11話 3ヶ月前の出来事
冬真静留が絡んで来たお蔭でそれまでの何処か甘ったるい空気は四散し、結局昼休みは無情にも終わりのベルの音と共に終る事となった。
俺は現在5時限目の授業を受けながらある事に頭を悩ませていた。
それは宮藤ハーレムの事に付いてだ。
宮藤の幼馴染、九条茜がそのハーレムから抜け出た。
彼女は以前から宮藤ハーレムの面々とは違い、やや宮藤と距離を置いていた。
当時は何故かと思っていたが彼女の中で宮藤に対する気持ちが萎えてしまったていたのが原因だったのかもしれない。
幼馴染とはいえ、絶対ではない。
いや、幼馴染だからこそ…宮藤という人間の粗が詳細に見えてしまっていたのかもしれない。
宮藤の持つ謎の魅力?カリスマ?
男には全く理解出来ないソレは絶対ではないみたいだ。
ハーレムを維持し続けるだけの拘束力は無いのだ。
なら俺が見たがっている修羅場はもう見れないのか…?
それは困る…。
宮藤には頑張って貰わないと困る。
これは早急なテコ入れの必要があるかも知れないがどうしたものか…。
姉をけしかけてみるか…?
冬真に火を入れてみるか…
実はどちらも俺の本意では無かったりする。
俺は冬真に復讐したいのであって冬真を幸せにしてやりたい訳では無い。
今や冬真への復讐なんて心底どうでも良いと思える程に冷めてるけどそれでもあいつを幸せにしてやりたいと思える程お人好しにはなれない自分がいる。
姉に関しても、もし姉が宮藤と付き合って家にまで宮藤が来るようになり、アイツの下らない話の相手をさせられたりしたらソレはそれで堪らない。
それに姉と宮藤のヨロシクやってる声なんかが家の中で聞こえてきたりしたらもっと地獄だ。
ハーレムを崩壊させないようになんとか維持する方法を考えないといけない訳だ。
はぁ…なんで俺がこんな事を心配せにゃならんのか…
と、ここまで考えて思う…。
宮藤なぞ、俺には本心からどうでもいい存在だ。
それでも奴のハーレムの維持に心血を注ぐ理由なんてもう一度あの修羅場が見たいってだけなんだ。
あれは今から3ヶ月程前の事。
冬真静留に唐突にフラれ、高校2年になり、フラれたダメージも癒えてきた時期だ。
一度あのハーレムメンバーは大きな騒ぎを起こした事がある。
副生徒会長の蔵王萌芽は宮藤を我が物にせんとあらゆる特権を使い、他の女神に喧嘩を売った。
今にして思えばアレが火種となった。
副会長の標的は彼女にとっても友人である俺の姉の聖女様、足立桜花も含まれている。
副会長は自分以外の女神を潰す為の行動に出たのだ。
理由は勿論、宮藤の独占だ。
勿論他の女神達もただ黙認なんてするはずもなかった。
学校内では女王である副生徒会長と聖女と呼ばれる姉、奴の義妹で姫と呼ばれてる宮藤花楓と水面下では図書室の天使である冬真静留がバチバチにやり合ったのだ。
各々自身の動かせるコマを最大限に使い相手を潰さんと精神攻撃から露骨な実力行使とまさに手段を選ばない地獄となった。
面白いのが各陣営に所属するコマ達は自分達のトップが何を目的に争い競い合ってるのか、それを理解していない事だ。
まさか宮藤を取り合って争っているなどとは知らず彼等、彼女等は自分達の信じる将の為に戦った。
まさか宮藤の取り合いが理由だなんて全く思ってなかっただろうし、そこが判明していればきっと誰も女神達に協力なんてしなかっただろう。
コマとなる女神達の信奉者達は女神から褒めてもらいたい、認めてもらいたい、あわよくば付き合えたりその先もと夢を膨らませ…陣営と陣営に別れ、互いが互いに攻撃しあい、学内では生徒同士の戦争が起こった。
敵将である敵陣営の女神の弱みを握る。
その為には校則違反は当たり前…下手すれば停学や退学も辞さない行動に出る者も現れ地獄はその濃度を強めていった。
女神達同士も表面的には仲良くしつつも腹の探り合いとチクチクした攻撃が表面化していてギスギスドロドロ、昼ドラも真っ青の地獄が構成されていた。
余りの惨状に流石の教師達も頭を抱えていた。
それでも女神達が今も変わらずそこにいるのは女神達が騒動の原因だと解っていながら確たる証拠もないため取り締まったり出来なかったという訳だ。
ここまでの惨状でありながら宮藤は素知らぬ顔だった。
当然だ。
宮藤にとっては関係の無い事だし、事実、宮藤は何も知らない。
奴にとっては女神同士の諍いなんてそれこそ異世界の出来事の如く自分には遥か遠い、関係の無い出来事なのだから…。
奴からすればまさか自分が渦中にあるなんて想像にすら及んでないだろうしね。
だから奴は当時から自分の好きな事だけをしていた。
俺はこの時になんて歪で屈折した世界なんだと強い関心を持った。
正直人間同士のエゴの押し付け合いに魅了されていた。
たった1人の人間を取り合う為だけにこれだけの惨事が生まれるのかと感動もした。
人のドロドロとした感情の表面化…
人が人を追い落とすための足の引っ張り合い。
それを間近で見せられ俺はそれに魅了されてしまったのだ。
しかしその戦争は唐突に終わりを告げた。
殊の他呆気なく。
何故止まったのか…
理由は馬鹿みたいな物だった。
宮藤が数日学校を休んだのだ。
理由は流行り病の治療の為。
またその流行り病にかかった理由が下らない。
宮藤はオタクでコレクターでもある。
推しの限定グッズが発売し、それをゲットするために長蛇の列に店が開く5時間前から並び無事ブツをゲットした。
しかし明くる日から体調を崩し余りにも体が不調だったので病院に行くと流行り病の陽性と診断され自宅療養を義務付けられたのだ。
つまるところオタクグッズを買いに5時間も並んだ結果流行り病に感染したという事だ。
その結果奴は数日学校を休み、それに気が気ではない女神達は戦争どころでは無くなったのだ。
事態は奴の家にお見舞いに行くという方向にシフトしたがそれは出来ない。
なにせ流行り病だ。
面談など許される訳はなかった。
ただ2人を除いては…。
その2人とはご存知、九条茜と宮藤花楓その人だ。
この2人は義妹と幼馴染の関係だ。
なんなく療養中の宮藤と面会が出来た。
特に九条は家族でもない他人なのに幼馴染というだけで療養中の宮藤に会うことが許された特別な人間と女神達に認識された。
ちなみに九条は当時、戦争には参加していない。
自衛に終始し、自分からは決してアクションを起こさなかった。
今ならその理由もわかる。
多分関わりたく無かったんだろう。
もはや恋愛感情も気薄になり好きでも無くなってしまった奴の取り合いに参加なんてデメリットしかないからな…。
しかしここで女神達はある勘違いをする。
今回の一件で手を出さずにもっとも宮藤に近い位置を死守した幼馴染属性こそもっとも厄介な存在なのだと…。
結果として女神達は九条の株を勝手に上げ、彼女の評価を改めた。
女神によって祭り上げられた彼女は女神と同等の美少女として周囲に認知され、気付けば女神の1枠となっていた。
もともと美人で学級委員長と、ある程度目立つポジションにいたのも広まるきっかけの一助となった。
が、やはり女神に拮抗するレベルには足りてなかった。
もともと彼女にそこまでの才覚は無かったし、他の女神達の様なカリスマや求心力も無い。
図らずも女神達のブーストによって五大女神の一枠に加わるも実際の彼女にそこまでの影響力は無かった。
それが女神候補なんて呼ばれている理由ではないかと俺は思っている。
もっとも女神達の中で彼女は明確なライバルと認識されたのは紛れもない事実なのだろう。
そして数日の間、女神達は奪い合う対象を失い、その振り上げた手を下ろした。
そして明後日の方向に曲解し宮藤の評価を謎に爆上げした。
宮藤が学校を休んだのは自分達への戒めだと。
下らない争いに取り憑かれ他者に迷惑をかけるなら僕は学校にいかないと態度で示したと彼女等は勝手に解釈したのだ。
そんな馬鹿なと思うだろうが実際に姉がそんな事を言っていたのでマジかよ…とドン引きしたものだ。
実際の宮藤は争いがあった事実にすら気づいていないレベルだ。
奴は極端に視野が狭い。
自分の事しか見えてないからなぁ…。
と、3ヶ月前にこんな事があったわけだ。
今の彼女等はそんな過去があった事なんて遠い記憶の彼方に追いやり表面上は仲良くしている。
しかし、九条がハーレムから外れる事を決意した今…
もうこの先どうなるかなんて俺に解る筈も無かった。
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