第23話 《神眼》で隠し部屋を見つける
次の戦闘からは俺も参加することに。
〈武具カード〉と〈魔法カード〉を織り交ぜて使いながら、モンスターを次々と瞬殺していく。
『デュラハンプレデター5体の討伐に成功し、EXP12500を獲得しました。アルディン=ギルバートのレベルが29から30に上がりました。』
デュラハンプレデターの集団を一気に倒すとようやくレベル30に到達した。
「ふぅ。これでDランクになったぞー」
「すら!」
モンスター自体はそこまで脅威じゃないんだけど。
このままチマチマとレベルを上げてたらあっという間に日が暮れてしまう。
(ルーシィには夕方までには帰って来いって言われてるからなぁ。あの子怒ると怖そうだし)
ぶっちゃけ氷剣竜ミラジェネシスなんかよりもルーシィの方が数十倍も怖かった。
「そうだ。昨日面白いカードを拾ったんだ。それを使ってみようかな」
◇◇
【R天国と地獄のルーレット】
[レア度] ★★★★(4)
[カテゴリ]アイテムカード
[タイプ]インスタント
[効果]出現した1000個の魔水晶のうち当たり1個を当てることができたら、次の戦闘で得られるEXPは1000倍となる。外すと水晶ホルダー、魔素ホルダー、デッキケースに入っているカードをすべて失う。
◇◇
デッキケースから5枚の【R天国と地獄のルーレット】を取り出して契約してしまうとカードを発動させる。
「アイテムカード発動――【R天国と地獄のルーレット】×5」
その瞬間、目の前に5000個の小さな魔水晶が出現した。
キラキラと輝く魔水晶が宙にずらっと浮かぶ姿はまさに圧巻の光景だ。
「この中から5個当たりを当てればいいんだよな」
「すら?」
「心配しなくても大丈夫。俺にはこいつがあるから」
そう言って俺は「《神眼》――発動」と唱えた。
瞳が黄金色に輝き始めると5個の魔水晶が赤い光を帯びて視えるのが分かった。
「これが当たりだね」
選んで掴むと5枚の【R天国と地獄のルーレット】は眩く光る。
『【R天国と地獄のルーレット】×5のカード効果により、次回戦闘で獲得するEXPは×5000倍となります。』
よし。
無事に当たりを引いたみたいだ。
(あとは手頃なモンスターを倒せば……)
そんなことを考えていると。
「すらぁぁ~~!」
いつの間にかスラまるが奇襲をかけてモンスターの群れを瞬殺してしまう。
『エビルリザード4体の討伐に成功し、EXP65456089を獲得しました。アルディン=ギルバートのレベルが30から100(上限値)に上がりました。』
「うぉぉっ!? 一気にカンストさせちゃったよ!?」
「すら~!」
とにかくこれで。
すべてのレアリティを扱うことができるようになったぞ。
続けて新たなウィンドウが表示された。
『レベル100(上限値)に達しました。次回獲得EXPより『レベル上限突破』のアビリティ効果が適応となります。』
なるほど。
このタイミングで『レベル上限突破』が発動するわけか。
これまでレベル100の上限値を突破した者は歴史上存在しなかったはず。
父さんでさえその域に達することがなかったわけで。
(なんかすごいことになってきたぞ)
この後。
カンブリア大森林を歩いている最中に運よく拾った【SR混沌なる言語】のカードを使用することに。
◇◇
【SR混沌なる言語】
[レア度] ★★★★★★★(7)
[カテゴリ]魔法カード
[タイプ]永続
[効果]聖職限定カード効果。祝詞を破棄してデッキケースの中にあるカードとすべて契約を結ぶことができる。
◇◇
ここで面倒くさい契約の手順を省略できるようになったのは大きい。
あっという間にほとんどのカードを水晶ホルダーに入れてしまうと、俺とスラまるは最下層へ向けて歩き始めた。
◆◆◆
それから《神眼》を使ってモンスターと遭遇しないように進んでいくと。
「あれ?」
しばらくしたところでふとあることに気づく。
(なんだろう。ここに空洞部分があるみたいだけど)
光のウィンドウを立ち上げてマップを確認するも、ここに部屋があるって表示はされていない。
不思議に思いながら外壁に手をかざすと結界が反応して扉が出現する。
「なんでこんなところにドアが」
「すら?」
ひょっとすると隠し部屋なのかもしれない。
せっかく見つけたんだから入ってみよう。
「失礼しまぁーす」
声をかけながら扉を開けて中へと足を踏み入れる。
すると、部屋の中央祭壇に1枚のカードが奉られているのが見えた。
(こんなところにカードが……)
近づいてみると、祭壇の前に置かれた石板が発光し始める。
やがてすぐに光の像が立ち上がった。
『よくぞこの部屋を見破りここまで辿り着いた。真の勇者よ』
「どわぁっ!?」
「すら!?」
どうやら事前に記録してある映像が立ち上がったようだ。
はぁ、びっくりしたぁ……。
目の前には筋骨隆々のたくましい青年が立っていた。
歳は俺よりも少し上って感じかな。
『私の名はローシュ。この迷宮に氷剣竜ミラジェネシスを封印した者だ』
ローシュ?
もちろんその名前は知っていた。
300年前に活躍した勇者様の1人だ。
うわぁこんな顔してたんだ。
めちゃくちゃイケメンじゃないか!
『七つの試練を乗り越えよくぞこの部屋を見破った。この隠し部屋は最後の試練だったのだよ。きっと気の遠くなるような月日をこの迷宮で過ごしたに違いない。私は君がこの迷宮の中で強くなってくれたと信じている』
「七つの試練?」
あ……。
そういえばそれっぽいものがあった気もするけど。
実はここへ至るまでの間、なぜか壁が迫って来たり、大きな落とし穴があったり、モンスターの巣窟があったり、巨大な鉄球が転がってきたりした。
でも事前に《神眼》を使って予測してたからぜんぶ軽々と越えてしまっていた。
というか伝承竜の氷晶殿に入ってからまだ1時間も経ってない。
(もしかしてあれが試練だったのかな)
七つもあったのかぜんぜん数えてないけど。
どうやらローシュ様はこのダンジョンを鍛錬の場と設定していたようだ。
さまざまな課題を与えることで自然と氷剣竜ミラジェネシスに立ち向かえるようになるって考えてたのかもしれない。
たぶん入口の石板もローシュ様が用意したものだったんだろう。
そう考えるとなんだか悪い気がしてきた。
『――というわけだ。私の試練を乗り越えた今の君なら、氷剣竜ミラジェネシスが倒せるに違いない。ぜひ祭壇にあるカードを使ってくれ。私ではこれは扱えなかったが……七つの試練を乗り越えた君ならきっとこのカードが使えるはずだ。どうか天災級ドラゴンを倒してくれ。そして世界を本当の意味で救ってほしい。武運を心から祈っている。さらばだ』
ピカーーーン!
そのひと言を最後に光の像は姿を消した。
「試練を乗り越えたのか分からないけど一応貰っておきますか」
わざわざ勇者様が用意してくれたわけだし。
中央祭壇に奉られたカードを手にしてみる。
それは【SSR古代禁忌魔法-ロストマジック-】っていうカードだった。
◇◇
【SSR古代禁忌魔法-ロストマジック-】
[レア度] ★★★★★★★★★★★★(12)
[カテゴリ]魔法カード
[タイプ]インスタント
[効果]詠唱者の水晶ホルダーに入れられたすべてのカードを誘発させ、膨大なエネルギーに変換して放つ最強の無属性魔法。ドラゴン族相手に有効である。
◇◇
またとんでもないカードを手に入れてしまった。
SSRカードを所有するのはこれが初めてだ。
せっかくだから氷剣竜ミラジェネシス相手に使ってみよう。
「失礼しましたー」
「すらぁ~」
スラまると一緒にお辞儀をすると俺は隠し部屋を後にした。




