29話 モブの役目
「良かったねぇ…これで君の望みもほぼ叶ったのかな?」
「そうっすねぇ…でもまだまだっすよ、」
「ふふ、君は彼の事が本当に嫌いなんだね」
「男でアイツの事を好きな奴なんていないっすよ」
「あはは…安心しておくれよ…私は君を裏切ったりなんてしないさ…何せ君と私の”相性"は抜群だからね」
「嬉しいっすね、まさか先輩からそんな事を言ってもらえるなんて…」
「ふふ、私は誰かが色んな事に振り回され右往左往する様を見るのが大好きなんだよ、その過程でその誰かが人生の岐路に立たされて苦悩している所を見ると情慾すら感じる、居ても立っても居られないんだよ」
「いやぁ、凄い変態っすね先輩」
「ふふ、その変態に付き合ってくれてたのだろう?君は…」
「俺はあんたの事を利用してただけっすよ、宮藤…アイツが地獄に落ちればそれでいいんすよ、俺は…でもいいんすか?宮藤に相当入れ込んでたと思ってたんすけどね?」
「はは、私も彼と同じさ…恋愛感情なんて端から持ち合わせてはいないよ…彼への気持ちは彼からプレゼントされた仮初の思いであって私の本意じゃない。」
「ふーん…しかし、そんな事あり得るんすね…まるで催眠じゃないっすか」
「私が思うに突発的な片思いなんて催眠と大差ないさ、一時的に体感した感情の高ぶりが現実の認識を歪めてしまうんだ、だから冷静にモノを考えられなくなる、彼のまとう呪い…カリスマはそれに長けているんだ。」
「女になんもしなくてもモテる呪いとか男からしたら羨ましいどころの話じゃないとこっすけどね」
「そうかな?そのせいで彼は今苦しんでる様だけど?」
「うーん…まぁ時と場っすかね」
「ふふ…だね。」
彼は俺ならあんなヘマはしない…そう目の前の女に言い返そうと思ったが直ぐに取りやめた。
実際には異性に何もしてない、フラグも立ててない、なのにある日突然、異様なまでにモテだしたりすれば浮かれて、冷静に一つ一つ正解のマスを踏む事なんてきっと不可能だろうから…。
男は自分が凡人だと、正真正銘のモブだと自覚している。
だからそんな分不相応な力を突然に与えられてもうまく活用出来るわけ無いと理解していた。
だからこそ時と場なんて曖昧な答えを選択した。
しかし目の前の女からはその発言が正解だったようで女はケラケラと笑っている。
「ふふ…君はたしかにつまらない人間だよ
つまらない人間だけどもつまらないなりに自分を良く理解している、私の好きな聡明な人間だよ。」
「聡明?俺、成績中の下なんすけどね?」
「学校なんて大人が組み上げたルールの上でしか意味をなさない組織だ…そこでしか意味を持たない下らない評価に左右される事はない、君は私の好きな賢しさをもっている、好意を感じるよ。」
「女神の1人からそんな事を言ってもらえるなんて恐縮っすね」
「成績が気になるなら私が見て上げるよ、これでも立場柄、人にモノを教えるのは得意なんだ。」
「後悔しないでくださいね、俺、先輩が思ってるより頭悪い人っすよ?」
「ふふ、可愛い馬鹿は愛せるよ」
2人の学生がそんな話をファストフード店でしている事なんて誰も知らない。
この2人は利害の一致からよくこうして2人でつるんでいた。
かたや学校に5人しかいない女神と呼ばれる副会長で、もう一人は何処にでもいる平凡で無個性な男子生徒。
接点があると想像する事すら不可能な組み合わせだろう。
しかし2人にはある共通点があった。
それは宮藤雅人を観察する事。
しかし観察するという共通した目的を持つも2人がそれをする意味は決定的に違っていた。
女は宮藤に退屈を紛らわす玩具としての魅力を感じていた。
しかし男は違う。
男は宮藤に純粋な私怨を持つ。
男として女にチヤホヤされる体質に嫉妬しているから……ではない。
もちろんそれも少なからずあるが理由はもっと別の所にある。
男には中学の時に付き合っていた彼女がいた。
2人は仲が良かった。
周りからもお似合いのカップルだと誂われていたがそれは世辞なんかでは無く純粋な賛辞だった。
男はその女の事が大好きだった。
子供ながらに将来は結婚もするだろうと曖昧ながら思ってもいた。
しかし、宮藤…進級のクラス変えで奴と一緒になり、彼女は男を捨て、アイツの所にいった。
当然呼び止めた。
しかし聞く耳持たず彼女は宮藤を選んだ。
そして彼女は宮藤を取り囲むハーレムの一員となった。
ふざけてる…
ふざけてる…
こんなの…あんまりにも…
それからしばらく経ってハーレムは崩壊した。
元彼女は宮藤への恋愛感情を綺麗さっぱり失い男の所に戻って来た。
しかし縒りを戻したいなんて思えない。
当然だ。
一度裏切った相手ともう一度信頼関係なんて構築できるはずが無い。
男は元カノを切り捨て1人を選んだ。
それから更に時間は流れ男は高校生となった。
そこで…またアイツに出会うなんて思っても見なかった…
宮藤…アイツはまた男の前に現れた。
宮藤は男の事など覚えてはいなかった。
いや、最初から認識すらしてないようで宮藤の顔はどちら様と訴えていた。
自分が何をしたのかも知らず今ものうのうと生きている。
ゆるせない…
絶対に後悔させてやる…。
それが男が宮藤を観察する理由だ。
高1の頃は特にコレといった動きは見せなかった。
宮藤には幼馴染と義妹がいる。
こいつ等は宮藤と特に一緒にいるがピースとしては弱い、もっと時期を見ないといけない…そして高2に進級するかどうかと言う時期に奴の周りにはまたしても女が集まり始めた。
今まで通り幼馴染と義妹、これに加え副会長と聖女の先輩2人、そして2年に本格的に入って比較的早い時期に後輩女子が加入…彼女等はこの学校で大きな影響力を持つ女神なんて呼称で呼ばれるレベルの抜きん出た美貌を持つ美少女達だった。
そして男は彼と出会った。
「よ、俺、大地智樹、お前は?」
「え?俺……足立…足立智春だ、」
「そっか智春か、よろしくな智春」
「え…あ、おう、よろしく」
智春は一見パッとしない印象を持った男だが気が利くし話して見れば意外と面白い奴だった。
コイツは隠してるつもりみたいだが目の奥にどす黒いモノを隠し持っていた。
俺と同じどす黒い感情を。
親近感が湧いたんだろう。
それがコイツに話しかけたきっかけだった。
が、それだけで特にコレと言って特別仲良くしていた訳じゃない。
友達ではあっても親友だとかベストフレンドだなんて言える関係では無かった。
しかしコイツは宮藤と仲良くしていた。
宮藤が好きな訳じゃない、最初は宮藤のアレは男にも有効なのかと焦ったがどうやらそう言う事ではないらしい。
コイツは宮藤を観察するのが趣味らしく、その趣味を優
位に運ぶ為に友達のフリをしているだけなんだ。
宮藤の事は心底嫌っている。
が、ある目的のために宮藤のまえでは友達面しているのだ…。
どこまで俺に似てるんだ…
もしかするとコイツは俺と同じなのかもしれない。
そう思うと俺は足立も観察の対象にするのも良いと思えたしコイツを使えば俺の目的もずっと進めやすいと…そう思ったんだ。
足立は自分をハーレム主人公の親友ポジションのモブと言っていたがそれは違う。
お前にはハーレム主人公を舞台から引きずり下ろす物語の主人公になってもらうのだ。
お前にはステージに上がって貰う。
その時点でお前はモブにはなれない。
モブの役は俺がやろう。
目立たず影でコソコソするのがモブの役目なんだ。
そんなの…俺にしか出来ない…だろ?
「君…面白い事を考えてそうだね」
「蔵王…先輩…?」
「ふふ、私も混ぜておくれよ…君の楽しい企てに」
そうしてあの女が接触してきた。
あの女には俺がとびきり面白い玩具に見えたのだろう。
いいさ、
何だって利用してやる。
俺は宮藤をどん底に叩き落とせればそれでいいんだ。
もしこの小説を読んで少しでも面白いと思はれたならブックマークや↓の★★★★★を押して応援してもらえると幸いです。作者の執筆モチベーションややる気の向上につながります、お願いします。




