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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 3編 【夏合宿】
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85『超兵器』



布団が敷かれた暗い和室の中、紺碧の瞳がじっと床を照らしていた。

特別に用意された小さな座布団の上、アリスが微かな寝息を立てている。


特殊な装甲に覆われた手がアリスを座布団ごとそっと持ち上げ、瞳の持ち主は頬を赤らめた


『……かわいい』


冷たく透き通る声でそう呟いた何者かは、両手で座布団を持ち直し、まじまじとアリスを見つめる。

紺碧の瞳は少しだけ光を強め、アリスを見つめて瞬いた。

反射した光に、兵装を背負った幼い少女の姿が幽かに浮かび上がる。


機械に覆われた両足のうち右足は壊れていて、銀色の髪には微かに電流が走っている。

一言では言い表せないその少女の身体は、どこか無機質で冷たい輝きを宿していた。


少女は小さなアリスがころんと寝返りを打つたびにびくんと体を震わせた。


そして背中に背負った無機質な箱からカシャカシャと細いアームを伸ばし、なるべく動かさぬように座布団の四隅を空中に固定し、露出の無い小さな手で軽くアリスを撫でた。


すると床に転がっていた小瓶の栓が抜け、白金色の雫が座布団の周りを漂い始めた。


『何だろ、これ……』


――ちょんっ 


少女が軽くつついてみると、液体は歪に尖って再び座布団の周りを回る。


『……』


――ちょんっ ちょんっ


液体を二回つつくと、隣に漂っていた雫も巻き込んでさらに大きな尖りとなった


『……楽しい』


少女はちょんちょんと液体をつつき続け、やがて雫は一つになった。

いつの間にか液体は剣のような形になってくるくると座布団の周りを回っている。


先ほどまで活発に寝返りを打っていたアリスではあるが、いつしか仰向けの状態でじっと目を伏せていることに、未だ少女は気づいていない。


――-ビッ『!』


白金色の刃が、少女の鼻先に向けられる。


『Who are you?』



……しかし、アリスが眼を向けた先には誰もいない。

アリスは剣を手に立ち上がって辺りを見渡すが、見えるのは無機質な箱のみ。


『?』


座布団からぴょいと飛び降り、アリスは銀色の箱を剣で軽く叩く。

ギャリンギャリンと妙な金属音が部屋に響き、アリスは首を傾げた


『Any idea where they are?』(どこ行ったのかなぁ)


アリスはポケットから小さな金色の錠剤を取り出し、ぱくんと口に含んだ




「……さぁて、この箱は何なのかなーっと」




音もなく人間の少女へと姿を変えたアリスは、無機質に光る箱にぐっと手を掛ける。

しかし箱は床に固定されているかの如く微動だにしない。


箱は時折バチンと稲妻を纏うが、それ以外は特に動作もせずに怪しく光っている


「何なのよ、コレ。っていうか確かに女の子が居たはずなのに……」



暗い部屋をきょろきょろと見渡すアリス。

ふと、閉まっていたはずの襖が少しだけ空いていることに気が付いた


「……?」





「……その箱から離れろ。小娘」


アリスが振り返ると、赤い髪の女性が豪奢な刀を抜いて箱を見つめていた。

鈍く光る刀身は赤黒く、ゆらりと禍々しい何かが宿っているようにも見えた。



「だ、誰……?」


「いいから離れろ。さもないとまとめて切り刻むぞ」


状況が飲み込めず、女性と箱を交互に見つめて混乱するアリス。

しかし女性はスタスタと歩み寄り、強引にアリスを引きはがして箱に刀を突き付けた


「その箱は魔神を殺すために造られた超兵器だ。離れろ」


「えっ? えっ……いや、えと、これって」


「こいつはなァ、フュリュッセルブルーメっつう魔神を封じるために造られたんだ。

その魔神はとっくに封印されて、お役御免のこいつは廃棄処分が決まってんだよ」


男勝りな声でそう言い放った女性は箱をガッと踏みつけ、狙いを澄ます


「こいつの技術を解析し終わったら、私がスクラップにしてやるんだがなァ……ッ!」


「ちょ、ちょっと待ってください! さっき女の子が……」


「…………あァ?」


女性はぎろりと横目でアリスを睨む。

鋭く光るその瞳に、少し怯えた様子でアリスはおずおずと頷いた。


「こいつは機械だぞ。人型になれるなんて、んなバカなことがあってたまるか!」


「で、でも確かに……あうぅ」


赤黒い刀を手に、眉間にしわを寄せながらアリスを睨む女性。

アリスはあわあわと辺りを見渡し、それからしゅんと俯いた


「とにかくこいつは何をするか分からねぇ。技術は惜しいが、今すぐぶっ壊してやる」


女性は吐き捨てるように言い放ち、刀を大きく振りかざす。

すると、何を思ったかアリスがその間に立ち塞がり、バッと両手を広げた


「……何のつもりだ。そこを退きな」


「だ、だめ……」


アリスは泣きそうになりながらも、必死に箱を庇った。

どうしてそんなことをするのか。それはアリスも良くわかっていない。


「アンタには悪いがまとめて切らせてもらうよ。大丈夫……ちゃんと元通りにしてやるさ」


女性は瞳に揺らめく陽炎を宿し、スッと刀を振り上げた


「……ッ」








♦♦♦♦♦






「……あ、れ?」


気が付くとアリスは無傷だった。

両手を広げるアリスを二本の腕がしっかりと抱きしめ、数本のブレードが周辺を囲む。


そしてアリスの右肩に乗る様な形で大きな粒子砲が突き出していた。


バチバチと稲妻を纏う砲身の先は紅髪の女性へと向けられている。

女性は怒りと困惑が混ざったような、微妙な表情のまま自らに向けられた砲身を睨んでいる。




『コード032……危険を排除します』

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