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第17話 ファルナイツの冒険者ギルド

「ここがファルナイツか。なかなか賑わいのある街だな」


 入口から街の全景を眺めてみる。

 活気はあるけどレネギスに比べるとどこかのどかな部分があった。


 それは領地の気質が関係してるのかもしれない。


 ダリ領は豊穣の土地って言われていて農作物が豊富に収穫できる。

 自給自足で暮らしてる人も多いみたいだし。


 そんな土地柄も影響してか、のんびりとした人が多いのかも。


 ダリ領にも首府は存在するけどファルナイツからはかなり離れている。

 ここは田舎街と言ってもいい。


「みてーママ! スライムさんが歩いてるよぉ~」

「あら本当ね」


 子ずれの親子に声をかけられる。

 女の子がよちよちとスラまるに寄ってきた。


「よかったら撫でてやってください。こいつも喜ぶと思いますんで」

「かまないのぉー?」

「うん。このスライムはお利巧さんだから噛まないんだよ」

「すら~!」

「どうしてモンスターがまちにいるのー?」

「スラまるはモンスターじゃないんだ。召喚獣なんだよ」

「?」


 女の子は一瞬首をかしげるもすぐにスラまるに手を伸ばす。


「さわってもいいー?」

「いいよな? スラまる?」

「すら!」


 女の子が撫でるとスラまるは嬉しそうに飛び跳ねた。


「にゅるにゅるしてるぅ~。かわいい~」

「ふふふ。よかったわね」


 すると召喚獣を連れて歩いてるのが珍しいのか、いつの間にか人だかりができる。

 一瞬マズいかなって思うも特に騒ぎになることはなかった。


 新しくやって来たおばあさんが興味ありげに訊ねてくる。


「ほぅほぅ。この子あなたの召喚獣なのねぇ~?」

「はい。スラまるって言うんです」

「すら!」

「へぇ~珍しいわねぇ。おほほ~」


 どんどん人が寄ってきた。


「召喚獣を街で連れてるのなんてオレ初めて見たぜ!」

「ですよね」


「あらまぁ。かわいらしいスライムちゃんだこと」

「ぜひ撫でてやってください」


「私も触ってもいいですかー?」

「どうぞどうぞ」


 周りの人たちからチヤホヤとされてスラまるもなんだか鼻が高そうだ。

 鼻ないけど。


「すらぁーーーー!!」


 ぱちぱちぱちぱち!


 スラまるが高速で移動したり、空を飛んだりするとそのたびに拍手が巻き起こった。


 何か芸でも仕込んでいるって思ってるんだろう。

 特に怪しまれるようなこともなく。


(こいつが完全万能粘体パーフェクトスライムだとはみんな思ってないんだろうなぁ)


 レネギスだったら近衛兵でも飛んで来そうなところだけど、ここにいる人たちにはそんな警戒心はないようだ。

 案外関所でも問題なかったのかもしれない。


 やっぱりみんなどこかのんびりしている印象だ。


 俺はすっかりファルナイツが気に入ってしまった。

 いいなこの街。


「またね~。ばいばいスライムさん~」

「すら!」


 子連れの親子に見送られながら、俺はスラまると一緒に冒険者ギルドへと向かった。




 ◆◆◆




 館内へ足を踏み入れると、またもさっそく声をかけられる。


「何この子!? ちょーかわいーにゃん♪」


 受付嬢の女の子が一目散に駆けつけてくると、スラまるをギュッと抱き締めた。


「すらぁぁぁ!?」


 突然のことにスラまるもびっくりといった感じだ。


「ぷにぃぷにぃなんだにゃん~♪」

「こんにちはー」

「この子、お兄さんの召喚獣?」

「そうです。スラまるって言います」

「スラまるぅぅ~! かわいい名前なんだにゃん~。召喚獣を連れてる冒険者さんを見たのはこれが初めてにゃん!」

「たしかに珍しいですよね」

「す、すらぁ……」


 女の子は猫耳をぱたぱたと動かして嬉しそうだ。

 対してスラまるは苦しそうだけど。


(黒猫族の子かな?)


 黒猫族は人族にとても友好的な種族で分析や処理能力に優れている。

 だから、こうして冒険者ギルドで働いていることがよくあるのだ。


「あ……ごめんにゃさい。つい仕事を忘れちゃったにゃん」

「いえ。ぜんぜん気にしてませんよ」

「すらぁ……」


 ようやくスラまるは解放される。

 それから俺は受付嬢の女の子とすぐに仲良くなった。


 キャルさんって言うみたいだ。

 紫色のハーフツインテールがとても印象的な美少女である。


(なんか楽しいな。この子)


 人懐っこい部分があって何にでも興味津々って感じだし。


「でも、お兄さんは初めて見る顔なんだにゃん~」

「はい。実は今回が初めてなんです」

「だったらまずギルドカードに情報を書いてもらう必要があるにゃん」

「分かりました」


 とキャルさんから皮の用紙を渡される。


 さっと用紙に情報を書き込んでしまうとそれを提出した。


「Fランク……ということはお兄さんはビギナーさん? ビギナーさんにはまず講習を受けてもらうことになってるにゃん~」

「そうなんですね」


 けどそこでキャルさんは何か気づいたようだ。


「あれ? お兄さんはバイエフォン領の出身なんだにゃん」

「はい。そうなんです」

「そうなるとちょっと話が変わってくるにゃん。他領出身の冒険者さんの再登録にはギルドマスターの許可が必要にゃん」

「実は再登録しに来たわけじゃなくて〈魔素カード〉の換金をしに来たんです」

「〈魔素カード〉?」


 キャルさんは不思議そうに首を傾げる。

 たぶん思ってもなかった答えが返ってきたんだろうな。

 

「ここで換金ってできますか?」

「もちろんにゃん! 〈魔素カード〉はいつでもウェルカムなんだにゃん~♪ そーゆうことならギルドカードの提出だけで大丈夫にゃん!」

「そうですか。よかった」

「でも他領からわざわざ〈魔素カード〉を換金に来るなんて珍しいんだにゃん」

「そうですね。ちょっと事情がありまして」

「冒険者さんにはいろいろな背景があるんだにゃん。詳しく聞かないのがギルド職員の礼儀なんだにゃん♪」

「ありがとうございます」


 俺はキャルさんに一礼した。


「けど一度に回収した〈魔素カード〉の量だと大した金額にはならないんだにゃん」

「実はけっこうな量集めちゃいまして」

「?」


 またも不思議そうに首を傾げるキャルさんの前に、俺は大量の魔素ホルダーを展開させる。

 その場にずらっと並んだ〈魔素カード〉を見てキャルさんはびっくり仰天した。


「ふえええぇっ!? こんなにたくさんの〈魔素カード〉どーしたんだにゃん!?」

「ぜんぶ拾ったんです」

「拾ったって……こんなにたくさん!?」

「実際に拾ったのはこいつなんですけど」

「す、すらぁ……」

 

 これまで静かにしていたスラまるがちょこっと手を挙げる。

 すっかりキャルさんにビビって萎縮してしまってるなぁ。


「その前にぃ! こんなたくさんの〈魔素カード〉がホルダーに入ってるってどーゆうことなんだにゃん!?」


 なんかルーシィやリズと同じようなリアクションだ。

 まぁこれがふつうの反応なんだろうけど。


「これもいろいろとわけがありまして。《無限収納》ってパッシブスキルが発動しちゃってるんで俺。制限なく魔素ホルダーに入れることができちゃうんです」

「にゃんですとーーー!?」

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