17話
朝のホームルーム前の時間。
俺は教室……ではなく学校の中庭で九条さんと一緒に缶コーヒーを飲んでいた。
朝は冷えるのでお互いホットだ。
九条さんはフーフーと息をふきかけ冷ましながら飲んでいる。
かわいい。
「お姉さん…聖女を味方につけるんだね…うん、いいと思うよ…」
「そっか…でも大丈夫かな?ウチの姉ちゃんあれで適当な所があるから…」
「確かに猫を……聖女を被ってる時以外はかなり雑な人だけど…狡猾でズル賢い人だから味方につけるのは大きいメリットが有ると思う。」
「あはは…九条さんのお墨付きが出ると心強いな!」
どうやら我が家の姉は肝心の宮藤や他の一般生徒以外には案外と素がバレてしまってるらしい。
そこはバレても構わないと姉は判断してるのだろう。
「桜花先輩には私の幼馴染としての視点からのアドバイスを条件にすれば協力はしてくれるって思うよ?正直冬真さんより信頼出来るしね。…なにせ足立君のお姉さんだし。」
「そういや冬真の奴にもちゃんとアシストしてるんだな、ちょっと以外だったよ…適当にあしらってるのかと思ったからさ…」
「あはは…利害の一致ってところかな…私的には彼女の事は応援したいから…」
「そっか…」
「雅君と冬真さんが上手くいくのは不満?」
「え……い…いや、そんな訳じゃ…」
「大丈夫だよ…あの2人は相性最悪だから、仮に付き合いだしても絶対に上手く行かないよ」
「お…おう…」
なんか九条さん…こんなはっきりと物を言うんだな…
少しだけ意外かも…
「ごめんね…」
「え…?何が…?」
「私のせいでいろいろ面倒な事になってるから…まさか私なんかと付き合うだけで足立君が誰かから嫉妬される事になるとか…そこまで考えてなかった…だから…」
「なんかとか言うな…九条さんは魅力的で可愛いんだから俺が嫉妬されるのは仕方ない…まぁちょっと怖いから自衛手段が欲しいってだけだ…」
「う…うん」
ああ…
どうして九条さんは一々こんなにもかわいいのか…
頬を赤く染めて嬉しそうにはにかみながら俯く姿は実に庇護欲を掻き立てられる。
こんな子が毎日側にいて好き好きオーラを出してたのにそれに気づかなかったとか宮藤は絶対に変だろ?
幼馴染で家族の延長線だからとかそんなの関係ない。
男なら好きになるだろ普通…。
「取りあえず…その…これからは彼氏として…そのよろしく…九条さん…あ…いや…その…茜…さん。」
「ふふ、さんはいらないよ…茜って呼んで…私も…その智春だから智君って呼ぶね?」
「ぶふぉ?智君…」
「え?あの…嫌だった?」
「嫌じゃない嫌じゃない!その余りの破壊力の高さに逆に脳が破壊されそうになっただけだ!ノープロブレムだ!」
「も〜なにそれ〜ふふふ」
「ははは…」
こうして俺達は正式に付き合う事になった。
もっとも姉ちゃんに協力を取り付けるまでは学校で大ぴらに付き合ってる事を話す事は出来ない。
まぁ誰かに知られても得する様な事でも無いので基本的には黙っているつもりだが下手に隠すのも疲れるだけなのでイチャつけるならとことんイチャ付いて行きたい所存だ。
まぁ時と場所くらいは気を付けないと駄目だなとは思うのだ。
そうこうしてると時間は勝手に過ぎて行くもので残り時間も少なくなって来る。
2人で教室に向かうが同時に入ると怪しまれそうなので九条さん…茜にトイレに寄ってから教室に向かう事を伝える。
トイレの出入り口付近に差し掛かったところで話し声が聞こえたので、壁に隠れて、そっと聞き耳を立てる。
話し声はどこぞの男子生徒複数人と我がクラスのハーレム主人公様こと宮藤だった。
「お前さあ?まじでいい加減にしろよ?」
「俺等の事、見下してんじゃねぇぞ?あぁ?」
「な…?べ…別に見下してなんか…?」
「見下してんだろうが!どう見てもさぁ!毎日毎日…ヘラヘラしやがってよぉ?まじでムカツクんだよお前!」
「ハーレム主人公様にゃわかんないかもしれねぇけどさ?もうちょっと空気読もうや?な?マジで舐めてるとお前、後悔じゃ済まされないのわからないの?」
「な…なんの事なの…?僕…わからなくて…」
宮藤の言葉についつい怒りの限度を超えたのか男の1人が奴の胸ぐらを掴み首をしめる様に持ち上げる。
いや、あれは実際に首が閉まってそうだ、
現に宮藤は顔を青ざめさせて苦しそうにしている。
「だからさ?その態度なんとかしろよ!?」
「ハーレム主人公の次は鈍感系主人公様かい?いい御身分だね?お前?」
「はぁ…なんかコイツまじで俺等がキレてる理由がわかって無いんでねーの?頭お花畑過ぎるだろ?」
実際、宮藤は彼らが何を怒ってるのかおそらくわかって無いのだろう。
あの頭に?マークがいっぱい飛び交ってそうな表情を見れば嫌でも察してしまう。
しかし珍しいな、こう言った場面に出くわしたのは意外に思うかも知れないが初めてだったりする
それにしても……、
やっぱり絡まれてたんだな。
まぁ…そりゃそうか、俺みたいに皆が皆、アイツの言動を気にしない強メンタルな持ち主ばかりでは無いという事だ。
しかし茜がいなくて良かった。
こんな場面に出くわしてしまえばいくら恋愛感情無くなったとはいっても助けに行ってしまうだろう。
幼馴染としての縁はまだ残ってるのだろうし…。
では俺が助けに行くのか?
ノンノン。
何故助けに行く必要がある?
アイツは友達でもなんでもない。
ただの娯楽目的の観察対象でしか無い。
そんな物にわざわざ危険を押してまで助けに入る必要はない。
「ま、利用はさせてもらうけど?」
そう呟くと俺はスマホを取り出し姉の番号に合わせる。
数度の電子音の後姉が電話に出る。
「何よ、こんな時間に…?」
「二階東廊下のトイレの前で宮藤が男連中に絡まれてる、助けてやればポイント高いぞ?」
「流石私の弟ね、でかしたわ!」
そう言うと姉は電話を速攻で切った。
今頃超音速で手下数名を引き連れて男子トイレに向かっただろうし、まぁあれで大丈夫だろう。
多分。
俺はその後、何食わぬ顔で教室に向かった。
しかし何故今日、宮藤は女を引き連れず1人でいたのだろう。
あの4人なら宮藤がトイレに行くといってもついて来そうなものだが?
いや、花も恥じらう乙女なら、ヤローのトイレまで付いて来るなと言いたいところではあるのだが。
その後、予鈴ギリギリで宮藤はトイレから戻ってきて、やや息も上がっているみたいだが目立ったキズなどは一応は見られない。
胸ぐらを掴まれたさいによれた首元は直っているため、おそらく姉ちゃんが直したのだろう。
聖女面が下品なデュフフ面に変貌していく様が安易に予想できる。
その後も変わらず時間は過ぎて行く。
暇つぶしに宮藤を観察していると少し変わった挙動をしている事に気づく。
奴はしきりに九条さん…茜の方に視線をやっている。
キョロキョロと彼女を盗み見ている。
以前はあんな事は無かったと思う。
今更彼女の事が気になり出したのだろうか?
茜はここ最近宮藤のハーレムグループに参加していないし、弁当も作らないし迎えにも行っていない。
それが今になって気になり始めたと…。
もう遅いんだよ…宮藤…。
お前は…。
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