25話 不安
「かぁ〜羨ましい奴だぜ、たくよ〜」
開口一番にそんな事を言って来たのは俺の隣の席の男友達、大地友樹だ。
2年になってから出来た友人で友達ではあるが親友とかベストフレンドとか、そこまでの友情は無い…まぁありふれた友達だ。
それなりに気の良い奴で気もあうので趣味の話や適当な下ネタを話すくらいなら丁度いい相手だ。
「図書室の天使である冬真さんと交際経験があるだけでも羨ましいのに今度は我等が委員長様こと九条さんのハートを射止めるなんてよぉー」
「ははは…」
「どんな手をつかったんだぁ〜このこの!」
「どんな手って…人聞きの悪い言い方すんなよ!」
「事実だろ!ハーレムヤローから九条さん引っ剥がすとか中々出来ないぜマジでよ?」
「まぁ…そうなのかもな…」
既に俺と茜が付き合っているのはこのクラスの誰もが知る事となった。
それはあの宮藤も例外じゃない。
と言うよりも宮藤のトイレ付いて行く事件が広まった発端なのでヤツも知ってるのは当然の話だ。
あの騒動はハーレム主人公の宮藤と茜と姉ちゃんに副生徒会長の3女神が関わったこの学校内ではかなり大きな騒ぎとなった。
だから俺と茜が付き合ってることも加速度的に広まり、今やこの教室だけでなく、学校全体に広まっている。
今や俺と茜の交際が誰にも認知されて無いなんて事はあり得なくなってしまってるわけだ.。
茜は他の女神と比べて、そこまでのカリスマとか求心力はない。
とはいえ女神である事に変わりはなく、俺は一部の男子に殺されるかと覚悟もしていたが、この目の前の友人みたいに嫉妬はされてもそれが原因で何らかのトラブルに巻き込まれては今の所ない。
これもおそらくは聖女の加護…姉ちゃんのお蔭なのかもしれないし、そんなの関係ないのかもしれない。
「てか、ぶっちゃけた話が宮藤の奴に一泡吹かせた功績がでか過ぎるんだよな、大体の奴らがよくやった!て反応だぜ?」
「そうなのか?俺はてっきり男子から袋叩きにされるもんだとばかり…」
「まぁ…したい気持ちもあるが何よりもあの宮藤のヤローの吠え面みれたのがやっぱり効いてるよなぁ!」
とまぁ、みんな宮藤に思う所はある…いや、ありまくりなので今回は茜と付き合った事で生まれるヘイト感情よりも宮藤をギャフンと言わせた事への称賛の方が大きいらしい。
「しっかし羨ましいよなァ〜っ!九条さんとか純朴で可愛い美少女と俺もお付き合いしてぇ!」
「そこまで言うならお前も彼女作れば良いだろ?」
「ソレ言うかあ?嫌味な奴だぜ、作れたら作ってるよ!」
「お前ならいつでも作れそうなもんだけどな…」
「うるせぇリア充が!爆発四散しろ!」
「ひ…ひでえ…」
まぁ、俺も彼女いなかったら同じような反応してたのは容易に想像出来るし、しかもその相手が5大女神の1人である九条茜だとくれば嫉妬するなと言う方が無理だろう。
そうして今日も1日が終わり、俺は茜と一緒に下校しようとしていると…何故かまたアイツが茜に話しかけていた。
「だから私は智君と帰るっていってるでしょ?」
「どうしてだよ!…前は一緒に帰ってたろ?」
「あのね…今私は智君とつきあってるし…それに雅君も冬真さんと付き合ってるんでしょ?」
「そうだけどそれが何?変な我儘言わないでよ!?」
「我儘じゃないでしょ…はぁ…」
驚いた…アイツの中の常識はいったいどうなってるんだ…?
とりま茜を助け出さないと…
「茜、帰ろうぜ」
「あっ、智君!」
「足立…くん…」
「…宮藤…あんまり人の彼女に色目使うなよ?そう言うの良くないぞ?」
「きっ…君には関係無いだろ!僕等は幼馴染なんだ!今までずっと一緒にいたんだ!これが僕等の普通なんだよ!」
「その普通を世間様におしつけんなよ、お前の普通なんか俺等には関係ねーんだからさ」
「ぐぐ…ググッぐぅ~!茜は変だよ!どうしちゃったのさ!前はそんなんじゃなかったのに!」
「何が?私は何も変じゃないよ…私は何も変わってなんてないよ?」
「変わったよ!みんな!みんな!変だよ!」
そう言って宮藤は教室から走って出ていった。
何だアイツ?そんな空気感が周りに伝染していく。
てか、冬真と付き合ってるならその冬真と帰れば良いだろうに…、変な奴はどっちだよ…。
「なんだったんだろうな…アイツ…」
俺は何となくさっきの出来事が気になって茜に問いかけていた。
茜としてはぶり返されたくない話題かも知れないがそれでもどうしてか気になってしまったのだ。
「智君は気づいてなかった?」
「へ?何が…?」
「今日…雅君の所に誰も来てなかったんだよ…」
「あ…っ、そういえば…」
言われるまで全く気付いて無かった…。
確かに今日、あの騒がしい4人を見ていない。
幼馴染の茜に聖女の姉ちゃん…この2人はもうハーレムを抜けているので来ないのは解る。
しかし残りの3人はどうしてだろうか?
義妹と副会長はここしばらく見てない…気がする。
最初の方こそ冬真もよく俺や宮藤のいる教室に頻繁に通っていたが最近はこちらも見ない…様な気がする…。
他の2人は兎も角…彼女の冬真は何故宮藤のいる教室に来ないんだ?
「想定より早いけど…概ね予想通りだよ…」
「予想通り?」
「前にも言ったでしょ?雅君と冬真さんは相性最悪…絶対に上手くいかないと思うって…でもここまで早いとはおもわなかったよ…2人が付き合いだしてまだ一週間も経ってないし…」
「冬真といるのがしんどいから幼馴染の茜に依存してきた…て事か?」
「多分そんな所じゃないかな…あと皆が雅君の呪いから解放され始めてるからハーレムも壊れて雅君のメンタルが不安定になってるんだと思う。」
「ハーレムって呪いなの?そんなオカルトみたいな…」
「他に説明できないもん…あんなの…」
「まぁ…そりゃなぁ…」
宮藤のハーレムが呪いというのはいい得て妙だ。
確かにそれ以外に表現のしようがない。
アイツ個人に人を寄せ付ける魅力があるとは思えないし、ぶっちゃけ無いと断言しても良い。
なのに、よりにも寄って美少女ばかりがあいつにむらがるのはどう見たって不自然だ。
呪いにしろ、何かに取り憑かれてるにせよ…アイツがモテるのはアイツ自身が持つ本来の人間性とは関係ないモノだ。
そんな奴がモテる理由は何だと問われたなら…呪いなんて結論に辿り着くのも仕方ないのかも知れない。
「しかしその呪いって弱まったり強くなったりするものなのか?」
「さあ、わかんないけど…あえていうなら、雅君のメンタル次第なんじゃないかな?」
「アイツのメンタル次第…か…なんか抽象的だな…」
「正直言うとこういう事は過去にもあったんだ…なんどか…」
「え…?そうなの…?」
「小学校の時も中学校の時も雅君がやたらとモテた時があったの…しかもその時々に人を引き付けるような凄い魅力的な女の子達が雅君を取り合ってるの…こんな事が定期的に雅君の周りで起こってたんだ。」
「……、いよいよオカルトじみてきたな………その時も茜は宮藤の取り合いに参加してたのか?」
「私は…いつも…雅君を慰める役」
「慰める役?」
「雅君は基本的に超鈍感で女の子に対して不気味なくらいに鈍いの…だからいつも…ハーレムが出来ても長く続かなくて…今みたいに自然消滅するの…そうなると雅君はメンタル病んじゃってふさぎ込むんだよ…私はいつも…それを慰める役…それで立ち直ったらまたハーレムが出来上がるの…」
「茜はその時は宮藤の事が好きだったんだよな…?」
いや待てよ…
今の宮藤はメンタルを病んでいる。
だからハーレムが崩壊してるんだよな…?
なら宮藤のメンタルが回復したらまたハーレムが出来上がるのか…?
ちょっと前の俺なら奴のハーレムを出汁に愉悦を決め込むなんてアホな拗らせ方をしていたけど…今はそんなもんに楽しさを見いだせない。
何故なら俺にはそんな下らない物より大事にしたい彼女…茜がいるから…。
しかし俺はある一点が引っかかって仕方ない?
宮藤のメンタル次第で宮藤を好きになる女が急増するなら…茜もまた宮藤の事が好きになったりするのか?
冬真も宮藤の事が好きになって俺の元を去った。
もうあんな想いをするのは沢山だ。
茜にあれをやられたら俺は多分自殺するくらいヘコむ。
「今思うと私も雅君の事を好きだったり好きじゃなかったりする期間があった気がする…あれは多分呪いにかかってる期間とかかってない期間があったのかな…?」
「俺…俺不安だよ…茜が宮藤に取られちまうじゃって……また…あんな想いしなくちゃならんのかって…」
「大丈夫だよ。」
「え…?でも…」
「智君…私はね…智君が思ってるよりもずっと智君の事が好きなの…この気持ちを持ち続けてる限りあんな呪いには負けないよ!」
「茜…」
「でも智君成分が不足したら負けちゃうかもしれないね…」
「え…?ならどうしたら…」
「智君成分を注入して欲しい…かな…?」
「え…?ど…どうしたら…?」
「えへへ〜今から智君のお家にお邪魔して良い?」
「も…勿論だぜ!」
「えへ、やった!」
このあと俺と茜は2人で帰宅、茜は俺の部屋に初めてやって来た事で浮かれていた。
しばしば興奮気味にはしゃぎ、その後はお待ちかねと言わんばかりに俺成分をチューチュー吸われた。
その時の話はまた後日…という事で…。
前に感想で5女神のπサイズ序列が気になる的なコメントがあったんで一応書いときます。
1位、ぶっちぎりで聖女姉 2位、義妹 3位、茜
4位、図書室の天使 5位、副会長…てな感じです。




