたダークネスウルフの姿をみて再び武器を構いなおし、辺りに緊張が走る。
「皆武器を下ろしてください! 敵じゃないです!」
マモルは武器を下ろすよう訴える。
「マモルさん、どういうことか説明をお願いします」
「はい」
マモルは森であった出来事を伝える。エレミレの表情が険しくなっていく。
「その話が本当なら大変な事態です」
「今すぐ住民を避難することはできますか?」
「それは……」
その時、一人の冒険者が息を切らして走ってくる。
「た、大変だ! はぁ……はぁ……森が、呑み込まれている!」
その話を聞いた途端マモルは門に向かって走り出すとククリ、クロ、ダークネスウルフも走り出し、その後ろからエレミレと冒険者たちがぞろぞろついて行く。ベラはフードの中に隠れている。
『我の背中に乗れ!』
「はい!」
マモルはダークネスウルフの背中に乗りダークネスウルフは一段と加速する。
「ダークネスウルフさん、外壁の上部に行けますか?」
『容易いことを!』
ダークネスウルフは屋根をつたい足に力を入れ一気に跳躍する。
外壁の上部に着いたマモルはその光景にする。
黒くてどろどろした液体は次々に木や魔物たちを呑みこみ拡大していた。
「マモルさん、急いで止めないと!」
「ああ、わかってる。この街と森を守らないとな」
マモルは拳を握りしめアビスエンドウルフと戦って大切な人達を守る抜くことを決めるのだった。




