32話 僕に必要なモノ
僕の名前は宮藤雅人、何処にでもいる普通の高校生だ。
こんな僕だけど隣の家には僕の面倒を嫌な顔をせずに甲斐甲斐しく見てくれる美人でかわいい幼馴染の九条茜って子がいる。
この子は僕が幼いころからずっと一緒にいた幼馴染で僕にとっては姉のような、妹のような、とにかく家族の様な存在だ。
それに中学の頃に親が再婚して出来た一つ下の義理の妹、宮藤花楓もいる。
この子は少し距離感がバグっていて一応は兄の僕に抱きついて来たりとちょっとだけ大胆なところもある?
とても良く懐いてる、可愛い妹だ。
そんな僕も今年で2年になるけどもう二学期も終わりを迎えそろそろ三学期となる。
あまり頭が良くない僕に勉強を教えてくれたりいろいろと、助けてくれる頼もしい先輩がいる。
僕が尊敬する2人の先輩、蔵王萌芽先輩と足立桜花先輩には良く勉強を教えてもらっていた。
二人共凄い人達で蔵王先輩はこの学校で副生徒会長を務め、生徒会長も認める凄い能力の持ち主だ。
足立先輩は誰にでも優しく人を虜にする笑顔がとても魅力な巨乳のお姉さんだ。
みんなからは聖女なんて呼ばれているけどそれもそのはずで彼女は誰に対しても態度を変えることなく笑顔で接する文字通り聖女みたいな人だ。
そして僕に告白してくれた初めての彼女。
冬真静留さん。
本が大好きで物静かな女の子。
長く綺麗な黒髪と眼鏡の奥に見える鋭い目つきは彼女の優雅さとか気品をこれでもかとアピールしている。
僕は彼女から告白され…付き合う事にした…。
彼女とのめくるめく青春の日々が始まる。
そんな風に思ってたんだ……。
しかしそんなモノはどこにも無い。
僕の選んだ選択。
それは一般的に正解と言われる選択ではなかったのだろう。
僕は彼女にふられてしまった。
あれ程僕に熱烈な愛を叫んでいたくせに…
でもこんなのはいつもの事だ。
慣れていかないといけない。
慣れれるかは別として…。
僕は周りからハーレム主人公なんて呼ばれている。
勿論それは認知している。
同じ学校にいて解らないなんて訳がない。
僕は学校の皆から女の子達を手玉にとる悪男みたいに言われてる。
別に構わない…皆が…女の子達がいてくれるならそんなの、気にする必要もない…。
そう思ってた。
なのに……。
僕の幼馴染…茜に彼氏が出来た。
相手は足立智春くん。
僕の数少ない男友達の1人だった人だ。
昔から女の子にチヤホヤされる事の多かった僕は男の子達から目の敵にされて、男友達に恵まれる事が基本的に無かった。
だからこんな僕に初めて出来たまともな男友達だと思ってたけど…多分彼はもともと僕から幼馴染の茜を奪う為に近づいたクソ野郎だったんだ…。
信じてたのに…裏切られたよ…
それに茜も茜だ!
あんな男を優先して…幼馴染の僕を蔑ろにして…
トイレの件だって…子供の頃はよく一緒に行ってたじゃないか…お風呂だって…子供の頃は一緒に…
なのに急に色気づきやがって……なにがモラルだ!
何が常識だ!
昔は僕の後ろをチョロチョロとついて来る事しかしなかったクセに!!
そして僕の前に現れなくなった先輩達…。
蔵王先輩と足立先輩…
二人共休み時間は必ずと言っていい程来てくれてたのにぱたりと来なくなった。
二人共3年生だ。
受験勉強が忙しいとか色々と理由はあるのかも知れない。
それでも…いきなりなんの連絡もして来なくなるのは酷いんじゃないか?
そして義妹の花楓は…
花楓も…過度なボデイタッチが、なくなった。
前は家族なんだから適切な距離感を心がけてたけど…
そんなモノは必要なくなった。
今の彼女はまるで僕の事なんてどうでも良いと言わんばかりの態度だ…。
おかしいな…
おかしいよ…、
僕の周りから女の子達が…誰も…誰もいなくなった……
いつも…いつもそうだ…女の子ってのは良く分からない…
近づいてくるくせにこっちから手を出せば霧みたいに掴めない、まるで蜃氣楼みたいに形のない幻…幻覚を見てるみたいな気持ちにさせられる。
それに女の子って言うバリケードがなくなり僕への陰口はその陰湿さを強め、僕の心の壁をジワジワと削ぎ落とし僕の心細さを加速させていった。
もう学校にいても仕方ない…
引き籠もりにでもなろうかな?
そんな事を考えてる時に僕に話しかけて来る人がいた。
「よお、お前いつも1人だな?暇じゃねーの」
「え?…と…君は?」
「え?おいおい!クラスメイトの名前くらい覚えてろよ?」
「ご…ごめん…えと…人の名前覚えるの苦手で…」
「はは!まぁそーゆーこともあるか、俺は大地智樹だ、まぁ気が向いたら覚えてくれや」
彼との出会いは僕にきっかけをくれた。
最初は足立君みたいに僕の幼馴染の茜を狙って友達面して近づいて来たのかなと思った。
茜でなくても妹の花楓や先輩の2人とか僕の周りには沢山女の子がいた…そう…いた…んだ…過去形だけど…。
そう…今の僕に彼が近づくメリットなんてない。
女の子達から用済みにされた僕に価値はない。
なら彼は純粋な僕への興味だけで僕に話しかけてくれたのか?
それなら…それなら…とても嬉しい。
夢だった男友達と下らない話で盛り上がるのが…
僕はようやく…本当の友達に巡り会えたのかも知れない…足立君みたいな偽物じゃない…本当の友達に…。
学校に来るのが嫌だった…
陰口を囁かれ、後ろ指をさされ…
本来の僕の下らない人間性を暴かれるのが嫌だった。
でも彼は違う。
彼はこんな僕の友達でいてくれる。
それが純粋に嬉しかった。
彼と友情を育もう。
女の子達では満たせない…男同士の友情を。
「それでね、詩羽の配信が神なんだよ!」
「あぁ、詩羽ちゃんはかわいいな、俺この前詩羽ちゃんのLIVE配信見てて思ったね、これはヤバいって、何がヤバいって可愛い過ぎてやばい!」
「だよね!だよね!やばいよね!」
彼と話すのは本当に、本当に楽しい。
僕はこんな友達が欲しかった
僕の話について来て、真面目に向かい合ってくれる友達が!
「おや?楽しそうだね?私も混ぜて欲しいな?」
「え?蔵王先輩?」
「え?蔵王先輩じゃないすか?あ?俺もしかしてお邪魔っすか?なんなら席外しますけどん」
「はは、それには及ばないよ?3人で楽しくお話しよう」
「え?でも…どうして…蔵王先輩が…?」
「あはは、ごめんね雅人君、生徒会の仕事と受験に少々手を取られてね…でも安心しておくれ、粗方済んだ、また私達で楽しく語らおう…勿論、彼も交えてね。」
「え?俺もいいんすか?」
「勿論だよ、雅人君の友人は私の友人でもあるからね、仲良くしてくれると嬉しいな」
「はっはい!」
「わぁ!」
「ふふ、」
「へへ!」
楽しいな!
まさか蔵王先輩が戻って来てくれるなんて思ってもみなかった…
楽しいな!友達と…僕の事を友達と思ってくれてる友達との時間がこんなにも楽しくて、充実した物だったなんて知らなかった!
今までこんなの無かった!
とても楽しいな!
気持ちは上に向き、僕はこれまでの悩み事や辛かった事がとてもちっぽけな事の様に感じられた。
気持ちが前に向けば自然と何事も上手く行く。
そう、これまで通りに。
「あっ、雅兄!おかえり!あぅ…雅兄…その今日はその…一緒に寝てもいい…?」
「駄目に決まってるだろ?僕達は兄妹なんだから!」
「あう…お兄ちゃんのいじわる!でもそんなお兄ちゃんも好き!」
「コラっ!くっつくな!」
「えへへ〜」
そう…これまで通り…
「あら?宮藤…君…?なんだか…見違えましたか?その…」
「あ…足立先輩…おはようございます、どうしましたか?」
「い…いえ…その…なんだかまたカッコよくなりましたね?ふふ」
「そうですかね?僕はこれまで通りですが…?」
「そうですか?なんだか垢抜けた様な気がします」
これまでと同じ…
「あ…あの…雅人……君…」
「何かな?冬真さん」
「そ…その…なんだか…その…」
「用がないなら僕もう行くよ?皆が待ってるから…」
「まっ…待って!私にも…」
「冬真さんも僕みたいな駄目男が一緒だと迷惑でしょ?」
「ち…っ違うのよ!私…気づいたの…自分の本当の気持ちに……だから…だから…もう一度…」
「…ごめん…もう行くね?」
「まっ…まって!まって……あぅ…うぅ…」
これまで通り…女の子達は気持ちを切り替えた僕の前に集まってくる。
気持ちを切り替えて…前向きにモノを見る事が出来る様になると彼女達はまた僕の周りにこうして集まってくる。
それに手を出せばまた振り解かれる。
僕も馬鹿じゃない…。
自分がモテてる自覚くらいある。
でもそれは僕のブランド力のお陰だ。
なんの需要があるブランドか男の僕には全然わからない…でも彼女達には共通した価値が僕にあると確信してるからこそ、こうして来るのだろう。
だから厳選していかないといけない。
本当に僕を好きになってくれる女の子を見つけなくちゃならない。
冬真さんみたいなのはまっぴらごめんだ。
友情と恋愛…この二つを網羅し、僕は今から本当の青春を謳歌するのだ!
そして神は…この世界に神様なんて者が本当に存在するなら僕はとことんソレに好かれている。
だってこんな奇跡…起こり得ないだろ?普通。
「今日から転校生を紹介する。仁ノ崎杏朱だ。」
「どうも…仁ノ崎杏朱といいます…これから皆さんと一緒にここで頑張って行きたいです…よろしく。」
「うおぉぉぉおおぉぉ!!」
「かわいい!?5女神レベルだぞ?あれ!」
「マジかよ!」
「ラッキーなんてもんじゃねーぞ!」
こんな半端な時期に転校生なんて何かの冗談みたいだろ?
僕だって信じられないよ…
でもこれは現実だ…。
それに彼女はかつての知り合い…懐かしい人だ。
彼女とは中学の時に同級生だった…そして当時、とりわけ仲の良かった女の子達の1人で…僕にとっては忘れたい思い出の中にいる人だ。
彼女相手にも僕は冬真静留さんの時に味わった後悔と同質のトラウマを抱えている。
まぁ、トラウマなんて言ってはいるが…早い話が拒絶されたんだ。
彼女が僕を求めて来た。だから、
だからさ…僕は彼女の求めに応えようとした。
その結果、僕は彼女から拒絶されたんだ。
だから今更昔に関わりの会った女の子が出てきたって僕には関係無い。
僕には彼女だけいてくれたらいい。
幼馴染の彼女さえいてくれたなら…
「おはよう、茜…」
「お……おはよう…雅君…」
「良かったら一緒に学校に行かない?」
「え…で…でも…」
「足立君の事なら気にしなくていいよ?なんせ僕等は幼馴染なんだ…きっと彼も分かってくれるさ?またいつもみたいにお弁当を作って毎朝起こしに来てくれてもいいんだよ?」
僕が挫けそうになった時…僕が負けそうになった時に…必ず彼女はいた。
ブランド価値がなくなり女の子達から見向きもされなくなる期間が僕にはある。
そんな時も彼女は変わらず僕の側にいてくれるんだ。
きっと僕の事が好きだから……
僕の青春には幼馴染…茜の存在が必要不可欠なんだ。
他の女の子達では彼女の代わりは務まらない。
彼女が戻ってくればまたいつも通りだ。
大丈夫、今の僕なら問題ない。
いつも通りに茜は僕の所に戻ってくる。
「茜…僕には君が必要なんだ…だからさ…おいで?」
僕は彼女に手を差し出す。
茜は僕の手を……
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