22話 始まり
足立智春が私に告白してきたのは確か高一の真ん中辺り…二学期の秋辺りだったと思う。
暑さも治まりだし、涼しさを感じ初めていた頃にアイツは私に告白してきた。
図書室の天使なんて当時から言われていた私に言い寄って来る奴はそれこそ、星の数程いた。
色目を使われたり、下種な視線を向けられたり、告白してくる奴は沢山いたからコイツもかぁ~といった印象だった。
だから正直にいうなら、彼も多数の中の1人に過ぎなかった。
じゃ、何故足立智春の告白を受け入れたのかというと大きな理由はない。
周りの子達から恋人はいいぞ!なんて話をたまに聞いてたのでどんなモノか気になっていたのが理由としては大きい。
それと顔も普通で性格も大人しそうだし…無理に迫って来そうでもないし、人畜無害そうだからって理由で、たまたま、私のその時の気分とタイミングが智春の告白と合致して告白を受入れたという流れだ。
つまり智春の告白が私に受け入れられたのは運が良かっただけ…。
ただ付き合うに辺り、私は智春にいくつかの条件を提示した。
その一つが学校内で私と付き合ってる事を公言しない事だ。
図書室の天使なんて言われてる私と付き合い初めたなんて周囲に知れれば智春は私を信奉する者達の嫉妬から攻撃される。
それを避けるため…では勿論ない。
こんなのは智春を納得させる言い訳に他ならない。
当時から私は智春を別に愛してたわけでも好きだったわけでもない。
智春に対する気遣いなんて私にはない。
じゃ何故かって?
私の評価に影響するからだ。
私は図書室の天使…この学校で5人しかいない女神の1人だ。
その私が恋人なんて作ってみろ?
周囲は私を恋人にしょうと歯止めが効かなくなる。
最初は智春と付き合ったことを公言して告白避けの防波堤にしようと考えてたけども私は人畜無害な普通の男である智春の告白を受け入れたのだ。
彼は人畜無害で普通の男の子。
決して防波堤としての役を熟さず…意味をなさず、むしろこんな奴がオーケー貰えるなら俺もワンチャンスあるんじゃね?みたいな考えの奴が湧いて出てくるのが目に見えて予想出来てしまったんだ。
そんな訳で私は恋人の存在を隠してそれでも恋人と言う存在がいる学生生活を過ごした。
最初の頃はまぁまぁ楽しかったわ。
アイツは私の事が本気で好きだったみたいで色々気を使ってくれていた。
でも普通だった。
ハッキリ言って、付き合って行く内に飽きてきて3ヶ月も経つ頃には完全に面倒くさいって気持ちが上に来ていた。
そんな感じで半年間、惰性でアイツと付き合っていた私の目の前に奇跡が舞い降りたの。
それが宮藤雅人君。
初めての感情だった。
これが初恋ってやつなのかと身震いしたのを今でも覚えている。
私の体が…心が、全身全霊で彼を欲していた。
真っ当な貞操観念を持つ私は足立智春と付き合っているままでは彼とお付き合い出来ないという事に気付き、智春と別れる事を決意した。
酷いと思う?
今のままじゃ彼が邪魔でしか無いから仕方ないじゃない…。
当時の智春は私にとても入れ込んでいて別かれるといっても素直に受け入れず、頭を下げず駄々ばかり捏ねていて、とても煩わしかったと記憶している。
だからあの時の私は強く思った。
もう安易に恋人など作るものではないと…。
彼を煩わしく思った私は少々強い言葉で彼を拒絶した。
その甲斐あって彼はようやく私を諦める覚悟が出来たみたいだ。
それからは一転して彼は私を避ける様になった。
私を見かけると回れ右して逃げる様にもと来た道を引き返していく。
実に滑稽な物だった。
ここに来て自分が周囲に彼と恋仲だった事を無為に広めていなくて良かったと昔の私に感謝した。
あんな軟弱な男子が元恋人だなんてお笑い物でしかないからね。
しかし上手くいかない。
宮藤君はとても奥手でシャイな男の子だ。
女からの好意を受け入れるだけの自信が自分の中にない様子で常に後ろ向きな考え方に陥る傾向にある、とてもナイーブな心の持ち主だった。
とても純粋で奥ゆかしい性格。
好感の持てる男の子だと彼を観察して思った。
これまで私に言い寄ってきた男共とは全然違う。
彼こそが…彼こそが私の求めていた理想の男の子なんだと、この時確信したんだ。
でも彼の周りには面倒くさい連中がたむろしている。
これ程までに魅力的なんだ…。
これはある意味必然で当然なのかも知れないけど…
それでもあんまりではないか?
見た目はまあまあだけどその他の能力が平均のぱっとしない女…九条茜。
幼馴染っていうだけで彼の周りをチョロチョロしているいけ好かない女。
聖女なんて周りから持ち上げられてる上級生の乳デカ女…足立桜花。
持ち前のデカい乳で雅人君を誘惑する卑しい女。
女子高生版オタサーの姫みたいな女…宮藤花楓
義妹らしいけど、妹なら妹として立場をわきまえろ…
気持ち悪い…。
そして私が一番苦手な女、蔵王萌芽…。
他者を見下す事だけに心血を注ぐろくでも無い女。
私の事を見下してるし、ナメてるのが目で解る…。
そして…こいつ等全員私の通う学校で私と同じ様に女神なんて呼ばれている女達だ…。
どうして雅人君の前にはこれ程の難関が立ち塞がっているの?
コレでは彼と恋仲になるなんて不可能じゃない…
こんな風に思うのは当然だ…。
だからこれは予想出来なかった。
私は突然その雅人君に呼び出されたのだ。
人気の少ない…しかしムードのある学校近くの自然公園に。
「そ…その来てくれて、あ…ありがとう…」
「え…?いえ…と…とんでもないわ、」
「そっ…その!僕!冬真さんの事が好きなんだ!だったから…どうか恋人として…どっどうか!ヨロシクお願いします!!」
「え…。う…うそ、」
「嘘なんかじゃない!僕本当に…君が好き…しゅきなん…あっ…はうぅ……」
「ふふふ、」
「あぁ…ごめん…せっかくの告白なのに…かんじゃって…嫌だよねこんな奴じゃ…ごめんね…いまのは忘れて!じ…」
「待って!!」
「…ゃ…え?」
「なろっか…?恋人……私を宮藤君の……雅人君の彼女に……して……」
「あぁ…いっ…良いの?僕で……?」
「貴方がいいの……」
「やっ……やったぁ!!」
「うふふ…」
まさか…
まさかの出来事だ…。
片思いの相手だったはずの宮藤雅人君が私に告白して来たのだ。
こんな奇跡みたいな事が本当にあるなんて…。
この時ばかりは神様に感謝した。
彼も私と同じ想いだったんだ…
彼と……雅人君と私は両想い…
気持ちは通じ合っていたんだ…。
こんなにも嬉しい事があって良いんだろうか?
あぁ…生きててホントに良かった…。
智春と別れていてホントに良かった。
そんな風にこの時の私は思っていた。
なんの疑いもなく…
彼を……宮藤雅人を理想の相手だと信じこんでいた。
後の自分が後悔する事になるとも知らずに…。
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