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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 3編 【夏合宿】
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86『体の変化』

「――だから言ったのよ。あれは間違いないわ」

「でも……ちょっと可哀相」


「『!』」


ぱたぱたと軽い足音と共に、少女たちの声が聞こえた。


「チッ、ガキどもか」


ダンッ!と女性は後ろに飛び退き、手早く刀を鞘に納めて走り去った。

アサギやノワールにとって見知らぬ少女であるアリスはあわわと押し入れに姿を隠し、


一人残された超兵器少女・モノは目標を見失い、兵器を手に立ち尽くしていた


『……システム問題なし。武装解除します』

――ガシャ、シャシャ……ガシャン。


ブレードを折りたたみ、兵装を纏めて無機質な箱が怪しく光る。


同時に襖が開け放たれ、風呂上がりのアサギとノワールが顔を覗かせた


「あっモノさん、退屈……でした、よね」

「風呂場にいないと思ったら……こんなとこにいたのね」


ノワールが少し縮こまりながらもモノの瞳を見つめる。

無機質な光を宿す翡翠の瞳が、一瞬だけ深みを増した


『……ノワール様。どうか楽になさってください』


機械的なボディスーツを身に纏うモノは、どこか起伏のない声でそう囁いた。

状況をよく理解していないアサギは小首を傾げ、その場に腰を下ろした


「何だかちょっと不思議ね、その人。自分のパジャマ着よっと」


アサギは持ちこんだ荷物の中から真っ黒な服を取り出して軽く抱きしめる。

それから大きな枕を取り出し、並べてふふんと薄い胸を張った


「やっぱこれが無いと眠れないわ。あとは布団ね」


「布団は敷いてあるけど、ちょっとタオル欲しい……どこに仕舞ってあるのかなぁ」


「私もちょっと体拭きたいわ。押し入れにでも入ってるんじゃない?」






「……!」


二人の会話を聞いて、ぎくりと身を強張らせる少女が一人。


「(あわわ……どうしよう、どうしよう……見つかっちゃうよぉ)」


アリスが慌てるのも無理は無い。

何故なら、彼女が身を隠したその場所には、柔らかなタオルや毛布が詰め込まれているのだ。


アリスが今の姿のまま二人の前に出る様な事があれば、間違いなく怪しまれる。

かといってこのまま押し入れの中に隠れているわけにはいかない。



「……けーいちぃ……早く来てよぉ」





~男湯・脱衣所~




「はぁ……全く、藤野先輩め……」


俺は着替えを纏め、給水器から水を汲んで一気飲みしていた。

藤野先輩が女湯に投げ込んだのは……惚れ薬だ。


間違いない。あれは俺が昼間物置から持って来たものだろう。

あれはおそらく飲み薬だと思うのだが、まさか皮膚から吸収されたり、気化したり……


……そんな危ない代物ではないはず。そう願いたい。


ちなみに藤野先輩は少し先にあがっているはずなので、今頃は部屋にいるだろう


とりあえず俺は紙コップをゴミ箱にシュートし、やれやれと扇風機に身を晒す。

そよそよと優しい風が、風呂上がりの体を心地よく撫でる。


すると、


「――杉原ぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」

「おわ、何すか先輩」



勢いよく開け放たれた扉。

藤野先輩はぜぇぜぇと荒く息を吐きつつ、白い何かを俺に投げてよこした



「……っと……」

――もふっ



俺は白い何かを優しくキャッチし、違和感に気付いた。

タオルに(くる)まれたそれは、小さく唸りながらもぞもぞと蠢いている。


生き物かコレ。いや、それよりも……




――――『冷たい』




その瞬間、俺の意識は凍り付いた。

普通の犬猫や子供であれば、熱いとまではいかなくても生暖かいはずだ。



「……」



額をだらだらと嫌な汗が伝う。


俺は、抱きかかえている何かを直視できなかった。


「せっせせ、先輩……こ、これって……まさか、いやそんな嘘ですよね」


「縁側で泣いてたんだよッ! お前のだろそれ!」



中腰で息を整える藤野先輩。


恐る恐る俺は目線を下に落とし、蠢く何かを包むタオルにそっと手を掛けた。

手の震えを必死に抑え、幾重にも巻かれた布を捲ってゆくと……




『うー……』



……俺はそっと布を被せ、深いため息をつく。

うるっうるの紅い眼が俺を見ていた。凄く……うるっうるだった。


「先輩……何ですかこれ」


「あァ? 見れば分かんだろ。ったく……俺は知らねぇからな」


それだけ言うと、藤野先輩は去って行った。

俺はもぞもぞと蠢く物体をとりあえず洗面台の上に置いて、様子を見てみる事にした


相変わらず小さく唸りながら物体は蠢き、やがて自力でタオルの戒めを解いた。


『あぅー……う、ぐすっ』



出てきたのは、40cmほどの小さな女の子。

もさもさした銀色の髪、尖った獣耳ともふもふの尻尾、ぽろぽろと涙を零す紅色の大きな瞳。

すぐにでもずり落ちてしまいそうなゆるゆるのぼろきれ。そして……


……突き刺すような冷気。


「嘘だろオイ……」



『ぐすっ……うえぇ』



――変わり果てた相棒が、そこにいた

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