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時空間魔法で異世界旅行記  作者: 紙紙紙
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冒険者ギルドから教会へ

 ギルドマスターのヴァーナルと戦いが終わり部屋に戻ったマモルたち。早速エレミレは準備していた白金貨十枚が入った袋をテーブルに置く。


「こちらがお金になります。確認をお願いします」


「はい」


 マモルは袋から一枚ずつ取り出しテーブルに並べる。


「九……十っと。確かに」


 もう一度袋に仕舞いマモルはディメンションボックスに入れる。


「じー……」


 エレミレはマモルの手元をじっと見ている。


「な、なんでしょうか?」


 エレミレの視線に気づきマモルは尋ねる。


「……マモルさんの魔法、お父さんと戦った時も思っていたのですが、私が知らない魔法だなって思いまして」


「そ、そうですか?」


「はい、大体の魔法なら……」


 エレミレは立ち上がり部屋の隅にある本棚から一冊取り出し戻ってくる。


「この魔法大全集に載っているんですが……」


 エレミレはパラパラと本をめくる。


「マモルさんが使った魔法は何処にもないんですよ!」


 興奮したエレミレは息がかかるぐらいの距離まで顔を近づける。


「エレミレさん、顔近いです!」


「あ…………ごほん」


 顔を赤くさせてエレミレは距離を戻す。


「えー……すみません。魔法の事になると少し興奮してしまいまして……」


「そ、そうですか」


 マモルはエレミレとアイラは似た者同士だなと思うのだった。


「単刀直入に聞きます。マモルさんの魔法はどんなものなんですか?」


 真剣な眼差しでエレミレは尋ねる。


「うーん……ごめんなさい。詳しいことは言えないです」


 申し訳なさそうにマモルは答える。


「そうですか……とても気になりますが仕方ないですね」


 エレミレが渋々諦めたことにマモルは安堵する。


「では、最後に口座についてお話しします」


「お願いします」


「口座を作って頂きますとお金をいちいち持ち歩く必要はなく各冒険者ギルドでお金を預けたり引き出せたりできます」


 銀行と一緒だなとマモルは思った。


「デメリットとかあるんですか?」


「デメリットは特にないのですが、亡くなった場合親族からの申請がなければ口座に入っているお金は全額冒険者ギルドに寄付されるぐらいですね」


「そうなんですね、分かりました」


「では、こちらで作っておきますので明日冒険者ギルドに昼頃来て頂ければ終わっているので来てください」


「分かりました」


「話は以上になります。今日はアイラの件やお父さんの件でご迷惑をおかけしました」


 エレミレは立ち上がり再度謝罪をする。


「本当に気にしてないのでそんなに謝らないでください」


「そう言っていただけると助かります」


「じゃ俺たちはこれで」


「はい、明日お待ちしております」


「行くよ、ククリ、ベラ」


 寝ているククリとベラを起こしマモルたちは冒険者ギルドを後にする。

 

 冒険者ギルドを出ると丁度昼を過ぎた時間帯になっていた。マモルたちは昼食がてら屋台で串を買い歩きながら食べているとベラが尋ねる。


「マモルさん、この後どうしますか?」


「そうだな……予定通りに教会に行こうと思う」


「じゃあっちですね」


「おう」


「ワフ!」


 ベラの案内によりマモルたちはしばらく歩くと白を基調にした教会に辿り着く。

 マモルたちは教会の正面にある開かれている木製の扉から入っていく。


「この像がアテペウス様です、マモルさん」


 ベラはフードから飛び出しアテペウスの像の前に止まりマモルに説明する。


「この杖を持った優しそうな老人がアテペウス様か……」


「アテペウス様は五大神の中では一番古く他の五大神を纏めている存在だと言われています」


「そうなんだ。この像に祈りをすればいいのか?」


「はい、両手を胸の前で組み片膝をついて祈り捧げてください」


「わかった」


 マモルは言われて通りに祈りを捧げる。



「マモル、神界によう来たな! ほっほっほ!」


 後ろから名前を呼ばれマモルは振り返るとそこには教会で見た像のまんまのアテペウスが畳に座りお茶をすすっていた。

 マモルは周りを見渡すとベラとククリがいないことに気づく。


「安心するのじゃ、ベラとククリは今も祈りをしておるぞ」


 アテペウスは空中から鏡を出しマモルに見せる。そこには祈りを捧げているベラとククリとマモルがいた。


「なんで、俺がいるんだ?」


「そこに映っているのはお主の本体じゃ、今のお主は魂の存在なのじゃ」


 マモルは安堵する。


「貴方がアテペウス様ですか?」


「そうじゃ、儂がアテペウスだ」


 アテペウスはニコニコと笑う。


「アテペウス様、俺をこの世界に転生させてくれて、俺のために色々してくれてありがとうございました!」


 マモルは誠心誠意でお礼を言う。


「ほっほっほ、気にするな。この世界を楽しんでいるかのう?」


「盗賊に遭遇しまった事以外は……割かし楽しんでいます」


 マモルはこの世界に来てからの事を思い出し答える。


「そうか。楽しんでいるならなによりじゃ」


 会話が終わりしみじみとしているとマモルは気になっていたことを尋ねる。


「あの、アテペウス様に聞きたいことがあるんですが……」


「なんじゃ?」


「俺が死んでから妹の夏鈴はどうしているのか知りたいんです」


 唯一の肉親の夏鈴の事を尋ねるとアテペウスは困った顔をする。


「すまんのうマモル。あちらの事情を伝えることは禁止されているのじゃ」


「そう、ですか……」


 マモルは肩を落として落ち込む。


「そう落ち込むな。詳しくは教えれないが、お主の妹は元気に生活しているぞ」


「そうなんですね……それが聞けただけでも安心しました」


「うむ。そろそろ時間のようじゃな」


 アテペウスがそう言うとマモルの体が光がだす。


「ベラのことよろしく頼むぞ」


「はい、アテペウス様それじゃ!」


 光が強まりマモルの魂は元の体に戻る。



 マモルはゆっくり目を開け近くで祈りを捧げているベラとククリをみて元の世界に戻って来れたと安堵する。

 すると、ベラが瞼を開けマモルと目線が合う。


「マモルさん、アテペウス様に会えましたか?」


「え、なんで知っているんだ?」


 ベラは祈りを捧げていた。神界に来てたのはマモル一人だけ。何故知っているのか当然疑問に思う。


「え、本当に会っていたんですか! 感で聞いただけなんですが……本当に会ってたんですね」


「なんかすごかったよ」


 初めて神様にあった人間の感想なんてこんなものだと思う。マモルも例外にもれなく。


「ふふふ、それじゃ祈りも終わったことだし夜になるまで街の散策に行きましょうマモルさん」


「そうだな、行くか」


 マモルは立ち上がりベラはフードの中に。


「ククリ行くよ」


「……」


「ククリ?」


 呼んでも反応しないククリの顔を覗き込むマモル。


「寝てるのかよ!」


「マモルさんここでは静かにしてください」


「あ、ごめん。ククリ起きて」


「ワッフ?」


 ゆっくり瞼を開けるククリ。


「そろそろ行くよ」


「ワフ!」


 ククリも起きだしたことでマモルたちは教会を後にし夜になるまで街を散策するのだった。



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