15話
俺は今、自室のベッドの上でぼ〜と天井を眺めている。
とはいえ天井のシミを数えたりなんてしていない。
俺の頭の中は先程の九条さんからの言葉…告白でいっぱいだ。
彼女は卑怯だ。
俺からの返事を彼女は避けて逃げたのだ。
もっともあの場で結論を急かされていたら俺はきっと答えられなかった。
だからあれは彼女なりの優しさだったのだろう。
「返事が今すぐほしい訳じゃないの…いきなりこんな事を言われても困ると思うから…」
「お…俺は…」
「無理しなくてもいいの
…私は…ただ一緒にいさせて欲しいだけなの…」
「九条…さん…」
「でも…もしも…答えが決まったら教えて欲しい…じゃね。」
去り際に彼女はそう言って走り去った。
顔は終始赤く緊張しているのが見て取れた。
そんな事があり、俺は放心したまま帰巣本能のまま家に帰り付きそのまま自分の部屋のベッドに横たわっている。
頭の中は九条さんでいっぱい。
今までの人生で女の子に告白なんてされた事もない。
こんな事は初めてでどうしたらいいかわからない。
そう言えば…
今にして思えば冬真は俺の告白をどんな気持ちで受け入れたのだろうか。
アイツは俺の彼女だった時に一度でも頬を赤らめていた事があっただろうか…。
無かった気がする…。
アイツが俺の告白を受け入れたのはただの妥協…?
数ある告白の中で俺がまだマシ?に思えたから…?
一番あり得るのは男避けか…?
いや、これは絶対に違う…。
男避けが目的であるなら付き合っている事をないしょにしてなんて言わないだろう…。
俺と冬真が付き合ってた事実を知る者は少ない…。
今でこそ友人連中に話しているが当時のあいつ等に知れたりしたら俺は火炙りの刑に処されていただろう。
五大女神と付き合うとはそう言う事だ。
そして俺はその女神の候補から告白された。
他の4人程に熱心な信徒がついてる訳じゃないが嫉妬や妬みの元になるのは何となく想像出来てしまう。
どうしたものか…
そんなふうに思い悩んでいると部屋のドアが勢い良く開け放たれた。
「ちょっと!智春!アンタ帰ってるなら帰ってるって言いなさいよ!」
「はあ…何でいちいちそんな事言わないと駄目なんだよ面倒くさい」
「アンタに聞きたい事があったのに一向に帰ってこないと思ったら既に部屋にいるとか灯台下暗しなんてレベルじゃないわよ!」
「しらねーよ…どうせ宮藤関係だろ?姉ちゃんが俺に聞きたい事なんて!」
「察しが良い子は好きよ?ご褒美にハグしてあげよ〜か?」
「気持ち悪いからやめてくれ!」
「ふふん、照れちゃって」
「はぁ…で、何が聞きたいんだよ」
「……、私このまま聖女キャラ続けててホントにいいのかなって思ってね」
「なんだよ、聖女キャラ続けるって事でこの前は納得してたじゃん」
「だって全然進展ないし、このままじゃ他の女神連中に出し抜かれるんじゃ無いかって心配で…」
「それは無いだろ…大丈夫だよ」
「な!?どうしてそんな根拠も無い事が言えるのよ!」
「根拠?根拠ならあるよ…むしろ無いのにこんな事をテキトーに言わねえよ」
「へ…へ〜、じゃその根拠っての?聞かせてよ」
「正直気乗りしないな…姉ちゃんキレそうだし…」
「はぁ?怒る訳無いでしょ?いいから言ってよ!」
「……まぁいっか…え〜とな…」
俺は一息ついてから俺なりに頭のなかでもまとめた理由を話した。
「宮藤は恐ろしく自己評価が低い。自分が女にモテてるって現実を頭が認識してないんだ…だから客観的に見ればハーレムとしか捉えようのない事でもアイツの中では親切な誰かが気を使ってくれてる程度にしか思ってない…アイツの中で自分は平凡なモブのままなんだ。誰かに好かれてる…女の子にモテてる…そんな事あり得ないってそう思い込んでるんだ。」
「あっ…ありえないでしょ…あそこまでガッチリ固めて囲って…普通…自分がモテてるって思うのが普通でしょ?」
「だから言っただろ?自己評価が低いんだよ…アイツは…」
「そ…そんな…」
「だから誰かが本格的に動かない限りは現状のままだ」
「そんなの駄目!それってつまり、萌芽や花楓ちゃんに茜ちゃんがその気になったらアウトってことでしょ!こうなったら既成事実を!」
「落ち着けよ!…はあ…それも大丈夫だよ」
「な…何が大丈夫なのよ!」
「何度も言ってるけど宮藤は自己評価が馬鹿みたいに低い…多分相手の告白を告白と受け取らないんじゃないかな?」
「告白を告白と受け取らない…?」
「変に思わないか?あれ程モテてるのにアイツはこれまで恋人がいた事が無いんだ…、告られた事位あるだろうに…」
「た…確かに…」
「多分アイツは昔に誰かに告られた事があるんだと思うけどそれを本気と受け取らなかったんだと思う…」
「本気に受け取らなかった…?じゃ、どう取らえるのよ?」
「そんなの知らねーけど多分…嘘告とか?」
「はあ?嘘告…?」
正直ここまでの俺の発言は当てずっぽうだ。
根拠なんて何処にもない。
でもそこまで間違ってるとも思えない。
こんな風に考えるのはこれまで宮藤を観察してきたのもあるが一番は九条さんの影響がでかい。
あんな可愛い子に昔から愛されてたのに奴はそれに全く気づかなかった。
結果、九条さんの気持ちは萎えて四散し粉々に消え去った。
九条さんも告白なりしようとしたはずだ。
何せ幼馴染なんだから…
でもしなかったのは多分…先駆者がいて…
その先駆者が犠牲になって九条さんに教えてくれたのだろう。
告白は悪手だと…。
「そ…そんなの…下手に告白なんてしたら終わりじゃん…」
「そう言うことだな…」
「ど…どうすれば良いのよ…」
「だから前から言ってるだろ…現状維持…姉ちゃんは聖女キャラを貫いてここぞって時に宮藤にしかけりゃいいんだよ…」
「うぅ〜」
姉は人のベッドの上に勝手に寝転がってゴロゴロ゙しだす。
俺は退かざるをえずベッドから起き上がろうとするが姉は俺の腰に手を回して抱きついてくる。
やたらとデカい胸が腰にあたって気持ち悪い。
他の女の子の物なら嬉しいハプニングも姉のだと思うと嬉しくも何とも無いのだ。
「ねえねえ!どうしょう!どうすれば良いのぉ!?」
「知らねーよ!離せよ!」
「最近残りの女神の冬真さんまで本格的に加わってやばいのよ!あんたの言ってる事もわかるけど、もし誰かが運良く付き合ちゃったらどーすれば良いのよ!これで5女神全員が宮藤君の取り合いに参加とか最悪よぉ!」
「あ〜、えーと…九条はもう大丈夫なんじゃねーか?」
「え…そう言えばあの子…最近来ないわね…?」
「もう宮藤の取り合いに参加しないんだってさ…本人から聞いてるからマジだと思うぞ?…」
「な…なんでよ?まさか何か作戦?押してだめなら引いてみる的な?」
「いや…その…他に好きな人が出来たらしいとか…?」
「へ?他の誰かを好きになったから宮藤君の事は諦めるって事?よくわからないけどそれはラッキーね、幼馴染とか存在が怖かったからこれは良い事聞いたわ!」
「存在が怖いって…」
「だってそりゃそうでしょ…近くでいつも支えてくれる美少女とか私達からしたらただの脅威よ…でもあの九条さんがねぇ〜相手は誰なのかしら…」
「……」
姉に俺と九条さんの事を話す気は無い。
しかし話す利点はある。
今思ったのだが…姉を味方につければ俺は九条さんと大々的に学校の中でも付き合えるのではないだろうか?
姉は学校の中で聖女なんて呼ばれてる程にはデカい影響力を持つ。
その姉の庇護下にいれば俺が九条さんと付き合っても面と向かって攻撃は出来なくなるのでは無いだろうか…
実行に移す利点は十分にあるかも知れない…。
明日…九条さんに相談してみるか…
九条さんと付き合って上手くいくかどうかは正直なところは解らない…
それでも俺はもう冬真と付き合っていた過去に引きずられたくはない。
九条さんと新しい恋愛をして…彼女の事を好きになって行きたい。
そう思えるくらいには彼女は魅力的なのだから…。




