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義理の関係だと分かったら、妹がガチの恋愛脳になった。〜妹という仮面を外した時、彼女は最強のヒロインになった  作者: 白井 緒望


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第46話 鈴音の吸血姫。

 「彼らで間違いないですか?」


 俺と鈴音は母さんに付き添ってもらい、警察署にいる。公園で鈴音と蛍に乱暴した連中が捕まったと警察から連絡があったのだ。

  

 控室に通されると、奥に窓があった。その前に立つと鈴音は俺の手を握った。指先がひんやりとしている。


 ガラス越しに見た連中は、大学生くらいに見えた。警察官を前にしても他人事のようにニヤニヤしていた。


 鈴音の爪が俺の手のひらに食い込む。


 「間違いありません」

 俺はそう答えた。


 あの品のないニヤケ顔を忘れるわけがない。

 

 「被害届を出しますか?」

 警察官に確認された。


 「あの人たち、他の人にも同じようなことしてたみたい。お金取ったりも……」


 鈴音の肩が震えた。


 「大丈夫か?」


 男たちには余罪もあり、公園周辺に度々出没し、恐喝もしていたらしい。面通しが終わると、女性の警察官に声をかけられた。


 「中には性被害にあった女性もいるの。強制わいせつは未遂であっても罪が重い。起訴されれば実刑は免れないと思います」


 その言葉に鈴音は胸元を押さえた。


 警察もしっかり捜査するとのことだったし、あの公園の治安も良くなるだろう。


 鈴音に元気がない。

 アイツらの顔を見て、嫌なことを思い出したのだろう。


 心配だ。


 帰り道、母さんが言った。

 「たまには3人で、ランチでも食べて帰らない?」


 何か食べたいものはあるかな。

 俺が迷っていると、鈴音が手を上げた。


 「わたし、ハンバーグがいいっ!」


 元気がないのは、お腹が空いていただけらしい。


 「え、おれ。最近、ひき肉をたべると胃もたれするんだけど……」


 俺の発言に、母さんは鈴音と目を見合わせた。


 「悠真、本当に高校生? ふふっ。お父さんと同じこと言ってる」


 男子高校生というものは、ひき肉で胃もたれしてはいけない生物らしい。



 「あっ、わたし。この前できたハンバーグ屋さんに行きたい!」

 

 鈴音の提案で近所のハンバーグ屋に行くことになった。店内に入るとジュージューと肉を焼く音がして、胡椒の香りが食欲をそそる。


 若い夫婦が切り盛りしていて、小さいけれど活気がある店だ。


 注文してから、パティの形を整えて焼いてくれる。店の雰囲気にあてられて、俺は急にハンバーグ脳になった。


 早く来ないかな。


 すると、母さんが言った。


 「悠真、今更だけど、公園で鈴音を守ってくれてありがとう」


 「いや、俺はただのサンドバッグだったし」


 「ううん。命の恩人よ。もし、あの時に鈴音が乱暴されてたらって、考えただけでも怖いもの」


 「うん。本当にありがとう」

 鈴音も続いた。


 「あの時、鈴音は『頼んでない』みたいなこと言ってたけど?」


 「照れ臭くて言っちゃっただけだし」


 母さんが手を叩いた。

 

 「そういえば、旅行の件。お父さんが部屋割りを悠真と鈴音にするって言い出したわよ?」


 「へぇ、そうなんだ?」

 俺は初めて聞いたという体で返事をした。


 「悠真。ちゃんと一線は守ってね。じゃないと、わたしも応援できなくなっちゃうし。鈴音はアテにならないから」


 「アテになるし」

 鈴音は口を尖らせた。


 「いや、アテにならないだろ」

 俺の言葉に鈴音はむくれた。


 旅行の部屋割りの件。

 母さんも承知してくれたみたいだ。


 なんだかんだ言っても、父さんも2人の時間が欲しいのかもな。


 食事を終えて店からの帰り道に、指輪を見つけた小社を通った。


 前よりも僅かに綺麗になっていた。


 「お参りしていかない?」

 

 鈴音の言葉で、小社に寄って行くことにした。


 からんからん。


 本殿の前で鈴緒を鳴らして、3人で参拝する。


 すると、鈴音が言った。


 「前にここに来た時に、不思議な声が聞こえたんだよ」


 母さんは半信半疑だったが、俺は違った。

 ——俺もその声を聞いたのだ。


 

 家に帰ると、鈴音が部屋にやってきた。

 何やら言い出しにくそうにしている。


 「わたし、もしかして、変態だと思われてる?」


 この前、熱が出た時の話か。


 「まぁな」

 

 「ふぅーん。それはちょっとイヤだな」


 あれだけ好き勝手にしてるのに、変態と言われるのは嫌らしい。


 「いや、実際にそうだし」


 「だから、振る舞いを変えようかなって」


 妹が何やら不思議なことを言い出したぞ。


 「どうやって?」


 鈴音は俺を抱きしめるように、両手を広げた。背中に手を回し、ぎゅっと締め付けてくる。


 鈴音の心音が聞こえる。


 「失礼しますね」

 鈴音は口を大きく開いた。


 カプッ。


 鈴音は俺の首筋に歯を当てて吸い付いた。


 チューチュー。


 少しして、鈴音は口を離した。

 舌舐めずりしている。


 「鈴音って吸血鬼だったの?」


 鈴音はニコッとした。


 「嗅ぐと変態って言われるから、吸った」


 俺は両手を曲げてクネッと体を捻った。

 ちょっと、素で恥ずかしい。


 「でもこれ、鈴音は楽しいの?」


 「楽しい……甘い。悠真は甘い味」


 甘いって、飴玉じゃないんだから。

 いや、甘いのは健康的にマズいんじゃないか?

 知らんけど。


 鈴音は言葉を続けた。


 「これで、わたしは変態さん卒業だよね?」


 「むしろ変態そのものでしょ」


 「愛のある吸血だから、変態じゃないもん……」


 鈴音はそう言うと体を左右に揺らした。



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