第24話 VS氷剣竜ミラジェネシス①
俺たちは氷剣竜ミラジェネシスが封印されているっていう最下層のフロアへと降り立っていた。
あっという間にここまで来ちゃったな。
さっさと倒して帰ろう。
「帰ったらルーシィの美味い夕食が待ってるからな。ちなみにリズのかわいい笑顔も待ってるぞ」
「すらぁ~!」
そんな風にスラまるとのんきに話しながら歩いていると。
広々としたフロアの中央に全身が鋭利な水晶で覆われた巨大なドラゴンが鎮座しているのが見えてくる。
(いたぞ。氷剣竜ミラジェネシスだ)
敵は頑強な結界の中に封じ込められていた。
「ほいっと」
それをシエラさんから貰った【UR勇者の石】を使って簡単に解いてしまう。
シュルリーーン!
その瞬間、氷剣竜ミラジェネシスがゆっくりと目を覚ました。
「……ほう。人族が我の前に姿を現すのは実に300年ぶりのことよ」
目の前のドラゴンは首を静かに上げる。
成人男性の背丈の5倍はありそうなほどの巨体だ。
「わざわざ結界を解くとはご苦労なことだ」
「今日はあんたを倒すためにやって来たから」
「我を倒す? 面白いことを言う。おかげで目がはっきりと覚めたぞ。我ら三竜が倒せないと分かったから、これまでこんな場所に封印していたのではないか?」
「まぁそうなるね」
そんな会話をしながら俺はさりげなく相手のステータスを《神眼》で確認していた。
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【氷剣竜ミラジェネシス】
種族:ドラゴン族
Lv.350
攻撃力 21000
防御力 25000
魔法攻撃力 32000
魔法防御力 24000
敏捷性 30000
運 15000
[特技]
《氷殺邪竜波》
《掌握空域》
《無量零度・天衝》
[アビリティ]
攻撃力増加+70%
防御力増加+70%
魔法攻撃力増加+50%
魔法防御力増加+50%
敏捷性増加+30%
運増加+30%
炎属性無効
氷属性無効
雷属性無効
風属性無効
光属性無効
闇属性無効
レベル上限突破
[弱点]
なし
[解説]
大いなる暗黒のチカラに目覚めた天災級ドラゴン。
氷属性による攻撃はどれも凶悪で見切れなければ即座に滅ぼされてしまう。
三竜の出現により人々は絶望の淵へと追い込まれることになった。
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予想どおりこれまで戦ってきたどのモンスターよりもぶっ壊れたステータスをしていた。
さすが世界を一変させた天災級ドラゴンの1体だ。
「300年なんぞ我ら三竜にとっては瞬きをするくらい一瞬のことよ。それにもうすぐヒトシュラ様が完全な力を手に入れられる。すぐにでも人族を滅ぼしてくれよう」
「ヒトシュラ? いったい誰のことを言ってるんだ?」
「貴様が知る必要はない。どうせここで我に倒されるのだからな」
よく分からないが相手にとっても好都合らしい。
どのみち三竜は地上に上がって人々を襲う可能性があるみたいだから、このまま放っておくことはできないけど。
氷剣竜ミラジェネシスはバサッと大きな翼を広げると、威嚇するように鋭い雄叫びを上げる。
「そのような弱々しい召喚獣を連れて何ができる? あの勇者ローシュでさえ我をここに足止めすることで精一杯だったのだ」
「でも300年近く捕らえられてるわけじゃん?」
「面白いことを言う。わざと捕まってやったのだ。ここは案外居心地がいいのだ」
「強がり言っちゃって」
「ぐっ……。な、ならば! 貴様はローシュに代わって我を葬れるとでも言うのか!」
「うん。勇者様からカードを受け継いだし。悪いけど倒させてもらうよ。だってあんた地上に上がって悪さしようと企んでるだろ?」
「そうだな。1人残らず氷漬けにしてやろう」
「人に危害を加えるつもりならやっぱりここで倒すしかないよ」
「自らの甘さが命取りとなることが分かってないようだな、小僧。いいだろう。300年ぶりに相手となってやろう」
ドスン、ドスン!
巨大な尻尾をその場に叩きつけると氷剣竜ミラジェネシスは宙へと飛び上がった。
「やるよ。スラまる」
「すら!」
スラまるに声をかけると俺は水晶ホルダーを目の前に展開させた。
「ゆくぞ、愚かな小僧!」
突如降下しながら氷剣竜ミラジェネシスは攻撃を繰り出してきた。
「《氷殺邪竜波》」
凍てつく巨大な氷瀑が一瞬のうちにしてフロア全体に突き刺さる。
それを俺とスラまるは簡単に避けた。
(さすが三竜だけあるね)
パッシブスキルは無効の山盛りだったし。
しかも特技はどれも強力なものばかり。
中でも《無量零度・天衝》は凶悪で、ローシュ様と戦った時は大地を穀物がまったく育たない氷土に100年近く変えてしまったっていう逸話がある。
けど、べつの意味で厄介なのは《掌握空域》だ。
これは自身の姿を透明にして行動することができるっていう能力。
それでも俺はまったく焦ってなかった。
(すぐに終わらせよう。ルーシィとリズが帰りを待ってるんだ)




