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俺と使い魔の学園生活っ!  作者: ぷにこ
第三章 3編 【夏合宿】
86/114

EX『調査記録』



記入日 XX28年 3月


記録者 シャーロット・アイリス






3月1日 晴れ



私は今日から一か月、調査のため箱庭へ向かう。

今回私に課せられた任務は、生存者の確認。


持ち物は食料と愛刀『銀牙烈風刀』。非常時に役立つであろう道具類だ。

しかし私が向かうのは箱庭。生きて帰れる保証はない。 


けれど、私なりに何かしらの成果を掴んでみせる






3月4日 雪



今日は、ようやく箱庭の内部へ立ち入ることが出来た。

聞いていた通り、辺りは一面の銀世界だ。


時折吹き荒れる吹雪が私の体力を削っていく。

入り口付近でこの様子では、テントも長く持ちそうに無い。







3月9日 雪



吹雪は徐々に激しさを増してきている。

未だ、生存者は確認できていない。


昼間でも氷点下並みの気温だが、陽が暮れても気温がほとんど変わらないようだ


やはりここは、魂さえも凍てつく地獄なのだろうか。







3月10日 晴れ



今日は、少し不思議な出会いがあった。

この地獄に純白の魔物が生息していたのである。


見た目は幼い少女のようで、頭と腰元には狼のそれとよく似た耳と尻尾が生えている。

彼女はとても大人しく、私を見ても怯える様子は無い。接触にも成功した。


身体は冷たく、髪や皮膚の感触は人となんら変わりない。


私は彼女に神威と名を与え、生存者の確認と共に彼女の生態を調査することにした。






3月11日 雪



彼女はとても知能が発達しており、人の言葉を理解できるようだ。

私が口にした言葉を復唱し、あっという間に言葉と意味を覚えていく。


そして彼女は私を風雪が凌げる洞穴へ案内してくれた。


ここなら、もうしばらく調査に専念できそうだ







3月16日 雪



彼女の生態を調査するうちに、いくつか分かったことがある。


彼女は飲食を必要としないようだ。

そして彼女は氷を操ることが出来るらしい。


人間同様、褒めてあげると喜ぶような仕草を見せ、

頭を撫でると嬉しそうに尻尾を振る様子が確認できた。







3月18日 曇り


やはり彼女は知能が高い。


私が言葉を教え始めて数日。日常会話はできないが、彼女は自らのしたいことや私に求めていることなどを言葉で表現できるようになった。不明瞭ではあるが、しっかりと意味は理解できる。


私の食事に興味を持ったらしく、与えてみると躊躇いながらも咀嚼する様子が確認できた。



未だ、生存者は確認できていない






3月21日 雪



今日は初めて彼女から私に接触してきた。


始めは、傍に擦り寄ってくる程度であったが、私が指を差し出してみると、

咥えたり軽く舐める様な仕草をしてみたり、背に回り込んで抱きしめたりと……


まるで甘えているかのような様子を確認することができた


感情はあまり豊かでは無いようだが、少しずつ表情も明るくなってきている気がする






3月24日 雪



夜中、ひどい耳鳴りと今までにない凶悪な気配を感じて私は寝床から飛び起きた。

いつもいつの間にか隣に寝ていた彼女の姿は無い。


私は刀を手に、異質な吹雪が舞い込む洞穴の外を確認した。


そこには、荒れ狂う吹雪を身に纏い、純白に光り輝く女性が佇んでいた。

ただじっと夜空を見上げる女性の視線の先を見ると、見事な満月であった。


私は恐らく気配を察知されたのだろう。女性はゆっくりと私の方へ振り返り、

深血のように紅く光る眼で私をじっと見つめ、一際激しい雪風と共に姿を消したのである。



私は一体、何を見たのだろうか






3月25日 雪



私が頭痛と共に目覚めると、傍らには彼女がすやすやと大人しく眠っていた。

何故だか、とても体が重い。風邪を引いてしまったのかもしれない。


いつも通り生存者の確認を終えた私は彼女の調査に戻る。


彼女はひどく心配した様子であたふたと私の周りで忙しなく動き回っていたので

安心させるために抱きしめてあげた所、あっさりと安心してそのまま眠ってしまった。


気が付くと、食料もほとんど残っていなかった。







3月27日 雪



今日もまた、ひどい頭痛で目が覚めた。

水を飲もうと水筒に手を伸ばしたが、身体がうまく動かない。


水筒は彼女が取ってくれたが、中身はとうに凍り付いてしまっていた。


私は、心配そうな彼女の頬を撫でてあげることしかできなかった






3月28日 



もはや、眠ること さえできないほどに頭がいたい。

息も整える ことができず、身をおこすこと すらとても苦しい。


彼 女は私の 傍から離れようとしない。

時折、大丈夫ですかと泣きそうな顔で尋ねてくる。



私は、涙が止まらなかった





3 29



私は、この箱庭からかえれそうにない。

私はなに よりも大事な刀を、 かのじょに託すことにした






♦♦♦♦♦




もし これを見る人が いたならば、彼女につたえ てほしい。



―――『愛してるよ』と

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