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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 3編 【夏合宿】
94/114

84『女湯』

~脱衣所・女湯~


「や、ちょっとぉ! やめてったら!」

「つるぺたね」

「触るなぁっ!!」

「全く……風呂に入るくらいで騒がないでください。耳障りです」

「そういうアンタだって中々服脱ごうとしないじゃない」

「私はそもそも汚れないんです。風呂に入る必要なんか……」

「ほら皆さん、貸切時間は限られているんですし……喧嘩はやめましょうね」

「……行こ。キャロル」

『……』


藤野家・脱衣所は賑やかであった。

未だ足が甲殻で覆われているアサギも白い肌を露わにし、他の面々もその肢体にタオルを巻いている


大人らしく艶のある暁先生、豊満であるスミレ、貧相なアサギ、幼い体つきのユイとキャロル。

上から下まで揃っている特殊科の面子は、誰がどう見てもやはり華やかである


中々大浴場へ足を運ぼうとしない少女たちに(一部除く)暁先生はやれやれと肩を落とし


「さぁ皆さん……ここまで来たからにはささっと入ってしまいましょうよ」


「先生……何か元気無い」

「どーしたのよセンセー。暗いわよ」


「私は元々体を濡らすのが苦手でして。私もすぐ行きますから」


ほらほら、と急かす暁先生に従い、三人は小競り合いをしつつも大浴場の扉を開け放つ


「何よ、アンタだってつるぺたじゃない」

「貴女には負けますけどね」

「私の方が大きいもん」

「ノワールは黙ってなさいよ」「貴女は黙っていてください」

「……ひどい……」


――三人は大浴場に消え、脱衣所には暁先生が一人残された。

はぁ、と小さくため息をついた暁先生は椅子に腰かけ、紅く染まった瞳でどこかを見つめた。


「全く、藤野君のイタズラには毎年手を焼くんですよねぇ……それより――」


いつの間にか生えた尻尾を指先で弄りながら、暁先生はそっと呟く



「――あの薬に、解毒剤は無かったような……」



♦♦♦♦



濛々と湯気が立ち上る露天風呂。

石造りの温泉のお湯は少し濁っていて、入る者に至福のひと時を与えてくれる。


『……?』


大きなタオルで幼い身体を覆い隠すキャロルは、柱の陰で困惑していた。

見つめる先には薄紫の長い髪。そしてその傍らには黒い仮面が置いてある


「……」


二者の間に、不思議な沈黙が流れる。

洗い場で水を掛け合う少女たちの声も、この二人には届かない。


深い海色の瞳が、じっとキャロルを見つめている


「……おいで」

『……』


キャロルは小さく首を振って柱の陰に身を隠す。

露天風呂に立ち込める湯気が、何者かの姿をぼんやりと映し出していた。


数本の腕と、僅かな風に揺れるマント。蛇のような尻尾も見える。

その正体は誰も知らない。『彼女』の使い魔である


「そっか……」


少女は少し寂しげに呟き、自分の長い髪を見つめた。

それから傍に置いてあった仮面を手に取り……


「…………これで、分かるでしょ……?」


薄紫の髪は輝く金色に変わり、黒い仮面の奥には優しく光る青い瞳。

スミレは呆然としているキャロルをちょいちょいと手招きした


『……』


スミレに抱きかかえられるように、温泉に浸かるキャロル。

熱めのお湯にじわじわと温められ、初めは強張っていたキャロルも徐々に蕩けてゆく。


五分も経つ頃には、顔を隠すのも忘れて幸せそうに眼を細めていた


『♡』


「……ふふっ」


スミレはキャロルの栗色の髪を撫で、ふっと微笑んだ。

そんな和やかな雰囲気に包まれる露天風呂を、淡い桃色の空気が包み込む


お湯の濁りと共に、心まで桃色に染められつつあることを、二人は知らない。


「何だか甘いにおい……効能は何だろうね」


『……♡』





もはや氷風呂と呼ぶに相応しい水風呂には、銀の毛並みを持つ狼少女が身を沈めていた。

見違えるように成長したその肢体は、発育の良い女子高生と言ったところである。


「……」


「な、何よ……いきなり成長するなんてずるいわ!」

「綺麗……」


アサギは濡れたアホ毛を歪ませ、桶に汲んだ熱いお湯を手に成長したユイを睨む。

それに対しノワールは淡く虹色に光る水晶のような氷に見惚れている。


ユイは紅色の眼を開き、しなやかな足を組んで二人を冷ややかに見つめた


「……私はそもそも、子供では無いのです。本来の姿はこんなものではありませんよ」


すると水風呂だけでなく、かけ湯の小さな浴槽や床もペキペキと凍り付き始める。

ノワールは「なるほど」とアサギからお湯の入った桶をひったくり、床や浴槽に撒いた。



「ユイちゃんは、冷やせば大人になれるんだね。いいなぁ……」


「……あっ」


ノワールの呟きで何かに気付いたアサギはパッと顔を輝かせた。


「そうよ! 冷やすと成長するなら――」









「―――温めたら……」


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