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第33話 【ザネリSide】自業自得の結末

「くっ……アルディン……!」


 アルディンは1枚のカードを手にしていた。

 それを見て何が起こったのか、ザネリは瞬時に状況を理解する。


(カードを使って強制的に転移させたのか!)


◇◇

 【SR秘奥義ギアスの計略】

 [レア度] ★★★★★★★(7)

 [カテゴリ]魔法カード

 [タイプ]インスタント

 [効果]指定した空間に存在する対象を選択し、別の空間へと転移させる。ただし転移場所は近場へと限定される。

◇◇


「どうして僕が侵入したって分かった?」


 ザネリは首を鳴らしながら目の前のアルディンに投げかける。


「俺には《神眼》があるから。ザネリの行動は最初から視てたんだよ」

「《神眼》? 視てた? あの役立たずの《鷹の目》はどうしたんだい?」

「《鷹の目》が覚醒して《神眼》になったんだ」

「ふーん、へぇー。なるほどねぇ。そのズルのおかげでここまで成り上がったってわけかい。まぁでもそれも今夜でおしまいだよアルディン。君のコレクションしてたカードはすべて破壊してやったからね!」

「コレクション? ああ。あれはぜんぶフェイクだけど」

「な……なんだって?」

「カードは今すべて俺の手元にある。ザネリの行動はすべて見通してたから」

「なんなんだ! その力は……」

「《神眼》は有能だから。少し先の未来も視えるんだ」


(未来を見る力だと? そんな能力があってたまるものか!)


 ふとザネリが振り返ると、後ろにサークルが張られておりこの場から逃げられないことに気づく。

 

「いったい何をした!」

「【R聖なるバリア-ミラーサークレット-】のカードでこの場から逃げられないようにしたよ」


◇◇

 【R聖なるバリア-ミラーサークレット-】

 [レア度] ★★★★★(5)

 [カテゴリ]魔法カード

 [タイプ]インスタント

 [効果]一定時間対象相手をある空間へと閉じ込める。発動者自身も閉じ込められることになるので注意が必要。

◇◇


「ぐっ」

「もうバカな真似はやめて観念するんだ。それがどんな力か分かってて使ってるのか。その額に描かれた紋章は……悪魔の紋章だ」

「悪魔の紋章だって……?」


 ザネリは言われて初めて自分の額に紋章が浮かび上がっていることに気づく。


(さっき女どもが騒いでたのはそういうことかい)


 その名前にはザネリも覚えがあった。

 王立学院の図書館で読んだ古文書の中に悪魔の紋章について書かれた箇所があったことを思い出す。


 そこには『悪魔が人に智慧を与え、智慧を与えられた者は邪悪な力を得る』という逸話が一緒に掲載されていた。

 どうやらそのような逸話はこの世界のさまざまな土地で残されているようだ。


(ということはあれか? あの男は悪魔だったと……。いや、誰だろうと関係ないね! こんなに素晴らしい力を与えてくれたわけだからさ!)


「ザネリ。君は『悪魔』と契約したんじゃないか?」

「だったら……どうだっていうんだい?」

「それは人が使っちゃいけない力だよ。俺にはそれが分かるんだ」


 アルディンの言うとおりザネリの肌は紫に変色していた。

 体も少しばかり大きくなっている。


「それも《神眼》とやらで視たってのかぁ?」

「そうだよ」

「ひゃははっ! そりゃ便利だねぇ~。占い師にでもなったらどうだい?」


 ザネリがバカにするもアルディンは真剣な顔を崩さない。


「フン……まあいいさ。所詮は才能ギフト。出来損ないの能力さ。暗黒の力を手にして分かったよ。人がどれだけ無力かってね。カードなんてものに頼らなくてもこの力があれば、僕は世界を統べることだってできるんだよ!」

「世界を統べる? そんなことのために『悪魔』と契約を交わしたの?」

「ハハハッ! これまで常に支配される側で搾取され続けてきた君には、僕のこの高貴な野望が理解できないのさ!」


 ここでザネリは片手を前にかざす。


「お互いサークルの中から出られないんなら好都合だ。今ここで長年の恨みに決着をつけてやるッ!」


 するとその時。


「アルディーーン!」

「ご主人さぁま~~!!」

「すらぁ!」


 大声を上げながらルーシィとリズ、スラまるが庭園を駆け抜けてくる。


(スライム? いつの間に〈召喚カード〉を使ったんだ?)


 一瞬警戒するザネリだったがすぐに頭を切り替える。


(まあスライムなんて大した能力を持ってないからね。それよりも……)


 サークルの外側から精一杯声をかけてくるメイド姉妹に目を向けつつザネリは挑発する。


「ほらアルディン! 〈武具カード〉でも〈魔法カード〉でもなんでも放ってきなよ! 予定変更だ。お気に入りの女の子たちの目の前で無様に殺してあげるから。ヒャハハハ!」

「俺はザネリとは戦いたくない」

「今さらそんなこと言い出すとは滑稽だねぇ~」

「その力は『悪魔』に返すんだ。それはとても危険な力だ。今すぐ手放さないとザネリの命が危ないんだよ」

「こんなときでもお人好しかい! 吐き気がするね! 僕はさぁ! 最初から君のそういうところが大嫌いだったんだ!」


(どこまでも鼻につくヤツだ……目障り極まりない! 今すぐぶち殺してやる!)


 ザネリは目を据わらせると、もう片方の手をアルディンの前にかざした。


「悪く思うなよ。僕の誘いを断った君が悪いんだからね」


 すると。

 歪な闇のオーラがザネリの全身から発せられた。


「これで終わりだ! 死ねええぇぇアルディンッ!!」


 だがその瞬間。


 

 ザザザザザシュゥゥゥゥゥーーーーー!!!



「ぅぐ!?」


 ザネリは背後から巨大な棍棒を突かれてしまう。

 それは一瞬のうちにして体を貫通した。


 口から血を流しながらザネリが振り返るとそこにはローブ男の姿が。


「ご苦労様でーした。貴方の役目はもうおわーりです」

「ぅがああああああああああああぁぁッッ!!?」



 ゴリィゴリィゴリィゴリィィィィッ~~~~!!!



 ローブ男が棍棒を振り上げると。

 ザネリの肉体はぐちゃぐちゃに引き裂かれ、虫けらのようにその場に放り捨てられてしまう。


 大量の血を浴びながらローブの男は両腕を天に掲げた。


「フフフ。そうでーす! この血! これこそ余が追い求めーていたもの! 復活のレクイエームです!」


 そして男はローブを払いのけると高らかにこう宣言する。


「余こそーがこの異世界を征服すーる者、魔王ヒトシュラ! 皆余の前にひれ伏しなーさい!」

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