5話 証拠を探せ
自白ってあんまり有力な証拠じゃないのよね。もっとこう、言い逃れが出来ない物証が欲しいわ。
「ルイ。この場合、どんなものが物証になるかしら?」
「そうだな。裁判記録、これは残っているはずだ。それに訴状。残ってるだろ?」
「お父様が捨ててなければ…」
かなり、怖い。ローランドの落書きに使われてたりするかもなぁ。
「あの男たちに紙で指示していればいいだろうけど、使いの者に口頭で指示してるだろうな」
「紙は証拠が残りますからね。その使いの者を見つけ出すってのは?」
「アールルード伯爵家の信用のおける人間だろうから、接触するのが難しいだろうな」
私の持っている手札だけで冤罪を暴くのは難しいのかな?
「あとは……メアリー=アールルード伯爵令嬢の為人かな?人望があるとか?」
「人望がある人は、冤罪を作り出しませんよ!」
「悪い悪い!例えだ」
ルイは顔の前で両手を合わせる仕草をする。
「とは言っても、私はこの髪の長さでメアリー嬢のターゲットなわけだから、それを調べるのは私にはできないかなぁ?」
「俺の知り合いの筋で調べるよ。どんな人間なんだかねぇ?」
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「皆様今日は、私の開いたお茶会に参加いただきありがとうございます」
「メアリー様は犯罪に遭ったばかりなのに、健気よね」
「それに比べて、エリス様は修道院から還俗してきたという話ですけれど、犯罪を犯したというのに厚かましいですわ!」
うふふっ、世間のウワサというのは全く操作しやすいというものですわ。
「あのことを思うとまだ恐ろしいんですが、皆様とお茶を楽しむと心が落ち着きますわ」
「流石はメアリー様ね。ところで、どのような場所に監禁されていたのですか?私は恥ずかしながら最近小説を書くようになりまして、参考にできたら…なんて思いまして。厚かましいですよね、こんな願い」
「殴られて記憶がちょっと曖昧になりまして……朧気なんですの」
「まぁ、大変!そんな風になるのですね。ゴメンなさい。純粋にお茶を楽しみましょう!」
「そうよね。こんな聖女のように心の広いメアリー様がそんな目に遭うなんておかしいわ‼」
「というように、社交界ではメアリー嬢こそ善。エリス嬢は悪。というように情報が操作されています」
「よくやった。そのお茶会にいた令嬢全てが証人となる。「殴られて意識が朦朧」という話があったな。という事は伯爵家が医師に診断をしているはずだ。ないと不審だ。‘医師の診断書’の有無。その中身が証拠となる。物証となるだろう」
「エリス様。有力な証拠としてとあるお茶会にてメアリー嬢が監禁場所を尋ねられ、「殴られたため、意識が朦朧としていてあまり覚えていない」と言ったそうです。これは、伯爵家ならば医師の診断書があって然るべきこと。診断書がなければメアリー嬢が嘘の発言をしたことと同義となります」
「すごいわね。どうやって、そのお茶会の話を?」
「知り合いの筋を使って」
怪しい…。
「便利屋としては、いろんな知り合いがいるんだよ」
便利屋恐るべし。
エリスちゃんが言うように、便利屋怖い…。




